「(一騎よ、次は如何する?)」
(一度、彼らの元へ戻る……何があるか分からんがな)
工場から脱出した一騎は、報告は明日、と豪志から連絡を受けたため、翌朝、指定された時間になってから拠点のマンションへと向かった。
『どうぞ、鍵は開いてますから、上がってください』
「(鬼が出るか蛇が出るか、と言ったところか)」
(無駄口を叩くな……まぁ、理解は出来るがな)
インターホン越しの豪志の声に違和感を感じ、内心で辟易した一騎が部屋に入り、リビングへ入るとその場にいた詩乃、香蓮、豪志の三人の視線が一騎へと向けられた。おはようございます、と挨拶する一騎に対して、ぎこちない挨拶を返す三人、その視線にはどこか窺うような感情が込められているようだった。
(これは、何かあったな)
「(気を抜くな、一騎)」
「これが、昨日のデータとレイドライザーです」
「……どうも、ありがとうございます」
「いえ、ところで、皆さんは何か僕に聞きたいことがあるんじゃないですか?」
「「「!?」」」
素っ気なく返事をする豪志に対して問いを返す一騎。その言葉に驚く三人だったが、意を決した香蓮が、これを見てください、とスマホの画面に映る動画を見せる。そこには昨日のエイムズと対峙するゴーストライダーの姿が映っていた。
『──世界の破壊者ゴーストライダー!貴様を逮捕する!!』
「……これは」
「昨日のニュースで流れた映像です。こっちは今朝のです」
続いて見せられた映像は昨日の昼間のトリデンタを撃つ一騎の後に爆発して吹き飛ばされるバトルレイダーを合成した一連の映像だった。そして、映像の終わりには一騎がゴーストライダーとして指名手配されている、と言う情報が付随されていた。
「(やはり、謀られていたか)」
(なるほど。これは少々、分が悪いか)
「一騎さん、これ、どう言うことか説明してもらえますか?」
一騎を見つめる三人の視線。だが、その中には疑念だけでなく、一騎を心配するような感情が含まれていることを読み取った一騎は状況を理解して大きくため息を吐いた。
(言い逃れは不可能、か……話すしかないな)
「(……良いだろう。こうなっては仕方あるまい)」
「──わかりました。全て話しましょう」
ゴーストとの会話を終えて、少し長くなりますが、と前置いた一騎に対して三人の真剣なまなざしが注がれる。
「まず、僕はゴーストライダー、転生者から刻印を回収するために外の世界から来ました」
「転生者……?」
「はい、奴らは元々、僕の世界の住人でした。しかし、刻印を使って僕の世界から存在するためのエネルギーを奪って超常の力──特典とそれを自由に使える世界を作った、人の姿をした、ある種の怪物です」
「そんな、同じ人間を怪物だなんて……」
「怪物ですよ。くだらない願いのために自分の世界とそこに住む人々を、死ぬことも出来ない苦しみで満たす。そして、身勝手に歪めた世界をまがい物の力で蹂躙する──そんな存在が本当に人間と言えますか?」
淡々としているが、どこか深い憎しみを感じさせる一騎の語りに三人は言葉を失う。そして、そんな三人の姿を見る一騎の視線には薄っすらと哀れみのようなものが含まれていた。
「現に、この世界は存在するはずのない、仮面ライダーとレイダーによって混乱が引き起こされ、皆さんのように戦いに巻き込まれる人間も少なくはないでしょう」
「ちょ、ちょっと、待ってください!あの、その言い方だと、この世界が、その転生者?に作られた世界みたいに聞こえるんですけど……?」
「ええ、香蓮さんのおっしゃる通りです」
「「「!?」」」
一騎の返答に驚愕する三人。特に、質問したはずの香蓮のショックは大きかったのかその顔は薄っすらと青ざめていた。
「驚くのも無理はありません。ですが、転生者──おそらく、今は飛電空也と名乗る人物によって、僕の世界で作品として語られる世界を元に作られた世界です」
「そんな……彼が、この世界を……?」
「空也が、転生者……?」
「……一騎さん、それって、わたしたちは創作上の実在しない人間、ってこと、ですか?」
三者三様にショックを受けていたが、香蓮の一言に三人の視線が一騎へと集中する。
「いえ、皆さんは創作に近い世界を元にしていますが、れっきとした今を生きる人間です。そして、そんな人々を好き勝手にしていい権利は誰にもありません──それだけは覚えていてください」
「……そう、ですか……ん?あの、刻印が世界を作った、ってことは特典がなくなったらどうなるんですか?」
一騎の言葉に納得した香蓮だったが、ふと思い立った疑問を一騎にぶつける。そして、詩乃と豪志も同じ疑問に行き当たったようであった。
「そうですね……おそらく、世界は緩やかに終わりに向かって行くでしょう」
「そんな!?──それじゃ、わたしたちはどうすれば……?」
「少し待ってください。緩やかに、と言うのはある程度発展しきった世界が衰退して行く、と言う意味です」
「えっと、つまり?」
「この世界なら、長ければ百年程度の猶予はあると思います……もっとも、その間に戦争やそのほかの要因で滅びる可能性もないとは言えませんが」
「……それは、普通の世界と何が違うんですか?」
「そうですね……ある程度の猶予が決まっている、ということ以外は感じにくいでしょうね」
終わりに向かっていく、と言う一騎の言葉に動揺する三人だったが、その猶予と内情に複雑な表情を浮かべていた。
「その、猶予を延ばしたり、滅びを防ぐ手段は無いんですか?」
「基本的にはありません。しかし、科学の発展によっては恒久的な存続の可能性も極僅かですが、あるでしょう」
続く香蓮の質問で判明したわずかな希望に三人の表情には薄い安堵が見えた。
「そうですか……じゃあ、続きをお願いします」
「はい。僕はそんな転生者の力の源である刻印を回収して、僕の世界を
「正しく、終わらせる……?」
一度は納得した香蓮は一騎の言葉に困惑を深める。口には出さないが、詩乃と豪志も同じく困惑しているようだった。
「ええ、僕の世界はエネルギーを奪われた曖昧な状態で終わることも出来ません。そのため、住人は永遠に苦しみ続けるでしょう。だから、僕は刻印を回収して僕の世界を元に戻したいんです」
「あの、元に戻るなら、その世界は終わらないんじゃないですか?」
「いえ、無くなったものは元には戻りません。ですから、僕の世界は一度、生まれなおす必要があるんです」
「そう、だったんですか……」
予想以上の壮大な話ではあったが、一騎の戦う理由に言葉を失う三人。そんな三人に対して一騎は柔らかくほほ笑んだ。
「さて、これで僕の話は終わりです。それじゃ──」
「ちょっと待ったぁ!!」
部屋を出るために一騎が立ち上がろうとしたところで突如、部屋のドアを力強く開けて黒い長髪で小柄な女性──
「話は隣の部屋で聞かせてもらった!転生者狩り、私にも参加させてもらおうじゃないの!」
「ピ──エルザさん!?何言って──いや、まぁ、そうなるよね……」
「いーじゃん別にー。それより、初めまして外狩一騎さん、私の事は──知ってるよね?」
「ええ、神崎エルザさん、ですよね。それで、先程の言葉の意味は?」
いきなり入って来たエルザの発言に頭を抱える三人だったが、そのまま挨拶を済ませたエルザに一騎は確認の問いを返すとエルザは楽しそうに笑った。
「そのままの意味。だって、転生者って怪物を正義の名の下にぶちのめせるんでしょ?そんな楽しそうなこと参加しないともったいないじゃない!」
「──一騎さん、こうなった彼女は止められません。なので、僕も協力しましょう」
「はぁ……この二人だけだと不安なので、わたしもお手伝いします。これも何かの縁、ですからね」
「……皆さん、ありがとう、ございます──詩乃さんはどうしますか?」
言い方は違えども口々に協力を申し出る三人に頭を下げて礼を言う一騎。そして、顔を上げた一騎の視線は押し黙る詩乃へと向けられた。
「私は……空也がどうしてこの世界を作ったのか聞きたい──だから、彼を信じるために協力させてください!」
「……わかりました。それじゃあ、改めて──皆さん、よろしくお願いします。それで、これからの事なんですが──」
自らの言葉で協力を表明した詩乃。全員の覚悟を聞いた一騎はひとまずの状況を整理するところから始めるのだった。
●#07について
・転生者と刻印の関係
一騎の語った通りですが、少し補足を加えると、転生者たちは一騎と同じ世界の人間で刻印の力を使って特典と世界を作り出して維持しています。しかし、彼らの特典と転生先の世界を維持するエネルギーは転生元の世界とそこに生きる人間を永遠に停滞させて絞り出している、ということです。
・転生先の世界
基本的には転生者が選んだ創作の作品世界を元に作られたことになっていますが、元々、存在していない世界のため、世界の核となっている刻印がなくなれば数十年~百年ぐらいでエネルギーが尽きて滅びてしまいます。しかし、その世界の技術の発達によって世界を維持するエネルギーの生成や変換技術が完成すれば更なる存続が可能です。
・世界を正しく終わらせる
刻印を全て回収すると一騎の世界は一度、完全に滅びます。その後、ゼロから再構成されますが、その際に一騎がゴーストライダーのままである場合は再構成される世界から一時的に弾かれることになります。実際にどうなるかはシリーズ全体の完結までお待ちください。
・神崎エルザ登場
例のスポンサーです。正直に言うと出番はここだけですが、書いててめちゃくちゃ楽しい&動かしやすかったので、いつか別作品でメインにしたいですね。