夕方、初日と同じように転生者を監視する一騎は校舎の屋上に広がる霧を見てバイクを走らせていた。
(ゴースト、これは……!?)
「(然り。魂喰いだ……だが、此の時間に動くとは……)」
意表を突かれた形となる一騎だったが、勢いよく霧が晴らされたことで学校の手前でブレーキをかける。そして、その一騎の視界数十m先に走って逃げる梨子と一瞬だけ見えたジャックの姿があった。
「(……一騎、罪なき命が、一つ消えた)」
(っ……そうか……俺の失策、か……こうなる前に、マスターを殺しておくべきだったか……!)
内心で悔しさと憎しみに打ち震える一騎だが、それも当然である。罪なき者の死、それは復讐者である彼らの存在理由そのものであったが、被害者を無くすために戦う一騎とゴーストにとっては避けるべき事態の一つでもあったからだ。
「(否、確たる証拠が無いままでは彼奴等と変わらん。今は正しく使命を果たせ)」
(……そう、だな。ああ、そうだ、俺には、俺たちにはそれしかない)
表情には出さないまま自らの行いを悔やむ一騎だったが、ゴーストの鼓舞により持ち直す。そして、そんな彼らの内心を知らないまま、ジャックの影を追うカルナの姿が見えたかと思えば、屋上の方では善子の糾弾する叫び声と剣戟の音が聞こえていた。
「(魂喰いは心臓で追える……今は捨て置け)」
(……なら、もう一つの責任を果たそう)
優先順位を決めた一騎とゴーストの脇で屋上から飛び出した不可知の一団に対して業炎が迸ると、一騎はゴーストの導きでその存在を追うのだった。そして、学校からしばらく離れた所で不可知の一団──花丸の遺体を抱えたロビンフッドと善子を抱えてその手を握っていた沖田が姿を現した。
「放せ!放しなさいよ!!アイツは、私がぁっ!!」
「マスター、気持ちは分かりますが、今は抑えて……」
「あてて……ちったあ大人しくしてくれよ。こっちは背中をあぶられてんだぜ?……悪いな、マスター。これが精一杯だったわ──ところで、アンタは何の用だ?」
三者三様の状態だったが、そこに一台のバイクが近づく。警戒する三人だったが、フルフェイスのメットを脱いだ一騎は敵意がないことを示すために両手を上げていた。
「警戒しなくてもいい。俺は守護者のような者だ、協力のために来た」
「っ──あんた、昨日の?!いや、違う……?」
「いえ、マスター、たぶん、それで合ってますよ」
「あぁ?どう言うことだよ?こっちはマスターの死を悼んでるんだ、手短に済ませてくれ」
直感で一騎の正体に気づく善子と沖田だったが、時間のないロビンフッドに先を促されて一騎は頷く。
「先程の件、記憶がないことも含めて、アサシンのサーヴァント、ジャック・ザ・リッパーと情報抹消のスキルによるものだ」
「ジャック・ザ・リッパー?……なるほど、アサシンならこの傷の説明がつきますね」
「そんな、アイツらじゃ、ない……?」
「……なるほど。んで、オレらにどうしろって?こちとら死にかけなんだぜ、あんまりオレに期待すんなよ」
一騎の説明に納得する三人。続くロビンフッドの言葉に一騎は一瞬だけ言いよどむが、意を決して真っ直ぐロビンフッドの目を見る。
「……簡単な話だ。ロビンフッド、あなたには小原鞠莉と言うマスターと接触してほしい」
「おい、オタク、冗談にしちゃあ笑えないぜ……!」
一騎に食ってかかるロビンフッドは殴り掛からんばかりの勢いで胸倉を掴むが、一騎は動じない。
「冗談ではない。こちらがアサシンを倒すための時間を稼いでほしい。やつらが──アヴェンジャーが勝てば世界は歪む」
「……ったく、どいつもこいつも……オレは不意打ち専門なんだぜ……ハァ、わかったよ」
一騎の言葉に頭を抱えるロビンフッドだったが、不承不承と言った形ではあるが、納得して手を放す。その様子を見た一騎は善子と沖田に目を向ける。
「沖田総司、津島善子、君たちにはアサシンの討伐に力を貸してほしい」
「私はいいんですけど……あなた一人でも大丈夫なんじゃないですか?」
「……花丸の仇が討てるなら私はそれでいいわ」
一騎の提案を肯定する二人だったが、対照的な姿勢に一騎は真実を話す決意を固める。
「それは、俺たちが昨夜の戦いでアサシンを逃がしたからだ」
「っ!?……じゃあ、花丸が死んだのは、私の……」
「っ、マスター、それは違います!あれは……」
「──あれは、俺たち三人の責任だ」
「ちょっ、何を言ってるんですか!?こう言う時はもっと、こう──って、ちょっと!」
一騎の言葉に激しく動揺する善子とどうにか宥めようとする沖田だったが、一騎は敢えて善子の襟を掴んで目を合わせる。
「目を背けるな。これは俺たちの罪だ……!」
「私、たちの?」
錯乱しかけていた善子の目に意志の光が戻り始める。
「そうだ。だから、
「責任……そうだ、私は花丸の命を、願いを背負う!私はこの聖杯戦争を、犠牲を出さずに終わらせる!!」
「マスター……!」
一騎の恫喝じみた激励に奮起した善子の力強い宣言に静かに頷く一騎は襟から手を放すと、沖田を善子にそれぞれ目を向ける。
「まずは、アサシンを倒す。足止めは俺がやる、二人には止めを任せたい」
「セイバー──総司、出来るかしら?」
「昨日のアレですか……そうですね、沖田さん的には問題ないですよ」
「そうか、助かる。このまま追いかけるが、構わないか?」
一騎の提案に頷く二人、そして、作戦は決まった。準備を始める沖田と善子が立ち直った姿を見ながらロビンフッドも花丸の遺体を抱えなおす。
「さてと、んじゃ、オレもそろそろ行くかな……あ、そうだ、おいオタク、守護者、だっけか?」
「外狩だ、どうかしたか?」
「いや、時間稼ぎするのはいいけどよ──」
一度、言葉を切ったロビンフッドは皮肉気だが、どこか強い決意を秘めた笑顔を浮かべる。
「──別に倒しちまっても構わねぇえんだよな?」
●#04について
・被害者を無くすために戦う
ゴーストライダーの意義について明言するシーンですが、旧版では脱字があったので、修正した場面です。この回は特に誤字脱字がひどかったので、メンタル的な意味合いで修正が大変でした
・時間稼ぎの共闘
これがVol.6におけるロビンフッドの行動の理由です。貧乏くじですが、ロビンフッドのキャラ的にはマスターの願いを継ぐために自分を犠牲にする、という姿勢はとても似合うと思いこの形にしました。あと、最後のセリフは個人的な趣味で入れましたが、FGOっぽさが出た気がします。
・背負った死の責任
作中で言及しているように結果論ではありますが、倒せなかった一騎たちの責任ではあるので、このような形にしました。