【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#07

 

「このっ!喰らえ!」

 

先手を取ったジャンヌ・オルタは10mほどの距離を一足で詰めると右手に持った剣で右肩から左脇腹へ袈裟懸けに切り付けると左手の旗、その先端の槍で顎を救い上げる。

 

「アハハ!これで──え?」

 

返す刀で胴には旗、腹には剣でそれぞれ右薙ぎの一撃を放つ。だが、振りぬいたジャンヌ・オルタが見た物は無傷のまま立つゴーストライダーの姿だった。

 

「では、こちらの番だ」

 

「くっ……」

 

無造作に振り上げたゴーストライダーの右の拳が放たれる。これまであらゆる敵を打ち破った拳だが、その一撃は地面に突き立てられて旗によって防がれ、ジャンヌ・オルタは地面を削りながら数mほど下がる。

 

「ジャンヌ、やっちまえ!」

 

「ええ、分かってます!──報復の時は来た!これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮──『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』!!」

 

自身の宝具である旗を引き抜いたジャンヌ・オルタは広樹の声に応じてその真名を解放する。宝具『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』、それは自身と周囲の怨念を魔力変換して、相手の不正や汚濁、独善を骨の髄まで燃やし尽くす怨嗟の炎を巻き起こす。その業炎はゴーストライダーを飲み込み焼き尽くす──はずであった。

 

「──お前の憎しみは(ぬる)過ぎる」

 

「そんなっ……」

 

ゴーストライダーを飲み込んだはずの業炎は他ならぬゴーストライダーの手で渦巻きながらその形を定めてゆく。

 

「本物の、復讐の炎を見せてやろう……!」

 

「くうぅっ……私はまだっ……ああっ!?」

 

渦巻く業炎が濃縮された火球となってジャンヌ・オルタへと叩き込まれ爆発を起こす。爆発の煙が収まると、そこには半ばからへし折れた旗と転がった剣、そして、力無く倒れ伏すジャンヌ・オルタの姿があった。

 

「ジャンヌ!?──そんな、馬鹿な……!?」

 

驚愕して駆け出す広樹だが、それより早くゴーストライダーがジャンヌ・オルタを掴んで引き上げる。

 

「さらばだ、歪められた聖女よ。せめて、その業は払ってやる」

 

「やめろおぉぉっ!!」

 

「どうして……私は……」

 

贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込まされたジャンヌ・オルタ。その目にはこの世界で歪められる前の自分の姿が映し出される。自らの行いを悔いたジャンヌ・オルタはアヴェンジャーとしての霊基を焼かれ、残った魂は聖杯へと消えていった。

 

「ジャンヌ?嘘だろ……俺の、ジャンヌが……」

 

「ああ、お前が歪めた──故に、俺が正す」

 

足を止めて愕然とする広樹に対し、冷たく怒りの籠もった言葉を言い放つゴーストライダー。僅かに残ったワイバーンが消滅したことで、周囲で響いていた戦いの音が止んでいた。

 

「お前は許さない!怪物だろうが何だろうが──俺が倒す!!」

 

奮起する広樹は下段に構えた剣を起動させると超人的な身体能力で数mの距離を一気に詰める。

 

「うおおおぉぉぉ!!」

 

ゴーストライダーの手前でもう一歩踏み込んで左脇腹から右肩へ切り上げると振り抜いた剣をその勢いのまま大上段に構える。

 

「まだだっ!聖カトリーヌの剣よっ、俺に力をぉぉっ!!」

 

構えた剣が勢いよく燃え上がる。これが聖カトリーヌの剣が持つ二つ目の機能、ジャンヌ・ダルクの宝具『紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)』と同等の威力の持つ炎の剣を顕現させるものである。

 

「てああぁぁっ!!」

 

宝具級の威力を持つ燃え盛る剣を唐竹割に振り下ろす。鋭い一撃がゴーストライダーの正中線を勢いよく通り抜ける。素人の剣術ではあるが、超人的な膂力で振るわれたその一撃はまともに当たればサーヴァントですら危うい。しかし。

 

「ハァッ、ハァッ……これで、仇を──」

 

「──その炎は祈りだ」

 

「なっ──」

 

驚愕する広樹だが、それも仕方がない。炎が収まって剣が元の姿に戻ると目の前には無傷のゴーストライダーが怒りの籠もった目で見下ろしていたからであった。

 

「お前の祈り(ねがい)は届かない」

 

「この──ぶげぇっ!?」

 

吐き捨てるように宣言したゴーストライダーは右手で無造作に剣の刀身を掴むと、左の拳で顔面にフックを放つ。超人的な身体能力になった広樹だったが、強烈な一撃に踏みとどまるのがやっとであった。

 

「お前は英雄(ヒーロー)には成れない」

 

「え?──ごあっ!?」

 

刀身を掴んだままのゴーストライダーはヘルファイアで刀身を溶かしつくすと、振り抜いた左の拳を右手で包み、広樹の頭へとダブルスレッジハンマーを叩きつける。

 

「お前の人生(つみ)を悔い改めろ」

 

「う……あ……」

 

意識が朦朧としている広樹の首を掴み上げて贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませる。広樹はこの世界に魔術が齎されたことで起きた悲劇とこの聖杯戦争で死んだ者の苦しみと痛みをその魂に受けると、刻印を引き剥がされて体を焼き尽くされるのであった。

 

「──あ、外狩さん!そちらは大丈夫で──こふっ」

 

「ちょっ、総司!?──本当に締まらないわね……」

 

ちょうど使命を果たした一騎が変身を解除したところで一騎の援護に行こうとしていた沖田と善子がやって来た。

 

「こちらは終わった──聖杯戦争の勝者はお前たちだ」

 

「私たちが、勝者……?」

 

「やりましたね、マスター!」

 

一騎から告げられた勝利宣言に困惑する善子と無邪気に喜ぶ沖田。だが、それを眺める一騎の視線には複雑な感情が含まれていた。

 

「……戦いは終わったが、津島善子、お前は聖杯にどんな願いを懸ける?」

 

「私の、願い……」

 

「マスター……」

 

考え込む善子だが、それも無理はない。親友の花丸から受け継いだ”戦いを止める”と言う願いのために戦った彼女には特別な願いは無いからであった。そして、頭をよぎった”親友の蘇生”が願いとして正しいか測りかねていたからでもある。

 

「なら、一つ提案がある」

 

「提案、ですか?」

 

顔を上げた善子の目には真っ直ぐな目で見る一騎の真剣な表情があった。

 

「ああ、世界を元に戻す」

 

「世界を、って、どう言うことですか?」

 

「今からゴーストライダー()の力を使って、一つの可能性──聖杯戦争のない世界の姿を見せる」

 

「ちょ、だから、どう言うことなんですか?!」

 

説明しなさいよ、と少し怒りながら問いを返す善子に対して、ふむ、と一騎は小さく考え込むと自らの目を指さす。

 

「この()を見た者には過去の罪や可能性を見せることが出来る」

 

「魔眼の類ですか?──守護者って言ってましたけど、ホントに何者なんですかね?」

 

困惑しつつ訝しむ沖田に対して、それは重要じゃない、と一騎は疑問を一蹴すると善子へ改めて向き直る。

 

「つまり、聖杯戦争の起こらない、平和な世界を聖杯に願えばいい──出来るか?」

 

「……それなら、花丸も──」

 

「待ってください、マスター」

 

唐突に異議を唱える沖田に、総司?、と訝しむ善子だが、その様子を見る一騎はどこか予想していたようだった。

 

「聖杯にそこまで世界を変える力は無いはずです。それに、まだ()()のサーヴァントの魂しか溜まっていません」

 

「六騎って……!?それじゃ、もしかして──」

 

「いや、それは問題ない」

 

「「!?」」

 

悲し気に持論をぶつける沖田に困惑しつつも言わんとする事を理解する善子だったが、その言葉を予期していた一騎の宣言に二人は驚愕と困惑が入り混じる。

 

「浄化したアヴェンジャーに()()()を付けておいた──おそらく、もう一騎分ぐらいにはなるだろう」

 

「──じゃあ……!」

 

ああ、と頷く一騎の説明に喜ぶ善子と、え?私の決意は……、と複雑な表情の沖田だが、どこか嬉しそうではあった。

 

「それじゃあ、外狩さん、お願いします」

 

「ああ──俺の眼を見ろ」

 

意を決した善子の言葉に顔だけを変身させた一騎は贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませる。そして、その目に映ったのは戦いの無い、梨子や花丸のようなまだ死ぬはずではない死者の出ない、この世界本来の姿だった。

 

「──見えたか?それが、この世界の可能性だ」

 

「……はい。あの、外狩さんはこれからどうするんですか?」

 

「次の使命を果たす。ここでお別れだ」

 

「そう、ですか……あの、外狩さん、ありがとうございました」

 

「私からも、ありがとうございま──こふっ」

 

「総司……ハァ、結局、最後まで締まらなかったわね」

 

感謝を述べる二人だったが大事なところで咳き込む沖田に善子は呆れつつも穏やかな表情を見せる。そんな二人の姿を一騎は眩しそうに見ていた。

 

「さて、聖杯は黒澤家だ。津島善子、沖田総司──達者でな」

 

「はい!外狩さんもお元気で!」

 

「んんっ──そちらもお達者で!」

 

頭を下げて黒澤家へ向かった二人の姿が見えなくなると使命を果たした一騎はゲートをくぐって次なる転生者のいる世界へと向かうのだった。




●#07について
・『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)
原典のゴーストライダーには有効な攻撃だと思いますが、今作におけるゴーストライダーは不正や汚濁、独善といったものを持っているかと問われれば怪しいですし、何よりゴーストライダーに対して炎で攻撃すること自体が失敗だと思います。要するにフレーバーテキストとの相性の悪さが原因だと思ってください。

・宝具としての剣
転生者の剣に隠されたもう一つの機能です。この機能があることから宝具と呼称されていました。とはいえ、通常のサーヴァントならともかくゴーストライダーを相手にするには分が悪かったようです。ちなみに、剣は持ち手だけでも効果はあるため、最後まで身体能力は強化されたままでした。

・世界の再生
これが善子を奮い立たせてまで同行させた大きな理由です。願いを持たない彼女だからこそできるやり方ですが、一騎の言うおまけは一時的にサーヴァント程度まで強化された転生者の魂のことなので、穴を維持するリソースとしては十分だと思います。また、ゴーストライダーがペナンスステアで見せる記憶を選んでいる描写は原典に存在します。

●タイトルについて
Dropping the Sun:太陽の落とし方
・少し意訳が入っていますが、太陽(カルナ)を倒そうとする一騎たちと、転生者がラブライブ!サンシャインの世界を闇に落とした方法、のダブルミーニングです。
・本来の直訳だと「How the Sun Drops」となりますが、口に出した際の語感の関係でこちらをタイトルにしました。

●転生者について
松平広樹(まつひら ひろき)(16歳/男)
・特典としてジャンヌ・オルタを選んだ高校2年生:元男子高校生
→正確にはジャンヌ・オルタをサーヴァントにしてイチャイチャしたい、と言う願いだった
→このジャンヌ・オルタはFGOで自身が育てたデータをもとに構成されている
・現在の能力は高い魔力と魔術礼装「聖カトリーヌの剣」を持つ
→聖カトリーヌの剣は大量の魔力を消費してジャンヌの「紅蓮の聖女」の模倣が可能
→基本機能として身体能力を強化した霊基を被ることでサーヴァントと短時間なら打ち合える
・メインヒロインはジャンヌ・オルタで「どうせならハーレムを作ること」が目的
・梨子とは幼馴染で何年か前に土浦に引っ越して来た

●善子について
・魔術師ではないが、それなりの魔術回路を持つ一般人
・聖痕が出てきたため古本屋にあった謎の本に書いてあった魔術を試したら召喚できてしまった
→聖杯戦争についてはセイバーから直接聞いたが、のちに事実を知った花丸からも説明を受けた
・非日常に飛び込むこと自体が願いのような物だったが、のちに世界を修正する願いを持つ
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