「俺は外狩一騎、
「俺たちを狩る……?まさか、
勇牙の言葉に小さく顔を
「猟犬?おい、勇牙。何の話をしているんだ?」
「……そう言うことかよ。なら、斬らせてもらう!」
「何を言ってる、勇牙!あれは人間だぞ!?」
「アイツはバケモノだ!──今、俺が証明してやる!」
制止するザルバの声も気にせず魔戒剣を抜き、上段から袈裟懸けに切りかかる勇牙。が、一騎が右足を半歩後ろに引いて軽く仰け反ったことでその一撃は空を切る。
「なっ!?」
即座に返す刃で切ろうとした勇牙だったが、一騎が体を戻しながら伸ばした右腕に抑えられ剣が止まる。
「っ!?勇牙!」
「ちっ!?」
反射的に身を引こうとする勇牙だが、右腕と同時に前に出されていた右足で足の甲を踏みつけられていたため、その動きも妨げられる。さらに、勢いを殺さず左足を踏み出しながら放った一騎の左の掌打が動きが止まってガラ空きとなった勇牙の右脇腹に突き刺さる。
「ぐっ──このっ!」
一瞬、怯んだ勇牙だが、即座に抑えられてない左腕だけで左薙ぎに剣を振るう。しかし、その時には一騎はバックステップで3歩分ほど後ろに下がっており、苦し紛れの一撃は空を切ったがそれに合わせて勇牙も後方に飛び退くことで数mほど距離を取ることに成功した。
「大丈夫か、勇牙!」
「ハァッ、ハァッ……なんとか、な。ともかく、これでコイツがホラーみたいなモンだ、ってわかっただろ?」
呼吸を整えながら油断なく相手を見る勇牙だが、相対する一騎は軽く肩幅程度に足を開いただけの自然体に近い姿で立ちながら冷めた眼差しを向けていた。
「なんだ、黄金騎士の力はこんなものか?」
「あぁ?!なんだと!」
「落ち着け、勇牙!」
落胆混じりの挑発に怒りを露わにする勇牙だが、一騎はその態度に冷笑を深める。
「武器は良くとも技は単調、覚悟も半端──とんだ
「黙れえぇぇーーー!!」
「鎧を着たか──なら、こちらも本気で行かせてもらう」
ガロの鎧を見ても一騎は動じることなく冷めた目のまま一度、目を閉じる。そして全身が炎に包まれると一回り大きくなった炎の中からゴーストライダーが姿を現した。質量を無視した変身はその存在がこの世の道理の外にあることを示していた。
「っ!?それがお前の正体か!」
「正体、か──やはりお前は何も見えていない」
「減らず口を!!」
ガロの言葉に対しゴーストライダーは地獄の底から響くような声で応じる。その異質さに一瞬たじろぐガロだったが、意を決して気合とともに一足飛びで距離を詰めて切りかかる。
「うおぉぉぉーーーー!!」
「はあぁーーー!!」
振り上げた牙狼剣を大上段に構えて全力で唐竹に振り下ろす。流れるような神速の連撃、彼にとって過去最高の鋭さで放たれた最後の一撃は必殺の確信があった。だが、その一撃がゴーストライダーの頭部を砕くことはなかった。
「なんだと!?」
「そんな…牙狼剣が…」
驚くのも無理はない。振り下ろされる途中の刃が左手で掴み取られていたから──ではない。それだけならまだしも、直前までに切り付けられたはずのジャケットにすら一切の傷がなかったからである。
「だから言っただろう。何も見えていない、と」
「っ!?う、動かねぇ!?」
ガロは剣を引き抜こうとするが、いくら引いても微動だにしない。それどころか、ゴーストライダーが剣ごと左腕を持ち上げると身長差もあってかなすすべもなくガロの体が持ち上がる。そこには圧倒的な膂力の差が見て取れた。
「……マジかよ」
持ち上がった状態のガロの
「ご──があっ!」
ゴーストライダーは一度、刃から手を放して頭上で右の拳を左手で包んで腕を組むと地面に倒れこみつつあるガロの頭めがけてダブルスレッジハンマー。
「ぐっ!──が、あ……」
そのまま地面にたたきつけられたガロはその衝撃で牙狼剣を取り落として地面に倒れ伏す。その身に受けたダメージの大きさは鎧が解除されたことからも
「おい、勇牙!しっかりしろ!」
「さぁ、裁きの時だ」
ザルバの声援も空しく倒れ伏す勇牙の首をつかんだゴーストライダーはそのまま自身の眼前へと勇牙を持ち上げる。
「ぐぅ……俺が、何をした……!」
「では問おう。
「──っ!?……俺は、ただ……ガロとしての、役目を……」
ゴーストライダーの問いを受けて勇牙の脳裏には自らが|特典
「……そうか──ならば、お前の罪で身を焼かれるといい」
落胆とも
「あ、あぁ……」
その魔眼をのぞき込んだ者は自らの罪にその魂を焼き尽くされる。勇牙は使命を果たさなかった自分を悲しげな眼で見つめる歴代の黄金騎士の姿を見ながら、自らの
「……また一つ、復讐は成された」
そう呟き一つの戦いを終えたゴーストライダーは地面に落ちた灰の山からザルバと変化したままの牙狼剣を拾い上げる。
「なんだ、俺様も始末する気か?」
「お前に
まったく悲壮感を感じさせない、ともすれば常より明るいのではないかと思えるザルバの態度にゴーストライダーは感情を感じさせない声で静かに答える。
「そうかい」
そいつはどうも、と返すザルバに適当な紐を付けたゴーストライダーはそのまま手近な所に牙狼剣を突き立てその
「おっ、と。そうだ、最後に一つ聞いてもいいか?」
「……言ってみろ。答えるかは別だがな」
「お前さん
さして興味もなく答えるゴーストライダーに半ば呆れるザルバだが、会ったこともないはずの鋼のような男を無意識に思い出していた。
「それじゃ、お前さんはどうして勇牙を殺したんだ?」
「俺はやるべきことをやっているだけだ」
「……なんだと?──いや、まさかお前さんは……?」
「好きに受け取れ。俺は次へ向かう」
振り向きもせずに返された答えに何か感じるものがあったザルバはゴーストライダーの行動の理由を察するが、使命を果たしたゴーストライダーにとっては関係ないようだった。そのままザルバから距離を取ったゴーストライダーはゲートをくぐると戦いの跡だけを残してその姿を消した。
「まったく、牙狼が怪物に説教されるとは。こいつは前代未聞だぞ……」
残されたザルバの嘆息まじりの呟きは
●#06解説
・人に切りかかる魔戒騎士
本来、魔戒騎士はその力をホラーなどにしか使えない掟があり、人間に切りかかるのは完全にルール違反です。ただし、原典でも何度か破られているため、転生者もこの点に関してはグレーゾーンかもしれません。
・一騎の挑発
単純に説教するキャラではないため、相手を侮蔑し罪を突き付ける手段として罵倒や挑発を行わせています。余談ですが、鍍金の騎士という言い回しは特に気に入っています。
・贖罪の眼
ゴーストライダーの必殺技として有名な魔眼です。多少、原典と違う部分もありますが、細かい説明はのちのエピソードで少しずつ明かされていきます。
・転生者のしたこと
<争いのない世界にホラーを持ち込んで死者を増やしたこと>と<自分が持ち込んだ問題であるホラーを放置して遊び惚けていたこと>です。
・ホラーが存在する理由
特典であるガロを十全に活躍させるために必要な敵としてホラーが生まれる世界に改変されています。同様の理由で番犬所のシステムもありますが、他の魔戒騎士は他の管轄で仕事をしています。
・鋼のような男
読んで字のごとく原典の使い手の一人です。この世界のザルバが知らないはずの人間を思い出す理由はVol.12で類似する現象があるため、詳しくはそちらをお読みください。
●タイトルについて
Knight of Gilt:鍍金の騎士
・作中で転生者を評した一騎の言葉ですが、黄金とは名ばかりの中身の伴わない姿を金メッキと揶揄したものです。
・Giltは正確には金メッキのみを指す言葉で、金箔や金色の物を指す形容詞の過去形でもあります。また、メッキ全般を指す言葉はPlatingです。
●転生者について
冴島勇牙(さえじま ゆうが)(17歳/男)
・牙狼の力(鎧と魔戒騎士としての能力)を特典として選んだ元青年の少年
・牙狼のことは他人の二次創作や以前に見た初期シリーズのイメージぐらいで深く考えずに選んだ
・アフターグロウのメンバーとは幼馴染だが、魔戒騎士になるために一時期から疎遠になっていた
・共学になっている花咲川にこの春から通っている高校3年生
・実力はそれなりだが、調子に乗りやすい性格で記憶の消し忘れやホラーの取り逃がしなどのやらかしが多く、度々ザルバからは小言を言われている