次々と放たれる砲弾を切り払いながら突撃するランサーとその後ろで抜けてきた砲弾を払うアヴェンジャー。その動きを見越したライダーは両手の拳銃を連射しつつ後退すると距離を開けて戦う。
「まだまだ、たんまり喰らいな!」
「ランサー!?」
銃撃とともに周囲に展開された大砲から放たれる砲弾。だが、その威力は昨日の比ではなく、切り払いつつ避けるランサーの顔に僅かな焦りが浮かぶ。
「ウチのマスターは払いが良くてね!おかげで景気よくぶっ放せるってもんさ!」
「ぐっ……」
宣言通りに連射を続けるライダーと思うように身動きが取れず、次第に押されているように見えるランサー。全員の視線が両者に注がれる中、一瞬、見守るダイヤたちの横にある木陰が揺れる。
「っ!?──マスター、ダイヤを!」
「え?──」
剣を構えて飛び出るアヴェンジャー、その前には刀で切りかかる黒い軍服の男の姿があった。激突によって周囲に剣圧の衝撃が走る。
「せりゃ!」
「チッ──このっ!」
踏み込もうとする男を無理やり弾き飛ばしたアヴェンジャーは剣を握りなおすと真っ直ぐに男の方を見る。遅れて衝撃から立ち直った広樹もつられてそちらを見ると森から暗い青紫色のサイドテールの少女──
「よく避けましたね、ですが、バーサーカーの前には無力です」
「ナイスよ聖良!」
「もう一組!?ダイヤさんはランサーを!──アヴェンジャー、行けそうか?」
「勿論、と言いたいところですけど……少々、手こずりそうね」
(どうする、
聖良に目を向けつつ注意の逸れそうなダイヤに声をかけた広樹は苦々し気なアヴェンジャーの言葉に内心で切り札の使用を考えるほどに焦っていた。そして、同じく追い詰められたダイヤは切り札を切る。
「鞠莉さん!聞いてください!これ以上、聖杯戦争を続けるとルビィが死んでしまいますわ!!」
「な、何だって!?」
「ライダー、聖良、ウェイト!……どう言うことかしら?」
突然のダイヤの言葉に驚く広樹と一旦、攻撃を止めて問いかける鞠莉と渋々バーサーカーを制止する聖良。そして、一時的に戦闘は止まった。
「ルビィはサーヴァントの魂を集めて聖杯になる、聖杯の器なんですの。戦いが進めばルビィは、死ぬ……だから、私はこの戦いに勝って、ルビィの生存を──」
「ええ、知ってるわ」
「──え?今、何と……」
「私はルビィのこと知っている、って言ったの」
ダイヤの心からの訴えを聞いた鞠莉はなんてことないかのように言い放つ。鞠莉の表情は何時もと変わらず、余裕のある微笑を浮かべていた。
「そん、な……それなら、鞠莉さんもルビィの──」
「いえ、私の願いは根源に至ること、それだけよ──可愛そうだけど、ルビィには犠牲になってもらうしかないわね」
「っ……そう、ですか」
親友の妹を犠牲にする、そんな宣言を他人事のように語る鞠莉にダイヤの絶望は計り知れない。打ちひしがれるダイヤだったが、一つの決意とともに顔を上げる。
「鞠莉さん、いいえ、鞠莉!私はルビィのために全力であなたを倒しますわ!!」
力強く、しかし、泣きそうな声で宣言するダイヤの言葉を鼻で笑う鞠莉は敵を睨みつけるようなダイヤの視線にも動じていなかった。
「あら、これまで手加減しててくれたのかしら?でも残念、あなたのサーヴァントはそうでもないみたいだけど?」
「令呪を以て命ずる、ランサー──
先程の攻防を思い出してあざ笑うような態度の鞠莉に対して右手の令呪を輝かせたダイヤがランサーに命じる。そして。
「承知した。我が身を呪え……『
「っ!?──ライダー!!」
太陽のような圧倒的な輝きを放つランサーによって上空へと投げられる槍、その圧力を危険視した鞠莉は令呪を使ってライダーへと指示を出す。
「ここが命の張りどころってね!アタシの名前を覚えて逝きな!テメロッソ・エル・ドラゴ!太陽を落とした女、ってな!」
ライダー──フランシス・ドレイクの宝具──『
「ワイルドハントの始まりだ!!」
一斉に突撃する亡霊の火船とそれを援護する大量の砲撃、サーヴァントとて当たればひとたまりもない宝具による攻撃。しかし、対するランサーは動じない。
「武器など前座。真の英雄は眼で殺す」
端的に宣言するランサーの右目が大きく見開かれるとその
「チッ、大将!令呪を──」
「頭上注意だ、悪く思え」
ドレイクの言葉が終わるより早く、先程
「ライ、ダー?そんな、嘘でしょ?」
「バーサーカー!令呪を以て命ずる、私と鞠莉を連れて撤収!」
全員が呆然とする中、いち早く気を取り直した聖良の命令でバーサーカーは聖良と鞠莉を抱えると、山の中へと消えていった。そして、あとに残されたのは輝きの収まったランサーと疲労困憊のダイヤに困惑する広樹とアヴェンジャーだった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
「──っと、ダイヤさん、大丈夫ですか!?」
「え、ええ。ハァッ、少し魔力を、ハァッ、使いすぎただけ、ですわ」
「──オレの全力にはまだ遠いが、ご苦労だったマスター」
倒れそうになるダイヤを支えるランサーと困惑から立ち直りダイヤを気遣う広樹。ひとまずの勝利を得た彼らだったが、この戦いがダイヤに齎した心の傷と広樹に与えた影響は大きなものだった。
●#06について
・パワーアップしたライダー
鞠莉のイメージがルヴィア+慎二なので、おそらく鞠莉の魔力を底上げする何かを使ったか、支援のための礼装を使った可能性があります。ただ、今作では自身を奮い立たせようとした鞠莉がダイヤの逆鱗に触れてしまっただけでなく、令呪のタイミングを見誤ったため、本領を発揮する前に倒されてしまいました。要は可能と成功はイコールではないと言う事です。
・バーサーカー組
旧版の投稿当時はすぐに正体がわかったんですが、それっぽいサーヴァントが増えたので、おそらく少しわかりにくくなっていると思います。ただ、撤退に令呪を使用している点がヒントです。ちなみに、諸事情により理亜の出番はないんですが、設定の問題なのでその点は申し訳ないです。
・聖杯の器
旧版では文字数以外にもこのことを象徴させるため、という理由もあってルビィの出番を作らなかったんですが、知人からの指摘もあって新装版では加筆しました。ちなみに、このシーンから転生者が空気なのは彼が本当に困惑していて何もできなかったからです。メタ的に言えば、出番があると邪魔なので黙っていてもらいました。
・ランサーの全力
全身が輝いているのは『
●ルビィについて:立ち位置のイメージは桜や美遊
・母親の胎内の時点で魔術的な処置を施されて生まれた先天的な聖杯の器で本人もそれを知っている
→ダイヤは失敗作だが、その代わりに天才的な魔術の才能を持っている
→そのせいか原典以上にダイヤが過保護だが、姉妹の仲も良くなっている
・原典同様に花丸とは仲がいいが、お互いに魔術師の家系だとは気づいていなかった
・素養は高いが、本格的な魔術の修行をしていないため、逃走や隠密用の魔術礼装か護身用の簡単な攻撃魔術ぐらいしか教えられていない