【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#08

 

「ふむ、思ったより早かったな」

 

「た、尊……!」

 

「総司、随分と無様な姿じゃないか?いつもの減らず口はどうした、ん?」

 

「くっ……」

 

ヴィマーナに乗りながらゴーストライダーと総司を見下ろす尊の姿は常よりもどこか楽しげな様子であったが、倒れ伏す総司は悔しそうに歯噛みするしかなかった。

 

「さて、本来なら総司(ソイツ)を守るべきだが……オーマジオウのない総司(ソイツ)に価値は無い」

 

「た、尊……?何の、つもりだ?」

 

ゆっくりと立ち上がった尊は右手を虚空に伸ばすと黄金の波紋を立たせて円柱状の刀身の突撃槍のような剣──乖離剣・エアを取り出し魔力を集中させていく。

 

「何、ここでゴーストライダーを倒さなくてはオーマジオウ()のないこの世界は終わる──ならば、お前を助ける理由は無い」

 

「そ、そんな……」

 

「まぁ、そう言う訳だ──死して拝せよ!『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』!!」

 

魔力が臨界に達し放たれた乖離剣・エアの最大出力はあらゆる「死の国」の原典である生命の記憶の原初の光景を再現したものであり、特典としてギルガメッシュの力を持つ尊の切り札であった。上空から振りかざすように放たれた一撃は一直線にゴーストライダーへ向かって行き爆音と閃光が周囲を包み込んだ。

 

「ふはははは──」

 

「手品は終わりか、道化よ?」

 

「──は?」

 

勝利を確信し高笑いをする尊だったが、目の前の現実に理解が追い付かず、その動きが止まった。だが、究極の一撃を受けて消し飛んだはずのゴーストライダーが左腕を盾にして悠然と立っていた衝撃を考えれば無理もないことであった。

 

「貴様、何故だ!?何故、無事でいる!?」

 

「知れたこと──地獄の再現で()()()()()が殺せるものか」

 

「本物だと……まさか、貴様、特典ではなく、本物の……!?」

 

「本、物……?」

 

ゴーストライダーの言葉から一つの結論に辿り着いた尊は恐怖で顔面が蒼白になるが、痛みと衝撃で頭の回らない総司は困惑するばかりであった。

 

「無駄話が過ぎたな──では、こちらの番だ」

 

「く、くそっ!冗談じゃ──ぶげえっ!?」

 

ゴーストライダーの宣言に逃げ出そうとする尊だったが、ゴーストライダーの左手から伸びたチェーンが首に巻きついてその動きを封じる。そのままゴーストライダーの目の前まで引きずり落とされた尊は抵抗も出来ずに右ストレートを顔面に叩き込まれる。

 

「逃がさん」

 

「ぐえっ!?ちくしょ──おごっ!?」

 

吹き飛ばされそうになった尊だが、ゴーストライダーは無慈悲にも首に巻きついたままのチェーンを引いて眼前に引き寄せると腹部へと打ち上げるような右のボディブローを放つ。防御が間に合わなかった尊の鎧の腹部が砕けてその体はくの字に折れ曲がって数mほど浮き上がった。

 

「墜ちろ」

 

「ごがあっ!?」

 

うつ伏せの状態で落ちる尊は息も絶え絶えと言った様子だったが、それを意に介さず、ゴーストライダーは左拳を右手で包んだダブルスレッジハンマーを頭に目掛けて叩き込む。当然ながら避けることも出来ずに直撃した尊はそのまま地面へと叩きつけられる。

 

「う、ああ……」

 

「ここまでか──では、これで終わりだ」

 

「ぐ、があああ……あ、あぁ……」

 

ゴーストライダーは倒れ伏す尊を眼前に引き上げると、抵抗する力が残っていない尊に贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませる。そして、この世界で歪めた幾つもの魂の報いと自身の犯した罪を一身に受けてその魂ごと肉体が焼失した。

 

「さて──次はお前だ」

 

「ひいっ!?く、来るな、バケモノ!──ぐえっ!?」

 

灰となって消えた尊の姿に恐慌状態になった総司は後ずさって逃げようとするが、悠然と近づくゴーストライダーは首を掴んで眼前へと引き上げる。

 

「黙れ──さあ、俺の眼を見ろ」

 

「い、嫌だ!死にたく、な……い……」

 

暴れようとする総司だったが、抵抗もむなしく贖罪の眼(ペナンスステア)に引き寄せられる。そして、これまで踏みにじった英雄(ライダー)たちの無念とこの世界を歪めた罪、自身の犯した過ちを一身に受けて尊の後を追うようにその魂ごと肉体を焼失させるのだった。

 


 

戦いが終わったしばらく後、ガールズバンドのライブのチラシで溢れる夜の東京。そのはずれにある使われていないはずの倉庫に一人の青年が周囲を窺いつつ入って行くと、中には十人ほどの転生者たちが会合のために集まっていた。

 

「おー、遅かったな?」

 

「悪い、もう始まってたか?」

 

「いや、まだだ──しっかし、俺たちを集めた連中は何をするつもりなのかねぇ」

 

「それは──」

 

出迎えた男の言葉に安堵した青年は疑問に答えようとするが、その言葉を遮るようにコンクリートの壁がぶち破られ入って来たアマゾンオメガが灰になっていた。

 

「な、何だ!?」

 

「あ、あそこに人影が!?」

 

混乱に包まれる転生者たちの前にコンクリートの壁を溶かしながら燃え盛る髑髏──ゴーストライダーがその姿を現すと、転生者の一人がその前に出る。

 

「お前は一体、何者だ?!」

 

「俺はゴーストライダー。転生者(お前たち)を狩るものだ」

 

地獄の底から響くような声で答えたゴーストライダーは獄炎を地面から吹き上げると使命を果たすべく転生者たちへと向かって行くのであった。

 




●#08について
・本物の地獄
これはこのゴーストライダーが刻印由来で再現されたものではない、と言う意味です。その正体や詳細な出自は今後、執筆する続編において明かされる予定です。

・複合世界のその後
核と管理者のいなくなった複合世界では暴れる怪人と戦う<お茶会>のメンバーと共闘する転生者たちがいましたが、戦いを終えたゴーストライダーが怪人を殲滅させて転生者たちの刻印と<お茶会>与えた令呪モドキを回収しました。

・逃げ出した転生者たち
戦いの最中に逃げ出した転生者たちは散り散りになり、その一部がどこかのバンドリ由来の世界に集まりましたが、そこをゴーストライダーが襲撃しました。

●タイトルについて
Dog Eat Dog:共食い
・このシリーズのタイトルとして採用しましたが、元々、ゴーストライダーを猟犬とみなして同類ともいえる転生者や敵である猟犬と戦う姿を共食いと例えた所から来ています。
→逆に言えば、猟犬という呼称はこのタイトルありきな部分もあったかもしれません。
・実は初期の草案では最終章であるVol.11と12のような複合世界だけを舞台にする話でしたが、描けるテーマに限界があったため、今の形になりました。
→そのため、このシリーズではなるべくゴーストライダーの情報を小出しにしつつ、転生者や猟犬との対比を意識して描いたつもりです。

●尊について
関崎尊(かんざき たける)(20歳/男)
・ギルガメッシュ(アーチャー)の能力を特典として得た青年で都内のマンションで悠々自適に暮らしている
・王の財宝を全て扱えるだけでなく、乖離剣エアを扱えるだけの魔力とサーヴァント相当の身体能力を持ち合わせている
・この世の全てを望んでおり、自信の欲望と原点のギルガメッシュの在り方が混ざっている
・最強クラスの猟犬の一人であり、自信も最強を自負しているが、余裕のある時ほど慢心しないため原典よりも厄介度は増している
→上記の気質のせいで総司とは相性が悪い
・どこか達観しているところがあり、原典よりも皮肉屋なところがあるものの、咄嗟の時に眠っている慢心が顔を出す
・世界の守護者たるDED版ゴーストライダーは対粛清防御(のようなもの)を持つため、エヌマエリシュによる攻撃は威力が減衰する
→厳密に言えば権能を振るうことによって抑止力が働き、ゴーストライダーの持つ性質が強化されて対粛清防御として機能している
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