【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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Vol.4:Merc with a Mouth
#01


二発、三発と連続して響く銃声。夜も深いとはいえ現代の日本の街中では珍しい音が響き渡るが、それだけなら犯罪が多発し武偵と言う職業が存在するこの世界では然程(さほど)珍しくもない。だが、その銃声を発しているのが走って逃げる赤いコスチュームを身に纏った二丁拳銃の男──デッドプールである点や、それを歩いて追いかけているのがゴーストライダーである点は何かの撮影かと思える程に特殊な状況であった。

 

「いつまで逃げるつもりだ?」

 

「ったく、俺ちゃんはまだ死ねないんだって!冒頭でターゲット死ぬとか、あんたらも詰まんないだろ?」

 

地獄の底から響くような声で問いながら追いかけるゴーストライダーに対して、逃げるデッドプールは悪態とともに銃を撃ちながら()()()に語り掛けていた。ここに来るまで五時間以上走り続けているはずだが、時折、速度を落としているとは言え軽口をたたき続ける姿はまさしく饒舌な傭兵(マークウィズアマウス)と呼ぶに相応しいものであった。

 

「いやー、やっぱり足止めにもなんないかー」

 

「(何余裕ぶってんだよ、このままだと追いつかれるぞ!)」

 

どーすんだよ!、とデッドプールの脇で叫ぶ魂だけの存在がぶんぶんと飛び回りながら主張する光景は、この状況の中でも異質ではあったが、それなりの素養のある人間か、当事者であるデッドプールにしか分からないものであり、普段から()()()聞こえているデッドプールにとっては日常茶飯事であった。

 

「解説どうも!──んじゃ、次の手行きますか」

 

行くぞもう一人の俺ちゃん!、とどこか楽しそうなデッドプールは銃をしまうと肉体に引きずられる魂だけの相棒を連れて全力で走り出した。当然、追いかけるゴーストライダーもどことなく苛立ちを滲ませながら走る形となる。

 

「おーにさん、こちら、ってね!」

 

ルートの関係か急に右へ曲がるデッドプールはそのまま数mの距離を一気に走り抜け、線路を跨ぐ歩道橋を駆け上がる。

 

「……させるか」

 

「!?ああっと!?」

 

続くゴーストライダーはカーブする勢いのまま小石を拾うとヘルファイアで炎の塊に変えて投げつけるが、駆け上がった直後のデッドプールは前に飛びつつ、振り向きながらのクイックドロウでそれを撃ち落とす。

 

「腐っても殺し屋、か」

 

「感心したなら見逃してくれてもいいんだぜ?」

 

立ち上がりながら二発ほど連射するデッドプールだったが、45口径ではゴーストライダーにとって足止めにもならず、ついに歩道橋の真ん中で追い詰められる。睨み合う両者だが、ゴーストライダーに打撃を与えられていないデッドプールには圧倒的に不利な状況であった。

 

「あのさー、いくらゴーストライダーSSだからってちょっと厳しくない?」

 

「(んなこと言ってる場合かよ!つーか、どこ見てしゃべってんの?!)」

 

あと、今SSって言わなかったか?!、と()()()に問いかけるデッドプールに混乱する魂だが、追い詰められているはずのデッドプールは、常の彼からしてもどこか余裕そうであった。

 

「覚悟はできたか、殺し屋、いや、道化よ」

 

「いやー、参った、参った。まさかここまで走って来るなんて」

 

走るゴーストライダーとかめっちゃレアじゃね?、と歩道橋を上り切ったゴーストライダーをおちょくるようなデッドプールの態度にゴーストライダーからは怒りの籠もった冷たい視線が向けられていた。

 

「おいおい、いくらイケメンだからってそんなに見つめるなって、照れるだろ?」

 

「黙れ。お前の時間は終わりだ」

 

ヘラヘラと笑うデッドプールに対し悠然と、しかし、どこかいつも以上の迫力を見せて近づいてくるゴーストライダー。間近に迫った首を掴もうとするその姿に、キャーこわーい、とおどけた様子のデッドプールだったが、チラリと腕時計を見るとゴーストライダーに向き直る。

 

「あー、残念、俺ちゃんの時間は延長入りまーす」

 

じゃーねー、と身を躱して下の線路──を走る電車へ飛び降りるデッドプール。その手を掴もうとするゴーストライダーだったが、掴んだ手は抜き放っていた刀で切り落とされたデッドプールの左手であった。

 

「道化らしい逃げ方だな」

 

「(小賢しいが、追わねばなるまい)」

 

高速で走る電車に刀を刺して無理やりしがみ付くデッドプール。逃げ方に辟易するゴーストライダーだったが、その姿を最初に見た時から他の転生者にはない執念と違和感を感じていた。

 


 

(緋弾のアリア……幾分か奴らを追いやすい世界だな)

 

周囲を見渡しながら、特に違和感のない都市部であること感じた一騎は比較的、転生者の傾向を予想しやすい世界であることも含めて小さく安堵していた。さらに、転生者の活動を確認しやすい昼間に来られたことも安堵する一助になっていた。

 

「(然り。だが、油断するな。位置は分かるが、反応が妙だ)」

 

(はっきりしないな……ともかく、警戒はしておく)

 

「(うむ、方角は彼方(あちら)だ)」

 

ゴーストの忠告を受けつつ、ひとまずの情報収集として指し示した方角──武偵高校の寮のある方へと向かう。が、一つ問題があった。それは、移動の過程で発覚したものである。

 

(……なんだ、これは)

 

道中にあった街頭のモニターから流れたニュース──一昨日のバスのハイジャックに関する情報であった。通常、この手の事件──所謂(いわゆる)、原作のイベントには転生者が関わりがちであるが、状況はさらに複雑であった。なぜなら、画面にはどこかで見たことがあるような赤色の全身タイツの男──デッドプールが、両手でピースをしながら何事かを騒いでいる姿がはっきりと映っていたからである。

 

「(殺し屋か……如何する心算だ、一騎?)」

 

(力と見た目がわかったのは幸いだが……アレと遣り合うには些か骨だな)

 

頭を抱える一騎だが、それも当然である。通常、転生者と言うものは、特典と呼ばれる何かしらの特殊能力を持っているものだが、容姿まで含めて模倣した場合は本人の技術や特性まで再現されていることが多く、往々(おうおう)にして厄介な相手だからである。そして、その相手が()()デッドプールともなればさしものゴーストライダーも手を焼かされることは確実であった。

 

「(殺し屋で在るなら我の手の内は読まれているだろう)」

 

(そうだな……だが、本物でないのなら、いや、本物だったとしてもやることは変わらん──転生者なら殺すだけだ)

 

「(然り。では何から始める?)」

 

(場所が割れているなら、まずは準備だ)

 

返答に満足した様子のゴーストとの相談を終えた一騎は手近なビルの駐車場で呼び出したバイクに乗ると、デッドプールに対する準備を行うために出発するのだった。

 




●#01について
・マークウィズアマウス
個人誌のタイトルにもなっているデッドプールの別名です。今作でもその能力は健在でふざけすぎないようにするのは大変でした。

・45口径
映画版では50口径のデザートイーグルで漫画版では45口径のコルト1911を使っているらしいのですが、流石に日本で50口径はやりすぎだと思ったので、今作では45口径を採用しました。

・切り落とされた左手
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、映画版のデッドプールで使用した逃げ方です。漫画版やゲーム版では少々過激すぎるきらいがあるので、言動は比較的マイルドな映画版を元に考えていることが多いです。

・時系列
バスのハイジャック事件なので、原作の最初の方です。ちなみに、転生者の介入自体は一年ほど前から介入している設定なので、地味にこの世界になじんでいます。
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