【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#03

 

その日の夕方、ジャックのマスターとされる梨子の通う浦の星学院へと向かった一騎だったが、遠くから観察している限りでは近くにジャックのいる気配は無く、帰宅しても何の動きも無いままだった。

 

(どうだ、反応はあるか?)

 

「(……余程巧く隠れたな。此れでは動くまで見つからんだろう)」

 

(まったく……儘ならんな)

 

「(!?魂喰い、街の方だ……!)」

 

離れた所から監視しつつ辟易する一騎だったが、ゴーストの警告にバイクのアクセルを全開にする。

 

(くそっ、確かにマスターと動く必要はないが……見誤ったか)

 

「(然り。だが、まだ間に合う)」

 

ゴーストライダーへと変身した一騎はヘルバイクで空へと上がると反応のあった場所へ向かう。そこには今まさにジャックに襲われようとしている会社員らしき女性の姿があった。

 

「(一騎!)」

 

(分かっている!)

 

上空から落ちるように駆けつけるゴーストライダーだったが、このままでは間に合わないと見るや、手元のチェーンの一部を飛ばして被害者の心臓に向けられた一撃を間一髪で止める。

 

「あれっ!?──きゃあっ!?」

 

「ふんっ!」

 

「のおっ!?」

 

勢いのままヘルバイクから飛び降りてジャックに殴りかかるゴーストライダーはチェーンでひっかけて被害者を転ばせると、そのまま服にひっかけたチェーンの一部で事態を把握させないまま現場を離れさせる。被害者の対処をしている間に反応速度の関係か思いっきり飛び退いて紙一重で避けたジャックはクルリと着地すると、先ほどまでいた地面は大きく凹み、周囲はひび割れていた。

 

「また、あなたなの?」

 

「そうだ、簡単には逃がさん」

 

相対する両者の間に立ち込める霧。だが、その前にゴーストライダーはヘルファイアを纏ったチェーンをプロペラのように頭上で振り回し、霧を吹き飛ばすことでジャックの動きを牽制した。

 

「むぅ~っ、どうして"わたしたち"の邪魔をするの?」

 

「お前に食われて良い魂などない」

 

「やだよ。まだお腹すいてるんだもん!!──うぅっ!?」

 

チェーンを回すゴーストライダーを無視して被害者を追おうとするジャックだったが、動き出した瞬間に何処からかぶつかって来た燃えるチェーンの一部に動きが止まる。よく見れば戦場を取り囲むように燃えるチェーンの一部が散乱していた。

 

「無駄だ、俺の鎖からは逃れられん」

 

「いやだっ!"わたしたち"はっ……!」

 

「さらばだ、罪の権化よ」

 

ゴーストライダーが振り回したチェーンを叩きつけるが、不意のダメージで動けないジャックは避けられない。勝負は決する──はずだった。

 

「ちょっと待ったぁ!!」

 

「!?」

 

切り払われるチェーンと横合いからかけられる少女の声。驚愕するジャックの目の前にはゴーストライダーとの間に立つ和服にブーツの少女──沖田総司と、少し遅れて近くでポーズを取るダークブルーの姫カットの少女──津島善子の姿があった。

 

「何の用だ?」

 

「あなたが魂喰いのサーヴァントね!私は闇より出でし漆黒の盟主(マスター)、堕天使ヨハネ!!」

 

「マスター、危ないから下がっててくださいよ!」

 

ギラン!、と口で言いながらポーズを決めるヨハネこと善子に毒気を抜かれるゴーストライダーだったが、注意の逸れた一瞬でジャックが逃走していたことに気づき歯噛みすると振り返ってバイクに乗ろうとする。

 

「待ちなさいよ!」

 

「ちょっと、マスター!?」

 

「お前たちに用は無い」

 

善子の声に立ち止まって振り返るゴーストライダーは端的に警告してからバイクに乗ろうとする。

 

「なっ!──この、セイバー、行きなさい!」

 

「速攻でカタを付けます!いざ!」

 

せっかくの名乗りに反応せず、あまつさえ戦おうともしないゴーストライダーに激昂する善子の言葉に答えて切りかかる沖田。踏み込みながら右手での左薙ぎの一撃を放つが、目にもとまらぬ速さの剣戟は振り向きもせずに左手で簡単に防がれる。

 

「っ──かったぁ!何ですかコレ!?」

 

「セイバー!?」

 

「だから言っただろう、用は無い、と」

 

あまりの硬さにバックステップで距離を取るセイバーと驚愕する善子だったが、切られたゴーストライダーはどこか呆れた様子で二人に向き直る。その姿に一歩下がる善子を庇うように沖田が前に立つ。

 

「セイバー、アレを使って!」

 

「承知!『無明三段突き(むみょうさんだんづき)』!!」

 

「っ!?」

 

トン、と軽く踏み出した沖田の平晴眼の構えから()()()()に放たれる三つの平突きがゴーストライダーの喉元を突く。そして、今まで傷つくことの無かったゴーストライダーの首の骨がまさしく剣先の幅と同じ大きさで消滅していた。

 

「通った!?……こふっ!?」

 

「ちょっ──セイバー!?ホントに吐血した!?でも──」

 

「──なるほど。これは確かに、魔剣と呼ぶに相応しいな」

 

「「!?」」

 

戦果を上げたが魔剣の発動による負荷で吐血してしまう沖田とその光景に驚く善子。安堵する二人だったが先程の傷が塞がっているゴーストライダーが悠然と立つ姿に驚愕する。

 

「魂喰いは逃げた、ここに留まる理由は無い」

 

「……だ、そうですけど、マスター、どうしますか?」

 

チェーンをたすき掛けに戻したゴーストライダーは端的に言い放つとその姿に敵意を感じなかったのか、セイバーは背後の善子に指示を仰ぐ。

 

「……悪かったわね、間違えて。でも、そんな疑われる見た目をしている方も悪いのよ!」

 

「マスター、やった私が言うのもアレですけど、結構、無茶苦茶言ってますよ?!」

 

「……気にするな。俺は奴を追う」

 

お前たちは好きにしろ、と言い放つとゴーストライダーはヘルバイクに跨ってジャックの反応を探して夜の街を駆け回るが、結局、その夜は何の手掛かりも見つけることは出来なかった。

 




●#03について
・被害者への対応
旧版ではそこそこ危険な方法で気絶させていたので、比較的安全な形で避難してもらうことにしました。あと、チェーンを細かく分ける技は原典だとダニーが多用していました。

・ヨハネ登場
この時点では聖杯戦争について真面目に考えていないため、堕天使モードが出ています。この時点で花丸と組んでいるはずなので、魂喰いについての情報はそこか果南から得たと思われます。

・『無明三段突き(むみょうさんだんづき)
前回ともどもかなりの戦果を出していますが、如何に物理的防御の高いゴーストライダーでも概念まで昇華された攻撃は防ぎきれないので、当然の結果だと思います。とはいえ、一撃で全体を破壊しないと回復するので、単体ではそれほどの脅威ではないですけどね。
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