「あら、もう動けるのね」
部屋を出た一騎が気配の多い、居間として使われている一室を見つけてドアを開けると近くのソファーに座って本を読んでいた黒髪の少女──
「何とかな。それより、世話をかけた」
「別に構わないわ……知ってるかもしれないけど、暁美ほむらよ」
簡潔にあいさつを済ませたほむらに対して、知ってるだろうが、外狩一騎だ、と同じく簡潔に返した一騎は軽く周囲を見渡す。部屋の中にはお茶を飲んでくつろぐ少女──
「わたくし依田は芳乃でしてー。失せ物探しモノならお任せをー」
「ああ、外狩一騎だ。お前にも世話になった……それより何故俺を助けた?」
独特の口調で話す芳乃を気にする様子もなくあいさつを済ませた一騎は特異な才能を持つとは言え、ただのアイドルが危険な戦いに首を突っ込んでいることに疑問を感じて問いかけた。
「困っている人には力を貸しなさい……ばばさまのお言葉でしてー。ゆえにー、わたくしはー
「……そうか、その戦いは俺が引き継ごう」
「ありがたきことでしてー。しかしー、
「む?それは──」
「それは私から説明します」
芳乃の返答に対して、どう言う意味だ、と問いかけようとした一騎の言葉は先程までいろはと話していた凛の言葉で遮られた。
「初めまして、外狩さん。私は遠坂凛です」
「外狩一騎だ。今回は世話になった、礼を言う」
「いいえ、私たちだけでは倒せない転生者を何人も倒して頂いてこちらこそありがとうございます」
「それは俺の使命だ、気にするな……それより、敬語は不要だ」
「そう?──それじゃ、まずはこれを見て」
頭を下げた一騎に対して優雅な動きで丁寧に礼を返す凛だったが、一騎の言葉を受けて砕けた口調になった凛は眼鏡をかけつつ一枚のメモを手渡す。そのメモには「SAO、バンドリ、ラブライブ、デレマス、プリヤ、まどマギ、マギレコ」と書かれていた。
「これは……この世界を構成する<原典>か」
「ええ、この世界はオーマジオウの特典を持つ常磐総司を核として、戦闘力を奪った原典で構成された世界よ……まあ、転生者たちの会話から得た情報だから、私たちにはどれがどの世界かは分からないけど」
「なるほど。それで、どうやって転生者の存在に気付いた?」
「最初は芳乃が同じ事務所のマキノの情報を擦り合わせた結果、複数の世界が混ざっていることに気づいたのが始まりだったわ」
「(ふむ、無理矢理組み込まれた故の世界の
凛の言葉に感心するゴーストの言葉に、むふー、と得意げな表情をする芳乃の姿を横目に、続けてくれ、と一騎が先を促す。
「それで、細かい所を省くけど、芳乃たちが違和感に気づいたことで原典の封印に綻びが生まれた──そこから起動したルビーとサファイアを手にしたイリヤと
「……なるほど。平行世界に干渉可能なカレイドステッキであれば綻びからこの世界の自身を起動させる程度は造作もない、と言う事か」
「あら、詳しいのね。ともかく、私たちの影響でこの世界にも魔力が存在するようになってまどかと
「
「私の知る限りでは、魔術回路も持たない人間が魔術を使うのは不可能よ──ただ、この世界の転生者たちが深層心理で、希なら出来る、と思っているなら可能かもしれないわね」
少し考え込みそうになる一騎であったが、凛の考察を受けてひとまず納得すると視線で先を促した。
「それじゃ、続けるわね……それで、まどかと言う大きな因果をきっかけにほむらといろは、やちよさんが本来の自分を取り戻し始めたの──もっとも、その時にソウルジェムがあったのはいろはとやちよさんだけだったけど」
「待て、暁美ほむらは魔法を使っていたはずだが……?」
「(恐らく、我等の影響だ。短期間に転生者が減り、世界の修正力に
「なるほど。……しかし、これだけ揃えば転生者には気付けるだろうが、これまでよく見つからなかったな?」
「ええ、実は転生者たちの動きを予期して芳乃たちが同じ事務所のアイドルの力を借りて密かに私たちを集めていたの。そして、秘密裏にこの世界の謎を解いて転生者に対抗するためにこの<お茶会>と言うグループを結成した、と言う訳」
「……そうか。それで、転生者との戦いを俺たちに任せたい、と言う事か?」
「そうね──半分は当たり」
「半分、だと?」
説明を受けた一騎は彼女たちの目的を推察するが、凛はその答えに薄く笑って首を横に振ると、眼鏡を外して真っ直ぐに一騎に視線を向けた。
「外狩さん、転生者を倒すために、私たちと共闘しない?」
「……なるほど。さっきの言葉はそう言う意味か──ゴースト、知っていたな?」
「(然り。恐らく、我の予想が正しければ此度の世界、我等のみでは全ては救えぬ──ならば、我は共闘すべきだと考えたまでの事)」
「そうか……だが……」
凛とゴーストの言葉を受けた一騎が他の策を考え込むが、周囲の他の<お茶会>のメンバーから注がれる視線に一度、大きくため息を吐いた。
「……わかった。その申し出を受けよう──ただし、可能な限り転生者との戦いは避けろ。それは俺たちの仕事だ」
「オーケイ、契約成立ね。それじゃ、外狩さん、これからよろしく」
一騎の返事に対して満足そうな笑みを浮かべた凛が右手を差し出すと一騎は諦めたようにその手を握り返した。
「さて、契約も済んだことだし、少し遅いけどお昼にしましょうか」
「ああ……ところで、遠坂凛。契約、と言ったが、魔術は使っていないだろうな?」
「まさか?貴方相手に試す程バカじゃないわ」
「……そうか。いや、俺たちにはその手の魔術は効かん。下手に使っていれば事だったが、使っていないのならば問題は無い」
「え、ええ。気を付けるわ……
何気なく告げられた一騎の言葉に思うことがあったのか何事かを呟きつつ動揺している様子の凛だったが、一騎はその呟きを気にせずに昼食を摂るのであった。
●#02について
・この世界の実情
作中で明言されている世界を混在させていますが、気づいたキャラの人選は並行世界を観測できるか世界にある超常に関わる人間であることを条件にしています。希や芳乃のようなグレーゾーンのキャラもいますが、転生者の認識によって能力を補強されていることが原因です。
・事情その二
ネームドは増やしたいけど敵を増やすわけにはいかない転生者側が、世界を構成していない転生者の刻印を使ってネームドの持つ戦闘力を戦いの記憶とともに封印しています。そのため、Vol.11の冒頭の監視はマキノで紙飛行機は希によるものでしたが、一騎が大量の転生者を倒した後はほむらが時間停止で情報を渡していました。
・協力ではなく共闘
これまで、Vol.7以外はほとんど一人で戦っていた一騎ですが、今回は状況が状況なので共闘することになりました。一騎にとっては本来なら避けたかった事態ですが、この世界の実情を考えた結果なので、腑に落ちない方はのちのエピソードでの解説をご覧ください。
・未来視?の二人
上述の通り、この世界観ではその世界を作り出した転生者が出来そうだと思っていれば本来は不可能そうなことも可能になると言うシステムがあります。その中でもここでは希と芳乃は特にイメージの影響が強く出ているため、軽い万能キャラのような扱いになっています。