【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#02

 

(……さて、あとはどう出るか、だな)

 

準備を終えた一騎がバイクで繁華街近くを走っていると目標はすぐに見つかったがそれも当然である。昼間の繁華街で赤い全身タイツの成人男性など遠くからでも一目でわかるからだ。

 

(……頭が痛くなってきた)

 

「(……耐えろ。あれが奴の常だ)」

 

バイクをゲートへ戻した一騎は辟易しつつデッドプールの追跡を開始する。休日の午後であるため、人が多く常であれば追跡は難しかったが、相手が一目でわかる特徴的な人物であれば、数々の転生者を追跡した来た彼らには大した問題ではなかった。……(もっと)も、デッドプールの奇行に耐えられれば、の話ではあるが。

 

(食べ歩きにナンパ……そこらの若者と大差はないが……)

 

一騎の困惑も無理はない。本来、転生者とは多かれ少なかれ何かしらの目的を持って動いている。しかし、今回は主人公とヒロインに関するイベントが起こっている日にも関わらず、することと言えば街をぶらついているだけ、と言うのが気がかりであった。そして、気がかりな点はもう一つある。

 

(ゴースト、奴は本当に転生者か?)

 

「(如何言う事だ?)」

 

(先ほどの反応の一件もある。俺には奴が転生者、と言うよりはデッドプールにしか見えん)

 

「(他人の空似だと?)」

 

(転生者ではあるはずだ。だが、ただの転生者ではないような……何か違和感を感じる)

 

違和感と表現したが、彼の感じているそれを表現するには適切な言葉が見つからないのか、難しい表情になる一騎。そして、その違和感はゴーストも感じているようであった。

 

「(確かに、殺し屋とは何処か違う。だが、元々、奴の考えなど分からぬぞ?)」

 

(だろうな。だが、それにしても妙だ。何か、見落としているような……)

 

それは直感のようなものであったが、彼らのように戦場に身を置く存在、ひいては超常の理で戦う戦士であれば誰しも持ちうる、ある種の本能のようなものでもあった。そして、それはしばしば重要な局面で発揮されるものである。

 

(第四の壁か!?)

 

「(成程、ならば行動の説明はつく)」

 

第四の壁とは、所謂、創作(フィクション)現実(リアル)を分ける壁であり、デッドプールはそれを超えて視聴者や読者に語りかけるメタフィクション的なキャラクターであり、それこそがデッドプールが転生者に選ばれる理由の一つでもあった。

 

「(先手は取られた。さて、如何する?)」

 

(決まっている。()()()を使うだけだ)

 

二人は相談を終えるとより細かく観察するべくデッドプールへと距離を詰める。が、そこで、転生者としてもデッドプールとしてもあり得ないもの──(かたわ)らに浮かぶ人魂のような存在が目に入った。

 

(ゴースト、あれは、人、か?)

 

「(然り。そして、あれが元の転生者だ)」

 

(……なるほど。違和感の正体はそう言うことか)

 

わかってみれば何のことはない。その人魂こそが本来、一騎たちの追う転生者であり、デッドプールの特典を持つはずの人物であったのだ。

 

「(殺し屋の狂気に呑まれかけている。故に奴等は乖離(かいり)した)」

 

(つまり、あれは俺たちかデッドプールにしか捉えられん、と言うことか……哀れだな)

 

「(だが、急がねばならん。奴は殺し屋に成りつつある)」

 

(なるほど。下手をすれば殺せなくなるか、刻印が消える、と言うところか)

 

然り、と返すゴーストに対し、またもや難しい顔の一騎。本来の目的である転生者を殺し、刻印を回収することが出来ないのでは本末転倒だからである。

 

(猶予は?)

 

「(凡そ一月程度だろうな)」

 

(まったく……儘ならんな)

 

言外に急げと言っているゴーストの言葉に内心でため息を吐く一騎。だが、ゴーストライダーとして戦ってきた彼にとってはこの程度の壁は日常茶飯事、一瞬で思考を切り替える。その目は少し先でタクシードライバーらしいインド人と肩を組んで陽気に歩くデッドプールの姿を確実に捉えていた。

 


 

「んで、出てくるのが遅れたってワケ?わかってんなら早く来いよ!もう19時だぞ!」

 

もー一日中歩いたから俺ちゃんヘトヘトよ、とおどけた様子で苛立ち交じりに言うデッドプールの前にゴーストライダーが姿を現していた。出て来ないゴーストライダーを引き寄せるためにデッドプールが選んだ場所は周囲には人気のない工事中のビルが並び立つエリアであった。

 

「殺し屋、覚悟はいいか」

 

「って、無視かよ!いいもんねー俺ちゃんだって好き放題やってやるかんな!」

 

「(ちょっ、勝てんのかよ!?)」

 

体取られて死ぬとか、勘弁してくれ!、と(わめ)く人魂を他所にゴーストライダーに向けて両手同時にクイックドロウで連射するデッドプール。都合、十二発の連射を受けたゴーストライダーだが、当然ながら拳銃弾程度ではびくともしない。

 

「ですよね~……じゃ、そう言うことで!」

 

「(え、逃げんの?)」

 

効かないと見るや即座に後ろへ走るデッドプール。だが、リロードしながらとは言え、その速度は悠然と追いかけるゴーストライダーの視界に入り続けるようにギリギリの速さだった。

 

(遅い──ヘルバイクを封じる気か?)

 

「(然り。時間稼ぎだろう)」

 

「ピンポーン!ゴーストライダーさんに六点!」

 

振り向きざまに六連射するデッドプールだが、その銃弾は焼け石に水と言わんばかりにゴーストライダーに当たって燃え尽きる。

 

「(デップー!こっからどうすんのさ!)」

 

「決まってんだろ?逃げるんだよ~!」

 

デップー、行きまーす!とこちらに向かって話しかけるデッドプールは困惑する人魂を引き連れて走り続ける。そして、それに続く形で追いかけるゴーストライダー、その光景はさながら鬼ごっこの様相を呈していた。

 




●#02について
・成人男性
本来は高校生ですが、特典であるデッドプールの性質に引っ張られたことで肉体年齢が原典のデッドプールに近くなっています。具体的には転生してから数か月で成人男性と同程度の体格になりました。

・第四の壁
本来はフィクションではない世界では第四の壁を認識と言われても意味が分かりませんが、今作においては知りえない事象を知ることや干渉できないものに干渉する能力だと思ってください。

・対処法
実はとても単純な方法なんですが、ここでは明言しません。おそらく、他の作品ではあまり出来ないというかやらないと思われる考え方なので気になる方は是非最後までご覧ください。
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