【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#02

「がははっ!見事にやられたなぁ」

 

「!?」

 

「ビ、ビフ君」

 

(……あの見た目、まさか、いや、確実にそうだな)

 

不意に後ろからかけられた声に一騎と未来が振り向くと肥満体の男──ビフが立っていた。その巨体と名前から導き出される正体に感づいた一騎は庇うように未来の前に立つ。

 

「ぎひひ……がはは──」

 

「やべぇ……」

 

「ビフ君が笑ってる」

 

急に笑い出したビフの姿の異様さに恐怖する男たちと未来だったが、大凡(おおよそ)の状況に察しの付いた一騎は半ば無駄だと思いつつ口を開く。

 

「あの、このまま放っておいてもらえませんか?」

 

「あ”っ!?──叩き潰してやるうぅるららぁ!」

 

(まぁ、そうなるだろうな……)

 

一騎の言葉を挑発と受け取ったのか、激昂するビフの体が発光すると衝撃音とともに周囲の地面や壁面が分解されていくつかのクレーターが作られる。その前兆に身の危険を感じた男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。

 

「マ、マジかよ!?」

 

「逃げろぉー!!」

 

(……発光と分解、やはり──)

 

「(来るぞ、一騎)」

 

(──()()()()、か)

 

分解に呼応するように灰色で楕円(だえん)の球体状の胴体が形作られ、4つの足が形作られる。その過程を見ながら、動けずにいる未来を庇いながらじりじりと後ずさる一騎。

 

「うららららら!!」

 

(彼女を庇いながらでは戦えん、か)

 

徐々に形作られる異形を横目に未来の方を見る一騎。その姿は未だ全貌(ぜんぼう)の見えない異形の巨大さに脅威を抱いているが、恐怖で動けない、と言うことはなさそうだった。

 

「君、走れるか?」

 

「はい、でも──」

 

「合図したら全力で走って助けを呼んで来てくれ」

 

どうやって、と言いたげな顔の未来だったが、出来るかい?、となるべく優し気な声で問う一騎に対し、動揺しながらも未来は力強く頷く。迂闊(うかつ)に動けないでいる二人の前で異形の右腕に大型のハンマーが形作られる。

 

「でやぁ!!」

 

(あと少し……一瞬だ、一瞬を待つ)

 

冷静に見極める一騎の前で右腕と比較すると小さな三本指のアームと二つの目がついた小さく丸い顔が形作られる。そして、ついに完成したこの世界に存在しないはずの巨大な異形──アルター、NRハンマーはその名の通り右腕にある巨大なハンマーが特徴的な大型ロボットのような姿をしていた。

 

「今だ!」

 

アルターが完成したことでビフの気が逸れた一瞬、その絶妙なタイミングでかけられた合図で一気に走る未来。だが、既に一騎しかビフの目に入っていないのか、走り去る未来の後ろ姿には目もくれなかった。

 

「覚悟しろ!これが俺のアルター、ハンッマーだあぁぁ!!」

 

(まぁ、好都合、だな)

 

高らかに宣言するビフは左手のアームで自身を掴み、安全を確保する。相対する一騎は構えも取らず、ただアルターの姿を眺めていた。

 

「さぁ、次はお前の番だ。持ってるんだろ、アルター?」

 

一騎の態度をアルターを持つ余裕の表れと見たのか、挑発をするビフだったが、そんなビフに対して先ほどと違って冷たい視線を向ける一騎。

 

「アルター?そんなものはない」

 

「あ”!?」

 

「それに──」

 

冷たく言い放つ一騎の態度に激昂するビフ。自分に注意を向けさせるために一度、言葉を切ると、あえてビフに視線を合わせる。

 

「──その程度なら一撃で十分だ」

 

「ッ!?……ぶっ潰してやるうぅ!!」

 

怒髪天(どはつてん)()くように怒り狂うビフはアルターの右腕のハンマーを勢いよく叩きつける。が、それより早く駆け出していた一騎はその一撃を避けつつ、正面右手──ビフの左側にあるガラス扉をぶち破って元オフィスビルの中に突入する。

 

「グッ!?……ちょこまかとぉ!!」

 

アルターの上半身を捻らせたビフがハンマーを打ちこむと一騎の突入したビルが呆気なく崩壊する。しかし、体を動かした分、タイムロスがあったのか、既に窓を破って飛び出していた一騎は、横目で未来の走った方を見つつ、アルターの足の間を抜けて背中側へ滑り込んでいた。

 

(彼女は──)

 

「(逃げ延びたようだな)」

 

(流石は元陸上部、と言ったところか)

 

横目で未来の後ろ姿がほとんど見えなくなっていたことを確認した一騎の動きが一瞬遅れる。それどころか、悠長に立ち上がって埃を払っている姿はビフの力を(あなど)っていることを如実に示していた

 

「ハンッッ……マァァーーー!!」

 

正面に一騎を捉えたビフの渾身の一撃、彼のこれまでの人生の中でもトップクラスに入る会心の一撃だった。しかし、その一撃は()し潰されるはずの存在によって軽々と受け止められていた。

 

「そんなあああ!!」

 

「なるほど」

 

驚愕するビフ。それもそのはずである。ただの人間だと思っていた男が異形(ゴーストライダー)に変身していれば、その存在を知らずとも畏怖(いふ)すべき対象だと理解するからである。そして、それが己の最大の一撃を防ぎ、今なおアルターの動きを封じていることを加味すればその心理的衝撃は想像だに難くない。

 

「お、俺の、アルターが……」

 

「やはり──」

 

地獄の底から響くような声とともに動けないままのアルターの右腕へとゴーストライダーの右ストレートが叩き込まれる。業火を纏ったその拳は一撃でアルターを半壊させ、余波だけで左手に居たビフを吹き飛ばして脇にある廃ビルにめり込ませる程の威力であった。

 

「あ、あぁ……」

 

「──この一撃で十分だったな」

 

アルターが半身を砕かれつつ業火で溶け落ちたことで遮られていた日の光が差し込んでくると、日の当たる場所から一騎の姿は元に戻っていった。だが、アルターを破壊され気絶するビフを冷たく一瞥(いちべつ)するその姿からは最初の申し訳なさそうな姿は想像できなかった。

 

「さて──」

 

不意に口を開いた一騎に溶けてなくなったNRハンマーの後ろにいた男たちがビクッ、と震える。

 

「──お前たちはどうする?」

 

そして、冷めた目のまま男たちに問いかけた一騎は悪魔のように酷薄(こくはく)に笑った。

 




●#02について
・ビフ
スクライドよりゲスト参戦です。本来ならこの世界には存在していませんが、前話のホラーのように転生者の敵となるアルター使いとしてこの世界に生まれました。

・元陸上部さん
ムーブとしても問題なさそうなので原典での活躍から走ってもらいました。一応、一騎の変身は見えませんでしたが、あの大きさなのでハンマーがやられる姿は見えていたと思います。

・NRハンマー
最初は劉鳳をイメージしてディレイ・オクトパスを生身のまま倒させるつもりでしたが、絵面が地味だったので現在の形になりました。
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