【新装版】GR:DED   作:雁野 命

39 / 83
#02

 

翌朝、転生者が黒澤家から学校に向かったことを確認した一騎はジャックの反応を探して、沼津の町をバイクで走っていた。

 

(見つからん、か)

 

「(霊体化されてはな。だが、痕跡は掴んでいる)」

 

昼過ぎまで走り回っていくつかの地点を巡った一騎だったが、サーヴァントの痕跡はあってもマスターの正体までは掴めていなかった。

 

「(此処が最後だ)」

 

(『十千万(とちまん)』……ここは、旅館か?)

 

反応のあったいくつかの地点の最後の一つである旅館──十千万その前を通りがかったところで一騎の中に妙な違和感が生まれる。

 

(……見られている?)

 

「(然り。如何やら、旅館の中だ)」

 

周囲に車通りがないことから、一度、Uターンをすると十千万の駐車場に入ってバイクを停めた。そして、一騎がバイクを降りたところで背後の気配に振り向くと白髪で浅黒い肌の従業員らしき青年が歩いて来た。

 

「あの、何か御用ですか?」

 

「下手な芝居はやめて貰おう、ここに何の用だ?」

 

無害な青年を装う一騎だったが、即座に看破する青年。ため息を吐く一騎に向けられたその鋭い視線は心の奥底まで見通すような歴戦の戦士の目をしていた。

 

「話を聞きに来ただけだ。アーチャー、いや、エミヤと呼ぶべきか?」

 

「……貴様ら、何者、いや、()だ……?」

 

「待て、こちらに敵意はない。俺は外狩一騎、守護者──のような者で、この人魂は相棒だ。ただ、話を聞かせてほしい」

 

小さく両手を上げて敵意がないことを説明する一騎に訝し気な視線を向けていたエミヤは肩の力を抜く。

 

「……そうか、いやなに、こちらも好き好んで戦いたい訳ではないのでね。時間があるのなら、少し寄っていくといい」

 

「(良いのか?)」

 

(どうせ手掛かりもない。それに、話が聞けるならそれに越したことは無いだろう)

 

敵意がないことを納得したエミヤは自らの働く十千万の喫茶スペースへと案内する。先導されるままに着いて行った一騎はお茶を淹れに行ったエミヤを喫茶スペースで待っていた。

 

「待たせたな。さて、ウチは旅館なのでね。緑茶だが構わんか?」

 

「ああ、構わない──それで、この街で行われている聖杯戦争について聞きたい。何か知っているか?」

 

緑茶を受け取った一騎の質問を受けたエミヤは、ふむ、と考え込むと一騎の様子を窺ってから、一度ため息を吐く。

 

「悪いが、受肉した今の私はただの板前でね。生憎と気配は感じるが、君の望むような答えは持ち合わせていないな」

 

「受肉……そうか、前回の参加者だったか。なるほど、道理で異質な気配がするはずだ」

 

「では、先程、君は守護者のような者と名乗ったが、一体、この街で何をするつもりだ?」

 

「アヴェンジャーを倒してこの戦いを終わらせる。それだけだ」

 

「なんだと?どう言うことだ?」

 

訝し気な視線を向けるエミヤに対して正面から見返して答える一騎。二人の間に緊迫した空気が流れるが、その内容とは裏腹に周囲からは世間話をしているようにしか見えなかった。

 

「アヴェンジャー、ジャンヌダルク・オルタとそのマスターは危険だ。奴の願いは世界を歪ませる」

 

「ジャンヌダルク・()()()、だと?サーヴァントを歪めるほどの魔術師……事実なら捨て置けないな」

 

オルタ──通常は召喚されない反転化した英霊を示す一騎の言葉の真意を見極めるエミヤだったが、その言葉に真剣さを感じたエミヤは一度ため息を吐く。

 

「……それで、私に何をさせたい?」

 

「聞きたいことがある。太陽を落とす方法について心当たりはあるか?」

 

「太陽だと?無いことはないが……何をするつもりだ?」

 

「奴の同盟者であるカルナを倒す。オルタは問題ないが、俺は太陽と相性が悪くてな」

 

緑茶を飲んで肩を竦める一騎に少し考え込むエミヤだが、一騎の仕草と裏腹にその目に宿る真剣さに覚悟を決める。

 

「……いいだろう、それはこちらに任せておけ。だが、先にこちらの頼みを一つ聞いてもらえるか?」

 

「ああ、何だ?」

 

「この近くに魂喰いのサーヴァントがいる。そいつを倒してもらいたい」

 

生憎、今の私では手に余るのでね、とどこか申し訳なさそうに言うエミヤだったが、一騎は躊躇なく頷く。

 

「無論だ。俺も無辜の民が傷つくのは本意では無い」

 

では、交渉成立だな、とエミヤが差し出した手を握り返す一騎。そして、今ここに8人目のサーヴァントとマスターですらない部外者同士の同盟が成立した。

 

「ああ、ところで、魂喰いのサーヴァントについては不明だが、マスターらしき人物は分かっている」

 

「それは?」

 

「そこに越して来た──確か、桜内梨子、と言う少女だ」

 




●#02について
・ジャックを探すゴーストライダー
サーヴァントは霊体化することで魔力消費を抑えられますが、発する魔力が少なくなることで追跡が困難になっています。さらに、この世界に渦巻く魔力と転生者の罪の影響で反応が紛れてしまっているため、判別しにくくなっている設定です。

・板前エミヤ
ギャグ要素ではありますが、前回参加者というイレギュラーが必要だったので登場させました。最初はノッブにするつもりだったんですが、ちょっとぐだぐだ色というか帝都感が強くなるのでやめておきました。受肉している理由はマスターが優秀な板前を欲しがったからとかそんな理由だと思います。

・今の私では手に余る
受肉したエミヤではステータスはともかく魔力は生前程度の出力になっているはずなので、まともに戦うのは厳しいはずなんですよね。さらに、相手が情報抹消を持っている時点で不意打ちも厳しいので、ゴーストライダーに任せました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。