【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#03

 

昨夜の戦いで転生者を逃がした一騎は翌日の朝には音ノ木坂の見える場所で転生者が現れるのを待っていた。しかし、既に始業時刻を過ぎているにも関わらず転生者が現れていないことから、張り込みの成果は出ていないようだった。

 

「(一騎、何故、奴を探しに行かぬのだ?)」

 

(奴を追う必要はない。いや、追っても意味はない、と言うべきだろうな)

 

「(如何言う意味だ?)」

 

(昨日の一件を思い出せ。奴は自分が生きるためならあらゆるものを犠牲に出来る。そんな相手をただ追うだけでは同じことの繰り返しだ)

 

ゴーストの問いに対して淡々と答える一騎だったが、その目には転生者に対する怒りと軽蔑が見て取れた。だが、それもそのはず、昨夜、転生者はスペースビーストに襲われる一般人を見捨てて逃げただけでなく、自分が居場所と決めたであろう学校にすら姿を現さないことから、転生者は自分の命以外の全てを犠牲に出来ると確信したからである。

 

「(成程。では、如何する心算だ?)」

 

(奴が出てこざるを得ない状況を待つ……おあつらえ向きにスペースビーストの動きも活発化しているからな)

 

「(ふむ。大型の異生獣が出たとあれば世界を守るために奴も姿を見せる、と言う事か)」

 

(そう言う事だ……まぁ、出てこなければそれこそ奴は逃げられなくなるだろうからな)

 

「(成程。ならば、今は時を待つとしよう)」

 

(ああ……だが、思ったよりも早く終わりそうだな)

 

相談を終えたゴーストが大人しくなったことで空を見上げる一騎だったが、街に漂う不穏な気配に眉をひそめていた。

 


 

その日の夜、光亮は自分の部屋で布団に(くる)まって震えていた。それは転生前を含めても彼の人生において初めての経験であったが、明確な死を与える者のイメージであるゴーストライダーに対する恐怖だけでなく、一般人を見捨ててでも生き残ろうとする自分の醜さから目を背ける無意識の行動でもあった。

 

「……死にたくない……嫌だ、嫌だ……ひっ!?」

 

うわごとのように呟く光亮だったが、突如、玄関から聞こえたチャイムに怯えて頭から布団を被ると必死に目をつぶり、息を殺していた。だが、無情にも玄関が開く気配がして光亮の脳裏に自分を殺しに来るゴーストライダーのイメージが鮮烈に浮かび上がってくる。

 

「フーッ……フーッ……」

 

必死に口を押えて叫ばないようにしているが、既に限界が来ていた。目を閉じて耳をふさいでいても徐々に近づいてくる気配、既に逃げるという選択肢を失っていた光亮は懐に持っていたブラストショットをかろうじて握りしめると部屋の入り口の閉じたままのドアに向けて構える。そしてトリガーを引く──直前で聞こえたノックの音でトリガーにかかっていた指が止まった。

 

「光亮?そこに居るのですか?」

 

「……海未……?」

 

「光亮!?一体、何が──まさか、戦いの影響で……?」

 

ノックとともに聞こえてきた幼馴染である海未の声に少しだけ落ち着きを取り戻した光亮だったが、憔悴しきったその様子を見た海未はウルトラマンとして戦う中で何かあったと思っているようだった。

 

「……あ、あぁ……()()()はヤバい……俺じゃ、アイツに勝てない……」

 

海未の言葉でゴーストライダーの恐怖を思い出したのかまたもや震えだして頭を抱える光亮を見た海未は何かを決意したように小さく頷くと足元に転がってきたブラストショットを拾い上げる。

 

「……大丈夫ですよ、光亮」

 

「──え……?」

 

「私があなたを──みんなを守ります。ですから、あなたはもう戦わなくても大丈夫です」

 

(そうだ……俺一人じゃ戦えない。けど、海未が一緒なら──彼女を守るためなら戦えるかもしれない……!)

 

海未の言葉に顔を上げた光亮はブラストショットを握りしめた海未の瞳に宿る強い決意を見て少しだけ生気を取り戻す。既に折れ切ったはずの光亮の心に小さな意思の力が戻り始める。だが、そのきっかけを得るには少し遅かった。

 

「っ!?これは……?」

 

「エボルトラスターに反応?……マズい、大型だ!」

 

懐から零れ落ちたエボルトラスターが反応していることに気付いた光亮だったが、時は既に遅かった。何かが着地したような振動と轟音のような咆哮は市街地にスペースビーストが現れたことを指し示していた。

 

「っ!?あれは、ガルベロス……!」

 

「光亮!」

 

遠くに見えるケルベロスのような三つの頭を持った大型のスペースビースト──ガルベロスの姿を見た光亮はネクサスに変身しようとする。しかし。

 

「──っ!くそっ……!」

 

「……光亮?」

 

(ダメだ、ここで変身したら、()()()に見つかる!くそっ、どうすれば……)

 

腰に構えたエボルトラスターを引き抜けない光亮。その心中にあったのは戦わなければならないという使命感よりも自らの保身が上回っているようだった。そして、動けないでいる光亮の手を海未の手が握りしめた。

 

「逃げましょう、光亮」

 

「いや、でも……」

 

「あなたが戦わなくても誰かが戦います!どうしてあなただけが苦しまなくてはならないのですか?!」

 

「──それ、は……」

 

海未の言葉にエボルトラスターを取り落としそうになる光亮だったが、寸でのところでわずかに残った使命感がその動きを止めていた。事実を告げるか黙って逃げるか迷う光亮。実際にはほんの数秒だったが、光亮にとっては永遠にも思える時間だが、その逡巡は更なる振動音によって遮られた。

 

「な、なんだ一体!……あれ、は──」

 

「燃える、骸骨……!?」

 

驚愕する二人の視線の先にあったものはガルベロスとそれに対峙する同じサイズの燃える骸骨──ゴーストライダーの姿だった。

 




●#03について
・スペースビーストの活発化
これは冒頭のペドレオンと転生者との戦いの直後のスペースビースト(おそらくビーストヒューマン)の二件が連続していることを指し示しています。また、ビースト振動波を感知できるゴーストは既にガルベロスの発生も予期していました。

・怯える転生者
これまで戦いらしい戦いをしてこなかった転生者にとってゴーストライダーは初めて自分を脅かした存在で畏怖の対象になりました。また、この辺りの描写はネクサスのOPである「英雄」の歌詞にかかっている部分があります。

・巨大化するゴーストライダー
作者の活動報告で行っていたアメコミキャラ紹介を読んだ方ならご存じかもしれませんが、ゴーストライダーには巨大化する能力があります。正確にはサイズを変更する能力らしいので、もしかしたら本来よりも小さくなることも可能かもしれません。
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