情報を得てから数時間後、夜の帳の降りて来た道をバイクで走る一騎。ライズフォンにつないだイヤホンマイクでグループ通話をして状況を説明しながら走る一騎は目的地──地図では森に囲まれた廃工場となっている場所へと向かっていた。
『一騎さん、そのエイムズの隊長は信頼してもいいんですか?』
『詩乃さん、その話はさきほどもしましたが、他に情報も無い以上、一騎さんに工場を調べてもらうしかないでしょう』
『でも、一騎さん一人で大丈夫なんですか?いや、わたしが行っても何も出来ないですけど……』
「詩乃さんも香蓮さんも心配してくださってありがとうございます。でも、あくまで内部の写真を撮って現物を確認してくるだけですから……っと、そろそろ着くので、一度、切りますね」
目的地が近づいたため、通話を切った一騎は近くの森でバイクを止めると、周囲を警戒しつつ目的地へと歩き出した。
「(抑々、バトルレイダーでは我らを倒せぬがな)」
(油断の出来る戦いなどない……それに、今回はなおさらだ)
「(然り、だが、少々、警戒し過ぎではないか?)」
(今回は妙な違和感がある……俺の気のせいかもしれんがな──っと、あれが目的地か)
内心でゴーストと相談をしつつ歩く一騎が目的地にたどり着くと、目の前には封鎖されているはずの廃工場から薄っすらと灯りが漏れており、周囲には警備員らしき姿も確認できた。
「(ふむ、悪党の成す事は何時の世も変わらんな)」
(同じ人間だ、どこもそうは変わらんさ……何かに歪められない限りはな)
「(然り、では、歪みを正しに行くぞ)」
(ああ、ここからは俺たちの時間だ)
小さく頷いた一騎は姿勢を低くして静かに走り出すと、そのまま懐から取り出した小石をヘルファイアで強化した指弾を警備員の一人に撃つ。強化された小石は勢いよく胴体に命中すると警備員は気絶した。
「うっ」
(一つ)
「(動く気配は無い……練度は低いようだな)」
(銃やアーマーも無い……あくまで民間の警備会社、と言うことか?──いや、単に油断しているだけ、か)
周囲を警戒しつつ倒れた警備員の装備を調べた一騎は警備の弱さに違和感を覚えるが、懐に入っていたレイドライザーとバトルレイダーのプログライズキーを見て銃刀法に配慮した形だと納得した。尤も、レイドライザーが現行法で裁ける装備かどうかは別の話であるが。
(ともかく、現物の確保は出来たな)
「(残るは写真だ……だが、問題は無いだろう)」
(油断は出来ん……では、中を見るぞ)
持ってきていた道具で警備員を縛り上げて事務所らしき部屋へのドアを開けた一騎の前にはいくつか積まれた木箱が存在していた。その中の一つの蓋を開けてみると中にはレイドライザーが詰められていた。
(物はある……なら、工場は奥の方か)
「(然り、幾つかの気配を感じる)」
(よし、行くぞ)
木箱に詰まったレイドライザーの写真を撮った一騎はこっそりと工場のあるであろう奥へと続く扉を開けると予想通り、数台の生産装置が稼働しており、ライン上にはいくつものレイドライザーが流れていた。その場には何人かの警備員もいたが、隠れて写真を撮る一騎には気づいていなかった。
「(では、
(ああ……だが、本当にこれで来るのか?)
「(今更だろう。怖じ気付いたか?)」
(違和感がある、それだけだ──行くぞ)
小さな言い合いを終えた一騎はゴーストライダーに変身して飛び出すと、強化したチェーンを延ばして生産ラインを叩きつぶした。
「敵襲だ!?」
「野郎っ!──何っ!?」
ゴーストライダーに気づいた一人が叫ぶと五人ほどいた警備員が全員バトルレイダーへと変身する。その中の先走った一人がゴーストライダーを銃撃するが、びくともしていなかった。
「何だあの化け物は!?」
「撃てっ!……撃ち方止め!」
連続して響くトリデンタの発砲音。ゴーストライダーの居た場所が発砲による硝煙の煙で見えなくなったころ警備員のリーダーらしき男の合図で銃撃が止んだ。
「流石に、これだけ撃てば──」
「無駄だ」
「なっ!?」
硝煙の煙が晴れると大量の銃弾を叩き込まれたはずのゴーストライダーは無傷であり、そのまま伸ばしたチェーンで驚愕するバトルレイダーたちをまとめて縛り上げる。
「ぐっ……おい、誰か動けるか!?」
「無理、だっ!」
「少し大人しくしていろ」
「ぐわっ!?」
身動きの取れないバトルレイダーたちに握りこんだ右の拳を叩き込むゴーストライダー。その右ストレートをまともに受けたバトルレイダーたちはまとめて壁へ叩きつけられた。
「ぐっ……くそっ」
「さて、奴が来るまで待たせてもらうか」
倒れたまま動けないバトルレイダーたちを放置したゴーストライダーは、世界の歪みが生み出したレイドライザーを破壊し始める。そして、先ほどの木箱を含めてあらかた破壊しつくしたゴーストライダーはふと違和感に気づく。
(奴の反応はあるか?)
「(否、何処にも無い……此れは、如何言う事だ?)」
(……やはり、早計だったか。こいつらを倒して退くぞ)
「ぐあぁっ!?」
ゴーストライダーが手をかざすとバトルレイダーを縛るチェーンが爆発し、壁ごとまとめて吹き飛ばされたバトルレイダーたちは変身が解除される。しかし。
(帰るぞ──っ!?)
「動くな!エイムズだ!」
空いた穴から外へ出たゴーストライダーを待っていたのは十人近いバトルレイダーを従えて銃を構えたバルカンの姿であった。上空にはヘリが飛んでおり、よく見ればその中にはカメラを抱えた人物の姿も見えた。
「(謀られたか!?──我が気付かぬとは、一体……!?)」
(何やら妙なことになって来たな……)
「お前がゴーストライダーだな?!」
「ならばどうする?」
「決まっている!世界の破壊者ゴーストライダー!貴様を逮捕する!!」
答えたゴーストライダーに対して銃を構えるバルカンとそれに続くバトルレイダー。十対一、本来ならば圧倒的に不利な状況でいつも通り悠然と構えていたゴーストライダーはその心中でこの状況に困惑しつつも一つの結論を出していた。
(決まりだな──こいつは猟犬だ)
「(何?……だが、今も奴に刻印の反応は無い。如何言う事だ?)」
(この世界で俺たちを陥れる動機があるのは猟犬だけだ。ならば、刻印についても何か仕掛けがあるはずだが……今は退くしかない)
「っ!?──撃てっ!」
その場を立ち去るべく歩き出したゴーストライダーに向けてバルカンの合図で一斉に銃弾が放たれる。だが、それを意に介さずに歩き続けたゴーストライダーは工場から少し離れて立ち止まった。
「くそっ!こうなったら──」
「悪いが、捕まるわけにはいかんのでな」
「な──ぬわっ!?」
銃撃が効かないことに業を煮やしたバルカンが必殺技を撃とうとするが、その前にゴーストライダーがおもむろにチェーンを伸ばしてエイムズを薙ぎ払うと呼び寄せたヘルバイクに乗って空へと走り去るのであった。
●#06について
・レイドライザーと法律
原典ではヒューマギアに関する法律はあっても、地の文で言及されているようにレイドライザーの所持自体は法律違反という描写はないはずです。ただ、どんな道具を使っても器物損壊や傷害罪などは成立しますし、兵器として認識されていれば凶器として裁く法律もできるとは思います。
・世界の破壊者
今回の猟犬の発した言葉ですが、あながち間違いと言う訳ではありません。詳しくはのちのエピソードで説明されますが、今作におけるゴーストライダーを表す言葉の一つです。
・猟犬の罠
実際に今作のゴーストライダーを相手にした場合、このように現地の人間の協力を得られない状態に追い込むか、現地人を矢面に立たせることでゴーストライダーが全力を出せない状態を作ることが有効な戦法の一つです。