【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#05

 

夜、花丸の心臓を奪った梨子はそれをジャックに食べさせるべく、追っ手を撒いてから自宅への道を歩いていた。

 

おかあさん(マスター)お腹すいたー」

 

「こーら、もうちょっとでお家に着くから、それまで我慢なさい」

 

はーい、と霊体化したまま会話するジャックと梨子だが、ふと目の前に現れた異形──ゴーストライダーの姿に足を止める。

 

「見つけたぞ、罪人よ」

 

おかあさん(マスター)!こいつが"わたしたち"をいじめたの!」

 

「あら、困った骸骨ね。ジャック、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「うん。殺しちゃおう」

 

ゴーストライダーの姿に警戒して実体化したジャックの言葉に梨子は本能的に危険を察知したのか令呪を輝かせて迎撃を命じる。霧を出して迎撃準備をするジャックだが、またもやゴーストライダーは燃えるチェーンを回して霧を払う。

 

「無駄だ、その霧にもう意味はない」

 

「むぅ~っ、おかあさん(マスター)、どうしよう?!」

 

「大丈夫よ、ジャック。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そっかぁ、さっすが、おかあさん(マスター)!」

 

困惑するジャックだったが、梨子の言葉で二画目の令呪が輝くと手に持ったナイフが鈍く輝き、喜ぶジャックはナイフを構える。

 

「此よりは地獄。"わたしたち"は炎、雨、力──殺戮を此処に……『解体聖母(マリア・ザ・リッパー)』!!」

 

周囲が一瞬、濃密な霧に包まれる。ジャックの宝具『解体聖母(マリア・ザ・リッパー)』はDランクのナイフだが、()()()()()()こと、()()()()こと、()()()()()()()()ことの三つが満たされた時、必殺の武器と化す。今は条件を二つしか満たしていないが、令呪によるブーストで無理やり発動させることでその威力を増していた。

 

「……愚かだな」

 

「!?いたっ!?」

 

必殺とはいかずとも強烈な一撃。だが、その一撃はゴーストライダーに届く前に周囲に散らばる燃えるチェーンの一部がぶつかって来て行動が止まる。そして、動きが止まったジャックに対して他のチェーンの一部が殺到し、ジャックは回避に徹するしかない。

 

「やだやだやだぁっ!やめてってばぁ……!」

 

「ジャック!?逃げ──んぐぅっ!?」

 

「させん……!」

 

さらに令呪を使おうとする梨子だったが、その動きを察したゴーストライダーは炎を消したチェーンで梨子を絡め捕って引き寄せる。

 

おかあさん(マスター)っ!?」

 

「私は責任を果たす!セイバー!!」

 

「お任せを!我が剣にて敵を穿つ……!」

 

驚愕するジャックの前に善子の命令で飛び出た沖田は瞬間的に距離を詰める。

 

「はっ!せいっ!」

 

「いたっ!?……う、うぅっ!?」

 

低い姿勢で踏み込みざまに右下段から斜めに切り上げると、返す刃で浮き上がったジャックの胴体を右胸から左胸へ右薙ぎの一撃、宙に浮いたままのジャックは予想外のダメージに動けない。そして、沖田は振りぬいた形から平晴眼の構えをとる。

 

「セイバー、止めを!」

 

「行きますっ!秘剣、『無明三段突き(むみょうさんだんづき)』!!」

 

善子の号令に応える沖田は『無明三段突き(むみょうさんだんづき)』を放つ。走る剣閃が過たずジャックの心臓を貫き、霊核を確実に消滅させる。

 

「ああっ!?……おかあ、さん……」

 

「むぐぅっ!?……ジ、ジャック!?」

 

霊核を失い、消滅していくジャックは無意識の内に梨子へと手を伸ばすが、その手が届くはずもなく魂喰いのサーヴァント、ジャック・ザ・リッパーはその姿は消滅させた。

 

「マスター、ご友人の仇は、取れましたよ……こふっ!?」

 

「もう、締まらないわねぇ……でも、ありがとう、総司……ねぇ、外狩さん、その人はどうするの?」

 

「お前の贖罪は済んだ。復讐は俺に任せておけ」

 

「そんな、ジャック……私と、広樹の可愛い子供(ジャック)……」

 

ひとまずの決着がついた二人を少し休ませる間にゴーストライダーは呆然とする梨子の襟を掴んで引き上げる。

 

「哀れだな……せめて、その闇を殺してやる」

 

「あ、あぁ……」

 

眼前にゴーストライダーの顔があっても気が付かない梨子に贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませる。その目には今回ジャックが殺した被害者が映り、彼らの痛みと遺族の悲しみに一度、魂を焼かれ、梨子は更生への第一歩を踏み出すのだった。

 

「……死んだの?」

 

「いや、だが、罪は償わせた。次はカルナだ」

 

「外狩一騎、こちらの準備は出来ているぞ」

 

「!?」

 

突如、横合いからかけられた声に目を向けると、そこには十千万から歩いてくる赤い外套を纏ったエミヤの姿があった。

 

「……誰よ、この人?」

 

「……それはこちらのセリフなのだが」

 

「……気にするな、協力者だ。それよりエミヤ、作戦はどうする?」

 

「ああ、それなら問題ない。まずは──」

 


 

その十数分後、戦いの終わったカルナの目の前に善子と羽織に着替えた沖田が姿を現す。その場面を数キロ先からエミヤが眺めていた。

 

「うむ、良い位置だ」

 

既にゴーストライダーは善子の背後のビルに待機しており、あとは沖田が鎧を壊すだけであった。おもむろに弓を構えるエミヤ、その視線は数キロ先の黄金の鎧を確実に捉えていた。

 

「行くか──I am the bone of my sword.」

 

善子の令呪が輝くと沖田の姿が掻き消えるとエミヤは投影によって手の中に現れた矢を弓に番えて引き絞る。それは矢の形をしていたが、矢ではない。

──『炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)』。カルナを殺したその弓が、今エミヤの手によって矢として放たれようとしていた。

 

「──”偽・炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)”!!」

 

カルナの鎧の左胸、心臓に当たる部分の装甲が沖田の『無明三段突き(むみょうさんだんづき)』によって消失する。そして、エミヤの弓から放たれた一射は過たず消失した装甲の下、生身の体に突き刺さり眩いばかりの光が迸った。

 

「さて、私の役目はここまでだ。後は任せたぞ、外狩一騎」

 




●#05について
・令呪を輝かせて迎撃を命じる
旧版からの加筆で本能的に危機を察知したことを示す一文を追加しました。ヤンデレは危機察知能力が高いことは周知の事実ですが、文章だけ見るとわかりにくそうだったので強調してみました。

・ジャックVS沖田
一応、ゴーストライダー単体でも倒せないことはありませんでしたが、周囲に被害を出さないために敏捷に優れた沖田に任せる必要がありました。というのは表向きの理由で、実際は善子が立ち直れるように正しく復讐させるため、という意味合いが強いです。

・太陽を落とす
前回の最後で起こった攻撃はこのように行われましたが、イレギュラーをエミヤにした理由にはこのように原典で止めを刺した宝具でカルナを倒すこのシーンを作るためだったりもします。この際に使用される偽・炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)は弓そのものを矢として放つことで人間でも使用できるようにしています。また、原典に合わせて一部の文体を変えてみました。

●梨子について
・かつて魔術師だった家系に生まれたが、失伝しているため、魔術は使えない
・聖杯戦争自体についても詳しく知らず、アサシンの言うままに殺人を行わせている
→自身を襲撃して来た魔術協会の人間を撃退して聖杯戦争の情報を引き出した
・引っ越し先の家の中にあった魔法陣を起動させてしまい、アサシンを召喚する
→以前から精神的に危うい面があったが、アサシンの精神汚染が影響して妄想と現実の区別がつかなくなっている
・魔術師としての才能はないため、魔力補給の手段として近隣の魔術師や魔術師の家系の人間を狙って魂喰いをさせていた
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