「はぁ?アーケードに入っただと?──チッ、いいからそのまま足止めしとけ!」
万が一に備えて変身せずに追跡部隊の後方で指揮に専念していた斗真だったが、無線から聞こえる部下たちの報告ともうすぐ沈む夕日を見つつ、自らの浅慮を呪っていた。
(そのまま殺すかいい感じに生け捕りにして状態を見極めてから戦うつもりだったが──クソッ、あの無能どもめ)
「だいぶ気が立ってんな、大丈夫かよ?」
「……ああ、ま、何とかな」
副官として隣を走る雄也の言葉に何とか表面上は落ち着きを取り戻したように見せる斗真は小さく深呼吸をする。
(ともかく、ゴーストライダーにならなくとも一騎は手強い──変身したらどれだけ強くなるか……)
「しかし、どうする?現行の戦力じゃ流石に厳しいぞ?」
「ハッ、冗談だろ?こっちだってゴーストライダーだ。それに、向こうは手負いでこっちは無傷、そう簡単には負けねーよ」
「……分かったよ。んじゃ、最後はリーダーに任せて、俺も削りに行ってくるわ」
ヘルメットの下で不敵に笑う雄也に対して、任せた、と斗真が力強く頷くと、バイクの上で構えた雄也が、変身、と叫び仮面ライダークウガ、アメイジングマイティに変身して数十m先に見える商店街の跡地へと飛び込んでいき姿が見えなくなる──そして、大きな爆発音が響いた。
「……やられたか。ま、アルティメットでも無けりゃそんなモンか」
ゆっくりと独り言を言いながら闇に包まれた跡地へ入った斗真は自らの予想の正しさを裏付けるような大量の焦げ跡と周囲に舞う灰を見てゴーストライダーの力を感じたが、そこには落胆も絶望もなくただ純粋な興奮だけが胸中に渦巻いていた。
(これでようやくゴーストライダーと──本当の強敵と戦える……!)
「仮にも仲間の死にそんな笑みを浮かべるとは──随分と業を重ねて来たようだな」
「っ!?」
突如、目の前の闇の中からかけられた声に目を向けるとそこには一騎の姿があった。よく見れば、ライダースジャケットの所々が破れていたが、おそらく、今の戦いで出来た傷は一つもないようであった。そして、一騎の指摘で顔を触った斗真は自分が獰猛な笑みを浮かべていることに初めて気づいた。
「なあ、一騎。今、俺は笑ってるのか?」
「ああ、まるで獣だな」
「ハッ、上等だ!俺もお前も所詮は猟犬──
「……そこまで堕ちていたか。ならば、俺たちが引導を渡してやる──来い、外道」
宣言と共に両者が炎に包まれると無傷のゴーストライダー──斗真が勢いよく飛び出してジャケットの所々が敗れたゴーストライダー──一騎に対して殴りかかる。
「おら、よっ!」
「ぬん!」
勢いよく振りぬかれる斗真の右の拳を左手でブロックした一騎はカウンター気味に右の拳でアッパーを放つ──だが、その拳は斗真が左足を引いて半身になったことで空を切る。
「ハッ、どうした?その程度か、よっ!」
「ぐっ……!?」
お返しとばかりに放たれた斗真の左のボディブローが一騎の腹部に決まり、呻き声を上げた一騎はたたらを踏んで数歩後ずさった。
「どうやら、昨日のダメージが残ってるみたいだな?──チェインブロウ!!」
「む、う……!?」
数歩分離れた一騎の首に伸ばしたチェーンを巻き付けた斗真はそのまま左手でチェーンを引っ張ると、引き寄せられた一騎の顔面に右ストレートが決まり、その勢いで頭を揺らされた一騎の顎が外れて完全に動きが止まった。
「コイツでトドメだ!──インフェルノストライク!!」
一連の攻撃で勝利を確信した斗真が全力を籠めて炎を集中させた右の拳が無防備な一騎の胴体に突き刺さり大爆発を起こす。瞬間的な威力だけなら尊の持つ乖離剣・エアにも匹敵する一撃、当たれば一騎であっても無傷では済まない──はずだった。
「もう終わりか?」
「──え?」
爆発の煙がおさまったあとには先ほどよりジャケットの破損が増えた以外は大きな違いの無い一騎の姿があった。理解が追い付かずに思考が停止する斗真を置いて一騎は悠然と外れたままの顎を元の位置に戻した。
「では、俺の番だ」
「は──あ?」
瞬間、無造作に振るわれた一騎の
「どうした?その程度か?」
「え?何でこんなに差──ぐおっ!?」
悠然と近づいた一騎の
「まだだ」
「うお──おぶっ!?」
倒れそうになる斗真の
「さて、最後は──こうだったか?」
「いっ──ぐあああっ!?」
一騎が同じような動きで力を籠めて炎を集中させた
「ぐ……ううっ」
「ふむ、まだ息があるか」
「……どうやって、俺の一撃を、防いだ?」
「簡単だ。俺の方が強い、それだけの事だ」
「く、ははは……マジかよ?」
息も絶え絶えの斗真の質問に事も無げに答えた一騎はそのまま襟首をつかんで斗真を持ち上げる。その返答に圧倒的な力の差を感じた斗真は最早、笑うしかなかった。
「質問は終わりか?」
「そうだな……それじゃ、最後に、一つだけいいか?」
「何だ?」
「こいつを見ろ!──ペナンスステア!!」
「む──」
斗真の言葉を聞くために顔を近づけた一騎に対して斗真はペナンスステアを覗き込ませる──が、しかし。
「それで、何を見ればいい?」
「──え?」
斗真の困惑も無理はない。これまで数多くの罪を暴き悔い改めさせてきたペナンスステア、必殺とも呼べるその力が目の前にいる一騎には通用しなかったからである。
「……なるほど。やはり、
「……アンタ、何言ってんだよ?!俺は、まだ──」
「黙れ外道。潔く、俺の眼を見ろ」
「ぐ──うあああっ!?」
一騎の
(……っ!?そうか、外狩一騎は──ゴーストライダーは……)
そして、焼き尽くされる最後の瞬間に外狩一騎とゴーストライダーの全てを理解して篝斗真と言う存在は消滅するのであった。
「(ふむ……一騎の仲間になれるやも、と思ったが、些か早計だったか)」
(お前を認識できない時点であり得ないだろう……それに、転生者狩りの同類など居ない方がいい──それより、面白いことが分かったな)
ゴーストライダー同士の戦いを終えて変身を解いた一騎は妙な感想を抱くゴーストに対して白い目を向けつつ、斗真から読み取った情報を思い返していた。
「(然り。だが、其れよりも我は一騎の精神力に驚かされた──よもや人の身で
(またそれか?所詮は偽物の力だ。この程度なら<
子供の成長を喜ぶ親のような態度のゴーストに呆れた様子の一騎だったが、一度、深呼吸をしてから気持ちを切り替える。
(この話はこれで終わりだ──合流場所に急ぐぞ)
「(うむ。だが、我の予想通りであった故、先程の
(そうだな──っと、忘れていた)
「(む?まだ何か在ったか?……それは──)」
「このジャケットは貰って行くぞ」
呼び出したバイクに跨ろうとした一騎はゴーストライダーに変身しつつ、灰の山から斗真のジャケットを拾い上げると、灰を払ってからジャケットを着替えた。
「(盗みか?罪人め)」
(違うな、これは慰謝料だ)
「(成程。ならば致し方あるまい)」
軽口を言い合うゴーストと一騎は変身したままバイクに乗るとそのまま合流地点へ向けて走り出す。そして、あとには灰の山と戦いの痕が残されており、ゴーストライダーの行く先を示す炎の轍が夜空へと続いていた。
●#04について
・
ついに始まった頂上決戦、に見えますが、実際は一騎の圧倒的優勢で終わりました。一騎があえて同じ攻撃を返したのはゴーストライダーとしての格の違いを刻み付けるためです。ちなみに、斗真の技名には何か元ネタがあった気がしますが、メモには残っていなかったため、その点は不明です。
・斗真の敗北の理由
彼は敵として再構成された特典の力で変身していますが、一騎はゴーストという人外の外部リソースの力で変身しています。その在り方の違いとして斗真は魂を認識して操る力を持たず、ゴーストを認識できていませんでした。そのため、ペナンスステアもこれまでの戦いでは通用しましたが、原典でもあるように精神力の強い一騎には通用しませんでした。
・仕込みと盗み
アメコミと言うよりはアメコミ映画的な描写ですが、ゴーストライダー同士の戦いは必ずやるつもりだったので、ジャケットを奪うシーンは絶対にやろうと思っていました。また、仕込みについては次回で明かされます。
●斗真について
篝斗真(かがり とうま)(18歳/男)
・ゴーストライダーの力を特典として与えられて花咲川高校に通う三年生で車両の修理工場に併設された一軒家に住む
・ゴーストライダーの力自体は嫌いではないが、格ゲーと海外ドラマでの知識しかないため使いこなせている訳ではない
・基本の能力はMAoS(エージェントオブシールド)版とUMVC3版を合わせたイメージでペナンスステアが使える
→太陽の下でも変身が可能だが、パワーソースが自分であるため、出力はザラゾス版よりも低く耐久度も落ちている
→魂を認識して操る力を持たないため、強い精神力も持ち合わせている人間にはこのペナンスステアは通用しない
・本来は最強の力を望んでいたが、上位者の都合で言いくるめられて現在の形になった
→ヒロインを欲している訳ではなく、単純に強い力と倒すべき敵を求めているだけ