【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#03

 

早朝、開店前のラビットハウスに二つの人影があった。一つはカウンターでグラスを拭く大人の雰囲気を漂わせた男性──香風(かふう)タカヒロであり、カウンターの向こうのもう一つの人影へと視線を向けていた。

 

「今朝はずいぶん早いが……何かあったのかい?」

 

「……いえ、何も」

 

気遣うように問いかけるタカヒロに対して少し言いよどむもう一つの人影。申し訳なさそうに答えるその姿にタカヒロは小さくため息を吐く。

 

「そうか……ところで、頼まれていた物が届いているよ」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ、これだ」

 

タカヒロの言葉に喜色を浮かべるもう一つの人影。表情の変化に小さく苦笑するタカヒロがカウンターの下から取り出した紙袋が二人の間に置かれると、もう一つの人影が間髪入れずに紙袋を手に取った。

 

「これがあれば……」

 

「浮かれるのはいいが、あまり皆を心配させない方がいい」

 

「はい……でも、これで皆を救えます!」

 

大事そうに紙袋を抱えて喜ぶ人影にタカヒロは労わるような視線を向けるが、一転して申し訳なさそうな表情になる。

 

「君にこんな事を任せてしまって済まない……だが、この世界を頼む、()()()

 

「はい!私が必ず、ゴーストライダーを倒して皆を守ります!」

 

タカヒロの言葉に力強く返事を返した人影──リゼはその手に持つ紙袋へ一度、視線を向けると強い覚悟を胸に店を出るのであった。

 


 

「うわあっ!?」

 

「っ──させるか!」

 

「ぐげっ!」

 

怯える男性に向かって飛びかかるバットロイミュードを飛び蹴りで迎撃した一騎は着地と同時に周囲を見渡すと、助けた男性と同じように何人かの一般人とともに数体の怪人に取り囲まれていた。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「良いから下がっていろ!」

 

「は、はい!」

 

男性が大人しく後ろに回った姿を横目で見る一騎は即座に立ち上がってバットロイミュードへと構えを取るが、宿の前から公園まで二時間ほど戦い続けているその表情は険しいものであった。

 

(流石に分が悪いな……)

 

「(然り。だが、罪無き者を見捨てる訳には行かん)」

 

(それは分かっている……さて、どうしたものか)

 

「──危ないっ!」

 

「ふっ!」

 

バットロイミュードと向き合う一騎の死角から迫るライオトルーパーの姿に後ろからの警告が飛ぶが、それより早く反応した一騎は軽いサイドステップで振り下ろされたアクセレイガンを避けるとその手を掴んで捻り上げる。

 

「ぐっ!」

 

「こいつは借りていくぞ」

 

「ぐ、ううっ!がああっ!?」

 

力任せに振り解こうとするライオトルーパーだったが、アクセレイガンを取り上げた一騎に二度、三度と切り付けられて怯んだところを蹴り飛ばされるとそのまま倒れて変身が解除され気絶した男が姿を現す。

 

「うわああっ!?」

 

(次は……!)

 

ライオトルーパーを倒した一騎は息を吐く暇も無く後ろから聞こえた悲鳴に顔を向ける。その視線の先には腰を抜かした男性の前で右の拳を振り上げるクラッシングバッファローレイダーの姿があった。

 

「どけっ!」

 

「ぐおっ!?」

 

「っ……赤い服の男、この人を頼む!」

 

姿を見る前に駆け出していた一騎が飛び蹴りを放つが、体重の重いバッファローレイダーは一瞬体勢を崩すと一騎の方へと体を向けるが、声をかけられた男性だけでなく周囲の人間は誰も動けそうになかった。

 

(……だろうな)

 

「ぐおおっ!!」

 

「あ、危ないっ!」

 

雄たけびのような声を上げて一騎へと吶喊するバッファローレイダーの姿に誰かが声を上げる。背部ブースターの爆発的な推進力の乗った蹄型の打突武器バッファブロウによる常人では捉えることすら困難な一撃は生身の人間が受ければひとたまりもない──はずであった。

 

「お?──おおぉぉぉっ……!!」

 

「へ?」

 

誰かが間抜けな声を上げるが、それも無理はない。無傷のまま立つ一騎とその背後の地面に叩きつけられてから弾き飛ばされるバッファローレイダーも姿があったからである。常人には見えなかったが、交差する瞬間、振り下ろされる拳をアクセレイガンで滑らせて逸らした一騎はそのままの勢いを利用してバッファローレイダーを地面に叩き付ける。その結果が先ほどの光景であった。

 

(……アクセレイガン(これ)はもう使えんな)

 

「(残りは六体……此れならば──一騎!)」

 

「っ──伏せろっ!」

 

壊れたアクセレイガンを投げた一騎は呆けていた少年を狙うアイススマッシュに気づくと警告とともに駆け出した。

 

「え?うわっ!?」

 

自分の事だと思わなかったのか気付かないままの少年を地面に押し倒すと飛んでくる氷柱を防ぐために鎖を巻いた左手を突き出す。だが、飛んでくるはずの氷柱は連続して放たれた銃弾によって全て撃ち落とされていた。

 

「っ──あれは……!」

 

「見ろ!仮面ライダーだ!!」

 

上空に現れた一つの影、現れた仮面ライダースナイプの姿に危機に陥っていた人々は歓喜の声を上げていた。そんな人々と感情は違えど同じように空を見上げる怪人たちだったが、その中の一人、アイススマッシュが走りこんできた一騎によって蹴り飛ばされたことで怪人による包囲が崩れる。

 

「こっちだ、走れ!」

 

「は、はいっ!」

 

「ぐおおっ!!」

 

「させるか!」

 

一騎の言葉に我に返った人々は包囲の穴からそれぞれ走って逃げる。追いすがろうとする怪人たちであったが、スナイプの銃撃と一騎の妨害で足止めを受けたことで人々を取り逃がしていた。

 

(さて、少しはマシになったか)

 

「(では、反撃の時間だ)」

 

なおも銃撃を続けるスナイプを横目に起き上がったアイススマッシュに対して一騎は左手のチェーンを少し伸ばして構えていると、スナイプが近くにやってくる。

 

「お前、逃げなかったのか?」

 

「逃げる?罪人(こいつら)を倒すのが俺の仕事だ」

 

「仕事、か……まあいい、そいつは任せた!」

 

「言われずとも……!」

 

飛び立ったスナイプが怪人たちへ向かって行くと同時に目の前のアイススマッシュへと一騎が駆け出す。そして、どちらの戦いも一方的な展開で勝利を収めるのだった。

 




●#03について
・スナイプの正体
読者には先行して開示されるパターンです。ちなみに、このシーンのキモはこのやり取り自体ですが、その理由はのちのエピソードで明かされます。

・生身の一騎VS怪人
一騎の戦闘スタイルはフィクションを含めた合気道や古武術の動画などを参考に構成されています。そのため、どこかで見たことのある動きもあるかもしれませんが、武術として理想的な動きは似通ってしまう、と言う事でご容赦ください。

・描かれない雑魚戦
当時はテンポの関係で描写しませんでしたが、今回も追加しても蛇足感が強くなりそうだったので、特に加筆はしませんでした。と言うか、特に苦戦しないならわざわざ生身の戦闘を描写してもあんまり意味がないんですよね。
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