灰被りの為の舞踏曲   作:ふかひれ

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書き溜めの連投ですー!
このライス編は全投下予定です!


5話 ライスはヒールじゃないよ ②

「何だよそれッ…おかしいだろ」

俺は震えた。汚い方法を使ったわけでもない。

なのに…彼女は心に大きな傷を負ってしまった。

無意識に力を抑えるようになった。

 

何故…懸命に頑張る子を平然と貶せる?

 

何故…よくやったと言えない?

 

 

「…だからね?ライスが頑張ったら…()()()()()()()()()()()()

 

「皆も怒られるし…何より怖いの」

「不幸になってほしくないの」

 

 

「全力でぶつかって…勝った時の事思い出せるか?」

 

「ううん…」

 

「ライス…辛かったな」

ポス…と頭に手を置かれる。

よしよし…と温かい手で撫でてくれた。

 

怒ってる…お兄さんは怒ってる。

私の為に…。

 

 

 

「ライス」

 

「ひゃい!?」

その撫で撫での気持ちよさに一瞬我を忘れていたライス。

呼び声でこの世にカムバックして来た。

 

 

 

 

「来週の大会…勝とう」

 

 

「ええ!?」

「む、無理だよ!私がやったら…皆…不幸になるよ」

 

 

 

「…確かに不幸になるな」

 

 

「…ッ!!…ごめんなさ「やらなきゃお前が不幸になる」

 

「え?」

 

 

「…周りなんかどうだっていい…俺はお前が勝つと信じてる。全力で挑まなきゃ…失礼だしな」

 

「周りがうるさいなら…黙らせてやれ!ヒール?違う!お前はヒーローになるんだ」

 

「ひーろー?絵本みたいな?」

 

「そうだ!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺の為に勝ちたいと言ってくれただろう?」

 

「え、あ、うん」

顔を真っ赤にするライス。

 

 

「その言葉に俺は…勇気をもらったんだ」

「お前に救われる奴はここに少なくとも1人は居るんだ」

 

 

「私が…?」

 

 

「俺がお前のファン1号だッ!」

 

 

 

 

 

「お前は1人じゃない!俺の気持ちも連れて行け!2人で走ろう」

 

 

下馬評がなんだ!

クソ喰らえだ!

やっちまおう!そんな奴らをねじ伏せてやろうッ!!

 

 

「…ッ!!」

 

 

 

荒唐無稽な話だ。

そんな言葉で立ち上がれる奴なんかそうそう居ない。

心が折れた奴に精神論を説いても意味はない。

ましてや、彼女は知っている。その恐怖を身をもって知っている。

だから、周りも気を遣って何も言わない。

気づかないふりをする。

今迄のトレーナーですら気付かない機微に気付いた彼は違った。

 

言ったのだ。

全力を出して勝たないと失礼だと。

下馬評も罵倒も覆すくらいに…黙らせるくらいに勝ってやろうと。

 

 

 

俺の心も連れて行け…2人で走ろう…と。

 

 

どんな人もそんな声を掛けてはくれなかった。

ドンマイ…だとか…

次があるよとか…

仕方ないよ…とか……

 

なのに…この人は…

ファン1号だとか言って…

こんなに目を輝かせて言うんだ。

 

信じてるんだ…

私なら勝てる…と。

 

 

 

 

何だろう?この気持ち…。

まるであの絵本みたい。

やさぐれた悪い子は良いお兄様と出会って改心する。

 

 

あの子はこんな気持ちなのかな?

こんなに…嬉しいのかな…。

 

 

 

 

 

 

 

「……一緒に怒られてくれる?」

 

「怒らせるもんか!俺が黙らせる」

 

「ふふ…暴力はいけないよお?」

 

「なら俺がお前の耳を塞いでやる」

 

「不幸に付き合ってくれる?」

 

「ばか、幸せを掴みに行くんだよ」

 

 

 

「お兄様って呼んでもいい?」

 

「おーおー好きに…………はい?!」

 

「お兄様…ライス頑張るッ!!」

 

 

「ん!?お?おおう!?」

何のスイッチかわからんが…まあ良いよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何アイツ…めちゃくちゃじゃない…」

 

「でも…ライスの心を動かした…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日からライスの猛追が始まった。

練習タイムも模擬レースも抜群の成績を叩き出した。

 

 

「凄いねえ…ライス…」

 

「タキオンさん…」

 

「薬でもやったのかい?」

 

「ううん…やらないよう…コレが……私?」

 

自分でも驚くくらいに体が軽い!

凄いよ!お兄様!!

 

 

 

 

「凄いねトレーナー君…」

 

「カイチョー…」

 

「か……まあいい…。でも浮かない顔だな?」

 

「後は…残り1枚の壁さえつき破れれば…」

 

「壁…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本番当日。

大歓声の中に怯える彼女は立っていた。

 

 

「残り1枚の壁…それは本番という舞台」

 

 

「ライス…大丈夫…怖くない」

 

「お兄様…ライス…ライス」

飲まれそうなライスを抱き寄せた。

 

「ひゃぁぁう!?!?お、お兄様ッ!?」

 

 

「おお…トレーナー君…」

 

「大胆ッ!まさかハグとは…」

 

 

 

お兄様の心臓の音…

何だか落ち着くな……少し早い?お兄様も緊張してる?

 

「うふふ…ライス…頑張るね」

 

ライスは笑顔でハッキリと言った。

 

「行って来ます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタート位置に着くライス。

 

「お?ヒール様が出るの?」

 

「また荒らされなかったら良いけど…」

 

「賭け金少し下げて来たよ…」

 

 

 

 

「あら?ライスシャワーさん?一度きりの覇者さんが一体何の風の吹き回し?」

 

「…ライスは勝ちに来たの」

 

「は?」

 

「その山の向こうを見に来たの」

「絵本の…マー君と同じように…私は生まれ変わるんだ!!」

 

 

 

目を閉じる…。

知らない…。

私は頑張るんだ!!

やるんだ!!

 

 

 

『さあ!レースが始まります…!』

 

 

 

ライスはヒーローになるんだ!

 

 

 

 

 

『スタート!!』

 

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