ドサッ、と重い物が投げ出されるような音に目を向けた敵連合開闢行動隊の面々が見た物は、力無く地面に倒れ伏すMr.コンプレスの姿であった。
「「「!?」」」
「コンプレス!?」
真っ先に驚愕の声を上げたのはマグネだったが、近づこうとした所でコンプレスが放り出されたであろう森の中から現れた存在──ゴーストライダーに戦慄した。
「三人目、奴はもう戦えない」
「っ……何だ、キサマは!?」
警戒する開闢行動隊に地獄の底から響くような声で告げられる撃破宣言に対し、大剣を持ったトカゲのような青年──スピナーは怯みかけつつも問いかける。
「罪なき者の代行者だ」
「邪魔をするなら!」
大剣を構えて跳びかかるスピナー。だが、その一撃が届くことは無く、拳の一撃で大剣を砕かれてそのまま破片ごと殴り飛ばされるとその体は動かなくなる。
「スピナーが!?」
「四人目」
「よくも──おぉっ!?」
気絶するスピナーの姿に激昂するマグネは武器を構えようとするが、その前にゴーストライダーの左手から伸びるチェーンに絡め捕られる。そのまま引き寄せられた身動きの取れないマグネは腹部に叩き込まれた右手の一撃で戦闘不能になる。
「マグ姉っ!?」
「五人目。そして──」
静かにカウントしたゴーストライダーはヘルファイアを纏わせた燃えるチェーンの輪を分解して周囲に飛ばす。無軌道に飛ばされたかに見えるチェーンだったが、その一つ一つが意思を持ったかのように動くと、ゴーストライダーを狙っていたトガヒミコとその近くにいた黒と灰のラバースーツの男──トゥワイスに殺到する。
「きゃああっ!?」
「ぐああっ!?」
「これで七人」
四方八方から迫りくる攻撃に滅多打ちにされた二人は何も出来ずに気絶してしまう。そして、残されたのは継ぎ合わせたような皮膚のピアスをした男──
「威力ならこちらが上だ」
撃ち出した腕が後ろに弾かれる程の威力の爆炎、まともに受ければ防火服であっても無傷ではいられない──はずであった。
「……馬鹿な」
青い炎がど真ん中──ゴーストライダーのいた辺りを中心に渦巻くと、赤く染まっていき、大きな火球となって宙に浮かぶ。そして、その下には無傷で佇むゴーストライダーの姿があった。
「火遊びが過ぎるようだな」
「っ……があぁっ!?」
「八人目。あと一人……いや、ここからでは間に合わん、か」
荼毘に向かって飛ばされた火球は当たる直前で破裂すると、その強い衝撃で荼毘を吹き飛ばす。そして、強かに体を打ち付けた荼毘も戦闘不能になると、ゴーストライダーは周囲に倒れる開闢行動隊をチェーンで縛り上げる。
「(一騎、転生者の反応だ)」
(分かっている。だが、後始末はしておく)
ゴーストの報告に答えたゴーストライダーは指笛を吹くとヘルファイアで乗っ取ったトラックを呼び寄せる。そして、拘束した開闢行動隊を事前に同じようにしていたガスマスクの少年──マスタードと拘束服の男──ムーンフィッシュとともにトラックの荷台に積むと、トラックを雄英の合宿所へと走らせる。
「(何処で降ろす?)」
(生徒の居そうな場所だ)
細い木程度なら物ともせずに進む強化されたトラックに乗るゴーストライダーは開けた所で遠くから響く爆発音に気づく。
(あれは……転生者の方か)
「(だが、妙な反応も在る)」
(なら、話は簡単だ)
どちらも殺す、と静かに宣言するゴーストライダーは運転席に書置きを残してトラックを置いて行くと、呼び出したヘルバイクに跨って音の方へ走り出した。
「クソッ!何でカイザが──うわっ!?いるんだよ!」
スパイダーマンこと飛田八雲は迫りくるサイドバッシャーのミサイルを避けつつ焦っていた。元々、原作知識で敵連合の襲撃が予想されていた合宿ではあったが、自分以外の転生者による予想外の襲撃を受けて完全に混乱していた。
「おいおい、逃げてるだけじゃ死んじまうぞ!」
後ろから煽るようなカイザの声が聞こえるが、八雲にとってそんなことはどうでもよかった。入学以来やる気をなくして腐っている自分に優しくしてくれた、クラスメイトの梅雨ちゃんこと蛙水梅雨。元々、彼女を守るために同行していたが、まさかそのせいで危険な目に合わせてしまうとは思ってもみなかったのだ。
「ぐあっ!?」
「おいおい、ちゃんと避けろよ?」
(好き勝手言いやがって……それより、梅雨ちゃん、無事に逃げられたかな?まぁ、俺より万能型だし、大丈夫か)
数発のミサイルを食らって吹き飛ばされながらも梅雨の無事を祈るだけの八雲だが、それも仕方のないことである。糸を強化するウェブシューターもなく、言い訳程度に持って来ていた自作のスパイダースーツを着ているだけの現状では、10m先に糸を飛ばして常人の3倍程度の身体能力がある程度の戦力にしかならないからである。
「ハァー、転生者を狩るのが仕事だが、お前、トップクラスに弱いぞ」
「ぐ、うぅ……」
防戦一方で動けなくなった八雲に呆れたような態度のカイザ。その対照的な姿を見ればわかるように完全に勝敗は決していた。通常の殴り合いなら合宿中に受けた戦闘技術の強化の成果を見せられたが、乗り物に乗る相手に対して有効な網や電撃のウェブを撃てない現状ではまず無理な話であった。
(くそ、ここまでか……)
「ま、俺はこれからトガちゃんを助けなきゃならないんでな。さっさと死んでくれ」
じゃあな、と軽い調子で死刑宣告をするカイザ。身動きも出来ない八雲がもうこれまでかと諦めかけたその時、後ろから来た黒い影が八雲の脇を走り抜けるとサイドバッシャーの足が壊れてその体が斜めに焼き切られていた。
「……え?」
「っ!?──くそっ!?一体何なんだ!」
咄嗟に飛び降りるカイザと驚愕とダメージで動けない八雲。そしてその二人は爆発するサイドバッシャーの向こうから悠然と近づくその影に戦慄する。
「俺は、お前たちの死だ」
地獄の底から響く声で宣言する執行人──ゴーストライダーがその姿を現した。
●#03について
・VS開闢行動隊
本来なら介入に当たるため、あまり積極的に倒す相手ではありませんが、今回倒した理由は近くにいた罪人だから、という一点のみです。近い状況で言えばVol.1のホラーやVol.2のビフを相手にするイメージです。
・強化トラック
ゴーストライダーと言えば乗り物の強化と制御だということで、廃車になっていたトラックをヘルファイアで強化した設定で登場させました。
・言い訳がましいスパイダーマン
執筆当時はゲームだったり映画の関係でスパイダーマンの姿を見ることが多かったので採用しましたが、そういうミーハーなタイプは原典について詳しくないことが多く飽きっぽい傾向にあるため、こういう感じに描写しました。
・サイドバッシャー
サポートマシンは個人的には好きなんですが、ゴーストライダーなら真っ先につぶすだろうということで熱したチェーンで両断されてもらいました。