「すいませーん、バイク便でーす」
都内にある日本政府の所有するビル──エイムズの施設の存在するこの場所にバイク便に扮して眼鏡をかけた一騎が荷物を抱えて受付に来ていた。
「バイク便、ですか?」
「はい、えーっと、一ノ瀬さんかその上司に直接、届けるように、って言われてるんですけど……」
「今、確認しますね……申し訳ありませんが、一ノ瀬は入院しておりまして、上司の相武も所用で出かけておりますので、お荷物をお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「あー、困ったなぁ……いや、直接じゃないとダメだ、って言われてて……オフィスかどっかで待たせてもらえませんかね?」
いや、流石にそれは、と困惑する受付の女性だったが、なんだかんだと五分近くごねる一騎の態度に辟易したのか、奥のフロアに入らないことを厳命した受付によって一騎は中へと通された。
「(流石、腹芸と口八丁は十八番、だな)」
(黙れ、お前の出来ないことをやっているだけだ)
ゴーストの皮肉にも聞こえる賞賛に素っ気なく返答した一騎はエレベーターが目的の階に到着すると、トイレへと向かい個室に入る。
(まずは着替えだな)
荷物を開けた一騎はツナギを脱いでエイムズの隊服に近い衣装に着替えると、中に入っていた部品を眼鏡に取り付けてスイッチを入れた。その部品には赤外線でカメラに顔を映りにくくする細工が施されており、多少の違和感はあるが、身元を隠す分には申し分ない物であった。
「(では、作戦開始だ)」
トイレを出た一騎は真っ直ぐにライズフォンを使ってロックを解除した非常階段へと入ると、そのまま目的の階まで移動して一際大きな部屋──サーバー室へと向かった。
(残り時間は……何とかなりそうだな)
サーバー室へ入った一騎はその中の一台にライズフォンを接続させると、プログラム通り自動的にハッキングを開始したライズフォンの画面にはダウンロードまでの残り時間が表示されていた。
「(此の時間、もどかしいものだな)」
(ああ、だが、それよりも──)
「(然り、敵だ)」
「ここで何をしている!?──君は……!?」
気配を感じていた一騎はかけられた声に手を上げながら振り向くと仮面ライダーバルカンがショットライザーを構えていた。しかし、銃を向けた相手がつい二時間ほど前にレイダーに立ち向かった青年だったと気づいたバルカンの殺気が少し和らぐのを感じていた。
「(倒すか?)」
(いや、確かめたいことがある)
「ここで何を──」
「──僕はある人のために仮面ライダーを探しています」
「──何だと?」
「そのためにレイダーを見つけたいんです──見逃してもらえませんか?」
「……見つけて、どうするつもりだ?」
「仮面ライダーを解放します」
「……そうか」
仮面に隠されて表情の見えないバルカンの問いかけに真っ直ぐ視線を返して答える一騎。その返答を受けてバルカンはおもむろに銃を降ろすと何処からか取り出したUSBメモリを一騎に投げ渡した。
「これは?」
「ZAIAの所有するレイドライザーの工場の情報だ。レイダーが必要ならこの情報を使え」
「っ!?……そんな物もらっていいんですか?」
「ああ、俺はZAIAのやり方が気に入らないんでな。外にいる君たちでこの情報を役立ててくれ」
ありがとうございます、と頭を下げる一騎に、じゃあな、と言ってバルカンが部屋を出る。残された一騎はダウンロードが完了したライズフォンを回収するとざっと中身を確認した。
「(一騎、確認は出来たか?)」
(ああ、大体わかった、が……嫌な感じだ)
「(如何した?問題でも在ったか?)」
(いや、気にするな、俺の考え過ぎかも知れん……ともかく、ここから出るぞ)
何事かを確認した一騎は嘆息しつつも荷物を回収して非常階段から外へと出ると、そのまま止めておいたバイクに乗って尾行を警戒しながら拠点へと戻るのであった。
●#05について
・相武(あいぶ)
バトルレイダー隊の隊長で仮面ライダーバルカンですが、メインキャラではないので作中ではふりがなを振りませんでした。ちなみに、名前の由来は原典をイメージしてI'mからの連想です。
I'm→アイム→相武
・一騎の十八番
Vol.1から度々見せている一般人への擬態技術と変装です。これは一騎が目立たずに転生者を探すために磨いた技術で基本的には超常的な力を用いない人間が訓練でできる範囲をイメージしています。描写についてはスパイの出てくる映画や海外ドラマなどで比較的考証のしっかりしている作品を参考にしました。
・バルカンの行動
違和感を感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、作者のミスではありません。詳しくはVol.8を最後まで読んでいただければ違和感を払拭できると思いますが、どうしてもミスだと思った場合は作者へのメッセージかツイッターなどで聞いてください。