日が沈み始め、
「ふあ……あふぅ」
「……おい、退屈なのは分かるが、一応、警備らしくしてくれよ……」
「ああ、悪い悪い。いやぁ、こう何時間も座りっぱなしだと、流石に眠くなってきてなぁ」
ヘラヘラと悪びれた様子もなく笑う軽薄そうな男に対して真面目そうな男はピリピリしつつも呆れたようにため息を吐いた。
「……気を抜くのは勝手だが、そのままゴーストライダーに殺されても俺は知らないぞ?」
「分かってるって、流石にそんなヘマはしないっての……しっかし、本当にゴーストライダーは来るのかねぇ?」
「ちゃんとメッセージ読んでないのかよ?……昼間、警備班のグリスがやられてるんだ、来るに決まってるだろ」
そうか……、とどこか寂し気な表情を浮かべた軽薄そうな男は一度、深呼吸をすると元の表情に戻るが、その中には真剣さが含まれているようであった。
「ま、そう言うことなら気合を入れ直すとするか」
「……アンタ、ソシャゲのお知らせとか読まないタイプだろ」
「お、よく分かったな?ま、どうせ必要なら改めて強制的に読ませるだろ?」
「……よく分かったよ、次からはアンタと違う班に──」
してもらう、と言いかけた真面目そうな男だったが、その言葉は爆発音とともに玄関をぶち破って入って来た一台の燃え盛る骸骨──ゴーストライダーの乗るヘルバイクによって遮られた。
「「なっ──」」
驚愕して動けない二人だったが、侵入してきたゴーストライダーはヘルバイクから降りて軽く周囲を見渡してから数m先にいる二人へと視線を向けた。
「どうした?見ているだけか?」
「っ!?行くぞ、グリスの弔い合戦だ!変身!」
『complete』
「チッ、こちらロビー、ヤツが来た!!──変身っ!」
『花道・オンステージ!ジンバーレモン!』
ゴーストライダーの挑発に軽薄そうな男一瞬で仮面ライダーカイザに変身してソードモードのカイザブレイガンを取り出すと、本部に報告を入れた真面目そうな男も後に続いて仮面ライダー鎧武、ジンバーレモンアームズに変身する。
「うおおっ!」
右手で順手に持ったカイザブレイガンを両手で握り直したカイザは飛び出した勢いのまま、微動だにしていないゴーストライダーの左肩から右脇腹にかけて袈裟懸けに切り下ろす──筈だったが、その光刃は無造作に挙げられたゴーストライダーの左手で軽く握り止められていた。
「遅いな」
「何っ!?」
「下がれっ!」
『burstmode』
驚愕するカイザだったが、ゴーストライダーの視線が背後から放たれた鎧武の射撃に向いた瞬間にガンモードにして光刃を消すとそのままバックステップしてゴーストライダーから距離を取って鎧武と並び立った。
「先走るな!」
「悪い、少し熱くなった」
「……奴は強い、冷静に行かないと俺たちもやられるぞ」
「ああ、分かってる……まずは距離を取って時間を稼ぐ!」
「了解だ!」
作戦会議を終えた二人は左右に分かれて走り出すと鎧武は手元のソニックアローで、カイザはカイザブレイガンとブラスターモードのカイザフォンでそれぞれ射撃を始めてゴーストライダーの足止めにかかる。対するゴーストライダーは大したダメージは無いようだったが、攻撃によって動きを制限されつつあるようだった。
「よしっ、これなら何とか……」
「なるほど、自分の実力は弁えているようだが──」
「なっ──」
策が成功しそうなことに一瞬、安堵するカイザだったが、ゴーストライダーがおもむろに左腕を横薙ぎに振るった瞬間に衝撃を感じて困惑する。そして、混乱から立ち直れないまま、鎧武とともに壁に叩きつけられた。
「──戦力差は理解できていなかったようだな」
「「ぐあああっ!」」
ゴーストライダーが伸ばしたチェーンによってまとめて壁に叩きつけられた二人はそのままチェーンを伝わったヘルファイアによって魂ごと焼き尽くされるのだった。
「(先ずは二つ──だが、直ぐに次が来るぞ)」
(ああ、そのためにわざわざ目立つ方法で来た、そうで無くては困る……流石に建物ごと燃やすのは骨が折れるからな)
「(然り。だが、其の必要は無さそうだ)」
「居たぞ!ゴーストライダーだ!!──うげぇ!!」
悠然と歩くゴーストライダーを見つけた仮面ライダーブレイドが頭を叩きつぶされる断末魔の叫びをきっかけに階段やエレベーターだけでなく、吹き抜けを降りたのか中庭からも多種多様な転生者たちが現れてゴーストライダーの周囲を取り囲んで行く。
「三つ、いや──」
「この野郎っ!よくも仲間を──ごふっ!?」
ゴーストライダーの背後から怒声とともに飛びかかって来た
「──これで四つだ」
「クソッ、また一人やられたぞ!」
「あきらめるな!一斉にかかるぞ!」
『exceed charge』
『ROCKET-DRILL-LIMIT BREAK』
『スキャニングチャージ!』
『マキシマムドライブ!』
『ライジングインパクト!』
ファイズの合図をきっかけにライダーたちは一斉にキックを放つ。一つ一つが必殺の威力を持つ攻撃であり、微動だにせずその全てが直撃したゴーストライダーは爆発四散する──はずであった。
「有象無象が勝てると思ったか?」
「そんな!?」
「バカな!?」
彼らの驚愕ももっともである。あれだけの攻撃を受けたはずのゴーストライダーがその場から一歩も動かずに無傷で受け止めていたからであった。
「今、地獄を味わわせてやる」
「「「「「うわああっ!!」」」」」
驚愕から立ち直れていないライダーたちに対して無慈悲に言い放ったゴーストライダーの足元から地獄の釜の蓋が開いたように業炎が吹き上がる。熱気とともに立ち上った火柱に包まれたライダーたちが離れた転生者たちの視界から一瞬見えなくなるが、火柱がおさまった後にはゴーストライダーが悠然と立つのみで、ライダーたちは灰すら残さず焼失していた。
「ライダーが一瞬で燃え尽きただと……!?」
「さぁ、次はどいつだ?」
「「っ!?」」
ゆっくりと視線をめぐらすゴーストライダーの姿に威圧されたのか蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる転生者たち。既に勝負は決したように見えたその時、一騎のスマホが振動したことを感じたゴーストライダーの動きが一瞬止まった。
「……ぬ?」
「!?今だ!一時撤退するぞ!!」
ゴーストライダーの注意が逸れた一瞬を見逃さなかったスパイダーマンがウェブを放って足止めを行うと、それに合わせて転生者たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げて行った。
「逃がすか……!」
「(待て、一騎……如何やら斗真から着信のようだ)」
(斗真からだと?……チッ、仕方がない)
逃げ出した転生者たちを追いかけようとするゴーストライダーだったが、斗真からの着信を無視する訳にも行かないため、周囲に危険がないことを確認しつつ、変身を解いてスマホを取り出した。
「……おい、何の用だ?」
『篝斗真は預かった、返してほしければメールの場所まで来い』
「お前は何者だ?……切れたか」
スマホから聞こえたボイスチェンジャー越しの声と突如切れた通話に眉をひそめた一騎だったが、直後に届いたメールに添付されたロープで巻かれて転がされている斗真の写真と埠頭の倉庫までの地図を見て内心で頭を抱えた。
(……結局、こうなったか)
「(其の様だ。して、一騎、如何する心算だ?)」
(不本意だが、行くしかないだろう……まったく、儘ならんな)
転生者が逃げ、斗真が捕まった現状に辟易する一騎だったが、大きくため息を吐いて気持ちを切り替えると後始末をつけるためにバイクに乗って埠頭の倉庫へと向かうのであった。
●#07について
・警備班の二人
これまでの転生者と比べて実力があるのか善戦しましたが、やはり勝つことは出来ませんでした。とは言え、そのあとの面々を考えると頭脳派ではあったようです。
・一瞬で燃え尽きるライダー
宇宙での活動を目的としていて耐熱性の高いはずのフォーゼが燃え尽きているので、この時の火力は最低でも優に数千度は超えているはずです。ただし、先に魂を焼いている場合は変身が解除されているので、もう少し低い温度の可能性もあります。
・捕まった斗真
前回のシーンの後に捕まったようです。働いてない訳ではないものの、一騎と比べるとこの章ではあまりいいとこ無しですが、なぜこのような状態になったのかは次回をご覧ください。