死体の山と血溜まりの海となった更木に激しい剣戟の音が響いた。
「ハッハッハァッ‼︎良いぜ、最高だな‼︎」
「僕は最悪な気分だよ」
少年の危険性を感じ取り、倒す事に決めた双盾であったが、自分の直感は正しかったと感じた。
少年の剣は正に飢えた獣のような剣であり、技術も何もあったものでは無いが、それを補って余りある程の圧力があった。
圧倒的な暴力ともいえる霊圧を放つ少年の剣は並の死神であれば相対するだけで死んでしまう可能性があった。
「強いね…………君」
「そいつはどうだろうな‼︎俺とお前どっちが強いかはまだ分からねぇだろ‼︎最後まで立ってた方が強いんだからなぁ‼︎」
「確かに、それは言えてるね」
少年の攻撃を捌けてはいるが、それで精一杯となっている双盾。
少年の一方的な攻めに対して只管防御する事しか出来ない状態では勝つ事は出来ない、それどころか麒麟寺から渡された薬の効果が切れてしまっては生き残る事すら難しくなってしまう。
「やるしか無いな」
「あぁ⁉︎何か奥の手でもあんのかよ‼︎」
「別に奥の手って程でも無いよ。死神なら出来る人も結構いるしね」
「面白ぇ‼︎やってみろ‼︎」
双盾が構えを取ると少年の霊圧が跳ね上がる。跳ね上がった霊圧に肌がひりつくのを感じながら双盾は自身の霊圧を高める。
少年は霊圧の上昇に反応したのか、双盾に飛びかかるが、双盾を包み込むように羽衣によって防がれる。
「久しぶりだからちゃんと解号言いたかったんだけどな……………でもありがとね『霧霞ノ姫』」
「んだぁ?」
少年が双盾の変化を疑問に思うのと同時に双盾を中心に霧が展開される。その霧は少年を飲み込み、やがて霧散した。
「ちょっと姿が変わった程度じゃねぇか」
「そりゃ確かにこれは奥の手でもなんでも無いからね」
「まぁ、いい。肝心なのはその姿が格好だけのハリボテかどうかって事だ!!」
少年は再び攻撃を始める。目にも止まらない速さで近づき、斬魄刀を振り下ろす。
しかし、少年の斬魄刀は双盾に触れる事は無く何かによって止められてしまう。
すかさず、双盾が少年の首を狙うが獣じみた反射神経で避ける少年。
「なんだよ………今のは……………」
「僕の斬魄刀の能力さ、最もその詳細を教えてあげることは出来ないけどね」
「まぁオレには関係ねぇか。そのよく分からねぇ守りごとぶった斬れば良いだけだからよぉ‼︎」
少年は獣が如く双盾に迫り、嵐のような連撃を繰り出すが、双盾はその全てを避け、捌いた。
そして、捌いた後に生まれた隙を見逃さずに攻撃をする双盾。少年は明らかに押されはじめていた。
頭の中で生まれた疑問を生まれて初めての強敵に出会えた事の喜びで塗り潰す少年。
「確かに君は強いよ。始解でも君に確実に勝てるとは思えない。事実、霧霞ノ姫で君を止めきれていない」
双盾の持つ斬魄刀、霧霞ノ姫は水流系の斬魄刀である。解放と同時に双盾を守るように羽衣が現れ、そこから放たれる霧を展開することで周囲の全てを把握するというもの。
範囲内の敵の一挙手一投足だけでなく、物の動きや空気の流れすら把握する。双盾の技量が合わさる事により、ありとあらゆる攻撃を読み切る事が出来る様になる。
また、展開した霧を盾としても使う事が出来る。防御する事に特化した斬魄刀なのだ。
そんな防御特化の斬魄刀を持ってしても、少年の攻撃を防ぎ、捌くのは双盾の負担が大きく、双盾は激しく消耗していた。
「あ?お互い一太刀も浴びてねぇだろうが。強いかどうかなんて最後まで分からねぇだろ」
少年の言うように、戦い初めてから2人の間には血の一滴も流れていない。
だが、薬で無理矢理身体を動かしている双盾は何時効果が切れるか分からない状態だ。ただでさえ押されているというのに、薬の効果まで切れてしまっては生きる残る事すら出来なくなるだろう。
卯ノ花と出会う前であったなら、このまま死ぬ事を受け入れていた双盾。
「君の方が強いのは事実だ。単純な剣技だと勝てそうも無い」
だが、死ぬ訳にはいかない。床に伏してただ死を待つだけだった日々が、卯ノ花のお陰で色付いたのだ。1人でいた時間とは違い、卯ノ花と一緒に居る時間が今では何よりも大切なものになっていた。
同じベットからの景色でも、卯ノ花と見るだけで全てが華やぐのだ。双盾は自分自身でも笑ってしまう位には卯ノ花に惚れていた。
「だけど、僕は死ぬ訳にはいかない。会わなきゃいけない人がいるんだ。卯ノ花さんに言わなきゃいけない事がある。僕と卯ノ花さんの間に君が入る余地は無い」
沢山の隊士が危険に晒されるかもしれない、などと言った理由をつけて戦う事を決意した双盾。
実際の所、これはただの嫉妬だ。卯ノ花の本質はどうしようもない程の人斬りである。
双盾が卯ノ花と知り合い、関係を築けたのは多少なりとも双盾に実力があったからだ。
「そんなの知った事かよ‼︎もっとだ、もっと斬り合おうぜ‼︎」
もし、この底知れない強さを持つ少年と卯ノ花が出会ってしまえば、卯ノ花が自分に向けている興味は少年に向かう事になるという予感が双盾にはあった。
双盾は卯ノ花すら超えかねない強さを持つ少年に嫉妬しているのだ。
だからこそこの場で少年に勝ち、自分の強さを証明する必要があると双盾は強く感じていた。
「そうだね、これは君の知った事じゃない。大人気ない嫉妬だ。だから僕は君を斬る」
霧霞ノ姫を納刀し、腰を低く落とす。展開していた霧が双盾を中心に渦巻く。
圧力を増す双盾の霊圧に少年は言いようの無い喜びを感じた。
この男となら満足の行く斬り合いが出来るという喜びが少年の体の中を駆け回る。
「ハッハッハッハァッ‼︎最高だぜ、お前‼︎何をしようとしてるのか知らねぇが、お前最高だぜ‼︎」
圧力を増す双盾の霊圧に呼応するように膨れ上がる少年の霊圧。
もう辛抱ならないと少年は跳び上がり、斬魄刀を振りかぶった。
「卍……………かっ………ゴフッ………」
突如、吐血する双盾。圧力を増した霊圧が何も無かったかのように霧散してしまう。取っていた構えも保てなくなり膝をついてしまう。
突然の事に疑問符が浮かぶ少年だったが、振りかぶった以上もう止まれなかった。少年が振り下ろした一撃は双盾の身体を袈裟に捉えた。
「おい…………どうしたんだよ、お前」
「あとちょっとだったのになぁ……………悔しいな……………」
薬の効果が切れた事で、刺客達や少年との戦いで消耗した双盾は卍解が出来なかった。
身体が卍解の負荷に耐えられなかったのだ。
霧霞ノ姫も自分が動く為の霊力すら賄えない程双盾の消耗が激しかった。
「おい、何してんだ。まだ一太刀入れた程度だろうが。立てよ。立ってオレと戦え」
「悪………いね。どうやら…………無茶をし過ぎた………みたいでね。この勝負は………僕の……負けだ…………」
少年は急激に自分の中の何かが冷めていくのを感じた。かつてない程の喜び、圧倒的な期待感がボロボロと崩れていくのを感じた。
少年は斬り合いを好む戦闘狂だ。殺し合いを好むどうしよもない鬼である。しかし、そんな少年にも少年なりの流儀がある。
ほんの短い時間ではあるが、自分をここまで楽しませてくれた事に恩義を感じていた。
「そうか、なら化けて出て来い。次は最後まで満足の行く斬り合いをしようぜ」
少年は手向けとして、止めを刺そうと斬魄刀を振り上げる。
「あばよ」
「卯ノ花さん……………言いたい事があったのに…………ごめんなさい」
死を覚悟し、目を閉じる双盾。自分では卯ノ花の心を満たせなかったがこの少年ならば自分には出来なかった事をしてくれるだろう。
卯ノ花が幸せでいてくれるのなら、満足に死ねると安らかな笑みを浮かべた。
「言いたい事があるなら生きる事を諦めないでください‼︎」
「うの………はな…………さん?」
いつまで経っても来ない衝撃を疑問に思い、目を開くと少年の斬魄刀を受け止めている卯ノ花が目の前にいた。
「あ?なんだ?てめ「〈破道の八十八 飛龍撃戝震天雷炮〉」ガッ………」
少年を高位の鬼道で吹き飛ばす卯ノ花。すかさず双盾に回道をかける。
「うの………はな……さ」
「病人は黙ってなさい。言い訳も何もかも後でゆっくり聞いてあげます。私は貴方が死ぬ事を絶対に認めません」
「た、隊長‼︎はぁ……….はぁ……お、遅くなりました……………」
「応急処置を引き継ぎます。私はこの人のやり残した仕事を片付けます」
「は、はい‼︎お任せください‼︎」
遅れて現れた副隊長に双盾の応急処置を任せ、卯ノ花はコキコキと首を鳴らしながらゆっくりと歩いてくる少年の方を向く。
「なんだよテメェ…………人の戦いに割り込んでくんじゃ「応急処置の邪魔になるので場所を変えましょう」ガッ」
瞬歩で少年の目の前に近づき、少年の頭を掴み全力で投げ飛ばす卯ノ花。
「うの…………は…………」
「私だって貴方に言いたい事があるんです。勝手に死んだら許しませんから」
そう言い残すと卯ノ花は少年を投げ飛ばした方へと消えていった。
随分と間が空いて申し訳ないです。
コメントというかメッセージで、この作品を好きと言ってくれた方の言葉凄く嬉しかったです。
自分の中で再びBLEACHのブームがまた来てます。やっぱり面白いわBLEACH。
このサイトにも面白いBLEACH作品は沢山あるけど、やっぱり自分で書いた作品は自分の好きな事で書いてるからなのか、面白いと思えました。自己満足と言ったらそれまでだけど、自分好みのBLEACH二次創作をこれからも続けて行きたいなって思いました。
コメントや感想、質問などお待ちしてます。