卯ノ花家の受難   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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注意、今回名前しか出てないキャラが出ます。僕のイメージで喋らすのでご了承ください。


一生ですから

卯ノ花は少年を見て納得した。双盾との戦闘を経て、八十番台後半の破道が直撃したと言うのに少年は傷一つ無い。

 

 

「ったくよぉ、楽しい斬り合いに割り込んで何様だよ」

 

 

「他人のこ、恋路に割り込んで来たのは貴方ですよ。クソガキ」

 

 

「何訳の分からねぇこと言って、顔を赤くしてんだよ」

 

 

「お黙りなさい」

 

 

斬魄刀を抜刀し、正眼に構える卯ノ花。卯ノ花は思わず笑みを溢した。

 

殺し合いの場において卯ノ花が構えを取るのは久しかったからだ。

 

卯ノ花は、少年が自分に無意識のうちに構えを取らせる程の相手である事が嬉しくなっていた。

 

 

「へぇ…………良いな、お前」

 

 

構えた事で明確に溢れ出した卯ノ花の殺意に少年も笑みを零す。

 

双盾との戦闘をこれ以上無いほど楽しんでいた少年だったが、卯ノ花との戦闘はそれ以上に楽しくなる予感がしたのだ。

 

殺意という点において、卯ノ花のソレは双盾の何倍もの圧を放っている。

 

 

「良いぜ、存分に斬り合おうぜ‼︎」

 

 

卯ノ花に飛びかかる少年。卯ノ花は冷静に少年の攻撃を受け止める。

 

そして驚愕した。双盾を追い込んだのだからそれなりに強いのだろうとは思っていた卯ノ花。

 

しかし、一撃を受け止めた事で実感した。少年の実力は卯ノ花を越えていると言う事を。

 

 

「女性の誘い方がまるでなっていませんね」

 

 

鬼道で牽制しつつ、距離を取り息を吐く卯ノ花。暫く鳴りを顰めていた人斬りとしての感覚が目覚めつつあり、僅かに焦りを感じていた。

 

少なくとも双盾以上の強さはあるであろう少年との斬り合いに身を任せてしまえば、戻ってくる事は出来なくなるかもしれないという漠然とした焦り。

 

 

「〈縛道の六十一 六杖光牢〉」

 

 

「んだよコレ…………てめぇ‼︎それだけ強いのに何雑魚みてぇな戦い方してやがんだ‼︎」

 

 

簡単な破道による牽制、縛道による拘束。小賢しい戦い方に怒りを露わにする少年。

 

しかし、卯ノ花はそんな少年の言葉に耳を傾ける事なく詠唱をする。

 

 

「滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器……」

 

 

完全詠唱した九十番代の鬼道を隊長格の霊圧で放てば絶大な威力となる。

 

斬り合いに興じずとも、これで殺せるならば大儲け。せめて多少の傷になれば良いという判断のもと、卯ノ花は詠唱をしていた。

 

瞬間、少年の霊圧が爆発的に上昇した。

 

 

「これは少々…………いえ、かなり拙いですね」

 

 

発動していた縛道を簡単に砕く少年。その爆発的に膨れ上がった霊圧は卯ノ花に冷や汗をかかせた。

 

 

「せっかく立派な得物を持ってんだ。しっかりと俺を楽しませてくれよぉ‼︎」

 

 

自身の心の奥深くに仕舞い込んだ人斬りの側面が少年の霊圧に喜びを感じ初めていた。これ以上戦いを長引かせると自身の感情を制御出来なくなってしまうと卯ノ花は確信した。

 

少しでも速く決着をつける為、卯ノ花は左手で斬魄刀を握り込んだ。

 

 

「えぇ、分かりました。一度だけ。ただの一度だけ貴方に付き合って差し上げます」

 

 

「あぁ?」

 

 

「これにて座興はお終い。卍解……………皆尽」

 

 

卯ノ花が刃を握り込んだ左手を動かすとそこから夥しい程の血が流れ出る。

 

そして、流れるような動作で構えた卯ノ花。

 

刀身は血のように赤く染まり、切先からは血が流れて溢れ出す。

 

卯ノ花から発せられる霊圧もおどろおどろしいものへと変化する。

 

 

「てめぇ、なにもんだ?」

 

 

少年は思わず名前を聞いた。少年からすれば斬り合いさえ出来れば何でも良い為、聞く必要の無い事。

 

 

「死にゆく者に語る名などありません。私と斬り合いたいのでしょう?ならば交わすのは言葉ではなくこちらだけで充分です」

 

 

血を滴らせながら朱に染まった刃を構える卯ノ花。

 

 

「違いねぇ…………全く持って違いねぇ‼︎」

 

 

獣が如く飛びかかる少年に血の斬撃を飛ばす卯ノ花。少年が斬撃を払いのけると、卯ノ花はいつのまにか少年の間合いに飛び込んでいた。

 

そしてそのまま少年の身体を袈裟に捉える。

 

しかし、少年もやられたままではない。斬られながらも無造作に振るった一撃は卯ノ花を捉えた。

 

肩から血が吹き出る卯ノ花だったが、その傷は即座に消え何事も無かったかのようになってしまう。

 

 

「んだよそれ、どうなってんだ」

 

 

「私の前で隙を晒すな、未熟者」

 

 

「あ?そりゃ、どういう…………………」

 

 

次の瞬間、少年の視界は反転していた。少年の首が切り飛ばされたからだ。

 

少年が最期に目にしたのは自分を見下ろす卯ノ花だった。

 

喜びも怒りも存在しない、ただ道端の石を見ているかのような無の表情で少年を見下ろす卯ノ花。

 

卯ノ花は少年の霊圧が消失したのを確認すると卍解を解除し、深く息を吐いた。

 

 

「危なかった……………あのまま斬り合っていたら……………」

 

 

そう呟くと卯ノ花は頭を振ってその邪念を振り払う。

 

少年の実力がどうであれ、少年を斬ったのは卯ノ花だ。有り得たかもしれない未来を考えるよりも卯ノ花には優先しなければいけない事があった。

 

卯ノ花は、未だ治療中であろう副官の霊圧を辿り道を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副官の元に戻ると、双盾の容体は危険なものではあったが、卯ノ花が対象すれば最悪の事態は回避出来るような状態だった。

 

 

「た、隊長‼︎申し訳ありません…………傷を塞ぐ事は塞ぎましたが、出血が余りにも酷くて…………私ではこれ以上手の施しようがありません」

 

 

「私が戻るまでよくやりました。貴女は応援を呼んで周囲に生存者が居ないか捜索しなさい。死体の身元確認と運び出しの指揮も任せます。必要であれば私の名前で他隊に協力を仰ぎなさい」

 

 

「隊長はどうされますか」

 

 

「暫くは彼の治療に集中します。処置が終わり次第業務を引き継ぎます」

 

 

「わ、分かりました‼︎」

 

 

卯ノ花の指示を受け慌ただしく駆け出していく副官。

 

それを見送ると、卯ノ花は静かに回道をかける。双盾が助かった訳では無い。

 

一つでもミスをすれば危険な状態になりかねないという状況ではあるが、卯ノ花は安堵した。

 

それはハ千流に戻らずに済んだ事なのか、双盾を助けられる事へのものなのか卯ノ花自身も理解はしていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回道をかけ始めて暫くした頃、双盾の容体が安定し始めた。死に体だった双盾の顔に生気が戻ってくる。

 

 

「うの…………はなさん…………」

 

 

「漸く目を覚ましましたか。勝手に病室を抜け出すからこんな事になるのです」

 

 

「ごめん………なさい…………僕はあの少年に勝てなかった。僕が倒さなきゃいけなかったのに、勝てなかった」

 

 

「それで貴方が死んでしまっては意味が無いでしょう。貴方は私が来るまで待つべきだった」

 

 

「確かに僕が戦う必要は無かったでしょう。でも、好きな人が盗られるかもしれないってなると意地の一つでも張りたくなるものでしょ」

 

 

少年の強さはまさしく卯ノ花が求めるものだった。双盾が感じていたのは危機感だった。

 

卯ノ花が自分に向けている興味が少年に向くのを恐れていたのだ。

 

1日を通して寝ている事の方が多い双盾では、卯ノ花を満足いく迄戦わせてあげる事は出来ない。

 

しかし、少年は双盾より健康的であり強かった。負けたく無い、勝って卯ノ花に相応しいのは自分であると証明したくなったのだ。

 

 

「貴方は馬鹿ですか…………いや、馬鹿でしたね」

 

 

「は?」

 

 

「強さだけを求めるならそれこ総隊長など居るではないですか」

 

 

「いやまぁ………それはそうですけど」

 

 

「四番隊の隊長になった頃に試合をした事を忘れましたか?」

 

 

「いや、忘れた事はない………ですけど」

 

 

「私の想いはあの時と何も変わってません。貴方の馬鹿の虫を一生かけて面倒見ると。他の男に靡くほど尻の軽い女のつもりはありませんよ」

 

 

「うの「烈で結構」烈さん……………」

 

 

「今更になりますが、見合いの話を受けましょう」

 

 

「は………………ちょ、え?」

 

 

突然の展開に脳の処理が追いつかないのか、戸惑う双盾。

 

そんな様子の双盾を見た卯ノ花は思わず笑みを溢した。普段は済ました顔で揶揄ってくる双盾があたふたするのが可笑しく思えたのだ。

 

 

「末永く………よろしくお願いしますね、双盾」

 

 

「は、はい…………不束者ですが………よろしくお願いします」

 

 

そこは正に2人きりの空間だった。四番隊の副官は双盾への処置が終わった頃だろうと様子を見に来たら、余りにも甘い空間で声をかけるのを躊躇ってしまった。

 

他の隊士も卯ノ花に指示を聞きたいが、2人きりの世界に割り込める者は誰1人としていなかった。

 

二人の仲が上手くいく事は四番隊隊士として嬉しく思っているが、やらなきゃいけない仕事が多くある状況ではやめて欲しいというのが正直な感想だった。

 

そんな二人きりの空間を切り裂ける物はいないかと思われていたが、1人だけ居た。卯ノ花と同格の隊長であり、今回の任務に応援で呼ばれた者が1人だけいた。

 

 

「だーはっはっはっは‼︎あの卯ノ花がメスの顔してやがる‼︎こんな愉快な事は中々ねぇぞ‼︎」

 

 

卯ノ花と同じく、護廷十三隊の結成メンバーである斎藤不老不死だった。

 

数少ない女性の隊長同士という事もあってそれなりに付き合いはあった。

 

 

「斎藤不老不死ぃ‼︎」

 

 

「男にケツ振ってねぇで仕事しやがれクソアマァア‼︎てめぇの部下共が困ってんだろうが‼︎」

 

 

「貴女に正論を言われると無性に向っ腹が立ちます‼︎」

 

 

「お、やるか?最近暇してたし軽く相手してやるよぉ‼︎」

 

 

お互い抜刀してぶつかり合う両隊長の様子を見て副官は巻き込まれないよう任務を続行するように指揮を取る事にするのだった。

 

その後、報告を受けた元柳斎が2人に特大の雷を落とすのは別の話。




赤面する卯ノ花さんを書こうと思ったらイケメンな卯ノ花さんになってしまったでござる。




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