「ハァッ、ハァッ──くそっ、どこにいる、スペースビースト……?」
その日の夜、転生者の少年──
「っ──今度はこっちか!?」
出ては消える、と言う普段と違う反応に違和感を覚えつつ翻弄される光亮だったが、やがて、人気の少ない公園の近くで反応が止まったことに気付くと専用の武器であるブラストショットを構えて公園に飛び込んだ。
「そこか!……って、何も、ない?」
勢いよく公園に飛び込んだ光亮は困惑していた。なぜなら、彼の目の前には反応の原因であるスペースビーストはおろか、ネコの子一匹存在しない無人の公園があるだけだったからである。
「勘違いだったか?……ま、いいや、明日も早いしそろそろ──」
「帰れると思うか、間抜け」
「っ!?誰だ!?」
周囲を軽く見まわしただけで帰ろうとする光亮だったが、公園の中から掛けられた声に目を向けると、樹木の影から一騎が姿を現した。
「お前たちを狩る者だ」
「俺を狩る?──まさか、ダークザギか!?」
「……まさか、その程度の認識しかないとはな」
一騎の言葉を勘違いしたままブラストショットを構える光亮の姿に呆れた様子の一騎だったが、光亮に向けられている視線からは強い侮蔑は感じられても油断している様子は微塵もなかった。
「……まあいい。俺はお前を狩る、それだけだ」
「くそっ!やられてたまるか!」
冷たく言い放ち光亮に近づく一騎だったが、無防備に歩く一騎に対して光亮はブラストショットを放つ。人間一人を戦闘不能にできるだけの威力を持つ真空波動弾は放たれた勢いのまま一騎へと直進する。だが、その射線を事前に読んでいた一騎は軽く半身になることでその攻撃を躱して悠然と近づいていく。
「避けただとっ!?」
「狙いが甘いな。それでは飛行型には当たらんぞ?」
「うるさい!今度は当ててやる!」
まさか避けられると思っていなかった光亮は驚愕するが、嘲笑しつつ近づく一騎の言葉に気を取り直すと、ポンプアクションで弾を装填すると狙いをつけて再度、一騎へと射撃する。当然、その攻撃は先ほどと同じように避けられる。だが、今度は一騎の避けた先へとブラストショットの銃口が向けられていた。
「当たれっ──っと、うおっ!?」
命中を確信した光亮だったが、トリガーを引く前に一騎の飛ばした指弾によって手元が狂い、目の前の地面へと真空波動弾が放たれる。何もない地面に対してその力を遺憾なく発揮した真空波動弾の余波を受けて足を取られた光亮は受け身も取れずに前のめりに転んでしまう。
「いっ──つつ……この──」
「隙だらけだ」
「まず──うごっ!?」
起き上がろうとした光亮だったが、その隙を一騎が逃すわけもなく、無防備な胴体を蹴り飛ばすと、光亮の体はそのまま数mほど転がって行った。
「力に振り回されるだけの素人め。デュナミストの風上にも置けんな」
「ぐっ、言わせておけば……うおおおおおおっ!」
一騎の言葉に痛みを堪えて立ち上がった光亮は懐から取り出したエボルトラスターを鞘から引き抜くと同時にそのまま前方に掲げる。すると、光に包まれた光亮の体が銀色の戦士──ウルトラマンネクサス、アンファンスへと変身した。
「シュアッ!」
「抗う気概はある、と言う事か。なら、こちらも本気を出そう」
構えを取るネクサスに対して静かに言い放った一騎はゴーストライダーへと変身すると、その姿に困惑した様子のネクサスに向けて悠然と歩き始めた。
「デァッ!」
困惑から復帰したネクサスは腕を振って光粒子エネルギーのカッター光線──パーティクルフェザーを放つが、防御もせずに直撃したゴーストライダーは体に小さく火花を散らしたその攻撃を意にも介さず前進を続ける。
「無駄だ、その程度は牽制にもならん」
「フッ!シュアッ!」
驚愕するネクサスだったが、即座に気を取り直し抜刀のようなポーズを行うと、両腕を十字に組んで合わせたアームドネクサスから放つ光線──クロスレイ・シュトロームをゴーストライダーに向けて放つ。大型のビーストを撃破する威力を持つ基本形態であるアンファンスの必殺技とも呼べる攻撃は悠然と歩くゴーストライダーに命中した。しかし。
「デュアアッ!?」
「手加減して勝てる相手だと思ったか?」
クロスレイ・シュトロームを片手で防ぎつつ放たれたゴーストライダーの火球の一撃でネクサスが吹き飛ばされる。何とか立ち上がったネクサスだったが、目の前に立つ無傷のゴーストライダーに対して拳を構えつつも動けないその姿は攻めあぐねていると言うよりもたじろいでいると言う方が正しかった。
「では、こちらの番だ」
「!?フッ!デァッ!」
ゴーストライダーがおもむろに動き出したことで意を決したネクサスは胸のエナジーコアの前にアームドネクサスを掲げてそのまま腕を振り下ろすと体色に赤が多くなり、胸から肩にかけて生体甲冑の追加された姿──ウルトラマンネクサス、ジュネッスへと更なる変身を遂げた。そして、右手に込めた光を上空に向けて放つと周囲を隔離する戦闘用亜空間であるメタフィールドを展開した。
「なるほど。ようやく全力で来たか」
「シュアッ!デァッ!」
悠然と歩き続けるゴーストライダーに対して体を光らせたネクサスが音速で移動する──マッハムーブでゴーストライダーの背後に回り込むとそのままの勢いでパンチを繰り出す。スペースビーストですら反応するのがやっとの一撃がゴーストライダーへと襲い掛かる。だが。
「!?」
「速度はいい。だが、拳が軽いな」
初めて使った技とは言え、目の前で自身の拳が掴まれていたことに驚愕するネクサスは何とか腕を引き離そうとするが、その動きが仇となった。
「ウッ!?ヘァッ!?デュアアッ!?」
顔面に一発、腹部に一発放たれた拳にネクサスがよろめいたところで爆炎を纏った本命の拳が胸部のコアゲージへと叩き込まれると、拳のインパクトと同時に爆発が起こり、直撃したネクサスが数mほど吹き飛ばされて転がっていった。
「……む?どうした、この程度か?」
「ウ……ヘアッ……」
簡単に吹き飛ばされて倒れこんだネクサスを訝しむゴーストライダーだったが、その困惑も無理はない。何とか立ち上がったネクサスだったが、戦いによる痛みや恐怖などほとんど経験したことのない彼にとっては立ち上がるだけで一苦労だとは思わなかったからである。
「……まさか、戦えない、と言う事はないだろうな?」
「ッ!?」
「そうか──なら、ここで終わらせてやる」
何とか構えを取ったネクサスだったが、その姿から戦いを続ける意思が無い事を読み取ったゴーストライダーはチェーンを伸ばして止めを刺そうとする。
「ッ!?デュアアッ!?」
チェーンから逃れようとするネクサスだったが、力及ばず絡め捕られるとチェーンから伝わった獄炎と爆発でダメージを受けて倒れこみそうになり、コアゲージが赤く点滅し始める。
「グッ──ハァッ、ハァッ──」
コアゲージの点滅──それはネクサスにとって変身するデュナミストの生命力が低下していることを示しており、生命の危機を感じて何とか変身を解除した光亮だったが、既に倒れていないことが不思議なほどの消耗具合だった。
「さぁ、裁きの時だ」
「ぐっ──クソッ!」
裁きを与えるべく悠然と近づくゴーストライダーの姿に恐怖した光亮はブラストショットをガンモードにし、上空に向かってトリガーを引く。すると、光亮の周囲をバリアーが包み、その身を守り始めた
「む──ストーンフリューゲルか……!」
「は、ははは──ざまぁみろ!俺はまだ死なないぞ!」
ボロボロのまま叫ぶ光亮だが、その高揚も無理はない。彼が呼んだストーンフリューゲル──デュナミストにより召喚される石柩でデュナミストを癒す力を持ち、召喚者を守るバリアーを展開する脱出手段の一つでもあったからだ。だが、それを知るゴーストライダーは意に介さずに光亮の元へと走り寄るとそのまま拳をバリアーへと叩き込んだ。轟音とともにバリアーが揺れるが、その表面には傷一つ付いていなかった。
「ひっ!?ど、どうだ!流石にこれは破れな──」
「なら、壊れるまで叩くだけだ」
「──へ?う、ウソだろ……!?」
続けざまに放たれる拳によって次第にひび割れていくバリアー。だが、それが割れる前に上空から差し込む光によって光亮の体はストーンフリューゲルに回収されてどこかへ飛んで行った。
「愚かな。すぐに叩き落して──っ!?」
「(一騎、異生獣の気配だ!)」
(まったく、儘ならんな……!)
ヘルバイクを呼んで追跡しようとするゴーストライダーだったが、女性の悲鳴が聞こえると罪無き者の命を救うためにゴーストが気配を感じた方へと向かうのであった。
●#02について
・いつもと違う反応
ここで発生しているビースト振動波はゴーストの発生させた偽物の振動波です。そのため、周囲への被害の少ない地形へと誘導していました。
・生身で戦う転生者
このシーンで生身で戦おうとしているのはこれまで大型のビーストとの戦闘経験が少なく、小型もブラストショットで簡単に倒せたこと、相手が生身で油断していたことが原因だと思います。
・戦い慣れていないネクサス
せっかく変身したネクサスですが、戦い慣れていないこともあってか、ゴーストライダーには通用していませんでした。ある程度戦い慣れていれば初手でメタフィールドを展開していれば何かしらのダメージは与えられていたかもしれません。
・ストーンフリューゲルのバリアー
原典では破られることのなかったバリアーですが、ゴーストライダーのパワーを考えると状況によっては破壊できてもおかしくなさそうなので、このような形になりました。