【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#05

 

「どうして、ここに……?」

 

「待て、こいつはお前の知っている香風タカヒロではない──いや、この世界の人間ですらない」

 

静かに佇むタカヒロに問いかけようとするリゼだったが、その動きを制止した一騎は庇うように一歩前に出る。

 

「ご明察だよ外狩一騎──いや、ゴーストライダーと言った方がいいかな?」

 

「!?タカヒロさんじゃないなら、お前は誰だ?」

 

「ふむ、そうだな──()()ならわかるんじゃないか?」

 

「女の人の声に変わった!?」

 

芝居がかった動きで喋るタカヒロの姿をした男は自らの声を女性──別の世界の住人である朝田詩乃のものへと変化させた。

 

「……やはり、あの時の猟犬だったか」

 

「正解!まあ、流石に露骨過ぎたか」

 

睨みつけるような一騎の視線と驚愕と混乱の籠もったリゼの視線に猟犬は、やれやれ、と言った風に肩を竦めるとその姿まで詩乃のものへと変化させた。

 

「……俺の前に姿を現した、と言うことは死ぬ覚悟が出来たようだな」

 

「まあまあ、そう慌てるなって。アンタも満足に変身できないんじゃ、俺の特典が気になるだろ?」

 

「……」

 

「だんまりかよ?まあ、俺は今、気分がいいんで勝手に喋らせてもらうけどな」

 

押し黙る一騎に対して一方的に喋る猟犬の姿は本来ならどこか滑稽に見えるはずだが、猟犬から発せられる目に見えない威圧感のようなものがその異様さを際立たせているようだった。

 

「まず、俺がどうやって生き延びたか教えてやろう。俺の特典はエボルト、ま、要は他人に寄生して対象を暗殺、ってだけの地味な能力なんだが……前回はそのおかげで詩乃を盾にして逃げ延びた、って訳だ」

 

「そんな……それじゃ、タカヒロさんは一体……?」

 

「なあに、タカヒロなら今もラビットハウス(おウチ)でぐっすり眠ってるよ……んじゃ、次はどうして俺がこの姿をしているか、って話だ。興味あるだろ?」

 

「……」

 

リゼの質問に答えつつも自分勝手に話を進める猟犬。その振る舞いは自身の特典であるエボルトにどこか重なっているようであった。

 

「やれやれ……まあ、俺があの世界を出た時点でお前たちに追われているのは気づいてたからな。積層世界で上手いこと時間を稼いでもらっている間にこの世界で色々と仕込ませてもらったのさ」

 

「あれは罠だったか」

 

「その通り!ま、あくまでオマケだったが、上手く使えそうだったんでこの世界でも転生者(エサ)を使って増やした怪人(コマ)を足止めに使わせてもらったぜ?」

 

「!?それじゃ、あの怪人はお前が!?」

 

「いちいち驚くなよリゼ?まあ、ただの人間には無理な話か……ともかく、タカヒロの体を間借りした俺はお前たちを戦わせている間に一芝居打たせてもらったってことだ」

 

()()()のためにな、と嬉しそうに言う猟犬は懐から特徴的なハンドルの付いたベルト──エボルドライバーを取り出して二人に見せびらかすようにチラつかせた。

 

「……なるほど。完全体になるために他の猟犬を呼んだか」

 

「またまた正解!ゴーストライダーに10ポイント!」

 

「共食いとは……畜生にも劣る行いだな」

 

「おいおい、お前だって似たようなもんじゃないか?」

 

「似たような、もの……?」

 

「……」

 

いっそ仰々しささえ感じさせる仕草の猟犬の返答に困惑するリゼと押し黙る一騎。その二人の姿を見た猟犬は皮肉気な笑みを浮かべていた。

 

「世界を正しく終わらせるため、なんて綺麗事を言ってるが、結局、ゴーストライダーの(その)力で世界を終わらせるんじゃ、猟犬(俺たち)転生者(あいつら)と何が違うんだ?えぇ?ゴーストライダーさんよぉ?」

 

「──知ったことか」

 

「は?」

 

「……え?」

 

芝居がかった口調で投げかけられた質問に対してする一騎の返答に思わず声を出すリゼと問いかけたまま固まる猟犬。吐き捨てるように出された一騎の返答だったがそれには続きがあった。

 

「俺は復讐のために戦っている。そこには大義も理想も無い。ただ、転生者(お前たち)を殺す、それが俺の戦いだ」

 

「……フ、ハハハハハ!これだから人間は面白い!お前は自分が悪だと認めるのか?!」

 

「そんな……!?」

 

一方的な一騎の返答に腹を抱えて楽しそうに笑う猟犬と対照的にリゼは絶望した様子を見せるが、違うな、と一騎は猟犬の言葉を一蹴する。

 

「俺は一人じゃない。ゴーストライダー(俺たち)は力無き者のために──次の被害者を出さないために罪人を殺す、それがゴーストライダー(俺たち)の戦いだ」

 

「外狩さん……!」

 

力強く宣言した一騎にリゼの瞳に希望が戻るが、今度は猟犬がつまらなさそうな表情を浮かべていた。

 

「ハッ!言ってくれるじゃないか?ま、復讐で戦ってるのはお前さんだけじゃないけどな」

 

「何だと……?」

 

SAOの(あの)世界でお前に負けて俺のプライドはズタズタになった……ま、それを取り戻すためにこれだけの苦労をしてまで完全体になった、ってことさ」

 

これで条件は五分、って訳だ、と猟犬はヘラヘラとした笑みを浮かべるが、それに対する一騎は怒りと決意の籠もった眼差しを猟犬に向けると真っ直ぐに指を差した。

 

「黙れ、お前はここで殺す」

 

「そう言うと思ってたぜ!」

 

『コブラ!ライダーシステム!レボリューション!』

 

一騎の視線と言葉を受けた猟犬は嬉しそうに凶暴な笑みを浮かべると両手に一つずつ持った小さなボトル──エボルボトルをエボルドライバーにセットすると右手でレバーを握って回転させる。

 

「変身」

 

猟犬の宣言とともにその体を黒い立方体が包み込んで暗黒空間に飲み込まれて一瞬姿が消える。その直後に猟犬居た地点を中心に周囲に小型の黒い立方体を飛び散らせながら白を基調としたアーマーを装着した破壊の化身──仮面ライダーエボル、ブラックホールフォームがその姿を現した。

 

「さぁ、かかって来い!──ま、変身できないお前には何も出来ないだろうけどなぁ!」

 

「……」

 

「さて、後はこの世界ごとお前を倒せば俺の勝ちだ──チャオ」

 

「させるか!」

 

生身のままの一騎に対して挑発するエボルはブラックホールを作り出そうとするが、その動きに気付いたリゼは咄嗟にゲーマドライバーの機能を使って三人をゲームエリアの採石場へと転送させるとスナイプレベル2へと変身して銃撃でエボルの行動を妨害した。

 

「おおっと!?何だ、リゼか……いいだろう、望み通りお前から消してや──」

 

「詰めが甘いのはその力のせいか?」

 

「──ぐおっ!?」

 

一瞬、スナイプへと視線を向けたエボルは攻撃のために右手をかざした姿勢のまま伸びて来たチェーンによって地面へと叩き伏せられる。そして、そのチェーンの始点にはゴーストライダーへと変身した一騎の姿があった。

 

「天々座理世、いい判断だ。あとは俺に任せろ」

 

「一騎さん!」

 

「バカな!?何故、太陽の下で変身している!」

 

「気が付かなかったか?仮想空間には本物の太陽は昇らない。偽りの太陽では俺たちを止めることは出来ない」

 

これで条件は五分、と言う訳だ、と冷たく言い放つゴーストライダーに対してエボルは憎らし気な視線を向けながら立ち上がる。

 

「クッ、だが、この世界が俺とお前の全力に耐えきれるかな?」

 

「無理だろうな。だが──」

 

「な──ぐおっ!?」

 

不敵に笑うエボルの言葉を肯定したゴーストライダーが一度、言葉を切って飛び上がると、その背後から来たヘルバイクに跨ってそのままエボルへとぶつかった。

 

「一騎さん!?」

 

「──お前の好きにはさせん」

 

「ぐ、この──」

 

エボルを先端に引っ掛けたまま進むバイクはその眼前に開いたゲートに飲み込まれる。そして、ゲートが閉じた後には呆然とするスナイプと炎の轍が残されているだけであった。

 




●#05について
・猟犬の正体
今回のメインとなるギミックであり、Vol.8から続く一連の謎の真実が語られました。ちなみに、この転生者はエボルト本人ではありませんが、近づき過ぎてしまっているため、演じている訳ではなく無意識にそれらしい言動をしてしまう状態になっています。

・猟犬が今回したこと
<この世界の転生者を殺してその刻印を分割した><刻印で作った怪人への変身アイテムをばら撒き、同じく刻印で作った装備でリゼを仮面ライダーに仕立て上げた><事件の裏でこの世界におびき寄せた別の猟犬を殺して奪った刻印で完全体になった>

・一騎の理論
この世界観の転生者たちは一騎の行動の如何によらず、存在するだけで今なお犠牲者を苦しめ続けているだけでなく、改変した世界で新たな犠牲者を生み出し続けます。そんな身勝手な怪物を殺し、新たな被害者を生まない、自分と誰かのための復讐であることが私欲のためだけに戦う猟犬と一騎の違いです。

・仮想空間には本物の太陽は昇らない
これが一騎が対策を使用しなかった理由です。要するにゲームエリア内は仮想空間のため、そこにある光は自然物ではなくライトのような人工の光で再現されたもの、と言う解釈です。これはゲームエリアがドライバー内の装置で生成された特殊空間である、と言う公式の記述からしても間違いではない、と思います。
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