放課後、授業から解放された生徒たちが部活や帰宅など、それぞれの目的に動き始める中、机に突っ伏している斗真はどこか疲れたような表情をしていた。
(ったく、勝手に出てったまんま朝になっても帰ってこないとか……ホント、何なんだあの人は?)
頭を掻きながら小さくため息を吐いた斗真は、ひとまずバイトに行くか、と内心で一人ごちて立ち上がるとスクールバッグを肩にかけて3-Aを出た。が、その直後、目の前にいる人物を見て苦虫をかみつぶしたような顔になる。
「ゲッ、総司かよ……」
「ハッ、ご挨拶じゃないか斗真、いや、ゴーストライダー?」
「ばっ!……その名で呼ぶんじゃねーよ。
意地の悪そうな笑みを浮かべた少年──総司を引き連れてコソコソと廊下の端へ移動する斗真は誰かに会話を聞かれないかヒヤヒヤしているようだった。
「何、ここでやり合うつもりはないさ。ただ、お前が慌てる姿が面白くてつい、な」
「ホント、悪趣味な奴……んで、何の用だ?」
「いや、
「……お前、マジで協定のこと忘れてない?」
呆れたような口ぶりの斗真に対してあからさまに不機嫌な表情になる総司。面白いように表情の変わる総司の姿は高校生にしてはどこか幼さを感じさせるようでもあった。
「わかっている。ゴーストライダーが居る限りこの世界の人間には手を出さない……まったく、面白くもない協定だ」
「……最初に、勝者への景品だ、とか言ってノリノリで作ったのはどこのどいつだよ」
「何か言ったか?」
「別にぃ~?それより、俺これからバイトだから行ってもいいか?」
「好きにしろ。俺はもう少し
おちょくられた仕返しか、協定、忘れるなよ、と念を押して煽る斗真だったが、既に眼中にないのか斗真に目もくれない総司に辟易しつつもバイトへと向かう。が、ふと何かを思い出したのか総司が斗真の方へと目を向けた。
「……おっと、そうだ。一つ言い忘れていた」
「あん?まだ何かあんのかよ?」
「先ほど聞いたんだが、協定を無視してゴーストライダーが暴れているらしいぞ?」
「……マジかよ?」
「ああ、今は西地区のビルにいるようだ。まったく、優秀な先輩がいると大変だなぁ?ハッハッハッ」
意地の悪い笑みを浮かべた総司の言葉を受けて慌てて飛び出す斗真。離れていく背中に対して何事かを言われたようだが、斗真の耳には入っておらず、急いで校門を出た斗真は目立たないところで呼び出したバイクに乗って現場へと向かうのだった。
夕方も近くなり人通りの少なくなったビルの並ぶ薄暗い通りに着いた一騎はその中のビルの一つの前でバイクを降りた。
(ここが地図のビルか……一見するとただの雑居ビルだが)
「(然り、此処には転生者の反応が在る……が、向こうの方が早かったようだ)」
(チッ、雑魚共か)
「おい、お前、そこで何をしている?!」
後ろからかけられた聞き覚えのある声に面倒くさそうに振り返った一騎の前には予想通り三人ほどの
「お、お前はゴーストラ──ぶべっ!」
「五月蝿い」
真っ先に一騎に気づいた一人の顔面を振り向いた勢いのまま右フックで殴り、脳震盪でダウンさせた一騎はすぐさま視線を走らせると手近なもう一人へステップで距離を詰める。
「な──んがあっ!」
「ああ、一号と二号が──ごふっ!?」
二人目に近づいて左のアッパーカットでダウンさせつつ、驚いたままでいる最後の一人に距離を詰めてみぞおちへの強烈なボディブローで立て続けにダウンさせた一騎は油断なく周囲を見渡す。
(呆気ない、が、本命はこの後か)
「(然り、来るぞ!)」
『カイガン!オレ!』
「そりゃあ!」
突如、真上から変身音とともに降りて来た仮面ライダーゴースト、オレ魂がガンガンセイバーのブレードモードで切り下ろすが、その動きを察知していた一騎は前に飛び込んで回避すると、そのまま開け放たれているビルの内部へと飛び込んで行った。
「チッ、すばしっこい奴!」
直後にガンモードに切り替えようとする仮面ライダーゴーストだったが、ビル内部の暗さで目標を見つけられないことから即座に闘魂ブーストゴーストアイコンをドライバーにセットする。
『一発闘魂!闘魂カイガン!ブースト!』
「よっしゃ、命、燃やすぜ!」
「違うな」
「え?──うおっ!?」
ハンドルを押し込み、闘魂ブースト魂への変身を終えた仮面ライダーゴーストは突如、ビルの内部から伸びて来たチェーンに絡め捕られてビルの中へと引きずり込まれる。当然、逃れようともがく仮面ライダーゴーストだったが、半実体化しようにも何故か絡みついたチェーンをすり抜けることが出来なかった。
「クソッ、一体何が──」
「燃やすのは俺だ」
「なっ!?──ぐああっ!」
混乱から立ち直れない仮面ライダーゴーストに対し冷たく言い放ったゴーストライダーはチェーンで巻かれたままの相手に
「まずは一つ、か」
「(然り。だが、此の場には他の反応は無い)」
(なるほど……罠ではなかったようだが、こちらの動きは向こうに知れたか)
「(ぬ、監視カメラか……随分と地味な手を使うものだ)」
周囲に敵の気配がないことを確認して変身を解いた一騎は敵の規模から、ひとまずはこの情報は相手にとっても予想外だったと結論付けて外に出ると、ダウンしていた三人の首の骨を折って止めを刺す。
(さて、ここからどうするか)
「(先ずは次の拠点を落とすべきであろう)」
(そうだな、なら──)
「一騎先輩、何やってんだよ!?」
「……何の用だ?」
次の目標を定めた一騎とゴーストの前にバイクに乗った斗真が現れるが、あまりにも慌てた様子に一騎は怪訝な表情を向ける。
「何の用、って、アンタが人の話も聞かずに
「協定?ああ、出がけに聞かされた、あのふざけた決まり事か」
「ふざけた、だと……!?あれはこの世界を守るために必死で──」
「転生者が譲歩しても
「ッ──!?」
怒りに燃えていたはずの斗真だったが、生身のはずの一騎から放たれる圧倒的な殺気に呑まれて動けなくなる。その様子を見た一騎は小さくため息を吐くと不意に殺気を抑えた。
「……お前がやる分には好きにするといい。だが、俺は転生者を狩る。何かあったら俺のせいだとでも言っておけ」
「一騎先輩、俺は……」
「俺は核を探すために次の拠点を落とす……お前にその気があるなら転生者の刻印と情報を持ってこい」
じゃあな、と呼び寄せたバイクに乗った一騎が次の拠点へ向けて走り出すと、残された斗真もバイクに乗ってどこかへと走り出したが、その表情からは大きな迷いが見て取れるのであった。
●#03について
・振り回される斗真
設定したものの本編では特に必要はなかったので描きませんでしたが、彼の通う学校は共学になっている花咲川です。また、彼は彼なりに世界と日常を守るために戦っていますが、その姿勢は一騎にとっては許せないものだったようです。
・協定
この世界はゴーストライダーを敵とすることである種の平和が成り立つ世界です。そのため、ゴーストライダーである斗真とは私闘が禁じられており、ルールを定めた決闘に勝利することで景品としてネームドキャラを好きにする権利を得る、と言う協定があります。
・ゴーストライダーVS仮面ライダーゴースト
一見、有効に見える仮面ライダーゴーストの能力ですが、基本原理はあくまで科学なので多少、霊に性質をよせたしても本来の使い手でもなければ、魂そのものに干渉できるゴーストライダーにとってはより倒しやすくなっただけでしかありませんでした。