夜の帳が下りた埠頭の倉庫街を走る一台のバイクがその中の一つ、灯りの漏れる倉庫の前で停車した。その倉庫はメールに添付された地図に書かれた場所であり、バイクを降りた一騎は周囲を見渡すが周囲に人影は無く、目に見える範囲では罠の類も無いようであった。
(……さて、鬼が出るか蛇が出るか)
「(何れにせよ衝突は避けられぬであろう。気を引き締めろ、一騎)」
(ああ、分かっている……中に入るぞ)
改めて気合を入れ直した一騎が鍵のかかっていなかったドアから倉庫内に入るとシャッターの前に転がされているロープで巻かれた斗真の姿が目に入った。
「(随分と簡単に見つかるものだな)」
(一応、罠を警戒するぞ……おそらく、無用だろうがな)
「(其れは如何言う事だ?)」
すぐに分かる、と内心で答えた一騎は警戒しつつ斗真に近づくが、何事もなく斗真の下へとたどり着くと周囲に意識を向けながら状況を確認すると、斗真の体には特に異常はないものの、意識を失っているようだった。
「(ふむ……如何やら怪我は無いようだ)」
(だろうな──それより、黒幕のお出ましのようだ)
「よく来たな外狩一騎、いや、ゴーストライダーよ!」
気配を察知した一騎が声の方に視線を向けると、倉庫内中央のコンテナの後ろから金の鎧を着た青年とオーマジオウが姿を現した。
「なるほど。お前たち、いや、
「ほう、よく分かったな?流石はゴーストライダー、と言った所か」
「それだけ分かれば十分だ。人質を使わないならさっさと終わらせるぞ」
ゴーストライダーに変身した一騎は並び立つ青年とオーマジオウに相対するが、オーマジオウは肩を竦めるだけで、青年もニヤニヤと笑みを浮かべているだけだった。
「せっかちな奴だな……まあいい、俺の名前は
「俺は
「そのセリフは聞き飽きた。俺を倒すつもりなら行動で示してみろ」
一歩前に出たオーマジオウ──常磐総司に続いて金の鎧の青年──関崎尊もわざわざ自己紹介とともに宣言をするが、そんな二人の行動を意に介さずゴーストライダーは冷たく言い放った。
「ハッ、良いだろう!そんなに死にたければ望み通り殺してやる!」
「まったく、熱くなりやすい奴め──もっとも、俺も同じだがな!」
あっさりと挑発に乗ったオーマジオウはさらに一歩を踏み出し、尊も右手を虚空に伸ばすと黄金の波紋を立たせて円柱状の刀身の突撃槍のような剣──乖離剣・エアを取り出す。
「出し惜しみはしないか……ならば、こちらも──っ!?」
「(何だと!?)」
初手から全力で来る転生者たちを前に相対するゴーストライダーはチェーンを叩きつけて機先を制そうとするが、その動きは背後から伸びて来た──倒れていたはずの斗真が変身したゴーストライダーのチェーンによって防がれていた。さらに、尊が放った天の鎖によって、動きの鈍っていたゴーストライダーは完全に動けなくなっていた。
「おっと、危ない危ない。ついでにこいつも喰らってもらおう」
「(ぬぅ、此れは天の鎖か……!?)」
「悪いけど、アンタにはここで死んでもらう……ま、戦えないのは不本意だけどな」
「なるほど。やはり初めから
「ハッ、所詮は負け犬の遠吠えだ!──さあ、これで終わりだ!」
『終焉の刻!』
ゴーストライダーの言葉を一蹴したオーマジオウがベルトのスイッチを入れてエネルギーが高まっていくと、尊も天の鎖を維持したままエアに魔力を集中させていく。そして、二つの力が臨界に高まり、ついにその時が来た。
「ゴーストライダーよ、滅びの時だ!」
『逢魔時王必殺撃!』
「ぐ、うう……」
まず、放たれたのはオーマジオウの必殺技。跳躍したオーマジオウがゴーストライダーの周囲に展開されたジオウの文字のエネルギーを右足に集約させて放つ必殺のキック──逢魔時王必殺撃。その威力は凄まじく、余波だけで倉庫のシャッターが吹き飛ばされ、ゴーストライダーの足元の地面が抉れるほどであった。
「受けよ!『
「ぬ、がああっ!!」
続けざまに放たれた乖離剣・エアの最大出力はあらゆる「死の国」の原典である生命の記憶の原初の光景を再現したものであり、特典としてギルガメッシュの力を持つ尊の切り札であった。地面を抉りながら切り上げられた文字通り世界を切り裂くその一撃はオーマジオウの真横を抜けてゴーストライダーに直撃し、爆音と閃光が倉庫を包み込む。そして、全てがおさまるとゴーストライダー、外狩一騎の姿はそこにはなく、倉庫の屋根が吹き飛ばされて壁の一部が残されているのみであった。
「フン、他愛のない。チリ一つ残さず消え去ったか」
「ああ、どうやらウワサほどでもなかったようだな──おい、いつまで倒れてるつもりだ?」
「だったらもうちょい待ってくれよ!こっちは逃げるのに必死だったんだからな?!」
「ハッ、次はもう少し位置取りを考えておくんだな……ま、もうそんな相手もいないだろうがな。ハッハッハッ」
爆発の跡の前に並び立つオーマジオウと尊は余波で飛ばされた斗真に対して冷たく言い放つが、強敵を倒した彼らの顔には余裕の笑みが浮かべられており、戦闘の終わった倉庫街にはオーマジオウの高笑いが響いているのであった。
●#08について
・オーマジオウとギルガメッシュ
ボスらしい特典を持った二人ですが、もちろんこの章と次章のボスであり、片や世界の核、片や世界の管理者と言う役職を持たせられた存在です。
・斗真の裏切り
これまで怪しい点のあった斗真ですが、ここでその正体を現しました。ちなみに、これまでの戦闘では多少、手を抜いているところがあったため、アレが彼の実力の全てではありませんが、ボスの二人には及ばないようです。なお、一騎が気づいていた理由は次章で明かされます。
・逢魔時王必殺撃と『
字面だけ見るとやりすぎな気もしますが、ゴーストライダーを相手にする上で慢心しなかったこの二人は正しかったと言えます。両者の全力を受けたゴーストライダーがどうなったのかは最終章Vol.12をご覧ください。