【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#05

 

「次は、こちらの番だ」

 

「……あ?」

 

ミシリ、と音がしたと思えば右手に握られていたはずのカイザショットが見当たらない。それどころか、その下の拳すら見えなくなっていた。

 

「あ、ああ……あああああぁぁぁ!!」

 

握りつぶされた、その事実を認識したカイザが激痛とともに叫ぶ。ゴーストライダーが手を放すとカイザは右手を抑えて後退る。が、ゴーストライダーがそれを許すはずもない。

 

「お、俺の手があぁぁ!──あがっ!?」

 

「喚くな、見苦しいぞ」

 

一歩、踏み込んだゴーストライダーの右ストレートが喚くカイザの顔面に突き刺さる。完全に意識が逸れていた所に叩き込まれた一撃に反応できなかったカイザは3mほど吹き飛ぶとそのまま地面を転がっていた。

 

「うあ……ああ……あ」

 

仰向けになって呻くカイザからは既に最初の威勢のよさは鳴りを潜めていた。そんなカイザに向かって悠然と歩いて行くゴーストライダー。傍から眺めている八雲は衝撃的な光景に声を出すことすら忘れていた。

 

「……どうやら、遊びが──」

 

「ひっ!?」

 

「──過ぎたようだな」

 

「ぐえっ!?」

 

目の前に現れたゴーストライダーの姿に怯えるカイザ。だが、カイザの体が動くよりも早く踏み抜かんばかりの勢いで右足をベルトへと踏み下ろした。その衝撃で地面にひびが入り、カイザの体がくの字に曲がると、ベルトが壊れたことでカイザの変身が解けて怜の姿に戻る。

 

「ゲホッ、ガハッ……ひいっ!?」

 

「呆気ないな。この程度で猟犬とは」

 

倒れたまま咳き込みながら怯える怜の首を掴んで持ち上げるゴーストライダー。決着は着いたかに見えたが、猟犬の一言に一瞬だけ怜の目に生気が戻る。

 

「そう、だ……俺は猟犬、なんだ。こんな所で……」

 

「お前は終わりだ」

 

生気の戻った怜に対して贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませるゴーストライダー。

 

「あ、あぁ……」

 

怜の眼にはこれまで猟犬の仕事で殺して来た転生者の姿と彼らの齎した罪が映される。そして、それらの苦しみを一身に受けると、多くの刻印を引き剥がされたその魂は焼き尽くされるのだった。

 

「……これでは、犬死だな」

 

怜の魂からは過去に殺した転生者のことしか分からなかったゴーストライダー。その声には落胆の色が含まれていたが、右手に力を籠めて抜け殻となった怜の首の骨を折るとその体を地面に打ち捨てた。そして、打ち捨てられたその体はカイザの変身に耐えられなかったのか灰となって崩れ去った。

 

「な、何で、殺したんだ!」

 

一連の衝撃から立ち直った八雲は非難の声を上げると、その声に反応したゴーストライダーの冷たく鋭い視線が八雲に注がれる。

 

「な、なにも、殺すことは……」

 

「では、その力はどのように得た?」

 

「っ!?……それは、アンタだって──」

 

「黙れ……!」

 

悠然と近づくゴーストライダーだったが、八雲の言葉に殺気の籠もった視線を向けると気圧された八雲は何も言えずに押し黙ってしまう。

 

「俺は転生者(お前たち)とは違う……やっていることは変わらんがな」

 

冷静になったのか自嘲気味に返すゴーストライダーの姿に困惑する八雲だが、目の前に来たゴーストライダーから向けられている冷たい視線に何も言葉が出なかった。

 

「お前に言うべき言葉がある。大いなる力には──」

 

「──大いなる責任が伴う、だろ?」

 

よく知ってるよ、と言葉を継いだ八雲だったが、どこかその言葉に鬱陶(うっとう)しさを感じているようだった。

 

「どうせアンタもアメコミ好きだろ?俺だってそうだったさ」

 

諦めと後悔の籠もった八雲の言葉にゴーストライダーは微動だにしない。黙って独白を聞くその姿はどこか懺悔を聞く処刑人のようでもあった。

 

「でも、自分で使ってわかった。こんな力じゃ身を守る以外に何にも出来ない!これ以上、どうしろってんだ!!」

 

情けなく叫ぶ八雲。自らの命を狙っているであろう相手に対して吐露するにはあまりにも惨めな言葉にゴーストライダーは冷たい視線を向ける。

 

「……どんな力にも責任がある。お前は責任を果たさなかった」

 

「じゃあ、無駄でも立ち向かえ、ってことか?」

 

ゴーストライダーの言葉を鼻で笑う八雲は、俺は死ねばよかったのか?、とどこか投げやりに返すが、ゴーストライダーは静かに首を横に振る。

 

「出来ることをする。それが責任だ」

 

冷たく、しかし、真っ直ぐに返したゴーストライダーは八雲の胸倉を掴んで持ち上げる。その言葉とどこか哀れみが含まれているような視線に八雲は観念したように力を抜く。

 

「なぁ、俺はどうすりゃよかったんだ?」

 

「あるべき場所で考えろ……それがお前の責任だ」

 

「ぐうぅ……う、ぁ」

 

ゴーストライダーが贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませると八雲は最後に自らが見逃した犯罪の被害者と悲し気な数多のスパイダーマンたちの姿を見る。そして、その罪に魂を焼かれながら刻印が元の世界へ戻ると、ゴーストライダーはその体を燃やして灰にする。

 

「(此れで終わりか)」

 

(いや、違う)

 

これからが始まりだ、と宣言する一騎。今回は殺したが、転生者を狩る猟犬と言う多くの謎を残したままの存在に新たな戦いの予感を感じながら、戦闘の音の聞いて近づいてくる雄英の教師らしき足音を背にした一騎はトラックへの道のりのメモを残すと、次なる転生者のいる世界へ向けてゲートをくぐるのだった。




●#05について
・首の骨を折る
カイザと言えばこの死に方ということでやらせてみました。一応、選んだ力にふさわしい死に方をさせることも作品のテーマのようなところがあるかもしれませんが、情報を得られなかった一騎からすれば八つ当たり気味な面もあると思います。

・大いなる力には大いなる責任が伴う
誤解されがちなセリフですが、元々はあくまでテーマとして扱われただけの言葉です。それがやがてベンおじさんからピーターに送られた言葉になりましたが、そう考えると本来は、力や権利には責任がある、という意味で人間に対して贈られた言葉だと解釈できると思っています。

●タイトルについて
Badgers of the Same Hole:同じ穴のムジナ
・転生者も猟犬もゴーストライダーも同類である、というテーマなのでこのタイトルにしました
・厳密には違う点もありますが、外の世界からやってきて特別な力を使う脅威である、という点では大差はありません
・ちなみに、Badgersはカタカナ発音だとバジャーズと発音する感じです

●転生者について
飛田八雲(とびた やくも)(15歳/男)
・スパイダーマンの力を特典に選んだ男子高校生で転生前も高校生だった
・蜘蛛の個性として発現、強化装備としてスーツにウェブシューターが仕込まれている
・ベンおじさんとメイおばさんに相当する人物はいるが、本編には登場しない
・ヒーロー科1年A組に所属していおり、合宿の内容は個性を使わない戦闘技術の強化
・雄英祭では轟に負けたが、ギリギリの対応力を評価された
・正しいことをしたくて世界と特典を選んだが、途中(USJ襲撃)で他人のために頑張ることが嫌になった
・ヒロインは梅雨ちゃん
・能力で出来ることが似ているため、瀬呂がいないことになっている
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