中央四十六室、瀞霊廷の司法機関だ。四十六十室は現在険悪な雰囲気に呑まれていた。
貴族は暗殺計画の後始末に追われていた。貴族達は責任を全て双盾と烈に押し付けのだ。
当主の座を狙って兄を襲撃した双盾と烈が、痣城の兵を惨殺し、兄を負傷に追い込んだ…………という筋書きにした。
「して、卯ノ花ハ千流と痣城双盾の見合いを段取りしたお主に責任の所在はあるとし、我々四十六室は卯ノ花ハ千流と痣城双盾を極刑、山本元柳斎を蛆虫の巣へ無期限の投獄とする‼︎」
「何か弁明はあるか?護廷十三隊の創設、中央霊術院の創設という功績を讃えて聞いてやらん事もないぞ」
頭痛が止まらない元柳斎。自分達から仕掛けてきたというのにその始末を護廷隊に押し付ける図々しさには呆れ果てるほか無かった。
ここで斬魄刀を振り回せればどれだけ気分が晴れやかになるだろうかと考えながら元柳斎は口を開いた。
「では、幾つか言わせて貰いましょう。まず一つ、そもそもあやつの名は卯ノ花烈。ハ千流という名を捨て護廷に身を尽くすと誓っております。二つ目、そもそも卯ノ花隊長の見合いを指示したのは貴公らだ。責任というなら貴公らが取れば良い」
今の瀞霊廷は貴族の権力争いが激しい。四十六室は瀞霊廷最高位の意思決定機関だが、その実権は貴族が握っていると言っても過言ではない。
「三つ目、卯ノ花隊長と痣城双盾の消耗具合を考えれば相当激しい戦闘であった事が考えられる。貴族連中にそれが出来とは到底思えない。別の人物がいた事が考えられます。その人物が犯人である可能性が高いでしょう」
「我らの言葉を疑うというのか⁉︎あの2人が痣城の私兵を殺した事は明白であろう‼︎」
「お言葉ですが、戦場のせの字も知らないボンクラ程度に追い込まれる卯ノ花隊長ではありません。仮に、彼女が立ち上がるのも困難な程消耗していようと今の痣城程度なら小指だけで十分でしょう」
貴族は瀞霊廷に住む中でも比較的、強力な霊圧を持っている。しかし、剣を握らず研鑽を怠っている貴族では烈を始めとする隊長格に傷一つ付けられない。
この貴族との戦力差こそ、護廷隊が成立出来ている理由である。
「卯ノ花隊長の話では痣城当主から痣城双盾が呼び出されたとの事です。普通に考えれば痣城双盾を殺す為に私兵を投じたとなるのではないでしょうか」
「それは貴様の確認不足であろう‼︎大体、卯ノ花ハ千流が我が身の可愛いさに嘘を吐いたに決まっておろう‼︎それとも貴様は、我々が仕組んだとでも言いたいのか‼︎」
「貴公らが仕組んだとは言っていないし、そんな事はどうでも良い。儂はただ自分達の正当性を示したいだけだ。それでも儂らを断罪するというのならすればいい。それで貴公らの面子が保たれるのなら好きにしろ。儂と卯ノ花隊長を失えばどうなるか考えたうえでの結論ならば文句はない」
護廷隊は元柳斎のカリスマで成り立っている。貴族がいかに元柳斎や烈達の罪をでっち上げようと護廷隊士は彼らが無実である事を知っている。
無実の元柳斎を投獄、烈を処刑したとなれば護廷隊士達は反乱を起こすだろう。
四十六室、並びに貴族では対抗するだけの武力が無い。一度戦争になれば貴族達はなす術も無く蹂躙されるだろう。
それを理解出来ない中央四十六室では無かった。
「そこまで言うのなら仕方ない。卯ノ花ハ千流と山本元柳斎、貴様らの処分を取り下げとする」
「卯ノ花烈です。そして双盾はどうされますかな?彼奴を処刑されるとなったら卯ノ花隊長は相当暴れるでしょうな。他の隊長達も自分の任務があるし、儂は総隊長として多忙であるし、貴公らを守る事も出来ないでしょうな」
わざとらしい物言いに青筋を浮かべる四十六室の面々。双盾を処刑すれば初代剣八が暴れ回る事になる。護廷隊はそれを止めるつもりは無いと宣言したようなものである。
発言する際に若干霊圧を解放した事で何人かは冷や汗をかいていた。
「卯ノ花烈と山本元柳斎の刑を取り下げ二人の給料を十年間減給、痣城双盾は向こう100年如何なる場合に置いても抜刀禁止とする」
「ふむ、そう言う事なら仕方ないでしょう。その処分甘んじて受けましょう」
元々護廷隊の隊長は破格の給料を貰っている為たしょの減給は大した問題ではなく、双盾は戦闘することが稀であり、基本的に戦闘してはいけないため実質的に無罪放免と言う事になった。
不老不死と烈との大喧嘩もあり、烈と双盾の結婚というニュースは瀞霊廷に素早く広がった。
古くから烈と付き合いのある隊士達はそのニュースに目を丸くし、笑い転げた。
四番隊の隊士達は間近で2人の様子を見ていた事もあり、祝福ムード全開だ。
一部過激な隊士達の間で烈の出産時に助産師として子供を取り上げるのは自分だと激しい争いが起きている程である。
「それにしても最近は周りも賑やかになりましたね」
自分達を取り巻く環境が大きく変わった事に何処となくついていけてない烈。
同僚や部下達からの生暖かい視線と変な気遣いにとても複雑な心境となっている。
「それにしても、烈さんには申し訳無い気持ちで一杯です」
「病室を抜け出して体調を崩してるのは双盾ですから。それに関してはちゃんと反省してください」
双盾は体調が良い時に散歩に出かける。しかし、問題なのは烈の許可を得ないで出掛ける事である。
隊士達も双盾を止めようとするのだが、毎度誤魔化されたり、逃げられたりする。
そして、出掛けた先で体調を崩して病室に引き摺り戻されるのが恒例となっている。
「あ、いやそれもなんですけど…………僕が病弱である事と痣城関係のゴタゴタのせいで式を挙げる事が出来ないのが申し訳無いという事です」
「白無垢への憧れとかありませんし、業務があるので別に式を挙げる必要は無いでしょう。こんな血に塗れた女に似合うものでもないしょうし」
「そんな事ないです‼︎烈さんは白無垢似合います。きっと、尸魂界一綺麗な花嫁になります。それに、僕だって今回の件で結構な数を斬りました。血に塗れた者同士お似合いですよ」
「全く………………貴方はそうやって歯の浮くような事をペラペラと…………」
「本心ですから」
「それなら………貴方の体調が良い時に職人を呼んで絵に描いてもらいましょう。なので、暫くは勝手な抜け出しは控えてくださいね」
まだ現世にはカメラなども生まれていない事もあり、瀞霊廷では貴族を中心に肖像画を描く事で思い出に残すという風習があった。
「是非‼︎そうしましょう‼︎」
笑顔で喜ぶ双盾に烈も笑みを返す。
自分が成す行動で、誰かを笑顔にする事がこんなにも気持ちの良い事なのかと烈は喜びを感じていた。
斬る事にしか興味を持てなかった自分が誰かの事で一喜一憂する事の充実感を嬉しく思う烈。
きっかけを作ってくれた元柳斎と麒麟寺には感謝してもしきれない恩が出来たと烈は強く感じた。
しかし、それはそれとして烈は一つだけ双盾に対して不満に思っている事があった。
それは、双盾の揶揄いで何時も自分だけが赤面してしまっている事だ。
夫婦になるというのに、負けてばかりではこれから末長く続く夫婦生活のパワーバランスに影響してしまう。
烈は長年戦場に立ち続けてきた歴戦の猛者。恋愛において負けっぱなしでは面子も丸潰れというものである。
そこで、烈は一計を案じる。
「ふふ、たかだか絵一つでそこまで喜ぶなんてお子様ですね。そんな貴方も可愛いですが」
そう言いながら双盾へ顔を近づける烈。咄嗟の事で思わず身体が固まってしまい目を瞑る双盾。
双盾が額に違和感を感じ目を開けると、そこには悪戯を成功させた子供のような笑みを浮かべた烈がいた。
「ふふふ、まだ私達は正式な夫婦ではありませんからね。この先はお預けという事にしておきましょう。それでは、私は仕事に戻ります」
顔から火柱が登るかのように熱くなった双盾。烈の狙い通り双盾は盛大に赤面した。
それを確認した烈は満足気に頷くと、病室を後にする。
「あら、香取さん。どうされ……………」
病室を出た所で遭遇したのは、香取抜雲斎。烈や斎藤不老不死と同様に初代護廷隊隊長の1人である。
現在は隊長を引退しており、若い隊士達を指導する為の道場を経営している。烈とは時たま運動と称して半分殺し合いのような試合をしている。
そんな香取が顔を真っ赤にして廊下に立ち尽くしていた。
「は…………はわわ、わわわわ」
「も、もしや」
「ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃ‼︎」
「待ちなさい、何に対しての謝罪なのか詳しく教えなさい‼︎」
元隊長と現役の隊長の盛大な鬼ごっこが幕を開けた。様々な建物を巻き込みながら、乱入してきた不老不死や他の隊長達と大乱闘をする事になり、全員纏めて元柳斎からのお仕置きを受ける事となるのであった。
最初は時系列とか考えず、クリスマスの話にしようかと思ってましたが流石にそれは…………って事でやめました。
瀞霊廷に肖像画描く文化があるか分からんけど、カメラとか無いであろうからこうなりました。家族写真ええやん。
はい、香取抜雲斎ちゃん登場。多分「はわわ」とか言うし、天然かつ真面目な雰囲気出しながら照れ屋さんだったりするでしょう。でも戦闘になると多分無表情で敵の首を刎ねるタイプ。怖い。
初代隊長達の中だと四楓院の千日さんでしたっけ?あの人の描写も入れたい。多分あの人は「カカカ」って笑う。夜一さんと同じで揶揄い上手だろ。
次回以降の話。双盾と烈さんの子供の話やりたい(
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幼少期編をやる
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いきなり霊術院編をやる