【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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Vol.2:Reckless Fire Part.1
#01


夢を、夢を見ていました。

夢の中の私はどうにもならないことをどうにかしようと抗い続けている人になっていました。

地面から延びる光の柱に飲まれて消えていく街や人、その光景を眺めることしか出来ないその人は強く嘆き悲しみ、その人は祈りながら叫んでいました。強く、何度も……。

 


 

一騎がくぐりぬけたゲートの先にあったのは荒廃した大地と廃墟となったビルの点在する昼間のゴーストタウンだった。軽く辺りを見回した一騎は頭の中にある知識と周囲の環境に違和感を覚えたのか小さく顔をしかめる。

 

(この世界の軸はシンフォギアのはずだが……どう言うことだ?)

 

一騎が訝しむのも無理はない。本来であれば旧リディアン音楽院の校舎の地下にあったカ・ディンギル──の残骸(ざんがい)があるはずの場所だが、そこに廃墟ではあるが旧リディアン音楽院の一部が残っていた。そして、その近辺には形を残したままの廃ビルや()()()()()()()()()()と共に不自然に隆起した地面が存在しているとなればその違いは一目瞭然であった。

 

(転生者の仕業か。しかし、この()()と不自然な隆起は……ゴースト、お前はどう思う?)

 

「(分からん。だが、()るべきでは無い力の残滓(ざんし)を感じる)」

 

頭の中で呼びかけた一騎に対して彼にだけ聞こえる声で返答したのは、彼をゴーストライダーたらしめる相棒であり半身でもあるゴーストと呼ぶ存在である。その超常の力をもってか、辺りを調べたゴーストの言葉に一騎は一つの結論に至る。

 

(なるほど……なら、やることは一つ、か)

 

「(然り、何時もの如くだ)」

 

(情報を集める、か……まったく、儘ならんものだな)

 

ため息を()いた一騎はひとまずの目的として遠くに見える東京スカイタワーへと歩みを進めるのだった。油断なく周囲を見回しながら歩く一騎だったが、数分ほど歩いた所で頭の奥にピリッとした感覚が走る。

 

「(一騎、罪の気配だ)」

 

(転生者ではない──が、()()()()には丁度良いか)

 

静かに、だが、力強く呼びかけるゴーストの声に一騎は感覚の強くなる方向へと足を向けようとする。が、その時。

 

「やめてください!」

 

「(一騎、罪なき者の血が流れるぞ)」

 

(まったく、(まま)ならんな……!)

 

罪の気配の方向から少女の声が聞こえる。少女に迫る危険を感じたゴーストの警告と同時に一騎は内心でぼやきつつも声の方へと駆け出すのだった。

 


 

「やめてください!」

 

周囲を囲む不良──いっそチンピラと言った方が正しいぐらいの4~5人の男たちに囲まれながら、大きな白いリボンが特徴的な黒髪の少女──小日向未来(こひなたみく)は一歩も怯まず毅然と立ち向かっていた。だが、その態度とは裏腹に普段なら来るはずのないこの地をなんとなくで訪れたことを内心では後悔していた。

 

「おいおい、お嬢ちゃんよー。そんなにつれないこと言うなよー」

 

「そーそー、ここは危ないから、オレたちが守ってあげようか、って言ってるだけじゃんかよ~」

 

「ま、そのついでにちょ~っと一緒に遊んでくれればいーからさー?」

 

口々に勝手なことを言いながら笑う男たちの下卑た視線に恐怖よりも嫌悪が先立った未来は、自分でも気づかないうちに2~3歩ほど後ろに下がってしまう。その姿を自分たちへの恐怖と受け取ったのか、男たちは目に見えて調子づく。

 

「ホラホラ、怯えちゃって、カワイイねぇ~」

 

ヒューヒュー、と(はや)し立てる男たちを睨みつけるように見る未来だったが、その中の一人が進み出ると未来の腕を掴もうとする。が、その時。

 

「あの、それ、ちょっと待ってもらえますか?」

 

横合いからかけられた声にその場にいた全員がその声の方を見るとそこにはどこか申し訳なさそうな顔の一騎が立っていた。

 


 

「あの、それ、ちょっと待ってもらえますか?」

 

「(一騎、如何(どう)言う心算(つもり)だ?)」

 

(これが()()()の最善、だ)

 

声をかけたことをゴーストに咎められるが、それをいなしつつ、一騎は努めて申し訳なさそうな表情を作って前に出る。

 

「あ゛!?何だテメェーは!?」

 

「やんのかコラ!!」

 

「いや、その子も嫌がっているようですし、ここは穏便に治めてもらえませんか?」

 

喧々囂々(けんけんごうごう)に文句を言う男たちを前にしてもどこか申し訳なさそうな顔のままさらりと言ってのける一騎に全員が唖然となる。その中で最も未来に近かった男が怒りに任せて一騎へと近づく。

 

「おい、兄ちゃんよー。カッコつけてるとこわりーけどよー、この子は俺らと遊ぶ約束してんのよ」

 

わかったら引っ込んでな、と吐き捨てるように言った男は一騎の肩を軽く押そうとするが、半身になって(かわ)したことでその手は空を切る。

 

「テメェ、ふざけてんのか!?」

 

「暴力はやめましょうよ、ね?」

 

激昂する男に対してさも当然のように(なだ)める一騎。その態度に怒りを深める男は一騎に対して右手で大振りのステレオパンチを打つが、構えも取らない状態の一騎にあっさりといなされる。

 

「ふざけやがって……この野郎!」

 

「やめてください、これ以上は見過ごせませんよ」

 

冷静に(さと)す一騎の姿に周囲は驚きを隠せないでいるが、軽くあしらわれた男は怒りに任せて拳を繰り出すものの、一騎はそれを左腕で難なくブロックしてみせる。

 

「うるせぇ!」

 

「っ……まだ、続けますか?」

 

「ったりめぇだ、コラ!」

 

「いいぞー!」

 

「やっちまえー!」

 

ブロックされたとは言え、一打目を当てたことで勢いづき左、右と続けて拳を繰り出す男。それをブロックするだけの一騎は防戦一方と見た男たちは銘々(めいめい)に騒ぎ出す。

 

「どうした、口ほどにも──」

 

「……仕方ない」

 

しかし、四打目に入るところで一騎は左腕でブロックしつつ前進。調子に乗った男の大振りの一撃が届く前に踏み込んだ一騎の下からの掌打は男の顎を打ちぬく。

 

「ぐげっ!?」

 

打ちぬかれた男は汚い悲鳴とともに勢いでほんの少し体が浮くとそのまま仰向けに地面に倒れた。そのまま男がピクリとも動かなくなったことで周囲は水を打ったように静かになる。

 

「……気絶しているだけです。しばらくすれば目は覚めるでしょうが、病院に連れて行った方がいいでしょう」

 

勝ったはずの一騎は苦々しい顔をしながらそれだけを告げると道を塞ぐ男たちに目を向ける。悲し気な──それでいて射貫くような視線に男たちは意図せずに怯む。

 

「すみませんが、そこを退いてもらえますか?」

 

最初と変わらないトーンで告げられる言葉に男たちがあっさりと道を開けると、周囲の男たちと同じように固まっていた未来に向き直る。

 

「君、早く行った方がいい」

 

どうも、ここは危険みたいだからね、と悲し気な目で促され困惑しながらも進む未来。

 

「あの、ありが──」

 

「がははっ!見事にやられたなぁ」

 

だが、その歩みは一騎たちの背後からかけられた男の言葉で止められた。

 




●#01について
・夢を見ていました
スクライドのアバンと言えばコレと言っても過言ではないフレーズです。それ以外にもちゃんと描写する理由はありますが、明言はしません。

・シンフォギアの世界
ゴーストの能力で訪れた世界の本来の姿を知ることができる設定です。ただ、転生者の介入で世界の状況が変わっている場合が多いため、詳細を調査して一騎自身の知識で特典を見極める必要があります。

・到着地点
原作と状況は違いますが、作中で示唆されている通り転生者の介入による影響とアルター能力由来の隆起現象によるものです。詳しくはのちのエピソードで説明されます。

・ゴースト
一騎の半身とも呼べる相棒で、二人だからゴーストライダーとして活動できています。彼の仰々しい物言いは人間的な枠組みの外にいることを表すためのものですが、読みづらいため、初回のみルビを振っています。

・儘ならんな
一騎の心情を表す言葉ですが、作者の癖なのか作中では度々この言葉をこぼしています。実際、厄介な事態に遭遇することも多いため、象徴するセリフの一つとなりました。

・ピンチに陥る未来
作中では詳しく描写していませんが、この世界の未来はアルター能力に目覚めており、予感や気配のようなものを感じてあの場に行っています。

・VSチンピラ
罪人と戦い罪なき者を守ることもゴーストライダーの使命ですが、相手が超常の力を持たないため、一騎の方も自身の身体能力のみで戦っています。ここは一騎のルールというか作者のこだわりですね。
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