「まったく……大した度胸、いや、献身と呼ぶべきか」
「ええ、彼女を愛してますから」
ヘルバイクから降りたゴーストライダーは呆れたような態度で倒れた豪志に目を向ける。倒れつつ力強い返事を返す豪志に対してゴーストライダーは小さくため息を吐いた。
「──まぁいい。下がれるようなら下がれ。ここは戦場になる」
「そう、ですね……僕も死にたくはないので、下がらせてもらいます」
ゴーストライダーに引かれて立ち上がった豪志が倉庫の外へふらふらと歩いて行く姿を横目で見送ったゴーストライダーは、倉庫の奥──吹き飛ばされて立ち上がったゼロワンを見据える。
「来い、哀れな人形よ──いや、既にこの言葉すら届かんか」
「……」
憐れむようなゴーストライダーの言葉にも無反応なゼロワンは防衛本能──基本ルーチンに従ってクラスターセルのバッタの群れをゴーストライダーに向けて解き放つ。そして、殺到するバッタの群れにゴーストライダーが飲み込まれた。
「無駄だ、意思無き力に俺は倒せん」
地獄の底から響くようなゴーストライダーの声が群れの中から聞こえると、突如、群れが燃え上がり、全てのバッタが融解しただけでなく形を失った飛電メタルが蒸発していた。
「では、こちらの番だ」
「……」
宣言とともに走り出すゴーストライダーが左手でチェーンを伸ばすと、それを受け止めたクラスターセルの盾が大きく後ろに押し出される。勢いよく迫るゴーストライダーに脅威を感じたのか感情が無いはずのゼロワンは焦ったように残りのクラスターセルをかき集めてアーマーを再構成する。しかし。
「遅い」
再構成の隙をついて巻きついたチェーンがゼロワンの体を宙に浮かせ、ゴーストライダーの元へと引き寄せるが、ゼロワンは拳を振りかぶって交差する瞬間のゴーストライダーの顔面に叩きつける。
「言っただろう、意思無き力では倒せん、と」
叩き込まれるはずだったゼロワンの拳は右手の指弾で逸らされていた。そして、そのまま体を捻ってガラ空きのゼロワンの胴体を右の拳で打ち上げると、天井に当たる直前でチェーンを操って無防備なゼロワンを目の前の地面に叩きつけた。受け身の取れないゼロワンはダメージの蓄積が許容値を超えたのか立ち上がることもなくそのまま地面に倒れ伏す。
「──ゲホッ、ゴホッ」
「まだ生きていたか。だが、それもこれまでだ」
変身が解除されて倒れ伏す少年──飛電空也は咳き込んでいるが、蓄積した疲労とダメージでまったく動けず、悠然と近づくゴーストライダーにも気づかないようだった。
「自らの浅慮を悔いるがいい──っ!?」
空也を掴んで顔の近くまで持ち上げたゴーストライダーは
「(一騎、刻印を奪われた!)」
「何だと……!?」
「油断大敵だぜ?ゴーストライダーさんよ」
ゴーストライダーが銃撃と声の方向を見ると、そこにはゴーストライダーにショットライザーを向けるバルカン、アサルトウルフの姿があった。
「猟犬が狼を使うか」
「ハッ、そうやって油断してると足元掬われるぜ?」
「ああ、お前がな」
「何言って──うおっ!?」
ゴーストライダーの言葉に油断なく返したはずのバルカンだったが、背後のヘルバイクから飛んできた短いチェーンに足を引っかけられて態勢を崩したところにゴーストライダーの伸ばしたチェーンが叩きつけられる。
「逃がさん」
「ぐ、この──おあぁっ!?」
立ち上がろうとするバルカンだったが、伸ばしたチェーンと足元のチェーンが繋がって絡め捕られる。そして、そのまま天井近くまで持ち上げられたバルカンは先程のゼロワンのように思い切り地面に叩きつけられた。
「ぐ、う、流石はゴースト──」
「黙れ」
「──ぐあぁっ!」
何とか耐えていたバルカンが立ち上がって喋り出そうとするが、その前にゴーストライダーはヘルファイアでチェーンをバルカンごと爆発させた。
「もう終わりか?猟犬──いや、朝田詩乃」
「(一騎、其れは如何言うことだ!?)」
「へぇ、知ってたのか?」
驚愕するゴーストだが、それも無理はない。ゴーストライダー──一騎の問いかけた先、晴れた煙の中にはその言葉通りショットライザーを構えた詩乃の姿があったからである。
「違和感は最初からあったが、確信したのは製作所だ」
「ありゃ?演技は完ぺきだったと思ったんだがなぁ」
「演技は問題ない。だが、
わざとらしいオーバーリアクションを取る詩乃──猟犬に対して指摘とともにゴーストライダーが放り投げたのは詩乃が渡したライズフォンだった。
「なるほど、そりゃそうか。ま、刻印は頂いたから何でもいいけどな」
「逃がすと思うか?」
「ハッ、逃げると思うか?」
『ランペイジバレット!』
猟犬を睨みつけて問いかけるゴーストライダーに対して、猟犬はショットライザーを撃ちつつポケットからランペイジガトリングプログライズキーを取り出した。そして、右手の指先だけでマガジンを回してから、手首のスナップで展開すると左手に持っていたショットライザーに装填する。
「何だと……!?」
「驚くのは早いぜ!」
『オールライズ!』
「変身!」
『フルショットライズ!』
人間の握力を超えた行動に驚愕するゴーストライダーを置いて、放たれた弾丸を受けた猟犬は仮面ライダーランペイジバルカンへと変身を遂げた。
「ほぅ、なかなか良いパワーじゃないか?」
「(一騎、奴から先程の刻印の力を感じるぞ!)」
「なるほど、奪った刻印を武器にしたか……!」
「ま、そういうことだ。んじゃ、とっとと死にな!」
『スピード!ランペイジ!』
ゴーストライダーの指摘をあっさりと肯定したランペイジバルカンは即座にプログライズキーのマガジンを二回回すと引き金を引いた。
「まずはコイツだ!」
「ぬ──」
ショットライザーから蜂の針を模したエネルギー弾が一斉に発射され、撃ち込まれたゴーストライダーは足を止める。
「まだまだぁ!」
「ぐ、う」
続いてショットライザーをベルトに戻し、チーターの力で高速移動したランペイジバルカンが連続でキックを叩き込むとその勢いでゴーストライダーは一瞬怯んだ。
「ここだあっ!」
『ランペイジスピードブラスト!』
止めとばかりにファルコンの翼で飛び上がったランペイジバルカンは頭上からキックを叩き込む──ランペイジスピードブラストと呼ばれる一連の必殺技がゴーストライダーに炸裂した──はずだった。
「軽いな」
「ま、そりゃ、そうなる──があっ!?」
頭上からのキックを左手で受け止めたゴーストライダーはそのままランペイジバルカンを地面に叩きつける。
「この──ぐえっ!」
ゴーストライダーの腕を振り解こうとするランペイジバルカンだったが、次の動作に移る前に再度、地面に叩きつけられその行動は防がれる。
「俺の邪魔ばっか──ごあっ!」
今度はプログライズキーを触ろうとするが、全身をヘルファイアに包まれつつ地面に叩きつけられたことで、流石のランペイジバルカンも動きが止まった。
「この、いい、加減に──」
「これで終わりだ」
「ぐおあぁっ!」
抗議の声を上げるランペイジバルカンだったが、その言葉を言い終える前に手首のスナップで体を放り上げられると、無防備な胴体へとゴーストライダーの右ストレートが突き刺さって弾き飛ばされた。そして、6mほど先の地面でバウンドして転がるとその先の倉庫の壁に叩きつけられて変身が解除された。
「……終わったか」
「(然り。だが、妙だ。刻印の反応が消えた)」
(消えた?どう言う事だ……!?)
ゴーストライダーの呟きに答えたゴーストの言葉に驚愕しつつも倒れた詩乃に近づくゴーストライダー。だが、大きな外傷もなく倒れる詩乃からは刻印の反応はなかった。
(猟犬だったことは確かなはずだ……)
「(然り、戦いの中では確かに刻印の反応は在った)」
(……
困惑するゴーストライダーたちだったが、気絶する詩乃の目を開かせてその魂と記憶を
(これは……刻印も奪われたか)
「(然り、残滓は追えるが……完敗、だな)」
(ああ……だが、次はない)
自身の失策を痛感した一騎はゴーストとともに難敵を殺す決意を固めるとゲートをくぐり、次なる世界へと向かうのであった。
●#09について
・刻印の回収
ゴーストライダーと猟犬では刻印の回収方法が少し違いますが、基本的には相手の魂を奪う=相手を殺すことで刻印を回収することができます。しかし、魂と結びついていない刻印はそのままでは元の世界に戻ろうとするため、猟犬は回収した刻印は即座に引き渡す必要がありますが、いくつかの例外が存在します。
・猟犬の正体=朝田詩乃
初見で気づいた方はおめでとうございます。一応、推理ができるようにそれなりに伏線をばらまいてみたりしたんですが、意外と香蓮の出番が多かったため、惑わされる方もいらっしゃったかもしれません。ちなみに、バルカンの中身は#05から入れ替わっていますが、気づかれない理由はのちのエピソードで明かされます。
・刻印の武器化
本来、猟犬たちの武装は最初に選んだ特典とそれに類するものしか与えられませんが、一部の猟犬は刻印を通じて元の世界からエネルギーを引き出して特典を作り出すことができます。ただし、一つの刻印では作れる特典に限界があるため、回収した刻印をくすねてより強い力を得ようとする猟犬もいます。
・猟犬の謎
今回のエピソードでは他人から奪ったバルカンと強化フォームを使っていましたが、本人の特典は不明ですし、どうやって逃げたのかはここでは説明しません。詳しくはのちのエピソードで説明しますが、一応、知識の多い方や勘の良い方は思いつきそうなので、推理してみるのも面白いんじゃないかと思います。
●タイトルについて
Hazard to the World:世界にとっての災害
・多少は意訳が入っていますが、これは読んで字のごとく世界の脅威となっている転生者とゴーストライダー、猟犬のトリプルミーニングです。
・この日本語を直訳する場合は普通なら「Disaster」か「Calamity」を使うところをあえてこの言葉を選んでいる意味がありますが、気になる方はVol.10まで待っていただくか旧版の#10をご覧いただければわかると思います。
●転生者について
飛電空也(ひでん くうや)(16歳/男)
・ゼロワンに変身してレイダーと戦う高校1年生で転生前は男子中学生
・ヒロインは朝田詩乃(シノン)。幼馴染で事件に遭遇したころから守っている
・GGOではシノンと一緒にプレイすることが多いが、ピトフーイやエム、レンとも遊ぶ
・キリトたち原作キャラがレイダーとして襲ってきたことで苦戦
→起死回生としてメタルクラスタホッパーを使うが、ブレードがないため暴走
→全員を倒すが、勢いあまって殺しかけたことで絶望
→変身したまま彷徨う災害として恐れられている
・2025年6月に詩乃とGGOを始める
・HNのナイトの由来:ナイト=ない+夜+守る者←空はない、也は夜の変名だが、シノンを守る者という意味を持たせていた