ガルベロスが現れる少し前、大型のスペースビーストの出現を察知していた一騎はその近くで待機していたが、ガルベロスがその姿を現してもネクサスが動く気配が無い事で呆れ果てたのか、小さくため息を吐いていた。
「(一騎、如何やら予想が的中したようだな)」
(ああ……だが、ここまで腑抜けだったとは……むしろ、追い詰めた方が楽だったかもしれんな)
「(否。我等の戦いに罪無き者は巻き込めぬ。慎重に過ぎる事は無いであろう)」
(そうだな──なら、そろそろ
世間話のような調子で分析を終えた一騎は咆哮を上げるガルベロスを一瞥してからゴーストライダーに変身すると、見る見るうちにその体が大きくなっていき、ガルベロスと同程度の大きさになってその進路上に立ちはだかった。
突如、目の前に現れた障害物に対して威嚇の咆哮を上げるガルベロスは邪魔だとばかりに火炎弾を吐き出す。違う世界での戦いにおいてはネクサスジュネッスを苦戦させた一撃。だが、その威力を知ってか知らずか防ぐそぶりもしないゴーストライダーはそのまま火炎弾の直撃を受け、黒煙に呑まれる。
歓喜の雄たけびを上げるガルベロスだったが、その喜びも長くは続かない。突如、黒煙を割いて伸びてきたチェーンに引き寄せられて体が宙に浮かぶと、そのまま黒煙の中から現れた無傷のゴーストライダーによって中央の首を掴まれて空中に持ち上げられた。必死にもがくガルベロスだったが、ゴーストライダーの腕はびくともしていなかった。
「(愚かな。我等に炎が通じるとでも思ったか?)」
(何を言っても無駄だろう。所詮、こいつらは獣だ……それに、もうすぐ終わる)
常人には聞こえない念話のようなもので冷たく言い放つゴーストだったが、その行為を無駄だと切り捨てるゴーストライダーは左手で持ち上げているガルベロスに対して容赦なく拳を叩き込み続けていた。一方的な戦闘──作業を続けるゴーストライダーの言葉通り、やがてガルベロスは吠える力もなくなり、力なく持ち上げられているだけになっていた。
「(ふむ。既に振動波は抑えている。我は罪人を探しておこう)」
(分かった──いや、もういい)
端的に会話を終えたゴーストライダーはガルベロスを獄炎で包み込むと、振動波を抑えたまま灰すら残さずに焼き尽くした。そして、周囲を見渡すと、市街地の一角でその動きが止まった。
「(一騎、奴は──)」
(ああ、今、見つけた)
ゴーストの報告を遮ったゴーストライダーの視線の先には先ほどの戦いを見上げていた少年──光亮が見られていることに気付き、走り出す姿があった。
「ハァッ、ハァッ──」
ゴーストライダーとガルベロスの戦いを見るために海未を振り切っていた光亮は変身せずとも見つかった自身のミスを悔やみながらどこへともなく逃げていた。本来なら海未のいる自宅か人の多い街中に逃げるべきであったが、彼の中に残っていたわずかな理性がそれをさせないでいた。
「ハァッ、ハァッ……流石に、ここまでくれば──」
「準備運動か?結構なことだ」
「──ッ!?」
どこをどう走ったのか、工事の中断しているどこかの空き地に辿り着いた光亮はひとまず呼吸を調えようとするが、背後から掛けられた声に視線を向けると、追跡に使ったバイクから降りて歩いてくる一騎の姿があった。悠然と歩くだけの一騎だったが、光亮は恐怖と動揺で動けなくなっていた。
「どうした?その力は使わないのか?」
「っ!言われなくとも!このおおおっ!!──え?」
一騎の挑発に対して必死に心を奮い立たせた光亮はエボルトラスターを引き抜いて変身しようとする。だが、何故かエボルトラスターを引き抜くことが出来ず、鞘に収まったままであった。
「な、なんで……?」
「簡単だ、お前は光に見放された。それだけのことだ」
「う、ウソだ!くっ!このっ!」
静かに歩みを進める一騎の言葉に愕然とする光亮はその言葉を否定するために何度も鞘から引き抜こうとするが、一ミリも動かないエボルトラスターの姿は無情にも一騎の言葉が正しいことを証明していた。
「時間切れだ」
「なんで──だばっ!?」
諦めが悪いのかなおも変身しようとする光亮だったが、目の前に来ていた一騎に気付かず、体重の乗った右の拳が顔面に突き刺さると、受け身も取れずに殴り飛ばされた。
「ぐ……俺の力を、返せよぉっ!──おげっ!?」
何とか立ち上がった光亮は走りこんで一気に距離を詰めると、勢いだけのテレフォンパンチを放とうとする。しかし、その動きを読んでいた一騎はパンチを受け流すと、その勢いを使ったカウンターの背負い投げで光亮を投げ倒した。
「遅い」
「ゲホッ──うおっ!?くそっ、容赦なしかよ……!」
「当然だ。罪人にかける情けはない。ましてや、我が身可愛さに命を見捨てるような下郎にはな」
倒れこんだままの光亮の顔面に対して一騎の右足が踏み降ろされそうになるが、寸でのところで転がったことで顔面が踏みつぶされる事は無かった。しかし、昨日の戦いの傷も癒えておらず、精神的にも追い詰められた光亮は既に立ち上がるだけでもやっとのようであった。
「俺の何が悪いんだよ……生き残ろうとして何が悪いってんだよ!!」
「それ自体は悪ではない──だが、何かのために立ち上がれないお前に光はない」
「あ……!」
「そして、自らの行いに向き合わないことがお前の罪だ」
もはや何もできず、ボロボロのまま居直る光亮の言葉に対して何の感情もなく、冷たく言い放つ一騎だったが、その言葉に光亮の心の奥底にあった何かが噛み合い始める。
「そう、か……でも、光がなくなったなら、この世界はどうなるんだ?」
「安心しろ。光は絆だ。誰かに受け継がれ、再び輝く──それこそがお前の望んだ力だ」
「あぁ……そうか、そうだったのか……俺がするべきだったのは……」
一騎の答えに対して何事かを納得した光亮。その瞳には戦いの前にあった恐怖や怯えはほとんどなくなっているようであり、既に戦う意思は残ってはいなかった。
「さぁ、罪に向き合う時間だ」
「……くそっ、もっとヒーローらしくしておくんだったなぁ……」
ゴーストライダーに変身した一騎は立ち尽くしている光亮の目の前に来ると、胸倉を掴み
「(此れで、また一つ復讐が果たされたな)」
(ああ……さっさと次の世界に行くぞ)
「(待て、大型の異生獣の反応だ)」
使命を果たしたゴーストライダーが次の世界へのゲートを開こうとするが、その前にゴーストが気配を察知したスペースビーストである大型化したペドレオンクライン──ペドレオングロースが先ほど戦っていた近くに現れる。だが、ゴーストライダーはそちらの方も見ずにゲートを作り出す。
「(如何した?放っておく心算か?)」
(いや、既に光は受け継がれた。俺の出番はもうないだろう)
「(成程。ならば、後は新たな適能者に任せるとしよう)」
ゲートを抜ける前に一瞬だけ振り返ったゴーストライダーはペドレオングロースの前に立ちはだかる青の戦士──ウルトラマンネクサス、ジュネッスブルーがメタフィールドを展開して両者の姿が消えて行く光景を見ると、そのままゲート抜けて次の転生者がいる世界へと向かっていくのであった。
●#04について
・番犬VS猟犬
本来、ガルベロスには再生能力がありますが、再生力を上回る攻撃を連続で叩き込まれてしまえばどうすることも出来なかったようです。また、復活しないように完全に焼却させられたため、今後、同一個体が復活することはないでしょう。
・光に見放された
原典において同様の事態は発生しませんでしたが、光自体が意思を持っているようだったので、ゴーストライダーやガルベロスから逃げて立ち向かうことをやめた転生者からは光が離れるのではないか、と思ったためこのような形になりました。
・光は絆だ
原典における名台詞の一つです。その言葉通り、転生者から離れた光は彼の代わりに戦うことを決意した海未へと受け継がれたことになっています。ちなみに、メタ的には設定段階で特典と世界を決めた時に連想したのが海未だったので、この形にしましたが、後になって三森すずこさんがジードに出ていることを知ったので、知っていればネクサスじゃなくてジードだったかもしれません。
●タイトルについて
Inherit Light:受け継がれる光
・今回は何のひねりもなくド直球にネクサスそのもののことです。
・完全書き下ろしなので光そのものの資質と光が受け継がれていくことを描く以外は凝ったことをしないつもりでこのタイトルにしました。
・ちなみに、今回の書き下ろしがEXなのはネクサスの特別編の話数がEXだったから、と言う地味な小ネタも含まれています。
●転生者について
真継光亮(まつぎ こうすけ)(17歳/男)
・変身できる共学になっている音ノ木坂に通うデュナミストの高校3年生で元は社会人の男性
・ウルトラマンXで見たことでネクサスにハマったため、その力を受け継いで何かを為したかった
・強化タイプはジュネッスだが、大型のスペースビーストに出会ったことは1~2回しかないため、戦闘経験はほとんどない
・極稀に大型のスペースビーストと戦う以外はたまに見かける小型を倒していたが、数が少ないため、積極的には動いていない
→実際は公的機関が人海戦術で中型までを倒しているため、希望の多い地元から出ない転生者の周囲には発生しにくかっただけ
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Vol.1 牙狼×バンドリ
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Vol.2&3 スクライド×シンフォギア
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Vol.4 デッドプール×緋弾のアリア
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Vol.5 スパイディ×ヒロアカ
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Vol.6&7 聖杯戦争編
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Vol.8 ゼロワン×SAO
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Vol.9 積層世界編
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Vol.10 猟犬×ごちうさ
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Vol.11&12 複合世界編
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Vol.EX ネクサス×ラブライブ