月読ノ舞   作:面白い小説探すマン

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逃げるなアアアア!!! 作品の品質向上から逃げるなアア!!!
今から変えるのは難しい? 目を瞑ってほしい? 笑止千万!!
(しやぶ さん の感想より抜粋)

ということで前の話に加筆修正を加えることにしました
ぜひ見てください

感想をいただけるとありがたいです


肆話

 

 次の日、月一郎が住んでいる屋敷にお館様・産屋敷耀哉が訪れた。

 

「君は凄い子だね、月一郎」

 

 目の前できれいな正座を組んでいるお館様が言う。

 

「君には少し難易度の高い任務を与えると言ったけれど、まさか十二鬼月がいるだなんて私も思わなかったんだ」

 

「そう言えば、『下壱』の鬼は一度倒したはずでは?」

 

「鬼舞辻無惨によって、新しく下弦の壱になったんだろうね」

 

 だけど…とお館様が続けた。

 

「下弦の壱に鬼が補充されたのが少し…いやかなり早い気がするんだ。鬼舞辻無惨は一度目に月一郎が下弦の壱を倒したことを、なかったことにしたいような気がする」

 

 お館様は月一郎に少し切迫した表情で言う。

 

「月一郎は何か鬼舞辻無惨にとって気に障るような存在なのかもしれない。もしかするとこれから鬼舞辻無惨によってさらに強い鬼が君に差し向けられる可能性がある」

 

「俺、何かしましたかね?」

 

 首を傾げる月一郎。

 

「それが何なのかはわからないけれど、十分に気を付けるんだよ、月一郎」

 

「わかりました」

 

「それから、私から月一郎に直接伝えたいことがある」

 

「なんでしょうか?」

 

「君には今日から柱を務めてほしい」

 

「この前は確か、一足飛びで柱にするわけにはいかないって言ってませんでした?」

 

 月一郎の反応を予想していたお館様が軽やかに返した。

 

「この前までは月一郎は鬼殺隊に入ってなかったからね」

 

「まだ一日ですよ?」

 

「君が昨日こなした任務はね、先日までかなりの隊士が行方不明になっていたんだ。そして、その任務にあてたのは相応の位を持った隊士たち。彼らはね、君に助けられたことを他の隊士にも口々に伝えているんだよ」

 

 月一郎の頭には自分を守ろうとしてくれた先輩剣士の顔が浮かぶ。

 

「鎹鴉には既に君が柱になったということを伝えさせた。みんな、それなりに納得した反応を見せていたよ」

 

 それでもやはり、まだ俺には早いと感じる月一郎。

 

「うーん。でもなぁ…」

 

 煮え切らない月一郎の様子にお館様が優しく声をかけた。

 

「柱になるかどうかはまだ決めなくてもいいんだよ」

 

「そうなんですか?もう鎹鴉で伝えちゃったのに?」

 

「うん。そこで、君にやってほしいことがあるんだ」

 

「なんでしょう?」

 

「鬼殺隊には柱にのみ、出席することを許される柱合会議というものがある。月一郎には今度の柱合会議に出席してほしいんだ」

 

「まだ柱になるって決めてませんよ?」

 

 とんとん拍子で話を進めていくお館様にさすがの月一郎も不安になる。

 

「大丈夫だよ。君は十二鬼月を倒して柱になる資格があるんだから、便宜上出席しても大丈夫だよ」 

 

 優しく、耳心地のよいお館様の声。

 

 

 そうか、お館様が言うなら大丈夫なんだ。

 

 

 

***

 

 

 

「時透月一郎様、これから柱合会議が行われる場所にご案内いたします」

 

 

 お館様から伝えられた柱合会議の日がやってきた。目の前の『隠』と呼ばれる鬼殺隊の裏方処理班が背負って連れて行ってくれるそうだ。直接いけないのは場所を秘匿するためのよう。柱であっても鬼にされてしまえば鬼の首魁である鬼舞辻無惨にその情報が渡ってしまうのを防ぐための措置なんだそうだ。

 

 

 月一郎は目隠しを付けると隠の背に乗って、柱合会議の場所まで連れていかれた。

 

 

「時透月一郎様、柱合会議が行われる場所に到着いたしました」

 

 数多の隠を乗り継いだ先で、月一郎が目隠しを外すと燦然と輝く太陽の光が目に入った。光に目が慣れてくると、今度は白石でつくられた壮観な日本庭が目に映る。そして、その庭に立つ六人の隊士。雰囲気から察するに彼らがこの鬼殺隊、最高位の剣士である柱。

 

 月一郎がなんと声をかけるべきか悩んでいると、柱の一人である派手な装飾をした男に声を掛けられた。

 

「よぉ。お前が新しい柱か?入隊初日で下弦の壱の首を派手に切ったらしいな」

 

「まだ柱ではないですが、下弦の壱の首を切ったのは確かに俺です。あなたは?」

 

 その男は大振りな動作で派手に答える。

 

「俺は音柱。名は宇髄天元。派手を司る祭りの神だ」

 

 思わず月一郎はあっけにとられながら思った。

 

 

 柱は普通の隊士と違って、濃いらしい。

 

 

 反応に困っている月一郎に音柱・宇髄天元が疑問を投げる。

 

「まだ柱じゃないってどういうことだ?鎹鴉はお前が新しい柱だって触れ回ってたぜ」

 

「お館様が柱になるかどうかはまだ決めなくてもよいとおっしゃられたので…」

 

「ん?それならなんでお前は柱合会議に来たんだ?」

 

「お館様に参加してほしいと言われました」

 

「ふーん。なるほどねぇ」

 

 

 宇髄さんはそれで納得したらしい。こんなにも濃い人を従えるなんて、お館様はやっぱり凄い人みたいだ。

 

 

「君はまだとても若いんだから、ゆっくりと決めた方がいいわ」

 

 音柱と会話している月一郎に、この場にいる柱の中で唯一の女性が話しかけてきた。

 

「私は花柱の胡蝶カナエといいます。よろしくね、月一郎くん」

 

「時透月一郎です。よろしくお願いします」

 

 花柱・胡蝶カナエは花が咲くような笑みで月一郎に言う。

 

「それにしても凄いわね。しのぶより小さいのにここに呼ばれるなんて」

 

「しのぶ?」

 

「私の妹よ。今度紹介するわね」

 

「はあ?ありがとうございます?」

 

 

「さっきからお前は何を腑抜けたことを言っている?」

 

 そこに、傷だらけの男が鋭い声で怒鳴ってきた。

 

「お前は始まりの呼吸の剣士の末裔らしいな。それも、下弦の壱を無傷で仕留められる実力を持った。なぜそんな奴が柱になるかどうかで悩んでいる?」

 

「自分はまだ鬼殺隊に入って日が浅すぎるので…」

 

 それでもなお煮え切らない月一郎に、傷だらけの男がさらに額に青筋をつくる。

 

「日が浅いだとか、そんなことは関係ない!!お前がそうやって腑抜けている間に、下でどれだけの隊士が死ぬかわかっているのか!?」

 

 そんな、心からの慟哭に返す言葉が見つからない月一郎。そこに派手な赤い頭髪の男が傷だらけの男をなだめた。

 

「少し落ち着け、死不川。今からそんなに詰め寄っても継国少年を困らせてしまうだけだぞ!!」

 

「継国って誰ですか?!俺は時透です!!」

 

「そうか!!よろしくな、時透少年!!俺は炎柱・煉獄杏寿郎!!こっちは風柱・不死川実弥だ!!」

 

「チィ」

 

 勝手に名前を紹介されて悪態をつく傷だらけの男、風柱・不死川実弥。

 

「ところで、時透少年の刀は何色なんだ?」

 

「紫です。お館様から頂いたときは普通の刀だったんですけど、刀を持ったら紫になりました」

 

「紫か!!それは凄いな!!」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ!!紫は黒と同様に出世しない色と言われていてな、それでもなお、お館様に柱と認められるのは凄いことだ!!」

 

「どこを見てるんですか!?」

 

 月一郎とは全く違う場所を見ながら、ハキハキ喋る炎柱・煉獄杏寿郎。

 

「それで、君は一体どんな呼吸が合ったんだ?」

 

 炎柱は唐突に月一郎の方を向いて質問する。

 

「呼吸というのはよくわからないんですが、うちに伝わる舞で鬼と戦いました」

 

「そうか!!君の家に伝わる舞が戦いに利用できたのか!!それはよかった!!」

 

 月一郎が炎柱と話していると、今度は横から大きな僧がズィと入ってきた。その僧は手に持つ数珠をジャリジャリならしている。

 

 月一郎は会話をしながら柱たちの肉体を観察していた。誰も彼もすさまじい素質の持ち主だが、一際目を引いたのはこの盲目僧。屈指の肉体を持っているのがわかる。他の柱に比べて頭が一つ二つも抜けているだろう。

 

 月一郎の視線を感じとったのか、その僧もこちらを向くと瞳のない目で月一郎をのぞき込んだ。

 

「南無阿弥陀仏」

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

 白い庭にはジャリジャリと数珠を鳴らす音だけが響く。しばらくして、盲目僧がゆっくりと口を開いた。

 

「岩柱・悲鳴嶼行冥」

 

「時透月一郎です」

 

「君は呼吸を知らないのかね?」

 

「はい。前にも聞かれましたがわからないです」

 

「そうか…」

 

 岩柱・悲鳴嶼行冥は月一郎の答えに光を映さない白い目から涙を流すと、それから黙ってしまった。

 

「ところで、あそこにいる人は誰なんですか?」

 

 月一郎がほとんどの柱から自己紹介を受ける中、離れたところに一人でポツンと佇む半羽織の男。

 

「あれは冨岡だ」

 

 風柱・不死川実弥が月一郎の問いに答える。

 

「水柱・冨岡義勇。奴はいつも俺たちとは離れた場所にいて、いつも俺はおまえたちとは違うだの、こちらを下にみた発言をする嫌な野郎だ」

 

 月一郎は一応挨拶しておこうと水柱・冨岡義勇に近づいたその時、白い庭に凛とした声が響き渡った。

 

「お館様の」「御成りです」

 

 素早く整列する柱たち。月一郎も他の柱に倣って整列する。

 

「おはようみんな。今日もいい天気だね」

 

 お館様・産屋敷耀哉は娘たちに手を引かれて座ると、集まる面々を見渡して優しい声で言った。

 

「お館様におかれましてもご壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」

 

 そんな中いち早く、水柱・冨岡義勇がお館様に挨拶をする。出遅れたことに、その謀反人である水柱を睨む風柱・不死川実弥。

 

「ありがとう、義勇」

 

 水柱に優しく微笑むお館様は話を切り出した。

 

「今日みんなに集まってもらったのは、もう知っているかもしれないけど、そこにいる月一郎についてなんだ」

 

 お館様は穏やかなまなざしで月一郎を見つめる。

 

「お館様、発言してもよろしいでしょうか?」

 

 そう聞いたのは風柱である不死川。

 

「なんだい、実弥」

 

「この時透月一郎めは下弦の壱を倒したのにも関わらず、鬼殺隊に入ってまだ日も浅い故に柱になることを決めかねているらしいのですが、お館様はどうお考えですか?」

 

「そうだね。私としてはすぐにでも柱の任務についてほしいと思っているよ」

 

 でもね…と優しく続けるお館様。

 

「月一郎は鬼殺隊に入ってまだ本当に日が浅いんだ。戸惑う月一郎の気持ちもわかるんだよ」

 

 お館様の意見を聞いて、不死川は言葉を飲み込む。

 

「鎹鴉から既に伝わっていると思うけど、月一郎は始まりの呼吸の剣士の末裔なんだ。私の方から力を貸してくれるように頼みに行ったんだよ」

 

 始まりの呼吸の剣士の末裔。

 

 そう聞いた柱たちは改めて、月一郎に視線を向けた。その耳に付けられた、月模様の耳飾りが否応にも目に付く。

 

「それとね、これはみんなに初めて話すことになるんだけど、月一郎に会いに行ったときに十二鬼月と遭遇したんだ」

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

 これには柱全員、息が詰まった。

 

「大丈夫だったのですか…?」

 

 代表して不死川が聞く。

 

「うん。その時はね、月一郎が倒してくれたんだ。先日、月一郎が倒した下弦の壱とは違う下弦の壱だよ」

 

 お館様は誰かに言いたくて仕方がないといったご様子だった。その言葉を頭の中でかみ砕いていく柱一同。

 

「つまり、お前は下弦の壱を二回も派手に倒したってことか!?」

 

 音柱・宇髄天元が月一郎に叫ぶ。

 

「そうなんだよ。天元」

 

 お館様は嬉しそうに言った。

 

「それなら尚更、何を悩んでやがるんだ!!お前が柱にならずに誰がなるってんだ?」

 

 怒りを爆発させる不死川。言葉を返そうとした月一郎に変わってお館様が答える。

 

「月一郎には最終選別を突破してもらう前に鬼殺隊へ入ってもらったからね」

 

「最終選別を突破していない!!??」

 

 柱たちが今まで聞いたことのないような大きな声で水柱・冨岡義勇が反応した。その様子に怪訝な顔をする柱たち。

 

「俺以外にも、最終選別すら突破していない者を柱に据えるのですか!?」

 

 全員の視線が冨岡に集まる。代表してお館様が優しく聞いた。

 

「どうゆうことかな?義勇」

 

 その言葉で冨岡の口は堰を切ったように動き出す。

 

「俺は最終選別を突破していないんだ!!そして、その年は俺と一緒に最終選別を受けた錆兎という男がいた。錆兎は最終選別でほぼすべての鬼を切った。だが!!俺はその間、ただ気絶していただけなんだ!!気絶していただけの男がどうして柱になれる?俺はこの場にいる資格すらない人間なんだ!!他の柱と共に並ぶことすらおこがましい!!本当はここには錆兎がいるべきはずだったんだ!!」

 

 静まり返る一同。その静寂を破ったのは不死川だった。

 

「お前がいつも言ってる、俺はお前たちとは違うってそういう意味か…」

 

「そうだが?…先ほどでも俺だけ時透に話しかけることができなかった。錆兎なら話し掛けれたはずだ。俺は柱じゃない」

 

「それはてめぇが口下手なだけだろ?」

 

 意気消沈している冨岡に不死川が頭を搔きながら言った。

 

「確かにその時は気絶してただけでも、てめぇはそれから死に物狂いで己を鍛えて十二鬼月の首を切ったんだろ?ならてめぇが柱でいいじゃねぇか」

 

「不死川…」

 

 冨岡は顔を上げて、不死川を見る。

 

「いや…やはり俺は代わりの柱だ」

 

「なんでだよ!?」

 

 それでも己の意見を変えない冨岡にイラつく不死川。

 

「本当の水柱になるべき、俺の妹弟子が最終選別を突破したからだ」

 

「てめぇ!!コラ冨岡ぁぁ!!」

 

 騒ぐ不死川を人差し指で静かにしたお館様が言う。

 

「実弥の言う通りだよ、義勇。」

 

「お館様…」

 

「錆兎のことは私も知っていたよ。素晴らしい剣士だった。君はあの時、彼を助けられなかった自分を今でも責め続けているんだね。悔しいよね、悲しいよね、わかるよ。でも、前を向いて錆兎の思いを紡いでいかなくていいのかな?」

 

「ッ!!」

 

「あれから君は十二鬼月を倒せるまでに強くなった。義勇の妹弟子が最終選別を突破したんだよね。彼女に思いを繋ぐためにも、自分を…代わりの柱だなんて言わないでおくれ」

 

「御意…」

 

 冨岡はお館様を見つめて頷いた。お館様はその様子に頷くと柱全員を見渡して言う。

 

「月一郎を柱と認めてもいいだろうか?」

 

「「「「「御意!!」」」」」

 

 冨岡を含めた柱がほとんど頷くが、一人だけ賛同を示していない柱がいた。

 

「だめかな?行冥」

 

 岩柱・悲鳴嶼行冥のみ言わない。

 

「お館様…彼はまだほんの子供でございます」

 

「そうだね」

 

「彼を柱とする前に、私に確かめさせて頂きたい」

 

 岩柱による手合わせの提案にお館様が月一郎の意思を確認する。

 

「月一郎」

 

 

 月一郎はその提案に対して、

 

 

「御意」

 

 

 と答えた。

 

 

 




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