【新装版】GR:DED   作:雁野 命

38 / 83
Vol.7:Dropping the Sun Part.2
#01


 

朝日を受けて輝く沼津の海を望む山の中、ゲートをくぐってやって来た一騎はこの世界に渦巻く魔力と人ならざるモノの気配に顔を顰めていた。

 

(……度し難い悪行だな)

 

「(聖杯を求める、か……何時の時代も愚者の行いは変わらぬな)」

 

(いや、そちらの方がよほどマシだ……奴らの望みは聖杯ですらないからな)

 

反応を探りながら嘆息をもらすゴーストに対して一騎は呆れたように心の内で吐き捨てる。

 

(それで、場所はわかったか?)

 

「(……妙だ、反応が多過ぎて絞れん)」

 

(原因は魔術回路か令呪か……まったく、儘ならんな)

 

「(此の眼で見れば判る。一騎、奴等を探すぞ)」

 

困惑から立ち直って宣言するゴースト。状況に辟易しつつも頷いた一騎はバイクを呼び出すと眼下に広がる街へ向かうのだった。

 


 

沼津の街は中心部こそ夜でも明るい場所はあるが、路地裏や少し離れた場所では月明りや多少の街灯が辺りを照らすだけの場所もあった。そして、その夜の闇の中を一騎はバイクで走っていた。

 

(反応はあるか?)

 

「(幾つか在るが……此の先で罪の気配だ。此れは──刻印、か?)」

 

(どちらでもいい行くぞ!)

 

アクセルを全開にする一騎がバイクごと炎に包まれるとゴーストライダーへと変身する。そして、その勢いのまま車道を曲がってアーケードを抜けると目の前に広がる超常の霧へと突っ込む。

 

(あれは!?)

 

霧に入ったゴーストライダーの眼には困惑するグレーでウェーブの入った髪のボブカットの少女──渡辺曜の姿とその背後から今まさに襲いかかろうとしているぼろきれを纏った少女の姿があった。迷わず襲撃者へとバイクをぶつけるとそのままの勢いで通りを二つ越えた突き当りでブレーキをかけ空き地へ吹き飛ばす。

 

「(気を付けろ、奴はサーヴァントだ)」

 

(だろうな)

 

「ひどいなぁ、もう……!」

 

「罪人にかける情けはない、例え童女の姿だろうとな」

 

軽く埃を払って立ち上がる少女を厳しく睨みつけるゴーストライダーはヘルバイクを降りて向かい合う。両者の間に不自然な超常の霧が立ち込めるが、罪を捉え魂を感知するゴーストライダーには視界不良や硫酸の霧など大した意味はなかった。

 

「うーん……あんまり効かないのかなぁ?」

 

「無駄だ、それはお前の手の内を晒したに過ぎん」

 

「ふーん、じゃあ、殺しにかかるよ。行くね」

 

微動だにしないゴーストライダーに対してつまらなさそうな態度の少女──ジャック・ザ・リッパーが一瞬で姿を消す。

 

「来るがいい、罪の権化──ジャック・ザ・リッパーよ」

 

「えいっ!」

 

突如、背後から振るわれる心臓を狙った鋭い一撃。意識の外から放たれる神速の刃はゴーストライダーの背中から心臓を貫く。しかし。

 

「あれっ?──いたっ!」

 

「その刃では俺の心臓には届かん」

 

確かにゴーストライダーの心臓の位置を貫いた一撃、だが、それ故に骨と炎で構成されたゴーストライダーは全くの無傷であった。ゴーストライダーはそのまま驚愕するジャックを振り向きざまの裏拳で殴り飛ばすが、ジャックが咄嗟に背後に跳んだためかダメージは薄いようだった。

 

「むぅ~っ……帰っておやつにする……」

 

「!?逃がすか!」

 

自身の不利を悟ったのか即座に撤退するジャックに対して咄嗟にチェーンで捕まえようとするゴーストライダーだったが、そのチェーンは一瞬遅れて空を切る。そして、霧が晴れるとジャックの姿はどこにも見当たらなかった。

 

(追えるか?)

 

「(……無理だな。既に他の反応に掻き消されている)」

 

ゴーストの返答に変身を解いた一騎は、そうか、と短く返すが、妙な違和感に顔を顰める。

 

「(如何したのだ、一騎?)」

 

(ゴースト、俺は今、()と戦った?)

 

記憶がない、少なくとも先程、戦闘があったことは認識している一騎であったが、その相手が何だったのか、全く覚えていなかった。

 

「(成程、情報抹消か……今、記憶を同期させた。此れで良いだろう)」

 

(……そうか、ジャック・ザ・リッパー、厄介な相手だな)

 

復讐の精霊であり、条理の外にあるゴーストには能力が効かなかったのか、残っていた記憶を共有した一騎は脅威の一端を強く感じていた。

 

(記憶は何とかなる、が、あの速さ……策を練る必要があるな)

 

「(然り。だが、朗報だ。刻印の反応を見つけた)」

 

(そうか。なら一度、顔を確認するぞ)

 

考え込む一騎に同意したゴーストから朗報を受けた一騎はもう一度バイクに跨るとゴーストの示す方角へと走り出した。そして、しばらく走った一騎は浦の星学院──の見える場所でバイクを停めて様子を窺っていた。

 

(さて、どうしたものか……)

 

一騎が悩むのも無理はない。ただでさえ、先ほど遭遇した魂喰いを行うジャックへの対策を考えなければならない上に、ようやく見つけた転生者の周囲にも問題があったからである。

 

「(施しの英霊、カルナ……我等との相性は最悪だな)」

 

(太陽の輝きを放つ鎧、そして、竜の魔女……些か骨が折れるな)

 

分析するゴーストの声を聴きながら観察する一騎の目にはダイヤとその傍らに立つカルナ、そして、ジャンヌ・オルタと転生者──松平広樹の姿が映っていた。

 

「(如何やら、同盟を組んだらしいな……小賢しい真似を)」

 

(まったく……儘ならんな)

 

辟易する一騎とゴーストだったが、そんな彼らに気づかず、何事かで盛り上がっている転生者たちがどこかへ去ると静かにその後を追うのだった。

 




●#01について
・奴らの望みは聖杯ですらない
そもそも願いを叶える権利を持つ転生者が願いを叶える儀式をすること自体がおかしいんですが、この転生者の願いの根幹に聖杯戦争そのものが必要なのでやっぱりおかしいんですよね。

・ジャック戦
ジャックの方はゴーストライダーに通用する武器が存在しませんし、ゴーストライダーは罪人特攻を持つので、基本的には逃げるしかないんですよね。さらに、本作では情報抹消に関してもゴーストが対応できるので、原典以上に相性最悪となっています。また、前回で真名が出ているので、Vol.7は真名を隠しません。

・浦の星学院
誤字修正です。旧版ではなぜか星の浦学院になっていたので修正しました。地味にこの手の凡ミスが多いので、校正の仕事の大変さが身に沁みます。

・太陽の輝きを放つ鎧
今作のゴーストライダーは太陽の下では変身できないので、太陽の光を纏うカルナに対しては無力なので相性としては最悪ですし、転生者が同盟を組んだことで戦力的にも面倒なことになっていました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。