一斉に走り出した。
出だしは好調ッ!
見事に先頭集団に食い込む。
今のところ三着目。
彼女達も、そりゃ努力してる。
強い筈だ。
でも…ライスもこの数日で努力した。
付け焼き刃だと言われるだろう…。
しかしそれで送り出したのは…俺が信じてるから。
あの子がひっくり返すと信じてるから!!
『おーっと!今回はライスシャワーが先頭集団に居るー!』
『先頭は前回覇者キングボタン!続いてハヤテゴーゴー!キングボタンは一度ライスシャワーに敗れましたが…今回も大番狂わせが待っているのかー!?!?』
「アンタに…負けないわ…」
「…まっすぐ前に…まっすぐ前に」
コーナーに差し掛かりながらひた走る。
『良いか?ライスの感じ的に見て…まずは先行スタートは必須だ。常に前だ、まっすぐ前に進め!』
『最後のコーナーを曲がったときには…持てる力を出し切ってブチ抜け』
『後ろの子達は?』
『抜かさないように隙のない走りを心掛ける』
『…というより、前に前にと意識してたらそれで良い』
『お前の持ち味は…スタートダッシュと…ラストスパート』
「前に…前に…前にッ!!!」
最終コーナー途中から…ボッとライスの目が燃えた。
「前…にッ!!」
『おおーっと!!ライスシャワー!前に…前に出たぁあ!抜くか?抜くか!?』
ジワジワと追い詰める。
焦るキングボタン。
「くそ!抜かせないわ!」
「それに…」
「あなたを誰も応援しないから」
「やめろおお!抜くなあ!」
「またお前かー!?やめてくれー!」
「やっぱりヒールじゃないか」
その声がライスに届いた。
思い出すあの日のこと。
「ほら見ろ!誰もお前の勝利なんか求めてない!」
「ヒーローになりに来た?違うわ!お前は…ヒールよ」
「大人しく…私の影に隠れなさいよ!」
「ヒールはやられるのがお似合いなのよッ」
「頼むー!!やめてくれー!」
「そんな大番狂わせ求めてねえよおー!」
「…ライスは……ライスは……」
何とか繋ぎ止めた心は…また……
自然と足から力が抜ける。
『どうした!ライスシャワー!野次に心裂かれたかー!?三着…四着へと落ちて行くー!』
お兄様…ごめんなさい
やっぱり…ライスは悪い子です。
耐えられないよ…。
一生懸命に頑張っても…やっぱりライスじゃあ……
「うるせええええ!!」
そんな怒号が聞こえて来た。
お兄様の声だった。
「何だテメェ!?」
「うるせえ!黙って見てろッ!!」
「ああん!?」
彼は叫んだ。ブチギレだ。
今にも彼らに飛びかかろうとしそうな程に……本気なのだ。
「何だテメェ!ひっこめ!!」
「るせええ!!俺はアイツのトレーナーだボケえええ!!!」
「ああん!?こっちは金払ってんだよ」
「知るかァァア!!アイツはテメーらの金の為に走ってんじゃねえんだよッ」
「アイツの大きな夢とプライドと…必死に絞り出した小さな勇気で栄光を掴む為に走ってんだ!!」
「頑張るアイツを…ヒールだとか抜かすなッ!!」
「必死に頑張る奴を…蔑むなッ!!」
「アイツは…頑張るんだ!!やれるんだ!」
「飛ぶんだ!駆けるんだ!!」
「ヒーローになるんだッ!」
行け…
俺に希望を与えてくれた君よー。
例え誰に蔑まれようと…俺は見ているっ!
初めて…言われた。
そんなこと初めて言われた…!
そう言われたかったんだ…。
アイツならやれるって…
仮初の慰めでもない…同情でもない。
素直に…頑張る私を見て欲しかった…。
孤独に走る私を……………
あ…違う…
私は今…1人じゃないんだ……。
何の為に走る?
何の為に一着を狙う?
見たいから…
お兄様の言った…勝利の頂の景色を見たいから……
あの人と!!
負けたくないッ!!
私は…勝つんだ…見るんだ!!
「…やはり彼は…凄い」
ルドルフは感じる…。
ゾクゾクする。あの時感じた…高揚感。
真っ直ぐなんだろう…
馬鹿なんだろう…でも何だこの気持ちは…
私はこの馬鹿が気に入った…好きらしい
ウマ娘の為にここまで叫ぶ彼が…
「「「がんばれえええ!ライスうう!!」」」
ルドルフやスカーレット、タキオンも彼女にエールを送った。
わかってる…。自分達がしてたのは見て見ぬ振りの偽善だったと…。
でもこの感情は……本物だ!
「ライスうう!!行けッ!!お前はー…!!!」
「ライスは…ヒールじゃないッ…」
ボッ…と彼女の両目が……燃えた。
「「ヒーローなんだぁぁあ!!」」
ボゴッ…
走者は見た。
駆け出したライスの右足が…地面を穿ったのを。
横並びの者は見た。
彼女の目が燃えたのを。
前を走る者は感じた。
言葉には出来ない…圧倒的な背中を刺す彼女を。
後ろの者は見た。
一気に駆け抜ける彼女を。
ズドン…
その一歩は前に進む為に
その一歩は私を応援してくれる彼や仲間の為に
その一歩は…夢見る栄光の為に!!
その一歩は…ヒーローになる為にッ!!
その一歩は自分を超えて征く為にッ!!
その一歩は…!!!
「うわぁぁぁぁあッ!!!」
「いけえええええええ!!!」
彼女は駆けた!!
周りなんか見えない!
ひたすらに前を向いて走った。
ぐんぐんと追い抜いて行く!
だが彼女にはそんなことわからないッ!!
『ライスシャワー!!後方から怒涛の追い上げッ!!』
『何なんだ!その走りはー!!最終コーナーを超えて直線…遂に並んだぁぁあ!!』
「私だって負けらんないんだよおお!!」
並走するウマ娘。
ライスは叫んだ!
「ライスは…皆の…トレーナーの思いも背負ってるんだ…」
「2人で
ズドォン!!
もう一歩進める!!
その一歩は………
もっと前に出る為にッ!!!!!
最後に…ブチ抜いて行け!!
『一歩出たぁぁあ!!』
『ライスシャワー!前に出たッ!その距離は僅かに一歩…いや二歩…どんどんと前に出るー!』
『最終の直線で一気に突き放すーッ!!』
『速い!速い!!速いッ!!』
トレーナーさん…お兄様…
見てて…
「ライスを見てて!!」
私は…やるよ!
この手で掴むんだ!皆を…黙らせるくらいに…!
このスパートに命を燃やすんだッ!!!
「うそよ!あり得ない…!うそよ!」
『突き放したァァア!!』
『何を見てるんだ私達は!?あり得ない瞬間だあ!!こんなに早いウマ娘が居ただろうか!?!下馬評も何もかもを全てを覆して…全てを置き去りにして…ッ!!!…
ライスシャワー……ゴオオオオオオオル!!!!』
結果…ライスシャワーは3バ身以上の差をつけてゴールした。
シン静まり返った場内。
前と一緒なのかな…
また…怒られるのかなあ
でも悔いはないよ…お兄様…。
心配そうに見守る理事長をはじめ、ルドルフ達。
「らぁぁいすうううう!!」
突然裂くほどの声が響いた。
彼が走ってくる。
「やった…やったぞッ!!一着なんだ!!お前は掴んだんだぞおおお!」
抱き締められる。
振り回される。
やったんだー!って叫んでる。
私は…足に力が入らないよ…
ううん…
そんなのどうでも良い…
だって…お兄さんが笑って泣いてくれてるから…
「らいすううう」
ハッとした皆が寄ってくる。
「ライス…凄いぞ!!」
「やったじゃないか!!」
うん…
この沈黙がやけに長く感じた。
パチ…パチ…
パチパチパチパチパチパチパチ
ドワァァア!!!!!
拍手と声援が一気に彼女に押し寄せた。
「凄えよ!!ライスちゃんだっけ!?」
「何だよあの走りは…!!」
「感動したよ!」
「ヒールなんて言ってごめんな!!!」
耳を裂くような拍手と声援が私達を包んでいる。
馬券がまるで紙吹雪のように舞って降り注ぐ。
ゾクゾクする。
皆も忘れないだろう…。
「……」
ぽろぽろと何かが溢れてきた。
それは熱い…熱い涙。
今まで流した冷たいものとは違う…熱い涙。
「…え……あ」
ペタリと座り込んでしまった。
腰が抜けた…みたい。
トン…と背中を叩かれた。
「行ってこい…ライス……この全てが…お前のものなんだ」
ルドルフも涙を流しておめでとうと言ってくれた。
「腰が抜けて…」
手を出してくれたのはキングボタンだった…
「おめでとう…ごめんなさいね…酷いこと言って…」
「アンタは凄かったわ…あの野次を実力で捩じ伏せた…すごいわよ」
「ありがとう…」
手を取るライス。
立ち上がってもまだフラつく…。
「よおし!このヒーローを皆で支えよう」
この景色なんだね…お兄様…
閲覧ありがとうございます!
こんな感じの流れで話は進んで行くかと思います!
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