『聞こえますか、一騎さん』
「はい、大丈夫です。無事に着きました」
イヤホンから聞こえる香蓮の声に答えた一騎はゼロワンについて詳しく調べるために飛電製作所の封鎖された研究施設へと来ていた。施設の周囲はフェンスで囲まれていたが、難なく潜り抜けた一騎は監視装置などがない事を確認する。
「こちらは大丈夫そうですが、豪志さんたちの方から何か聞いてますか?」
『ええっと……今は分析待ち、だそうです。詩乃ちゃんも学校がありますからね』
今は二人で頑張りましょう!、と意気込む香蓮に対して、そうですね、と微笑みながら返す一騎。レイドライザーの分析が終わるまでに情報を集めるべく窓の一部を焼き切って内部へと潜入した一騎は、ライズフォンを取り出すと内部の地図を見ながら目当ての部屋へと向かった。
(さて、この部屋のはずだが、どう探すか……)
「(一騎、其処の壁の先は空洞だ)」
(なるほど──見つけた)
『オーソライズ!』
地図と風の音を照らし合わせた一騎はその壁にライズフォンを向けると、電子音声とともに壁が横にスライドして隠し通路が姿を現した。
『一騎さん、見つかりましたか?』
「はい、何とか。でも、幼馴染だけあって詩乃さんの情報は正確ですね」
『そうなんですか?わたしはデータを集める担当なのであまり分からなくて……』
「まぁ、そうですよね──では、これから部屋に入ります」
『わかりました、気を付けてくださいね』
香蓮に報告しつつ隠し通路を進んだ一騎が突き当りの扉の前を開けると、その中には一台の大型の3Dプリンターと制御端末があるだけだった。
(端末、か……さて、何が出る──いや、何を
端末に近づいた一騎がライズフォンのケーブルを繋ぐと内部の資料が閲覧できるようなった。そして、ダウンロードしつつ資料を眺める一騎はその中にゼロワンのシステムに関する資料を見つけた。
(やはりあったか。しかし、こうもこれ見よがしに置かれては、な)
「(一騎、何故、在ると確信した?)」
(直感、いや、簡単な推理だ……認めたくはないが、全て
「(?其れは如何言う──)」
意味だ、とゴーストが問いかけようとしたところで急にライズフォンの呼び出し音が鳴り響く。画面を見ると、香蓮からの着信だったため、一騎は通話ボタンを押す。
「香蓮さんですか?資料を見つけました──ゼロワンのAIに関する記述もあります」
『本当ですか!?──それより、早く戻ってください!』
「?何かあったんですか?」
『エルザさんから連絡があって、豪志さんがレイドライザーを持って出て行った、って!』
「──なるほど。とりあえず、理由は分かるかもしれません」
『どう言うことですか!?』
困惑した様子の香蓮だったが、端末で資料を確認していた一騎はゼロワンが作られた目的を知ったことで豪志の行動の理由に見当がついていた。
「
『暴走するAI、ですか?……それと、どんな関係が?』
「はい、どうやらAI──ザイアスペックやそれに類するデバイスを持つ人間がレイドライザーを使うことが彼の現れる条件だったようです」
『!?今、調べてみますね……これは、確かに、その可能性は高そうです!──ってことは!?』
「つまり、専門家からそのこと聞いた豪志さんは、エルザさんが気づく前に自分が囮になるつもりだと思います」
まぁ、あくまで僕の想像ですが、と一騎が結論付けたところで、隠し通路の入り口近くから爆発音が鳴り響いた。
『今の音は!?』
「エイムズでしょう。ここは何とかするので、香蓮さんは豪志さんの居場所を見つけてください」
『は、はい、わかりました。一騎さん、上手く逃げてくださいね!』
「はい、なんとかやってみます……さて、こちらも急ぐとするか」
通話が切れたタイミングでバトルレイダーが雪崩れ込んで来る足音を聞いた一騎は状況を打破するべく動き出すのだった。
(これは……マズいですね)
人気のない港に鳴り響く銃声と爆発音、倉庫に吹き飛ばされたバトルレイダー─―豪志は内心で焦っていた。それは、立ち上がった豪志の目の前には推論が合っていたことを示すようにゼロワンの姿があったからである。
「ですが、ただ倒れる訳にはっ!」
『ハード!』
「……」
銃撃で足止めをしつつ距離を取った豪志は焼け石に水と知りつつも足を止めて必殺技の準備をする。そんな豪志の内心を知ってか知らずかクラスターセルで銃撃を防いだゼロワンは感情を感じさせない動きで豪志の方を見ていた。
「さぁ、来い!」
「……」
距離を取りつつ睨み合う豪志とゼロワン。じりじりと下がりつつゼロワンの動きを窺う豪志に対してゆらり、とゼロワンの体が動くとクラスターセルが小さなバッタの形となって豪志に襲い掛かる。
「っ──そこっ!」
『インベイディングボラスト!』
ゼロワンのクラスターセルを見た豪志は横っ飛びしつつカウンターで必殺技を放つ。銃口から放たれたエネルギーは無防備なゼロワンへと突き刺さる──はずだった。
「なっ──」
着地しつつ驚愕する豪志だが、それも無理はない。インベイディングボラストはバッタの群れの一部が盾となって防ぎ、残りのバッタが豪志に殺到したからである。
「ぐあぁっ!」
転がりつつも赤いエネルギーバリアで防ごうとした豪志だったが、そのまま勢いよく反対側の入り口まで吹き飛ばされて変身が解除されてしまう。
「ぐぅ……流石に、限界ですかね……」
「……」
倒れて動けない豪志に対して悠然と近づくゼロワン。あとは死を待つばかりだった豪志の耳にバイクの爆音が響く。そして。
「どうやら、間に合ってもらえた、みたいですね……」
飛び込んできたバイクが燃え上がりつつ変身、ゼロワンの直前でブレーキをすると、前輪を軸にして後輪を持ち上げるターン──所謂ジャックナイフターンと呼ばれるテクニックである。そして、その途中で持ち上がったヘルバイクの後輪で勢いよくゼロワンを倉庫の奥へと弾き飛ばした。
●#08について
・封鎖された飛電製作所
社長である転生者=ゼロワンが暴走したため、捜査の手が入り、一騎が来た時点では封鎖されていました。原典の町工場とは違い、AIに対抗するための研究施設としての側面が強く、製作所が併設された研究所のようになっています。
・端末と3Dプリンター
原典ではドライバーや各種装備を作るために使われていたアレです。しかし、この世界では元々、転生者がメタルクラスタまでのプログライズキーと装備を持っている状態から始まったため、戦いが始まってから使われることはなかった可能性があります。
・掌の上だったようだ
答え合わせについては次回で行われますが、これまでのシーンだけでも推理は可能なはずなので、読み返して推理してみるのも面白いかもしれません。
・囮になる豪志
ビビりな彼には珍しい行動のように見えますが、<エルザが死ぬなら自分も死ぬけど、出来れば死にたくない>というタイプなので、ゴーストライダーという保険もありますし、これぐらいの行動はするんじゃないかと思い、この形にしました。
・ジャックナイフターン
拙作においてたまに出る細かすぎて伝わりにくい動きの一つですが、個人的には仮面ライダークウガとか海外の映画でやってるイメージがあって使いました。分かりにくい方はネットで検索していただくか、動画サイトでバイクスタント系の動画をご覧になっていただくと私が採用した理由がわかると思います。