【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#02

「さぁ、アンタの能力を見せてもらおうか!」

 

「御託はいい、とっとと来い三下」

 

「──ッ!?吠え面かくなよ、野良犬がっ!」

 

一騎の更なる挑発に激昂した八幡は一足で距離を詰めると、右手の弧月を一騎の首めがけて片手で真一文字に右薙ぎの一撃を放つ。超人的な身体能力を持つトリオン体から放たれた一撃は常人では捉えることすら難しく、ましてやマスタークラスと呼ばれる達人にも近い使い手である八幡の0.5秒にも満たない速度で振るわれる剣戟を避けるのは不可能──なはずだった。

 

「動きが単調だ」

 

「な──ぬあっ!?」

 

突如、衝撃を感じて転ぶ八幡だが、驚くのも無理はない。必殺の一撃は弧月を持った手を掴んだ一騎がそのまま勢いを使って投げ倒すとそのまま倒れた八幡を取り押さえつつ弧月を取り上げていたからだ。

 

「くそっ!アステ──」

 

「遅い」

 

押さえつけられた八幡は比較的自由な左手にトリオンキューブを発生させ、通常弾──アステロイドで反撃しようとするが、冷たい目で見下ろす一騎は取り上げた弧月で左腕を切断すると、驚いた八幡が制御を誤って弾丸はあらぬ方向へと飛んで行った。

 

「このっ!放せ!!」

 

「放せ、と言われて放す奴がいるか?」

 

「いい加減に降りろ!ハウンド!」

 

切断面からトリオンを漏出させながら喚く八幡に対し呆れを隠しもしない一騎だったが、その姿に激昂した八幡は自身の頭上にトリオンキューブを生成し追尾弾──ハウンドを発射する。

 

「……愚か者め」

 

眼前に迫ったハウンドを無視する一騎は冷たく吐き捨てると押さえていた八幡の右腕を切断すると全力で胴体を蹴り飛ばす。屋内に蹴り飛ばされた八幡はそのまま階段を転げ落ちて踊り場で止まったが、自動で追尾するハウンドの動きは止まらず、そのまま胴体にハウンドが直撃した一騎は地面に倒れこむ。

 

「う、おおおっ、っと──愚か者はどっちだ!このバカめ!」

 

「……無知とは恐ろしいものだな」

 

「──は?」

 

両足の力だけで立ち上がりつつ勝利を確信した八幡だったが、目の前の光景に思考が停止していた。それも当然だ。なぜなら、トリオン体を容易に貫通するはずの弾丸を受けたはずの一騎が無傷のまま階段の上から見下ろしていたからだ。

 

「ど、どうして生きている!?」

 

「ボーダーの弾丸は人体を破壊できないようになっている。まぁ、痛みは感じるがな」

 

「そ、そんな……」

 

「これは返してやる。だが、痛みでは俺を止められんぞ?」

 

「──くっ……!?」

 

奪った弧月を放り投げた一騎から向けられた侮蔑の籠もった視線と試すような言葉を受けた八幡は目の前の敵の意図が分からずに混乱するばかりだった。

 

「逃げてもかまわんが、その時はどこまでも追いかけて貴様を殺す。死にたくなければ全力で足掻け」

 

「──っ!?……分かったよ。それじゃ、俺の本物を見せてやる──トリガー解除(オフ)!」

 

「……いいだろう、見せろ、()()()本物を」

 

「散れ、千本桜!」

 

挑発を受けた八幡は一度トリガーを解除すると、懐から取り出した刀身の無い鍔の付いた日本刀の柄──(ブラック)トリガー、千本桜(せんぼんざくら)を起動する。見た目には先ほどと同じトリオン体に換装しただけだが、その右手には先程の柄にトリオンで形成された金属の刀身が備わった日本刀──千本桜が握られていた。

 

「さぁ、これが俺の()()だ!!」

 

「……そうか、なら、()()本物を見せてやろう」

 

一騎の挑発を()()したまま得意気な表情で刀を見せる八幡に対して冷めた視線を向ける一騎が静かに宣言すると体が炎に包まれてゴーストライダーへと変身した。

 

「っ!?なるほど、()()がアンタの本物か」

 

「……今のお前に本物は掴めない」

 

「何言ってるかわかんねー、よっ!」

 

悠然と見下ろすゴーストライダーに対して刀を向けた八幡は刀身を桜の花びらのように細かく分解させて殺到させる。そして、あらゆる物を切り裂くトリオンの刃で作られた桜吹雪がゴーストライダーを飲み込んだ。

 

「ハッ、口ほどにも──」

 

「愚かな。手応えも掴めんとは」

 

「──え?」

 

余裕の表情を見せていた八幡であったが、桜吹雪に飲み込まれて切り刻まれたはずのゴーストライダーの声が響いたかと思えば、突如、立ち上った炎で桜吹雪が吹き飛ばされたことで姿を現した無傷のゴーストライダーを見て言葉を失った。

 

「これでは話にならんな」

 

「くそっ、それなら──卍!解!」

 

悠然と降り始めるゴーストライダーに対して狼狽える八幡だったが、一度、言葉を切って息を吸うと刀身を再形成した千本桜にさらにトリオンを注ぎ込んで刃先を下に向けて落とすと、周囲の地面から──視界に入らないものも含めて千本もの巨大な刀身が姿を現す──千本桜景義(せんぼんざくらかげよし)が完成した。

 

「千本桜景義!!──さぁ、これでアンタもお終いだ!」

 

「この距離でそれを使うか……やはり、愚かだな」

 

「負け惜しみにはまだ早いぜ?ま、すぐに終わらせてやるけどなぁ!」

 

呆れたような態度のゴーストライダーに対して威勢よく吠えた八幡は下の階や外の屋上から分解させた刀身を操り、大量の桜吹雪で再びゴーストライダーを包み込む。

 

吭景(ごうけい)・千本桜景義、こいつで──」

 

「無駄だ」

 

ゴーストライダーを包み込んだ桜吹雪が爆発とともに吹き飛ばされるとやはり、無傷のままのゴーストライダーが姿を現す。先ほどの再現のように見えるが、八幡は余裕の表情を浮かべていた。

 

「だろうな──だが、コイツはどうかな!」

 

八幡は桜吹雪が吹き飛ばされることを想定していたのか、自身の周囲に残りの桜吹雪を集めて桜の翼にしており、吹き飛ばされたはずの残りも八幡の右手に集まって剣の形になった。

 

「……」

 

終景(しゅうけい)白帝剣(はくていけん)!どうした、驚いて声も出ないか?」

 

「……もはや、お前と語る舌は持たん、それだけだ」

 

「ハッ、その減らず口、利けなくしてやるよ!」

 

自慢気に技をひけらかす八幡に対して冷めた口調で突き放すゴーストライダー。その態度を虚勢と受け取った八幡は桜の剣を大上段で構えて桜の翼で飛ぶと勢いの乗った全力の唐竹割りをゴーストライダーへと叩き込んだ。運動エネルギーと大量のトリオンを使った全力の一撃はその余波で床に入った亀裂は屋上の中ほどまで伸びていた。

 

「──フッ、この技を使ったのはお前が初めてだったぜ」

 

「そうか、これまで余程楽な戦いをしていたようだな」

 

「え?──ぐえっ!?」

 

油断していた八幡はゴーストライダーの言葉を認識した瞬間に殴り飛ばされていた。そして、そのまま真っ直ぐ壁に叩きつけられた八幡のトリオン体が限界を超えて崩壊する。トリガーが解除された八幡が地面に落ちながら見た物は無傷のまま右の拳を突き出したゴーストライダーの姿だった。

 

「そんな……俺の全力の一撃が……」

 

「お前に()()を見せてやる」

 

「あ……あぁ……」

 

精神的なショックとなれない痛みで動けない八幡に対して悠然と近づいたゴーストライダーはその首を掴んで持ち上げると贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませる。そして、己の罪を突き付けられた八幡がその魂ごと体を焼き尽くされると、刻印──の欠片が零れ落ちて元の世界へと戻って行った。

 

「……刻印が分割されている?──っ!?これは!?」

 

違和感を覚えたゴーストライダーだったが、その言葉にゴーストが答えるよりも早く、目の前の世界が崩れ落ち、その体はそのまま()()()()()()()へと落ちて行くのだった。

 




●#02について
・トリガー構成
メイン:弧月、シールド、旋空、アステロイド
サブ:アステロイド、ハウンド、シールド、フリー(バッグワームかグラスホッパー)

・通常トリガーでの戦闘
初期版ではトリガーについて完全に誤解している場面だったので、現在の形に変更しました。ただし、旧版はなるべく本編を変えないまま修正したかったため、こちらとは違う形に修正しています。気になる方は旧版の#09をご覧ください。

・ボーダーの弾丸
ボーダー製の射撃トリガーは一般人を傷付けないために人体を殺傷できないようになっています。ただし、当たるとめちゃくちゃ痛いらしいですが、一騎は鍛えた肉体と意思の力で頑張って耐えました。

・挑発を誤解
強調されている部分をご覧になるとわかると思いますが、一騎は自分の全てを出せ、と言っているのに対して転生者は自分ではない誰かの本物を見せる、と誤解しています。

・千本桜景義
お分かりの方もいらっしゃるかもしれませんが、この卍解の技は基本的に接近戦での使用には複雑な操作が必要なため、力を過信した転生者の戦術的ミスです。一応、別の技を使うか外に出て距離を取ったまま戦えば一矢報いることができたかもしれません。

・分割された刻印
下層にある世界ともども今回のメインとなるギミックです。詳細はのちのエピソードで説明されます。
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