俺は酷く後悔している。
ほぼ焚き付けられた形で承諾したけれども…
世間で言う俺は大悪人。
真実は俺の中にあっても其れを知る人は少ない。
それが俺につけられた名前。
グレーダイヤ…
灰被りのダイヤモンド。
埋れに埋もれた輝きを知らないダイヤモンド…。
無冠で目立つことの無い彼女達についたあだ名。
それでも彼女達は懸命に頑張るんだろう。
その遠い遠い栄光を夢見て飛ぼうとするのだろう。
数名はキラキラした目でこちらを見ていた。
数名は諦めた目でこちらを見ていた。
ダメだ…やっぱり出来ない。
彼女達にこれ以上不幸な目にあってほしく無い…
世間から冷たい風に凍って欲しく無い。
よし、やっぱりやめようと言いに行こう。
教室のドアに手をかけた時だった。
「私は…運命を信じるよ」
なんて声が聞こえた。
「…なんて言うかなあ…ビビっと来たんだよお」
「ああ、この人なんだ…って」
「ねえ!会長」
「あぁ…うん、そうなんだ…何か光るものを感じた」
「でも…あの人は…悪魔なんでしょ?」
「そう言われてるな」
「なら…私達も同じように」
「そんな事ないよ!!」
ライスが叫んだ。
「こけながらでも…帽子を守りながら取ってくれて!怪我させたくないからって悪役になっても…助けてあげてたあの人が…悪い人な訳ないよ!」
「ライス…」
「でも世間の声は…昨日調べたけど…凄い言われようだよ」
「私達だって同じだよお!灰被りだなんて言われてる…」
「なら…私達が輝いたら…あの人と一緒に輝いたらきっと変わると思うんだ」
「私は…お兄さんの為に走りたいッ」
「………」
鵞堂 誠……誠は言葉が出なかった。
ライスちゃんが…俺の為に走る…?
たった一回出会っただけの俺の為に?
帽子を拾っただけの俺に?
「ゾクゾクしたんだ!アイツが…ウマ娘の故障箇所や適性を当てた時に…こんな気持ちは初めてだった」
「見られるんじゃないかと思うんだ…テッペンの景色とやらを」
カイチョーちゃんまで……そんな…
「奇遇ッ!!どうしたのかな?トレーナー君」
「理事長…」
「辞めたい…かな?まあその気持ちも推察できる」
「…ここは、小さな学園なんだ」
「他の素晴らしい設備や人材が揃った強豪校では無い」
「だが……彼女達は本気なんだ」
「本気で人生を懸けて夢を見るんだ」
「一着というものを目指して」
「命を燃やして走るんだ」
「例えッ!灰被りと言われても…夢見るッ!栄光を掴む日を」
「想像…ッ!私にも見えた!君が…君が育てた彼女達が大地を駆け抜けて…それを掴むのを」
「拝聴ッ!!聞かせてくれッ!真に問いたい!!!」
.
「君の夢を…ッ!君がトレーナーになった時に持った夢をッ!」
「この声は…理事長…?」
こっそりと外を覗いてみる。
理事長の向かいに誠さんが居た。
「辞めるなら…辞めても構わない…重圧だろう!この仕事を受ける事は…」
「だが!聞かせて欲しいッ!!君の夢を…!!」
夢……
俺がトレーナーに…補佐になった時の気持ち…。
『トレーナーさん!一緒に頑張りましょう!!』
『栄光は遠いですけど…トレーナーさんとなら!きっと良い景色だと思うんです』
『今しかないから必死に走るんです』
『私は行きたい!あなたと!その先に…あの向こうにッ!!』
[あなたと見たかった…その景色は…私には出来ませんが…きっと見てください]
「見たいんだ…」
「……?」
「「「「「何を…?」」」」」
何が見たい……の?
シーンと壁に耳を当てる皆皆。
「見たいんだ…栄光って奴を…」
「掴んだ奴にしか見られないその景色をッ!!」
「頑張ろうって…生きる希望をくれた彼女達と一緒に見たいんだ!!」
「彼女達が高く…高く飛んで行くのを!見たいんだッ!!」
「灰被り?上等だ!!俺は外道だ悪魔だ言われてるんだ!!」
「俺が皆を輝くダイヤモンドにしてみせる!!」
「きっとそれを運命と呼ぶんだろう」
「…その為に力を貸して欲しい」
天晴れ!と書かれた扇子を広げて理事長はニコリと笑って言った。
「待っているよ…彼女達は…この向こうで」
この扉は…俺の未来への一歩…。
輝く栄光を掴む為に…彼女達に輝きを知ってもらう為にッ!!!
ガララッ…
「おはようッ!!俺は鵞堂 誠(げどう まこと)」
「俺と一緒に…頂上…目指さないか!?」
あるぇ?
思ってたのと違うぞ?
何でみんな…俯いて震えてるの?
寒すぎた?ウケた?
どっち?
ルドルフが涙目で握手を求めて来た。
「以前はすまなかった……よ、よろしく…」
ああ…くだらなさ過ぎて…ごめん…。
泣かないで……
誠がとぼとぼと理事長に手続きがあると言われて連れて行かれた後の事。
「…心がざわついたよ…」
「運命…かあ」
「うん…まさかあんなので涙が出てくるなんて…」
「明日から頑張ろう…!!」
「…受けは良かったようですよ?誠さん」
たづなさんが笑いながらお茶を出してくれた…。
「嘘ダァ…滑りましたよ…」
「おむかれさまでしたー」
「危機ッ!少し泣きかけた」
「あんなに真っ直ぐなトレーナーさんて居るんですね」
「楽しみ…ですね!」
ここから始まる…
ダイヤが輝くまでのお話。
三分割しました!
次回からまともにウマ娘が走ると…思います。
ゆっくり更新にはなりますが…
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