【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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Vol.EX:Inherit Light
#01


眠らない街、東京。そこは深夜であっても(あか)りの絶えない街ではあるが、どんな場所にも例外はある。例えば、再開発区画や都心を少し離れた場所など人気が少なければそれだけ灯りは乏しくなり、闇はその深さを増していく。そして、転生者を探す一騎は郊外にある()()()()()()()()()ガソリンスタンドにいた。

 

(ここはラブライブの世界──のはずだが、飽きもせず牙狼でも選んだのか?)

 

呆れたように内心で呟く一騎だが、店員が一人もおらず周囲に異様な気配が漂うガソリンスタンドにキーが挿しっぱなしで放置された車を見れば否が応でも何か──おそらく特典による敵──に襲われたと考えるのが自然だからだ。そして、彼の経験から言えば、牙狼の敵である魔獣ホラーが相手だと睨んでいた。しかし。

 

「(否、魔の気配は無い。だが、何か異様な波動を感じる)」

 

(波動だと?いや、待て……ガソリンスタンド、残らない死体、波動……まさか──)

 

「(一騎、気配が近いぞ!)」

 

「っ!?こいつは──」

 

ゴーストの予想外の返答に考え込む一騎だが、何かを掴みかけたタイミングで掛けられた警告で右前方に飛び込むと、甲高い鳴き声とともに先ほどまで立っていた場所へと伸びていた触手が空を切った。飛び込んだ勢いのまま前転、振り返りつつ立ち上がった一騎が見たのは前方に大きな口の付いたナメクジやウミウシのような5mほどのぶよぶよした怪物──ペドレオンクラインだった。

 

(やはり、スペースビースト──ネクサスか)

 

「(成程、此れが異生獣の波動──否、魂と呼ぶべき物か)」

 

(言っている場合か。ともかく、ここに長居は出来んな)

 

「(然り、ナイトレイダー(守り手)が居るとすれば我等の障害になるやも知れぬ)」

 

転生者の特典をネクサスと結論付けた一騎に対して目の前のペドレオンが甲高い鳴き声とともに触手を伸ばして襲い掛かる。だが、その瞬間、一騎の肉体が炎に包まれてその姿がゴーストライダーへと変身すると、向かってきた触手を片手で掴んでペドレオンと睨み合う構図になる。本来なら絶好のチャンスであるが、触手を掴んだままのゴーストライダーはどこか攻めあぐねているようであった。

 

(ここで倒すのは簡単だが、振動波をどうするか……)

 

「(一騎、振動波は我に任せろ)」

 

(……出来るのか?)

 

「(然り、既に()()()()())」

 

ゴーストがビースト振動波による情報共有を妨害していることを確認したゴーストライダーは掴んでいた触手を引っ張ると、宙に浮いて無防備になったペドレオンの胴体へと手刀を叩きこみ体内から爆発させる。そのままペドレオンが消滅したことを確認したゴーストライダーはガソリンスタンドの防犯カメラに映らない距離まで離れてから変身を解除した。

 

(まさか、そんなことまで出来るとはな)

 

「(うむ、奴等の振動波とは奴等自身、即ち魂と同質である。故に捉えてしまえば後は容易い物だ)」

 

(なるほど──っと、ナイトレイダーが来たか?いや、あれは……)

 

ゴーストの説明を聞きつつ隠れて周囲の様子を窺う一騎だったが、ガソリンスタンドに現れたのはナイトレイダー──ではなく、黒塗りのワンボックスカー──遊撃車Ⅲ型とも呼ばれる警察車両であり、その中から出てきた複数人の特殊部隊員が周囲を警戒していることに強い違和感を覚えていた。

 

(警察?ナイトレイダーやメモリーポリスが来ないと言う事は……)

 

「(一騎、此れは世界の単純化やもしれぬ)」

 

(なるほど……奴らのことだ、どうせ、大人と関わっていては青春に集中できない、とでも考えたんだろうな……転生者らしい浅はかな考えだ)

 

特殊部隊が来たことで何らかの理由で世界を構成する際に防衛組織の存在が消された可能性を理解する二人だったが、いつも通り覚めているゴーストとは対照的に一騎はいつも以上に怒りを滲ませていた。

 

「(そうやもしれぬ。だが、真実は分からぬ。故に我等は正しく使命を果たすのみ、そうであろう?)」

 

(……そうだな。確かに、ラブライブ(この世界)で防衛組織がない可能性があるなら急ぐ必要がある)

 

「(然り、先ずは如何する?)」

 

(見つからない内にここを離れて情報を集める。行くぞ)

 

ひとまず落ち着いた一騎はゴーストの返事も待たず、静かにその場を離れると、この世界の情報を求めて人の多い町場へ向けて歩いていくのであった。

 


 

翌日、図書館を利用して新聞やネットで世界の変化を調べていた一騎だったが、目当ての情報が集まったはずのその表情はどこか浮かないようであった。

 

(まさか、本当にTLT(ティルト)そのものがないとはな……)

 

「(表立って異生獣の被害が無い事だけは救いであろう)」

 

(あくまで大型の出現が少ないだけだ……おそらく、昨日のような事件が散発的に起きているはずだ)

 

「(然り。とは言え、異星の技術も無く只の人間の力のみで此処まで抑え込むとは……やはり、人の力は底知れぬな)」

 

(当然だ。世界を形作るのはいつだってただの人間の営みだ。無ければある物で何とかするしかないだろう……もっとも、滅んでしまっては転生者(奴ら)に都合が悪い、と言う実情もあるだろうがな)

 

自身の得た情報とゴーストの物言いに内心で頭を抱える一騎だったが、それも仕方のないことである。大型ビーストの出現があった情報が残っている、と言う事は、スペースビーストに対抗するはずの防衛組織であるTLTがないことの証明である。そして、TLTがないと言う事はこの世界では警察や自衛隊などの超常的ではない組織のみでスペースビーストに対抗していることが容易に想像できたからである。

 

(だが、一つだけ分からないことがある。ネクサス(転生者)は何をしている?まさか、政府と協力してスペースビースト狩り、と言う訳でもあるまい)

 

「(然り。昨夜、此の街で特典が使われた気配は無かった。恐らく、異生獣の発生さえ気付いておらぬのだろう)」

 

(だろうな。どうせ、自分の罪を忘れて青春を謳歌しているんだろう……それで、反応は追えるか?)

 

「(然り。彼方(あちら)だ)」

 

分析を終えた一騎は荷物をまとめて図書館を出ると、ゴーストの示した方角へとバイクを走らせる。しばらく走っていた一騎はやがて、反応のあった場所──音ノ木坂学院の見えるところでバイクを止めると、下校する生徒たちの中に何人か男子生徒の姿があることに内心で頭を抱えていた。

 

(……まあ、そうなるだろうな)

 

「(奴等とて居場所は必要なのだろう)」

 

(……そうまでして来たのなら、責任ぐらいは果たすべきだろうが)

 

一騎が頭を抱えるのは当然だ。原典においては音ノ木坂学院は女子校であり、共学になっていると言う事は世界を捻じ曲げた当人がそこにいることを示していたからである。あまつさえ、これまでの情報から、何もせずのうのうと暮らしていることが容易に想像できるからだった。

 

「(居たぞ、奴だ)」

 

(あれか……なるほど、想像通りの間抜け面だな)

 

内心で呆れたように呟く一騎の視線の先にいたのは落ち着いた雰囲気を持つ長い黒髪の少女──園田海未(そのだうみ)と談笑する活発そうな少年──転生者の姿があった。監視されていることにも気付かずに談笑を続ける姿は普通の少年にしか見えないが、その魂から発する刻印の反応が少年が転生者であることを証明していた。

 

「(然り。だが、油断するな、一騎)」

 

(ああ、分かっている──いつも通り、確実に仕留めるだけだ)

 




●#01について
・ビースト振動波
ウルトラマンネクサスに登場する怪獣であるスペースビーストはビースト振動波で情報を共有して適応進化する性質があります。一騎はそれを警戒していましたが、本作ではゴーストの語ったような設定で突破させました。

・存在しないTLT
細かい設定はこの後に書いていますが、転生者の無意識の願いでこの世界には来訪者やダークザギが存在しないため、スペースビーストに対しては現実世界と同程度の技術力で対応するしかない状態になっています。

●この世界について
・スペースビーストの現れる世界だが、防衛隊のような特殊な組織がないため、ネクサス以外は巨大な敵に対処できない
・ネクサスとスペースビーストは別の宇宙から来た設定になっているが、ダークザギや来訪者は存在していない
→警察や自衛隊などが人海戦術で小型の内に掃討しているため、散発的な事件は発生するが、ほとんどは大型になる前に倒している
・スペースビーストの成長が遅いのはスクールアイドルという希望が存在しているからという理由もある
・スペースビーストの生態についてはほとんどわかっていないが、人間の恐怖や負の感情に反応していることは判明している
→対ビースト用の特殊弾が実戦配備される程度にはビースト細胞の研究は進んでいる
→あくまで、通常弾よりマシ程度の威力なため、レーザーなどの高火力兵器の開発が急がれている

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