「──あとの礼装や
遅めの昼食を終えて夕方まで情報を擦り合わせていた一騎と凛だったが、<お茶会>の戦力を聞いた一騎は眉をひそめていた。周囲にいたメンバーはそれぞれの方法で時間を潰しており、その中には偵察から戻っていた銀髪と赤い目の少女──イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとその傍に浮かぶカレイドルビーの姿もあった。
「……一応、確認するが、すぐに戦力が増える可能性はあるか?」
「時間があれば宝石のストックを増やせるけど、そのぐらいかしら?あとは、貴方の影響でソウルジェムを持つ魔法少女が増えている可能性はあるけど、当てには出来ないわね……いっそ、英霊召喚でも出来れば別なんでしょうけど」
「そこまでする必要は無い……いや、今は時間が無い、と言った方が正確かも知れんがな」
「まあ、その辺は流石に相手も無能じゃない、ってことね……それで、猶予はどれぐらいかしら?」
「おそらく──既に時間切れだ」
『あー、聞こえるか外狩一騎!その建物は完全に包囲されている!大人しく出て来い!』
一騎の言葉が終わるかどうかと言うタイミングでみかづき荘の外から響く拡声器の声に一騎以外のメンバーが一斉に反応する。そして、この状況を予期していた一騎だけが声の主が斗真であることに気づいていた。
『三分だけ待つ!大人しく投降するならそこのイレギュラーは見逃してやる!いいな、三分だぞ!』
「っ!?まさか、こんなに早いなんて……!?」
「ここは奴らの作った街だ。監視網ぐらいはあるだろう……それに、俺たちは目立つからな。僅かでも痕跡があれば、見つけ出すのは造作もあるまい」
「それもそうね……それじゃ、私とイリヤで外狩さんをサポートしつつ陽動をかけるから、ほむらは芳乃をお願い。やちよさんといろははかく乱を──」
「その作戦は無しだ──可能な限り転生者との戦いは避けろ、と言ったはずだぞ?」
一方的な通告を受けて動揺するメンバーだったが、冷静に状況を分析する一騎の言葉で落ち着きを取り戻すと、外を覗き見た凛が指示を出し始める。だが、その言葉は突如かけられた一騎の一言で遮られ、メンバーの視線が一騎に注がれる。
「……アンタねぇ!こんな状況でどうやって戦闘を避けろ、って言うのよ!?」
「俺に策がある。少し暁美ほむらを借りるぞ」
「私?……私は構わないけど、今の私に止められる時間は十秒程度よ?」
「いや、それだけあれば十分だ」
怒りの籠もった抗議をする凛だったが、頭に巻かれた包帯を取りながら告げられた一騎の言葉に視線をほむらに向けると当の本人も困惑しているようだった。
「……本当に何とかなるんでしょうね?」
「ああ、もちろんだ──では、手短に説明するぞ」
訝し気な視線を向ける凛に対して端的に答えた一騎はゲートから取り出した所々が破れたいつものライダースジャケットを羽織りつつ作戦を説明するのだった。
裏手側を中心にみかづき荘を取り囲む十人近い転生者たちはそれぞれに緊張した面持ちをしているが、二人の供を連れて正面玄関から数m程離れた所に立ち獰猛な笑みを浮かべる斗真はその中でも際立って異彩を放っていた。
「な、なあ、ホントに俺たちだけで勝てるのかよ……?」
「おいおい、こっちは十二人の腕利きの転生者、対して向こうは手負いのゴーストライダーと数人の魔法少女──どうしたって負けはねぇだろ?なあ、斗真?」
「ま、
「そ、それもそうだよな!悪い二人とも手間かけさせたな」
「ったく、
張り詰めた空気に耐え切れなくなったのか、斗真の後ろにいたゲーマドライバーを腰に巻いた少年──雅樹が不安そうな声を上げるが、トライチェイサーに跨る少年──雄也の分析と斗真の言葉に安堵のため息を吐いた。そんな雅樹の姿に呆れた様子の雄也だったが、ふと気になって残り時間を尋ねると即座に雅樹が手元のスマホを確認する。
「えーっと、あと一分だな──って、あれ?玄関って開いてたか?」
「は?お前何言って──」
「ッ!?しまった!?」
「ぐえっ!?」
誰も気付かない間に開いていた玄関に気付いた三人は違和感を覚える。その中で斗真だけはある可能性に気付いたが、既に時は遅かった。次の瞬間、玄関から先程までいなかったはずの一台のバイクがフルスロットルで飛び出すと、三人の脇をすり抜けるタイミングで一瞬アクセルを緩めた一騎はチェーンを放り投げ、直撃した雅樹を昏倒させてそのまま走り抜けた。
「な──」
「クソッ、ゴーストライダーだ!全員、追いかけるぞ!!」
「おい、イレギュラーはどうすんだよ!?」
「んなもんほっとけ!ヤツが最優先だ!」
一瞬の交錯だったが、一騎の姿を確認した斗真は他の仲間に声をかけると倒れたままの雅樹を放置して追跡を開始した。
「(停止した時間で加速して玄関から出る──如何なるかと思ったが、第一段階は成功だな)」
(ああ……しかし、やっておいて何だが、ここまで乗ってくるとはな)
遅れて付いてくる十一人の転生者を尻目に嘆息する一騎。それもそのはずである、<お茶会>のメンバーを守るために一騎が使ったのは作戦とも呼べない稚拙なトリックで囮となる事であり、まさか全員が追跡に来るとは思っていなかったからである。
「(然り。だが、未だ太陽は昇っている、油断はするな)」
(分かっている──いつも通り使命を果たす、それだけだ)
「(む、仕掛けてくるようだぞ?)」
「喰らえ!──って、うおおっ!?」
ゴーストと会話をしつつ広い大通りを走っていた一騎に対して背後から仮面ライダーウィザード、フレイムスタイルのウィザーソードガンによる銃撃が飛んでくる──が、チェーンを落としつつ車体を倒した一騎が真横にある脇道に入ったことであっさりと回避すると、続いて曲がろうとしてチェーンに引っかかったウィザードはクラッシュしてしまいそのまま近くの電信柱へと激突した。
「(先ずは一つ、否、先程の奴を含めて二つか)」
(順調、と言うべきか……まあいい、このまま行くぞ)
「チッ、生身だからって油断するな!」
「おう!射撃がダメなら接近戦よ!おりゃ!──って、あれ?」
住宅街を抜けつつ斗真の声に答えた仮面ライダークローズは一騎の左に並ぶと右手に構えた専用の剣──ビートクローザーを横薙ぎに振るうが、一騎が一瞬早くアクセルを緩めたことで刃の軌道から外れる。
「阿呆め」
「ぬおおっ!?」
「おい、ウソだろおおっ!?」
追撃を考えていなかったのか動きの止まったクローズに対して呆れたように吐き捨てた一騎はそのまま車体に蹴りを入れると、完全にバランスを崩したクローズがクラッシュし、後ろから一騎に追撃しようとしていたアマゾンアルファも巻き込まれて脱落していった。
「(四つ。ふむ、悪くないペースだ)」
(ああ……しかし、こいつ等、敵の呼吸を読む気はあるのか?)
「隙ありっ!──なんだとおおっ!?」
元の速度に加速した一騎がふと背後を見た瞬間に仮面ライダーゼロワン、ライジングホッパーが右からアタッシュカリバーを振り下ろすが、一騎がそのまま加速した事でその一撃は空を切り、追い抜きざまにハンドルの一部を溶かされた事で操作が出来なくなったゼロワンはそのまま横転した。
「(五つ──だが、気は抜くな。恐らく、此れは前座だ)」
(だろうな。こいつ等には殺意が足りん……それに、
倒した──と言っても一時的に脱落させただけの転生者たちを分析する一騎だったが、気配を感じて回避行動をとると先程までのルートだと直撃していたであろう複数のエネルギー弾が飛んできていた。
「お、よく避けたな?だが、空からなら反撃できないだろう!」
(ホークガトリングか……流石に本気を出してきたか)
「(然り。では、作戦を次の段階へ進めるぞ)」
チラリと後ろを見て空を飛ぶ仮面ライダービルド、ホークガトリングの姿を捉えた一騎は車体を倒しつつ減速してすぐ脇にあるアーケードへと侵入するのであった。
●#03について
・<お茶会>のメンバー
今回、名前も登場していないメンバーとしては絢瀬絵里、一ノ瀬志希の二人がいますが、絵里は戦闘に使える技能がないため、怪しまれない程度の手伝いをしていそうです。志希は化学の知識を活かしてFate世界の知識を借りて霊薬とか何かとんでもない物を作っていそうな気がします。
・指揮を執る凛
この場において指揮を執るような人間としては最適だと思ったので、全体的にチームの代表みたいなポジションをさせています。あと、一応、プリヤ時空の出身なので多少は攻撃的な面を強く出しています。
・作戦とも呼べない作戦
シンプルに囮になった一騎ですが、基本的に転生者たちは一騎を脅威とみなしていますし、イレギュラーである<お茶会>のメンバーはネームドで倒したくない、と言う心情があるので、囮作戦は想像以上に効果を発揮しました。
・十二人の(自称)腕利き
正直に言うと怪人などの敵と戦わずに大して訓練もしていないような連中の中で腕利き、という程度なので、実はこれまでの転生者の中でもそれほど強くはありません。もっと言えば手の内を知っている相手と戦っているから互角なので、既知の相手に対して対策が上手いだけの連中です。