【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#02

 

「カイくん、何考えてるです?」

 

「いや、最初に会った時にトガに殺されかけたな、って思ってさ」

 

一騎たちが到着してから数日後、世間の学生が夏休みで浮かれている中、バイク──サイドバッシャーのサイドカーにトガヒミコを乗せたカイザが山間の道路を走っていた。運転中に物思いにふけるカイザとその姿に小首を傾げるトガヒミコ。仲の良さそうな二人の姿もそんな浮かれた学生のようにも見えた。

 

「殺されかけたのは私ですけど」

 

「そりゃ、俺もまだ殺されてあげる訳にはいかないからなぁ」

 

小さく唇を尖らせるトガヒミコに悪いとも思っていない態度のカイザ。どこかズレた様子の二人だが、それが彼らの信頼の証ともいえるものであった。

 

「でもカッコイイから許します」

 

「そりゃどーも。つーか、トガは俺のどこがいいの?」

 

えへへ、とどこか狂気を含んだ笑顔を浮かべるトガヒミコの態度に呆れたような表情で問いかけるカイザ。だが、無理に作ったような声色と合わさって、その態度は照れ隠しにも見えた。

 

「うーん……匂いですかね。あと、私のことわかってくれるじゃないですか」

 

全部終わったら殺したいです!、と照れながらも元気そうに答えるトガヒミコと、言葉自体は物騒だが、そこに含まれる明確な好意に、ふーん、とだけ返すまんざらでもない様子のカイザ。年相応な反応を見せているその姿はとても世界に喧嘩を売ろうとしている敵連合の人間には見えなかった。

 

「もっと血が出てた方がカッコイイんですけどねー」

 

「そりゃどうも。それより、そろそろ目的地に着くぞ」

 

自分を見ながら不穏な感想を漏らすトガヒミコに対して、軽く受け流すカイザは目的地が近づいたことを告げる。そして、どこか楽しそうな二人の視線の先には開闢(かいびゃく)行動隊の集合地点が待っているのであった。

 


 

「(一騎、反応は近いぞ)」

 

(そうか。想定通り、だな)

 

山へと向かう道のりをバイクに乗って進む一騎はゴーストの言葉に自身の見立てが間違っていないことを確信していた。

 

「(しかし、また其れか?)」

 

(……またその話か)

 

普段は空いているバイクの後ろに積まれたバッグの中身──高精度のカメラや望遠レンズ、野営用の装備に不満げなゴーストと、その反応にどこか呆れた様子の一騎は小さくため息を吐く。

 

「(監視ならば我の眼で事足りる)」

 

確かに、超感覚を持つゴーストにとっては自身の能力よりも非効率な監視機器に否定的なのも無理はない。しかし。

 

(お前の力は分かるが、隠れて監視するにはこの方がいい……それに、力に頼り切りでは奴らと変わらん)

 

「(成程、()()の矜持、と言う物か)」

 

(……必要なら使う、それだけだ)

 

どこか感心したようなゴーストの物言いに興味なさそうに返す一騎。そんなやり取りの中、目的地である山頂が近づいてきたことでバイクはスピードを落とした。周囲に人気がないことを確認した一騎は積んでいた荷物を背負うと身軽になったバイクをゲートの向こうへ送った。

 

「(着いたか、では、如何する?)」

 

(そうだな……ここでいいだろう)

 

荷物を背負ってしばらく森の中を歩いていた一騎はちょうど周囲の地形が見渡せる場所を見つけると、その近くの開けた所に荷物を置いた。

 

(ここからなら見渡せる)

 

「(では、其の時まで待とう)」

 

監視のために野営の準備を始める一騎。その眼下に広がる山野、そこで行われる雄英学園ヒーロー科の合宿。その果てに何が起こるのか彼らはまだ知る由もなかった。

 


 

(……妙だな?)

 

カイザと名乗る少年──神代怜(かみしろれい)は夜の森の中を訝しみながら走っていた。敵連合開闢行動隊、そこに所属することになった彼は本隊と離れて行動することになっていたが、刻限になっても合図がないことに違和感を感じていた。

 

「とは言え、俺には俺の仕事もあるしなぁ」

 

周囲に誰もいないせいか、これまでとは違った軽い調子で、うむむ、と唸る怜だが、目的地が近づいてきたことに気づき足を止めると、一度、ため息を吐いた。

 

「ま、いいや。とっととやることやって、トガちゃん助けて好感度アップ!……出来たらいいなぁ」

 

懐から取り出したベルト──カイザドライバーを腰に巻くと手に持ったカイザフォンで9、1、3、Enterと入力する。

 

『standing by』

 

準備が整ったことを告げる電子音声に続いて独特の待機音が鳴る中で怜は左肩の前に閉じたカイザフォンを構える。

 

「変身!」

 

『complete』

 

言葉とともにカイザドライバーに斜めにセットしたカイザフォンを横に倒した怜が電子音声とともに光に包まれると、その姿は紫の複眼と黄色のラインの入った灰色の装甲を持つ仮面の戦士──仮面ライダーカイザへと変身したのだった。

 

「おっ、来たか。んじゃ、狩りを始めますか」

 

「っ!?お前は!?」

 

変身を終えたタイミングで予定よりも遅いが合図となる爆発音を確認したカイザは目標の目の前へ姿を晒すと腰のカイザブレイガンをガンモードにして構える。そして、突如、目の前に現れた仮面ライダーカイザの姿に標的は驚愕の声を上げる。

 

『burst mode』

 

「見つけたぞ──スパイダーマン、飛田八雲(とびたやくも)

 

静かに宣言するカイザの構えた銃口の先にあったのは彼の標的であるスパイダーマン──この世界の転生者の姿であった。

 




●#02について
・カイザとトガ
作者の苦手なパートです。恋愛っぽいにしても関係性の構築が急なので、もう少し下積みというか努力が欲しい所です。個人的にはやるならしっかりやりたい派なので、話のメインに据えるならもう少し丁寧に書きたいと思います。

・狩人の矜持
以前にも説明しましたが、一騎自身が力に溺れないようにするためのルールであり、一騎の定めるルールこそが本作における猟犬とゴーストライダーの違いだと言えます。

・カイザVSスパイダーマン
この構図が今回やりたかったメインです。この回で表現したかったことは転生者狩りとは何か?その違いは何なのか?という二点です。詳細については読み進めるうちに感じていただければ幸いです。
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