【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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Vol.8:Hazard to the World
#01


怒り、憎しみ、彼が最初に感じたのは人間に対する怨嗟(えんさ)の叫びだった。それから先はひどく曖昧で、自由にならない体が機械を纏った人間たちを容赦なく叩きつぶしていた。

 

(やめてくれ!!)

 

「(凶、殺、怨、痛、恨)」

 

彼の叫びは届くこと無く、留まる所を知らず代わりに体と心を蝕む()()と変身の解けた少年や少女に対して振るわれる圧倒的な暴威は止まる気配がなかった。

 

「やめて!!」

 

(もう、ダメだ……)

 

遠くで叫ぶ少女の声、だが、暴走する力に突き動かされる彼の心は絶望と悪意に飲み込まれ、やがて深い闇に沈んでいくのだった。

 


 

昨夜から転生者を探す一騎は初夏の昼間の駅前、その路地裏に出ていた。周囲を観察した一騎の目には街を行く人々の中に眼鏡のようなデバイス──ザイアスペックをかけた姿がちらほらと見受けられた。

 

(ザイアスペック……?ゼロワンだろうが……ヒューマギアが見当たらんな)

 

「(世界の簡略化、否、単純化、と呼ぶべきか……要素を削ったようだ)」

 

(なるほど、世界の矛盾を減らした訳か……まぁ、奴らにとっては無くても変わらんからな)

 

転生者の特典を仮面ライダーゼロワンと推定した一騎は、目に見える範囲で人型のロボット──ヒューマギアが見当たらないことに違和感を覚えるが、ゴーストの説明で世界の再構成による影響だと納得する。

 

「(だが、刻印の反応が弱い、其れが解せぬな)」

 

(上手く隠したか、弱っているのか……まったく、儘ならんな)

 

「あの、すいません」

 

刻印の反応の弱さに違和感を覚える一騎だったが、ふと、横合いからかけられた声に返事を返すと、そこには黒髪で両サイドの髪をリボンで結んだ眼鏡の少女──朝田詩乃(あさだしの)がチラシの束を抱えて立っていた。

 

「ええと、何か用ですか?」

 

「その、人を探しているんです。この人、見たことありませんか?」

 

一騎の問いに手元のチラシを見せて聞き返す詩乃。そのチラシには大人びた少年が映った写真が載っており、名前の所には飛電空也(ひでんくうや)と書いてあった。他にもいくつか情報は書かれていたが、一騎の知っている人間ではなかった。

 

「(飛電……転生者だな)」

 

(おそらくな……しかし、どう言うことだ?)

 

「あの、どうですか?」

 

「あぁ、すいません。どこかで見たことがある気はするんですが……一体、どんな方なんですか?」

 

押し黙る一騎に焦っているのか、もう一度問いかける詩乃に対して、空也を転生者と見た一騎は情報を引き出すために逆に質問をする。一瞬、気落ちした様子の詩乃だったが、彼女も情報を求めているのか少し考え込む。

 

「そうですね……空也──彼は私の幼馴染で、トラウマを抱えた私を守ってくれたり、克服のために一緒にゲームをやってくれたりして……」

 

「とても良い幼馴染さんだったんですね」

 

「はい、私にはもったいないくらいで……でも、先週の事件の辺りから突然、行方不明になってしまって……」

 

「先週の事件?……あぁ、すいません。何分、昨日、日本に戻ったばかりでよく分からないもので」

 

引き出した情報について質問した一騎を一瞬、訝しむ詩乃だったが、外国に行っていたと聞いて、ああ、それで、と納得した様子を見せる。

 

「……実はここ半年ぐらいレイダーと言う犯罪者が兵器を使って暴れる事件が多発しているんです。それで、レイダーと戦う仮面ライダーと言う存在がいたんですが……」

 

()()、とはどう言うことなんですか?」

 

「その、先週、仮面ライダーが無差別に人を襲い始めて……それ以来、仮面ライダーは一種の災害のようになってしまったんです」

 

(力に吞まれたか……まったく、自分の能力も把握できんとはな)

 

「(然り。故に、此度も刻印が消える前に狩らねばらなぬ)」

 

「なるほど……それで、その事件の辺りでその飛電さんは居なくなった、と……それは心配でしょうね」

 

内心で頭を抱えていることを感じさせない一騎の労わるような態度に、はい、と気落ちした様子で答える詩乃。

 

「あの、それで、何か心当たりは……?」

 

「……いえ、お役に立てなくてすみません」

 

「そう、ですか……いえ、ありがとうございました」

 

(……さて、ここからどうしたものか……)

 

「(余程上手く隠されぬ限り、近くに在れば刻印を見つけることは容易いが──っ!?一騎、罪人の気配だ)」

 

(ああ、分かっている!)

 

申し訳なさそうに返答しつつ思案する一騎の返答にさらに気落ちした詩乃だったが、突如、通りの向こうから爆発音が響き、近くのビルの外壁が壊される。そして、通りの向こう側、爆発音の出所には赤い虎のモチーフをした機械のような人型──フレイミングタイガーレイダーの姿があった。よく見ればその手からは炎を飛ばしたような煙が立ち上っており、目の前には髪の右側の一部分を編み込んだモデルのような女性──小比類巻香蓮(こひるいまきかれん)が立ち竦んでいた。

 

「あれは、レイダー!?」

 

「あれがそうですか……それより警察を!」

 

「(如何する心算だ?)」

 

(決まっている、罪なき者を守る)

 

え、ちょっと!、と驚く詩乃を置いて駆け出す一騎。その足は迷わず通りの向こう、タイガーレイダーへと向かっていた。そして、その直前で足を踏み切る。

 

「はっはっはっー!どうだ、俺の力──ぶげっ!?」

 

「え?」

 

香蓮の驚愕も無理はない。本来、一般人が立ち向かおうとも思わない、直前まで高笑いをしていたレイダーと言う脅威が目の前で一般人(一騎)に蹴り飛ばされていたのだから。

 

「早く逃げて!」

 

「は、はい!?」

 

タイガーレイダーに飛び蹴りを放ち、着地した一騎の言葉に反応した香蓮は直ぐに走り出すと、周囲にいた人々も蜘蛛の子を散らしたように逃げ出した。

 

「いってて……おい、てめぇ、何してくれんだよ?あぁ!?」

 

「吠えるな、三下」

 

「て、てめぇ!?舐めやがってぇ!」

 

(釣れたか……レイダー(この程度)なら生身でもやれるが……)

 

「こっち、こっちです!」

 

「(一騎、此処では目立つぞ)」

 

(だろうな……それに、おそらく()()が来る頃だろう)

 

強者である自らに対して楯突く一騎に怒りを露にするタイガーレイダーだったが、チラリ、と後ろに人がいないことを確認した一騎の挑発にさらに激昂すると右手をかざして炎を撃ちだす。しかし、その動きを予想していた一騎は向かって右側、タイガーレイダーの左に飛び込んで避けると、そのまま先ほど助けた香蓮のいる正面の路地へ走り出す。

 

「あっ!?てめぇ、待ちやがれ」

 

「そこまでだ!」

 

逃げる一騎を追いかけようとするタイガーレイダーだったが、かけられた声に振り向くと特徴的な青い銃──エイムズショットライザーを構えた一人の男を先頭に後ろ横一列に四人ほど並んだ警察の特殊部隊のような集団が目に入った。よく見れば隊長以外の全員がザイアスペックと特殊なベルト──レイドライザーをしているのが見て取れた。

 




●#01について
・暴走する悪意
今回の内容からわかると思いますが、原典でもそれなりに話数のかかった例のアレです。今だとアークライダーを使いそうですが、執筆当時は放送休止直前ぐらいだったため、この形になりました。

・世界の単純化
クロスオーバーの際に必ずしも全てを再現する必要はないとは思いますが、個人的にはなるべく原作の要素をピックアップして読者をうならせたいタイプです。なので、今回はテーマ的な意味合いがあるため、この形でしたが、私の好みではありません。

・フレイミングタイガーレイダー
本編未登場の怪人を使えるのも二次創作ならではですね。類型としてオリジナルフォームもあると思いますが、どちらも原典の設定との兼ね合いを考えないと作者の独りよがりになるので、気を付けたいですね。

・怪人に飛び蹴り
仮面ライダーあるあるだと思いますが、意外とタックルとか物を投げるパターンもありますね。あと、変身前でも使える手持ち武器がある場合はそっちを使うことが多いかもしれません。

・生身でもやれる
ビッグマウスでもなんでもなく一騎の正直な分析です。レイダーはレイドライザーさえ何とかしてしまえば対処できますが、実際にどうなるかはのちのエピソードで描きます。

●この世界について
・ヒューマギアが生まれずザイアスペックが主流の世界:スペックは2025年夏辺りで完成
・飛電インテリジェンスはプログライズキーの製作技術とゼロワンを残して飛電製作所として存続
・AI技術の発展を危険視したゼロワンのデータを盗んだZAIAがレイダーを開発
→支配できないAIの駆逐のためにレイドライザーを作る
→原典におけるSAO参加者の一部がレイダーとして暴れる
→テロリストの開発したレイドライザーを解析したと偽ってバトルレイダーの特殊部隊を作る
・バルカンとヴァルキリーはバトルレイダーのリーダーとして活動している
・暴走したゼロワンを心配する詩乃は一人で捜索を続けている
・SAOAGGOのメンバーもとある事情でゼロワンを探している
・死銃事件は本人がレイダーとして活動したため、事件自体が発生していない
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