「うあぁ~……なんであんな風になっちゃったかなぁ」
思い返しているうちに所用を済ませた有咲は生徒会室を出た辺りで昨晩の自身の失態を強く恥じていた。うっすらと頰を赤らめながらああでもないこうでもないと頭を抱える姿は側から見ればいささか
「──っと、そうだった、そろそろ帰んないと」
何とか気を取り直した有咲はカバンを背負い直しながら昨晩の件で祖母を心配させたことを思い出し、帰途に就くために急いで下駄箱へ向かう。一応、周囲を窺いながら靴を履き直し外へ出ると校門の辺りに目立つ白コートの青年が目に入った。
「……勇牙先輩?」
「おー、遅かったな……って、どうかしたのか?」
「う~ん?いや、なーんか昨日見た感じとちょっと違う気が……?」
こちらを見つけて軽く手を振る姿に安堵と軽い緊張を覚えた有咲だったが、昨晩よりもやけに目立つ白いコートに違和感を感じる。
「それは俺様たちの事情を知っているからだな」
「?どう言うこと?」
「さぁ?」
訳知り顔のザルバの言葉によくわからないと言った表情を浮かべる有咲。ちらりと勇牙を見やるが、彼も心当たりはないようだった。
「魔戒騎士の着る霊獣の毛皮で作られたコートには事情を知らない一般人に対して印象を薄くして目立ちにくくする効果がある。つまり、お嬢ちゃんが俺たちの存在を認識しているから、その効果が効かなくなった、って訳だ。」
「あー、何か昔そんな話を聞いた気がするかも」
「頼むからこれぐらいは覚えておいてくれよ、黄金騎士サマ」
気を付けとくよ、と悪びれる様子のない勇牙は背を預けていた校門から離れると敷地の外へ歩き出す。
「じゃ、送っていくよ」
「へ?あ、あの、いいんですか?」
有咲の返答代わりの質問に対して何が問題かわからないと言いたげな表情で振り向く勇牙とその裏でザルバは呆れたように小さくため息を
「うん?何か問題でもあったか?」
「いや、あの、ホラーを探したりとか、パトロールみたいなのとかで忙しいんじゃないかな~って……」
照れ隠しではなく本当に申し訳なさそうな有咲の姿に、自分が何かしたのかと不安だったのか内容を聞いた勇牙の表情は途端に明るくなった。
「あー、そう言うことか。今のところザルバの探知には引っかかるホラーはいないし、基本的にホラーは夜にしか活動しないから、今の時間なら大丈夫。それに──」
「それに?」
意味ありげに切られた言葉をオウム返しする有咲と彼女に向き直る勇牙。その瞳はまっすぐに有咲を見ており、首を傾げている有咲と目が合った。
「それに、俺は有咲を守るって言っただろ」
「──っ!?ま、またそれですか……でも、わかりました。そんなに言うんならお願いします」
「はい、お願いされました」
昨晩のやり取りの焼き直しのような状態ではあったが、照れながらもなんとか返答を返す有咲は少し早足になりながらも軽い足取りで帰途に就く。そして、それに続く勇牙もその後ろ姿はどこか楽し気であった。
「(……気配も感じ取れぬとは……)」
同時刻、昨晩から勇牙を監視しているゴーストライダーは遠くで有咲と談笑する勇牙に対して呆れ果てていた。だが、それもそのはずである。力を持つ者が人を守るのは当然だが、調子に乗っていて目の前の敵を逃がしてしまったばかりか、自らの倒すべき相手を倒されていることにも気づかずに談笑を続けているからだ。
あまつさえ、気配を隠しているとはいえ、ゴーストライダーの姿どころか気配にも気づかない、となれば彼の言葉通り戦士としては未熟であると言わざるを得なかった。
(いや、奴の出自からすれば当然だろう)
「(
それに答えた彼にのみ聞こえる暗く冷たい声は勇牙たちの監視を続けるゴーストライダーの内から響いていた。当然のように返すゴーストライダーだが、その声は未熟な黄金騎士の姿への哀れみが見て取れるようであった。
(そうだ。偽物は
それに対して冷たく吐き捨てるように返したもう一つの声には勇牙に対する呆れが感じられたが、その奥には勇牙だけでなくここにはいない誰かに対しても抱いている隠し切れない強い憎悪を滲ませているようにも聞こえていた。
「(
(ああ、その通りだ)
静かに告げるゴーストライダーに同意するもう一つの声。そして、勇牙が有咲を送り届けたことを確認したゴーストライダーは宣言の通り次の行動に移るのであった。
●#03解説
・百面相
元々ツッコミ系の有咲は百面相が似合うキャラだとは思いますが、今作では非日常に巻き込まれているため、意図的に表情や感情のふり幅を大きくしています。
・霊獣のコート
魔戒騎士の象徴ですが映像作品ではあまり説明されず、細かい効果は解説本などで説明されているようです。
・ゴーストライダー登場
ここで言っている通り#01でホラーを討滅したのはゴーストライダーです。このシーンはわかりやすさを重視して新装版用に新たに書き下ろしました。