「──
臨戦態勢を整えたカズマは強くゴーストライダーを睨みつける。対するゴーストライダーはバイクを降りた状態から一歩も動かず、その成り行きを見ていた。
「……」
「見下してんじゃねぇーー!!」
途端に噴出するアルター粒子。その勢いで飛び出したカズマは右腕を振りかぶる。
「シェルブリットォ・バーストォォー!!」
振りぬいた輝く拳がゴーストライダーに突き刺さる。が、その一歩手前で左腕に拳を受け止められ、カズマの体が空中で止まる。
「なッ──」
「遅い」
驚愕するカズマ。逆にその隙を突いたゴーストライダーの炎を纏った右手が振りぬかれる。しかし。
「──なんてなぁ!」
「ぬ……!?」
一際カズマの右腕が輝くと、左腕にも再構成されたアルターによってゴーストライダーの拳が掴み取られる。力が拮抗しているのか、カズマが地面に降り立つと二人は組み合ったまま動かなくなる。
「こんのぉ!!──があっ!?」
組み合った状態から同時に頭突きをする二人。だが、身体的な強度のせいか、カズマだけが仰け反ってしまい、バランスを崩す。
「しまっ──」
「隙だらけだ」
「──ぐおぉ!?」
一瞬、均衡が崩れたタイミングで力の籠められたゴーストライダーの右の拳が、受け止めていたカズマの左手ごと顔面に叩き込まれた。勢いのまま吹き飛ぶカズマだったが、途中で地面に右の拳を突き立てて回転しながら勢いを殺して着地する。
左手で口元を拭ってから獰猛な笑みを浮かべて再度、構えを取るカズマと振りぬいた拳を戻して棒立ちになるゴーストライダー。図らずも仕切り直しになり、向かい合う二人。その構図は先ほどと似ているが、状況はカズマにとって不利になりつつあった。
「……一つ問う」
「あぁ?……何だよ」
一触即発の空気の中、不意にゴーストライダーから出た問いに出鼻をくじかれた形になったカズマは構えたまま不機嫌そうに応じる。
「お前は
「ハッ、まだだよ、こんなんじゃ全然満足できねぇ。足りねぇなぁ!」
不意に構えを解くカズマ。その右手が強く光り、それに合わせて左手も強く光り始める。
「だから、もっと、もっと!──」
光が強くなっていきやがて全身を包む。明らかに隙だらけの恰好のカズマだが、ゴーストライダーはその変化を眺めているだけだった。
「──もっと、かぁがぁやぁけぇぇぇーーー!!」
やがて、目の眩むような閃光が収まるとカズマの全身にアルターが再構成される。それこそがかつての強敵を打倒したカズマの最強の姿──シェルブリット・最終形態であった。
「お前の行く先は俺が見せてやろう」
「へっ、ようやく本気になったかよ!てめぇ、名前は何だ!」
「……ゴーストライダー」
「ゴーストライダーか、オッケー刻んだ。なら今度は俺を刻め。俺の名前を、カズマと言う名前を!」
力強く楽しげに宣言するカズマに対し、微動だにしないまま冷たく返すゴーストライダー。二人の間に再び、一触即発の空気が流れる。
「さぁ、見せてやる!これが、これだけが!俺の、自慢の、拳だぁぁぁ!!」
勢いよく突き出された一撃はこれまでの戦いで放たれた中でまさしく最高と言っても過言ではない鋭さだった。迎え撃つゴーストライダーは右手を前に出してそれを左手で支える。カズマの拳が狙うのは前に出されたその右手。自らの拳に絶対の自信を持つが故のその選択は彼の性格上、避けられないものであった。そして。
「ぐっ!?」
止められる拳。宙に浮いたままのカズマ。先ほどの焼き直しにも見えるその構図だが、今回は違う点があった。一つは二人とも既に両手を使っていることこと。そして、もう一つは。
「……!?」
「まぁだだぁぁぁ!!!」
カズマはまだ追撃を残していることであった。勢いよく地面を踏みぬいたカズマはアルター粒子を噴出させ、さらに加速する。過去最高を超えるまさに彼の自慢の拳と呼べる一撃は両手の甲から放たれる光によって見えなくなる。そして、その一撃の終わりには一際大きな閃光が迸った。
「ゼェ、ハァ、これで──」
「満足したか?」
「──なっ!?」
光が収まると全身に絡みついた鎖で立ったまま地面に縫い留められながら両の拳を片手で掴まれているカズマと、ほんの少し地面を削った以外は無傷のゴーストライダーの姿があった。
「ここからは俺の番だ」
「っ!?……ぐっ、がっ、あぁっ!?」
そこからは一方的だった。ひとりでに鎖が解けると炎を纏った左の拳が顔面に数度叩き込まれ、その衝撃にふらつくカズマは堪らず退こうとするが、掴まれた両の拳ごと引き寄せられる。
「ぐおっ!?……ごあっ!?」
ガラ空きのカズマの胴体に左の膝蹴りが打ち込まれると同時にゴーストライダーの右手からカズマの拳が解き放たれる。地面から平行になり浮き上がるカズマは、自らの左拳を右手で包んで踏み込んだゴーストライダーのダブルスレッジハンマーを受けて、そのまま地面に叩きつけられる。
「……まだ余裕があったか」
「ぐぅ……く、くそっ、たれ……」
立ち上がろうとするが、ダメージのせいで動けないでいるカズマ。何とかアルターは維持しているが、それが解けるのも時間の問題であった。
「寝ていろ。直ぐに終わる」
「まだ、だ……俺、はぁ……があっ!?」
ゴーストライダーはダメ押しの一撃として倒れ伏すカズマの背中を踏み抜かんばかりの勢いで炎を纏った右足を打ち付ける。あまりの衝撃にカズマの全身を覆っていたアルターが解除されていく。
「……大人しくしていろ」
「ちく、しょう……うらぁっ!」
首を掴まれて持ち上げられるカズマ。眼を合わせられる前にカズマは最後の力を振り絞って右手でゴーストライダーの顔面を殴りつける。
「……」
「へ、へへっ……意地があんだよ……男の子にはなぁ……!」
ただの拳に大した威力もなく、ゴーストライダーの顔を押す程度でしかない。だが、そこには確かに偽物であってもシェルブリットのカズマを名乗る男の
「それがお前の全てか?」
「あぁ……これが、俺の、自慢の、拳だ……」
「……そうか。では、これがお前の行く先だ」
満足げに言葉を絞り出すカズマに対して冷たく言い放ったゴーストライダーはゆっくりと
「ぐ……う、あ……あ」
カズマが最後に見たのは、自らが生み出した転生前の世界が壊れて行く地獄のような光景だった。そして、その地獄の被害者と彼を切っ掛けに発生したアルター犯罪の被害者、その両方の痛みを一身に受けたカズマはその苦しみを味わいながら、魂ごと体を焼き尽くされるのだった。
(……所詮はこいつも転生者、か)
「(然り。だが、奴には矜持が在った)」
(……それでも、罪は裁かれなければならない──それが、俺たちの使命だ)
燃え尽きた灰の山を憐れむように一瞥したゴーストライダーは遠巻きに周囲を取り囲むHOLYを無視してヘルバイクに跨ると轟音を響かせて夜空の向こうへと飛び去って行くのであった。
●#06について
・シェルブリット
基本的には第二形態までで運用していますが、戦闘中に第三形態を経由して一足飛びに最終形態に変化させています。
・お前はこれで満足か?
世界への影響も考えずに好き勝手暴れた転生者に向けられた言葉です。本来、カズマを選ぶような人間は失敗して中途半端に終わるかここまでやり切るかの二択だと思うので、ここまで来た男に贈る言葉としては適切だと思いました。
・偽物の矜持
今作における転生者について珍しく肯定的に描写されている一文です。この作品では自らの在り方を全うすることを是としているため、結果はどうあれこのような表現になりました。
●タイトルについて
Reckless Fire:無謀な炎
・スクライドのOPだから、と言う理由もありますが、この転生者の生き様はまさしく無謀な炎と呼べるものだと思い、このタイトルにしました。
・無数に存在する転生者たちと戦おうとする一騎自身にもこの無謀な炎、と言う言葉は適切なのかもしれません。
●転生者について
カズマ(18歳/男)
・スクライドのシェルブリットを特典として選んだ少年で生前はアラフォーの会社員の男性
・強い相手と戦うことが生きがいだったが、本編終了後は強い相手がいないため腐っている
・現在はHOLYの本部にはおらず、隆起現象の多発するバルベルデにて独自に戦闘を行っている
・日本国籍はあるが、幼少期に天涯孤独になってから「シェルブリットのカズマ」を名乗る
・シェルブリットは最終形態まで使用可能だが、普段は手加減してシェルブリットバーストを使っている
・力押しで戦うパワー重視の戦闘スタイルで道理を無茶でねじ伏せるタイプ
・シンフォギアの知識は特になく、世界がどうなろうと知ったことではないと思っていた