【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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Vol.5:Badgers of the Same Hole
#01


7月、世間では夏休みに入ろうかと言うタイミングではイベントごとも多くなる。特に学園モノが核となる世界であれば尚更であり、雄英学園が見える所に出てきた一騎にとっては、転生者を見極めるには絶好の時期であった。

 

(僕のヒーローアカデミア……転生者のやる事はどこでも変わらんな)

 

丁度、昼時の最も暑い時間帯だが、どこからか調達したスマホで状況を確認した一騎はどこか呆れた様子で脇に停めているバイクに軽く腰かけていた。

 

「(然り、だが、今回も油断は出来ん)」

 

(()()、何か厄介な相手か?)

 

「(分からん、しかし、以前の例も在る)」

 

ゴーストの忠告に辟易しつつ問いかける一騎だが、対するゴーストもどこか疲れた声色で困惑していることで警戒を深める。

 

(まったく……儘ならんな)

 

着いたばかりとは言え、不透明な状況にため息を吐いた一騎だが、一度、深呼吸をして頭を切り替える。

 

(ともあれ、まだ転生者とは戦えん)

 

今は奴らが動くのを待つ、と静かに宣言した一騎はバイクに跨ると今回の準備のために町場へとバイクを走らせるのであった。

 


 

街中の休日の昼間にしては人気の少ないエリアに存在するとあるバー。開店していないにも関わらず店内には少年少女を含めた数人の男女が(たむろ)していた。その中で手の形をしたマスクを着ける少年──死柄木弔(しがらきとむら)は腹立たしそうに首を掻きむしっていた。

 

「……で、計画はまだ先なのに、何でここに集まってんのさ?」

 

「あらヤダ、ここは私たちの拠点(ホーム)でしょ?」

 

いつ集まろうと勝手じゃないの、と開き直りにも似た返事をする女性的なしぐさの男──マグネと、マグ姉の言う通りです、と嬉しそうに続く両サイドのお団子が特徴的な髪形のセーラー服の少女──トガヒミコ。そんな二人の態度に死柄木は面白くなさそうに、ふん、とそっぽを向くとカウンターに立つ黒い人型の靄のような人物──黒霧(くろぎり)と視線が合った。

 

「何?何か文句あんの?」

 

「いいえ、順調にコミュニケーションを取れているようで何よりです」

 

非難するような死柄木の視線を軽く受け流す黒霧。どこか剣呑ながらある種の和やかさがある光景だが、そんな空気を打ち壊すように突如、扉が開き闖入者(ちんにゅうしゃ)が入って来た。

 

「っ!?すみません、まだ開店前ですので……」

 

Tシャツにフードの付いたベストを羽織ったラフな格好の闖入者に対し、やんわりと退出を促す黒霧だが、目深に被ったフードから覗く視線に剣呑さを感じて動きが止まる。

 

(ヴィラン)連合に入りたいんだが、ココで合ってるか?」

 

「「「「!?」」」」

 

突然の闖入者の言葉にその場にいた全員が警戒する。その姿に、正解か、とどこか芝居がかったように呟く闖入者。そして、入り口側に近かったトガヒミコがその一言に反応してナイフを持って闖入者の意識の外から切りかかる。

 

「っ!?──痛っ!?」

 

「おっと、危ないじゃないか」

 

頸動脈を狙った一撃は予想外の速さで反応した闖入者の右手によって手首を捻られたことで防がれた。そして、取り落としたナイフは闖入者の左手で回収され、トガヒミコの首に当てられる。そのままトガヒミコを盾にする形の闖入者は右手で携帯型の端末──カイザフォンを銃にして死柄木の足元に威嚇射撃をする。

 

「「っ!?」」

 

「……この匂い……!」

 

「出来れば、動かないでもらえるか?」

 

仲間になるかもしれない相手は殺したくないからな、と殺気の混ざった鋭い視線のまま涼やかに言う闖入者と人質のような形だが、何事かを考える様子のトガヒミコ。一同の間に緊張が走る。

 

「……仮にここがその場所だとして、何で連合に入りたいんだ?」

 

一触即発の空気の中、闖入者に問いかける死柄木。対する闖入者はトガヒミコを解放してナイフを返すと、フードを取ってその下の少年の素顔を晒す。

 

「俺は、ヒーローごっこをしているような連中が嫌いでな。世間の奴らの目を覚まさせてやりたい、それだけだ」

 

交錯する少年と死柄木の視線。少しの沈黙の後、ボリボリと首を掻いた死柄木は諦めたようにため息を吐く。

 

「……いいだろう」

 

「死柄木弔……確かに、その通りですね」

 

「ちょっと、こんなの入れていいの!?」

 

「コイツは戦力になる。それに、暴れられても面倒だ」

 

戸惑いながらも死柄木の言葉に賛同する黒霧と仲間を攻撃した危険な闖入者を警戒するマグネだが、一瞬でトガヒミコの気配を感じさせない一撃を止めた実力を指摘されて何も言えなくなる。

 

「私はいいと思います。この人ちょっとカッコイイですし」

 

「えぇ……?まぁ、確かによく見れば可愛い気もするかしら」

 

「その基準は一体……ともかく、他のメンバーにも後で紹介しましょう」

 

人質にされたトガヒミコが受け入れたことで態度が軟化するマグネとその発言に小さくツッコミを入れる黒霧と、三者三様の反応を見せるメンバーたち。その変わりように困惑する少年だったが、何とか気を取り直す。

 

「あー、それはどうも、俺は、そうだな……カイザ、うん、カイザとでも呼んでくれ」

 

まぁ、よろしく、と軽く挨拶するカイザ。こうして彼が連合に加入したのは一騎たちが来る少し前のことであった。

 




●#01について
・スマホ
ここに限らず、いろいろと道具が出てきますが、適当な木材などに圧力と熱量を加えて作り出したダイヤか何かをどこかで換金して予算を調達している設定です。よく使う装備はゲートでつながった拠点から取り出しているため、ここでは消耗品の補充などをしています。

・敵連合
あの人たちが普段何してるのか知りませんし、結成したばかりのイベントごとの直前なので、特に何もしていないものとして描写しました。

・カイザ
当然ながら偽名です。本人としては本名でもよかったんですが、どうせならコードネームのようなものが欲しかったのかもしれません。
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