#01
(夕方か……悪くはないな)
「(然り。だが、気を抜くな、一騎)」
(ああ、分かっている)
ゲートを潜り抜けた一騎は日の沈み始めた、冬の夕方の街はずれに出ていた。辺りを見回して警戒する一騎だが、降り立ったのは何かの倉庫の跡地のようで狙い通り周囲に人気は無く、状況を見極めるにはうってつけであった。
(特に目立つものはないが……何か見えるか?)
「(否、此方も反応が多過ぎて絞り切れん)」
(まあ、そうなるか……となると
肉眼では内包された世界を確認できる特徴が見当たらないことから、超感覚を持つゴーストに聞く一騎だったが、その返事も芳しくはなく小さくため息を吐いた。
「(然り。だが、多少、手間は省けたようだぞ)」
「……さて、いつまで隠れているつもりだ?」
「ほう、良く気が付いたな」
押し黙っているようにしか見えない一騎が呼びかけると、返事とともにその周囲を腐った目をしたまったく同じ容姿の十人の少年──比企谷八幡たちが取り囲んだ。
「(成程。
「……また、お前たちか」
「また、とは何だ!」
「今の俺たちは初対面だぞ!」
「まあ、基本は変わらないけどな!」
げんなりした様子の一騎だったが、それに気付く様子もなく口々に文句を言う八幡たち。だが、彼らの持つ刻印の欠片は紛れもなく本物であり、その事実が一騎により強い疲労感を感じさせているのであった。
「……御託はいい、さっさと来い」
「いいだろう──」
「「「「「「「「「「デュアッ!」」」」」」」」」」」
辟易する一騎の言葉に一人の八幡が前に出て懐から取り出した眼鏡をかけると、それに合わせて他の八幡たちも眼鏡をかけつつ全員で声を掛け声を出す。すると、まばゆい光が全員を包み、光がおさまるとセブンスーツを纏った戦術部隊がその姿を現した。
「……まったく、進歩の無い奴らだ」
「行くぞ、ゴーストライダー!」
「そこまでだ!」
「(……む?)」
「ッ!?誰だ!?」
スペシウムソードを構えて臨戦態勢を取るセブンたちに呆れた様子の一騎。どこかちぐはぐな空気の中、突如、横合いからかけられた威圧感のある声にその場の注目が集まると、そこには燃える骸骨──ゴーストライダーの姿があった。
「貴様はゴーストライダー!くそっ、合流する前に倒す作戦が台無しじゃないか!」
「外狩一騎、ここは俺に任せて逃げろ!」
「(まさか!?我等以外のゴーストライダーだと!?)」
(どうやらそうらしいが……まったく、儘ならんな)
様子を窺う一騎に対して声をかけたゴーストライダーがセブンたちと一進一退の戦いを繰り広げるが、その戦いを見た一騎は小さくため息を吐くと目の前の戦場へと歩き始める。
「何やってる!戦えないなら早く逃げろ!」
「わざわざ殺されに来たか!なら、望み通り殺してやる!!」
チェーンで足止めをしつつ二体ほど倒したゴーストライダーだが、その脇を抜けて飛び出したセブンの一人が強化された超人的な身体能力でスペシウムソードを振るう。生身の人間を殺すには十分すぎる威力を持つ一撃は無防備に歩く一騎を真っ二つに切断する──はずだった。
「な──ぬあっ!?」
「言っただろう、進歩がない、と」
突如、衝撃を感じて転んだセブン。スペシウムソードを持った手を掴んだ一騎がそのまま勢いを使ってセブンを地面に投げ倒すと、そのまま取り押さえつつスペシウムソードを取り上げていた。一連の流れは見る者が見ればかつての積層世界で別の八幡との戦いの焼き直しのようであった。
「このっ!離せ!!」
「まずは一つ」
「がっ……」
関節を押さえられているため、想像以上に力が伝わらず体をよじるのがやっとのセブンに対して冷たく言い放った一騎が手に持ったスペシウムソードでバイザーの比較的脆い目の部分を貫くと小さく悲鳴を上げたセブンは絶命し、その姿が霧散した。
「なるほど、死体は消えるのか」
「そんな、一瞬で……!?」
「これが、ゴーストライダーの実力、か……」
「さて、次はどいつだ?」
「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」
戦慄するセブンたちと驚嘆するゴーストライダーに対し、スペシウムソードを手放した一騎がゆっくりと冷たい視線を向けると、味方と思われるゴーストライダーですらたじろいだ。
「う、うわあぁぁぁっ!!」
「遅い」
恐慌に陥ったセブンの一人が向かってくる一騎に対してスローイングナイフを投げつけるが、あっさりとチェーンで絡め捕った一騎はそのままヘルファイアを纏わせたスローイングナイフを投げ返す。
「ひっ──」
「二つ」
「ぐえっ」
恐怖と混乱で動けなくなったセブンの影をなぞって飛ぶ燃え盛るスローイングナイフがバイザーを貫くと二人目のセブンも倒れ伏して消えた。
「く、くそっ、怯むな!」
「おっと、俺を忘れてもらっては困るな!」
「ぐあっ!!」
「うげっ!!」
何とか持ち直した一人を筆頭に一騎と戦おうとする残りのセブンたちだったが、その動きを制するようにゴーストライダーが手近な二人を殴り倒しつつ、もう一人へと立ちはだかった。
「三つ……少しはマシな動きになったか」
「(然り。だが、此の程度では実力は測れぬ)」
「ぐああっ!!」
ゴーストライダーの動きに評価を下す一騎はそちらに気を取られたセブンの一人に近づくと、その体で日陰を作りスーツ越しにヘルファイアで肉体を焼き尽くす。
「こ、このままじゃ……」
「これで終わりだ!」
「「「がああっ!!」」」
残った三人が後ずさりして固まったところをチェーンでまとめたゴーストライダーがそのまま三人をヘルファイアで焼き尽くして戦いはひとまず終わりを告げた。しかし、ゴーストライダーを見る一騎の視線は鋭いままだった。
「さて、一つ問う。俺の事を知っている様だが、お前は何者だ?」
「初めまして、俺は
「(一騎、此れは……)」
(付いて行くしかない、か──っ!?)
変身を解除し笑顔で告げる少年──斗真が話も聞かずに歩く姿に辟易しつつも進もうとする一騎は視線を感じて周囲を見渡す、が、何処にも監視者の姿を見つけることは出来なかった。
「(?一騎、如何かしたのか?)」
(……いや、何でもない)
「おーい!来ないなら置いてくぞー!」
「……まったく、儘ならんな」
勝手に先を行く斗真に遅れないように後を追う一騎。だが、そんな二人の後ろ姿を物陰から見つめる人影に気付く者はいないのであった。
●#01について
・量産型八幡
Vol.9でゴーストの言った言葉通りになりましたが、この量産型転生者は制御が簡単な上に序盤の幹部級怪人ぐらいの強さなので、下手な怪人を出すよりも安定した戦果を出す事が出来るとして実用化されました。
・外狩一騎の戦い方
今回は正体を隠す必要がなく、相手を殺しても大丈夫なので、体術とゴーストライダーの力を使った一騎本来の戦闘スタイルで戦っています。好きなだけ小技も出せるので、個人的に気に入っているシーンの一つです。
・この世界のゴーストライダー
今回から登場した新たなゴーストライダーです。正体はごく普通の少年に見えますが、ある程度は戦えるようです。日の光の下でも変身できるため、一見すると一騎の上位互換にも見えますが、実際にどうなのかはのちのエピソードで説明されます。