「驚愕ッー?!彼は元トレーナーなのか!?」
「でも辞めた…って…」
「彼は…」
乙名史が喋ろうとした時だった…。
「って居たぁぁぁぁあ!!!」
叫ぶルドルフ。
「おう!?!?」
びっくりする男。
「き、君は…ゼー…さっき……のハー…」
彼からしたら…いきなり集団が走って迫って来た。
ゼーハーゼーハー言いながら迫って来た…。
ここ数日で1番恐怖だったと語る。
俺何かしたかな?
アレ?さっきの子達じゃん…締めに来た?
やりにきたの?
「お、落ち着いてえええ!?」
「確保おおおおお!!!!」
「「「「ガッテン!!」」」」
「え!?嘘っ!モゴッ…オオオオオ!?!?」
これを世間では拉致と言う。
まあ…敵うわけないよね?
目隠し、腕縛り、麻袋
凡そ、ドラマで見る誘拐劇に似た強奪は敢行された。
ガラガラと揺られて運ばれる。
車かな?
なんてあんなに考えていたり……
あれ?止まった?
え?何?やっぱり殺される?
まずかったかなあ…アレは…
「死ぬなら…一思いにやってくだせえ…」
「いや…殺しませんから…」
ざわつく声が聞こえた。
目隠しを取られると…
部屋の中には…数名のウマ娘?らしき子達と拉致の実行犯が立っていた。
おい、乙名史記者よ…目の前で事件が起こったぞ?
てか…アンタも加担したよね?
と言いつつ…何を言われるか分かってる…。
うん、ばかでもわかる…
でも…
「…進言ッ!急ですまないッ!率直に言う」
「私の学園でトレー「トレーナーならやりませんよ」
「…どうしてです?」
「…乙名史さんと知り合いなら聞いてたりしませんか?」
「私は何も言ってないですよ」
「…俺は……もう出来ないんです」
乙名史は喋り始めた。
「彼は…ブラック学園の新人トレーナーでした」
「確か…この前に廃園になりましたよね」
たづなが相槌を打つ。
「厳しい練習を課して潰れるウマ娘が絶えなかったとか…内部告発と………あぁ!!」
ルドルフの目の色が変わった。
「そう…彼ですよ」
「ウマ娘をめちゃくちゃにした…外道男ッ」
ルドルフは彼を睨みつける。
「………」
「お前はッ!!数多くのウマ娘の夢を奪った犯人じゃないかッ!!」
「ダメだ理事長…!そんな奴にトレーナーは任せられない!」
ザワつきが大きくなる教室内。
「……」
「何とか言えッ!!」
彼に掴みかかるルドルフ。
「違います…」
乙名史はポツリと言った。
「逆なんです…」
「彼は…助けたんです」
「は?」
「……あるところにだ…とある人が居た」
フツーに暮らしてフツーに居た男だ。
ある日目が覚めたら…ウマ娘と言うのが走る世界に居た。
右も左も分からん中で必死に生きようとした。
やさぐれながらも…
そんな時出会ったんだ…ウマ娘に。
彼女達は華奢な体で栄冠の2文字の為に頑張って走っていた…。
その姿に心打たれて…俺も頑張ろうと思ってそいつは頑張り続けた。
ある時、男はひょんなことからブラック学園にトレーナー補佐として就職した。
そこは名門と言われる所で…
まあ噂通り、キツいキツい練習を課す所だった。
メニューを熟せない、タイムが上手く縮まらない子には容赦なかった。
初めて担当になった子が居た。
俺なりにその子に合ったメニューを考えて…頑張っていた。
でも…学園はそれでよしとはしなかった。
陰で無茶なメニューを課していた。
それに気付かなかったトレーナーは……。
ある日その子が怪我をした。
医者は言った。もう走れないよ…って。
その子は泣いたよ。
泣いて…辞めて行った。
「その後は…」
「死んだらしい」
「貴様ッ…」
「俺は暴れたよ」
「内部告発もした」
「でも俺は無力だった」
「全部俺に被せられて……俺は追放された」
「私達もその事は知っていたんです」
「でも…上層部に握りつぶされたんです」
「……」
「だから関わるのは辞めようと思ったんだ」
「信じられないないだろう?俺に関わってもろくなことにならないよ」
懸命に頑張る子を壊すのは許せなかった。
「なら何故…あの子を助けた」
「何のことかな」
「関わりたくないなら…何故あの子を助けた!関係ないなら放っておけば良かったんだ」
「出来るわけないだろう!!」
彼は言った。
「…あ…いや、何でもない」
「逃げるのか?」
「なっ!?」
「汚名を着せられて…逃げるのか?精一杯やり返そうと思わないのか!?」
「俺には出来ないッ!!」
「何故!?」
「その資格も力もないッ!!」
「…なら一つ聞きたい…。何故お前はトレーナーになった!?」
「ヤケクソに頑張る中で…ウマ娘に…頑張る事を教わったから……頑張る子には高く飛んで欲しいから……」
「お兄さん…」
「あの…私…上手く言えないんだけど…」
「お兄さんが帽子を取ってくれた時…見えたの」
「何が?」
「輝く…何かが」
「輝く…何か?」
「……ッ!ライス…それは」
「お兄さんが沢山の皆に囲まれて…よくやった!って皆を迎えてるの」
「きっと夢……じゃない」
「私に見えた…」
ルドルフに見えたらしい。
「提案ッ!!なら…ここで示せッ!!」
「私も君に大きな何かを見たッ!!」
「私達が君を守る…!だから!この子達を高く飛ばせてくれないか!?」
「なっ……」
「……鵞堂さん」
「次は私も一緒に戦います」
「あなたが…素晴らしいトレーナーである事を知ってもらう為に頑張ります」
「だから…」
「ここから始めませんか?また一度…」
「良いのか?」
「俺なんかで良いのか?」
「周囲の目は厳しいものもあるだろう…」
「ここが何と言われてるか知ってるか?」
「灰被りのダイヤ…グレーダイヤ」
「グレーダイヤ…」
「君が磨いて…輝かせてくれ」
と理事長が手を出してくる。
「……後悔しないでくださいね」
「承諾ッ…任せろ!」
「灰だらけなのはお互いだよ」
ルドルフが笑う。
俺はその手を取った。