【完結】色々なアレが多すぎる!   作:大根ハツカ

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04 君に幸あれ(下)

 

「それで……どうするつもりだ?」

 

「うーん、妾的にはレイちゃんは正直どうでもいいんだよね〜♪ あっ、カイちゃんは捕獲させてもらうね☆ あの星に匹敵する生命力は、妾の強化パーツに相応しいからね♡」

 

「なら、お前を逃す訳にはいかない」

 

 

 カイを襲撃すると言うならば、相手もダメージを負っている今の内に倒す。修復してもらった右手を構え、射撃ユニットの照準を合わせる。

 だが、この戦いはオレと序列一位(ナンバーワン)の戦いではない。オレもコイツも端役に過ぎず、その本質は三大勢力のぶつかり合いだ。即ち、オレたちの敵は『アウトロー』だけではない。

 

 

序列一位(ナンバーワン)無礼(なめ)るな。妾は『アウトロー』のトップであるぞ?」

 

「たかが『アウトロー』のトップごときが粋がるな、貴様は茨木博親(いばらきひろちか)には遠く及ばん。貴様程度なら俺でも殺せる」

 

 

 突如、現れた一人の男が序列一位(ナンバーワン)……正確には洗脳された電気超人の背中を刺し貫く。

 今度こそ、電気超人は倒れて動かなくなる。

 

 後ろから現れた男はとにかく地味だった。顔の皺から、年齢は四十代後半だろうと感じる。身長は高いが、黒縁のメガネにスーツという何処にでもいそうなサラリーマンの格好をしていた。だが、オレはその人のことをよく知っていた。再会することを夢見た人であった。

 

 

「数ヶ月振りか。久方ぶりだな、レイ」

 

「……八年振りだよ。あの時は全く話さなかったからノーカンだろ、父さん」

 

 

 その人の名前は天城(あまぎ)ハジメ。

 正真正銘、オレの父親だ。

 

 

「オレだって気づいてたんだな」

 

「当たり前だろう。俺はレイの父親だぞ?」

 

 

 別の形で再会したかった。

 だが、時間は巻き戻せない。

 

 

「その人を殺したのか?」

 

「安心しろ、峰打ちだ」

 

 

 峰では無いだろ、めちゃくちゃ血が出てるし。

 だが、よく見ると息はしている。上手いこと臓器を避けて貫き、毒が何かで動けなくしているだけのようだ。

 

 

『感知、肉体偽装反応』

 

「どうして此処に?」

 

「俺の職業を忘れたか?」

 

 

 肉体偽装反応と聞いて、初めに思ったのはこの父さんが偽物ではないかという疑いだ。この局面でオレの家族が登場するのが不自然だった。

 だが、すぐさま別の可能性を思いつく。

 肉体偽装を変装とは異なる用途で使う人がいる。……そう、オレだ。そこで父さんの職業を思い出した。

 

 

「俺は元自衛官、つまりは旧体制側の人間だ。その俺が『ガバメント』に所属しているとは思わなかったのか?」

 

「……改造人間(サイボーグ)になった、のか?」

 

「俺には果たすべき目的があった。そのために手段を選ばないで突っ走っていたら、いつの間にかこうなっていた。母さんに泣かれた時は、流石に堪えたがな。……お前にも見せてやろう」

 

『報告、肉体偽装反応消失』

 

 

 瞬間、比喩などではなく文字通り肉体が変化する。男の見た目が美少女に、肉の身体が鋼に変化する。その変化は身体の一部では収まらず、全身が変貌する。

 そうだ、『ガバメント』はチカさんを最大限に危険視しているのだろう。だったら、投入する戦力だって最大の物に決まっている。

 淡路島に向かう車での会話を思い出した。オレをモデルにして造られた十二機の兵器、『ガバメント』における最新鋭の技術。

 

 

「改めて名乗らせて貰おう。俺の名前は天城ハジメ。だが、製品名(コードネーム)はまた別にある」

 

 

 その見た目はオレの機体(からだ)とよく似ていた。だが、細部は異なる。その髪は血の様に赤く、その眼は殺し屋の様に鋭い。そして何より、オレが小学生の身長であるならば、その機体(からだ)は中学生のようであった。

 父さんは高い声で告げる。

 

 

「俺は全身義体改造人間(オーバーホール・サイボーグ)八号機、銘は『タイプ・スコーピオ』。息子だからと言って手加減はしない、世界の平和を維持するためならば俺は何だってやってやる」

 

 

 父さんが電気超人を貫いた物とは別の剣を構える。オレも右手の射撃ユニットを起動させ、それと別に左手の近接戦闘ユニットを展開しようとする。だが、父さんの方が速かった。

 

 

「特殊兵装、起動。空間切断、実行」

 

「ガァッッッッ!!!!!」

 

 

 左腕を貫かれる。その損害自体はどうでもいいが、その剣は腕以外のものすら破壊する。

 

 

「亜空間ポケットを破壊したのか!?」

 

「この空間切断ユニットは対空間跳躍(ワープ)用兵装だ。ならば、同じ技術が流用されている兵装展開という機能自体を破壊することもできる」

 

 

 左腕の兵装展開は封じられた。同じように兵装展開を行って、隙を見せてしまうと他の亜空間を破壊されるだろう。出来るだけ兵装展開を使わず、今の手持ちだけで戦う必要性がある。

 

 

「父さんもチカさんを排除するつもりなのか?」

 

「チカさんか……成程、レイは何も知らないのか。いや、何も教えてもらえなかったと言った方が正しいのか?」

 

「……どういうことだ」

 

 

 話を割り込むかのように、爆発のような音が鳴り響く。それと共に、遠くで巨大な氷の柱が生まれる。

 

 

「あれは雪女の能力を使っているのだろうが、オリジナルの能力はあそこまで派手なことは出来ない。レイの言うチカさんとやらは、あの氷で地球全体を覆えるほどの化け物だぞ?その力は個人に託すべきではなく、俺たちが正しく管理する必要がある」

 

「だったら、もうオレたちに話すことはないよ。きっと……父さんと同じ方向を見ることは不可能だ。オレはこの下らない争乱を終わらせて、チカさんを助ける」

 

「この争乱が早く終わってほしいのは同意見だ。俺も速く超常戦争に取り掛かりたい」

 

 

 剣先と銃口を互いに向け、睨み合う。先に動いたのは父さんだった。剣を水平に振るう、咄嗟にオレはしゃがみ込む。単純に切れ味が良い剣などではない、剣が通過した場所の何かもかもが消失しているのを観測する。後ろ(・・)の何かが消し飛ぶのを感じる。

 だが、それを気にしている余裕はない。砲弾を装填し、照準を父さん……その更に奥に合わせる。砲弾が父さんに背後から迫っていた何かをブッ飛ばす。

 

 

「オレが父さんを助けるか試したのか!?」

 

「試すまでも無い。レイは他人を助けずにはいられない、だったら俺が迎撃するまでもない」

 

 

 いつ間にか周囲に別の存在が増えている。

 片方は妖怪、オレの背後にいた存在。巨大な手の集合体とでも言えばいいのだろうか、一言では表せない異形が存在した。父さんの一撃で千切れた腕が、既に再生されている。

 もう片方は超人、父さんの背後にいた存在。オレにも見覚えがあるその男は、明石海峡大橋を拳で破壊した超人だ。名付けるならば、衝撃超人だろうか。アメリカのスーパーヒーローのように、マントをなびかせている。

 

 

「手の妖怪は見覚えがある、あれは『アウトロー』の序列八位(ナンバーエイト)によって生み出された妖怪だ。ヤツは船幽霊の半妖で、液体から人体を作る能力を持っている。超人が大量に投入されている今なら、妖怪だって作り放題だろう。再生するのは序列九位(ナンバーナイン)の人魚の血でも分け与えられているのかもしれん」

 

 

 恐らく、厳密には妖怪ではない。半妖の力によって造られた怪物、父さんがダメージを与えられたのも妖怪そのものではないからだろう。もしかすると、初めに遭遇した海坊主たちも同じ種類の怪物かもしれない。淡路島は怪物で包囲されていると考えていいだろう。

 

 

「HAHAHAHA!これほど多くのヴィランと遭遇するとは!だが、吾輩のウルトラパンチで成敗してやろう!!!」

 

「……三大勢力の刺客って、こういうのばっかなのか?」

 

「一緒にするな。レイはひとまず後回しだ、まずは貴様らを始末する」

 

 

 父さんと背中を合わせる。

 父さんとオレは目的が違う。目の前の人や知り合いのためにしか戦えないオレとは異なり、父さんは世界中の名も知らない誰かのために戦っている。

 それでも、戦わなければならない訳じゃない。同じ方向は見れなくても、背中合わせに協力することだってできるはずだ。

 

 

「俺が手の怪物をやる。俺の機体(からだ)は攻撃に特化してるからな、あの手のデカブツは得意分野だ」

 

「オレもあの超人について、少し思いついたことがある」

 

『注意、頭上』

 

 

 直後、衝撃超人が上から降ってくる。腕力だけが優れているのではなく、脚力も化け物だ。ただのジャンプで一瞬に視界から消えた。

 衝撃超人のパンチを間一髪で避ける。パンチが地面に大穴を開ける。その轟音を合図として、オレと父さんで突っ込む。

 

 

『解析、パンチとジャンプはバネと同じ原理』

 

「……チャージが必要で連発出来ないってことだな?」

 

 

 構造としては、シャコのパンチやバッタのジャンプに似ているのかもしれない。身長の差のせいか、ほぼ真上から拳が直角に振り下ろされる。必死にパンチを避けるが、パンチが地面を破壊するせいで足場が不安定になる。

 避けながら砲弾を叩き込むが、効いている様子はない。皮膚が馬鹿みたいに硬いのだろう。

 だが、衝撃超人の攻略法は既に編み出している。

 

 

「ちょこまかと素早いな!だが、君の攻撃は我輩には通用しない!!直ぐに、吾輩の鉄拳を叩き込んでやろう!!!」

 

「通用しないのはオレの(・・・)攻撃だろ?」

 

『起動、飛行ユニット』

 

 

 衝撃超人の下に潜り込み、腰に抱きついて共に空を飛ぶ。衝撃超人のパンチは頭の横を通り過ぎ、空振りする。それに伴い、衝撃超人の腕が破裂する。

 

 

「グギィァァァアアア!!!!!!!!!」

 

「お前のパンチはシャコと同じで、威力は高いがお前自身がその反動に耐えられない。特に空振りをした時、反動は全てお前に返ってくる」

 

 

 衝撃超人は何度も地面を破壊したが、そもそもオレに当てるつもりならば、地面まで拳を振るう必要がない。それにあそこまで近かったら、パンチよりもキックの方が有効だった。あの動き方は、空振りをしないことを意識しすぎていた。

 そもそも、始めに橋を破壊した時から可笑しかった。橋を壊す必要はない。何故なら、海坊主と衝撃超人は別の勢力だからだ。ならば何故あの時、橋を破壊したのか。

 決まってる、水中に引き摺り込みたかったのだ。水中ならば水の抵抗力によって衝撃は拡散され、空振りでも反動が本人に全て返ってくることはない。

 

 

「OH……吾輩は君のことを侮っていたようだ」

 

「むしろ、侮っていたのは自分の怪力さじゃないか?」

 

 

 たった一度空振りしただけで腕が破裂したということは、それと同程度の破壊力がパンチに秘められていたということだ。例えオレが金属製であっても、一撃受ければひとたまりもなかっただろう。

 適当な所で衝撃超人を捨てる。いくら超人と言っても、腕が破裂したなら当分は戦線復帰できないだろう。

 

 

「……さて、父さんを助けに戻るか。それとも放っておくか」

 

『推奨、茨木チカとの合流を優先』

 

 

 そうだな。一応、父さんは別勢力の人間だ。先にチカさんたちと合流した方がいいだろう。ちょうど、氷の柱という目印をある。

 しかし、状況はそれを許さない。視界の端にそれを捉える。馬鹿げた光景すぎて、何もかもが夢かと錯覚してしまう。

 太陽(・・)が落ちてくる。

 

 

『解析、広域殲滅エネルギー弾』

 

「弾丸なのか……あれが!?」

 

 

 改造人間(サイボーグ)の兵装だろう。スーパーアイが上空に砲撃手を発見する。オレの似た顔の美少女、それが二人いる。片方は橋で遭遇した狙撃手だろうか。

 恐らくは全身義体改造人間(オーバーホール・サイボーグ)。父さんの同僚に違いない。

 

 逃げる時間はなかった。防御ユニットを全て展開して、衝撃に備える。そして、太陽が着弾する。

 全てが消滅する。

 光は無かった、何も見えなくなった。

 音は無かった、何も聞こえなくなった。

 衝撃は無かった、何も感じなくなった。

 

 

『……、………………!』

 

 

 センサーがイカれたのかもしれない。

 周囲のことが何も分からない。それどころか、AIの声すら聞こえなくなった。時間の経過も分からない。まだ数秒しか経ってないようにも思えるし、あれから何時間もこの状態のような気もする。……何も分からない。

 

 

『……急、……影…………』

 

 

 機体(からだ)が機能を取り戻し始める。

 砂嵐のような音が聞こえる。痛みを感じ始める。身体がボロボロになっているのを感じる。あと数分もしたらセンサーが治り、動けないにせよ周囲を観測できるようになるかもしれない。

 あと数分生き延びられたら、だが。

 

 

『緊急、敵影が接近』

 

「hj37m死t」

 

 

 人生は唐突だ。

 突然、人類の脅威が現れることがある。

 突然、宇宙人に連れ去られることもある。

 だから……突然、死んでしまうことだってある。

 そして、オレは死んだ。

 

 

 

 

 

『……』

 

『…………』

 

『………………』

 

 

 

 

 

 

「GYAU」

 

 

 カイの声で目を覚ます。ビクッと身体が跳ねる。反射的に胸に手を当て、心臓が動いているか確認してしまう。

 ……トクトクと心臓の鼓動を感じる。

 

 

「一体何があった?」

 

『実行、ログ確認』

 

 

 辺りを見回す。そこには何もなかった。

 人がいないとか瓦礫だらけとかのレベルではない。何もない。かろうじて山はあるが、それでも元の山とは形が異なっている。オレが目撃した太陽が全てを消滅させたのか、それともあの後にまた別の攻撃があったのかは分からない。ただ、地形を変えるほどの戦闘があったことは間違いない。

 空を見上げると真っ暗で、もう夜になっていることが分かった。近くで燃えている木以外に、明かりは見当たらない。多分、カイが燃やしてくれたものだ。パチパチと火が燃える音以外は何も聞こえない。夜は静寂に包まれている。もしかすると、三大勢力による争乱は既に集結しているのかもしれない。

 

 

『回答、黒髪長髪の女性を目撃直後に心臓が停止』

 

「即死……見たら死ぬ系か?」

 

 

 日本だと海難法師が有名だろうか。

 即死系能力を持った半妖、間違いなく『アウトロー』の刺客。あの時、オレは“死”を実感した。原因も理屈も分からないが、ただ死んだということだけを理解した。むしろ、どうして息を吹き返したのかが分からない。

 

 

「……もしかして、カイがオレを助けてくれたのか?」

 

「GYA!」

 

「ありがとう、マジでありがとう!」

 

 

 カイをめちゃくちゃ撫でる。

 カイは他者に生命力を付与することができる。もちろん、死者に生命力を付与した所でどうにもならないが、オレには死因が無かった。ただ死という結果を押し付けられただけなので、莫大な生命力の付与というゴリ押しでオレは息を吹き返した。

 それか単純に、即死が生命力を奪うことで成り立っていたのかもしれない。何はどうあれカイのお陰で一命を取り留めた。感謝を込めてめちゃくちゃ撫でる。

 

 

「チカさんたちは何処にいるか分かるか?それか、別の人たちでもいいんだけど……」

 

「GYAI」

 

 

 状況が全く分からないので、誰でもいいから話を聞きたい。すると、カイは斜め上を見つめる。それに釣られて、オレを斜め上を見る。

 ……は?

 あるものを見つけ、唖然とする。空いた口が塞がらない。どうしてそれに今まで気づかなかったのか。辺りが真っ暗だったのもある。しかし何より、それは大きすぎて視界の中に収まらない。だからこそ、それが一人の人間だとは考えられず、勝手に山であると解釈していた。

 

 

「……何してんだ、チカさん(・・・・)

 

「あら、起きてましたのね。小さすぎて気付きませんでしたわ」

 

 

 そこにいたのは途方もなく巨大な女性。

 もともと淡路島に存在する山よりも大きく、それなのに縮こまって体育座りするチカさんだった。

 

 

「で、デカっ!!!」

 

「あら、昨日レイが縮んだときに見せましたわよね?……いえ、寝てたんでしたわね」

 

「どういうこと????」

 

『回答、相対性理論において、運動する物体の長さは縮小する』

 

 

 え……オレの身長縮んでたの?

 昨日の時間が遅れるほどの加速が原因か……。仕方ないが、更に身長が縮んでいたことにショックを受ける。

 

 

「ブロッケンの妖怪の能力で、物体を巨大化させる光を放つことができますわ」

 

「いや、巨大化した方法は分かったけど、結局どうして巨大化したんだ?いつの間にか、三大勢力の争乱も終わってるし……」

 

「あら?……そういうことでしたのね」

 

 

 チカさんは一度首を傾げると、何かに気づいたかのように笑う。

 

 

「レイさんはこの争乱が三大勢力同士の殺し合いだと思っていらっしゃるのですわね」

 

「は?」

 

 

 ……序列一位(ナンバーワン)の言っていたことは、全てブラフだったのか?いや、だが。

 

 

「この争乱はわたくしと三大勢力の殺し合いですわ」

 

 

 今度こそ、絶句する。

 どうして、こんなに静かなのか。

 決まってる、争乱は終わったからだ。

 

 

「一人で全勢力を倒したっていうのか!?」

 

「わたくしは人類最強ですので」

 

 

 笑う、嗤う、嘲笑う。

 

 

「四人の改造人間(サイボーグ)がいましたわ。上空から狙撃してくるヤツ、島ごと焼き払ったヤツ、空間を切断する剣を持つヤツ、兵装を無限に取り出すヤツ。全員、ぶち殺しましたわ」

 

 

 遠目に見た人、見てもいない人、そして父さんがいつの間にか死んでいる。

 

 

「四人の半妖がいましたわ。怪物を産み出す船幽霊、見た者を即死させるバンシー、幸運を奪って隕石を落とした座敷童、人類に寄生する女狐。全員、ぶち殺しましたわ」

 

 

 チカさんと同じ陣営の人であっても、それは例外ではない。

 

 

「四人の超人がいましたわ。二人はレイさんが倒してくれましたわね。その他には、百キロ先の足音を嗅ぎつけるヤツ、熱量攻撃も物理攻撃も効かないヤツ。全員、ぶち殺しましたわ」

 

 

 最早、チカさんには相性すら関係ない。それを力づくで捩じ伏せる能力があるからだ。

 

 

「何と言えばいいのか……人類には嫌気が差しましたわ。ですので、宇宙人に滅ぼされる前にわたくしが滅ぼしてやろうと思いまして」

 

 

 それは会話ではなく独白だった。

 自分に言い聞かせているような気もした。

 

 

「先程どうして巨大化したのかとお聞きしましたわよね……大きい方が見やすいでしょう?」

 

「自分の力を誇示したいのか?」

 

「いえ、そういう訳ではないですわ。簡単に言うと……この状態で即死能力を併用するとどうなると思いますか?」

 

「……まさか、それで刺客全員を殺したのか!?」

 

「……そうですわ。レイさんを殺すつもりはありませんから、淡路島でゆっくり寝ていてくださいませ」

 

 

 大きなものは目に入りやすい。

 目に入ると即死する。

 確かに、極悪コンボと言えるのかもしれない。

 

 

でも(・・)それ嘘だろ(・・・・・)?」

 

「…………」

 

「チカさんは敵対した人は殺せても、無関係な一般人は殺せない。それでもチカさんが殺すって言ってるなら、殺す必要性があるんだろ?」

 

 

 チカさんは良い人だ。

 善行だけの人とは言わない。メイド服に関しては変態だし、必要ならば殺人だって犯す。だけど、必要もないのに悪事を行えるような人ではない。

 

 

「オレたちを巻き込まないように敵対してもらおうと考えたんだろうけど、オレのチカさんに対する恩義を見誤ったな?オレは絶対にチカさんを助ける。一体、何があった?」

 

「……レイさんには話していなかったですわね。二週間後に第二次超常戦争が始まりますわ」

 

 

 それは序列一位(ナンバーワン)にも聞いた話だった。具体的な日程は知らなかったが、同じ話をする……そう思っていた。

 

 

「その戦争において、人類は九割九分負けますわ」

 

「…………え」

 

 

 前提が覆る。

 戦争は負ける、後始末なんて話じゃない。

 そもそもの話として、人類に勝ち目はない。

 

 

「わたくしは人類最強の能力を持っていますが、それでも永遠に戦える訳ではありませんの。わたくし一人が持ってる生命力なんて、限りがありますもの」

 

「……それがどうして大量殺人に繋がる」

 

「バンシーの即死は相手から生命力を奪うことで成り立っていますわ。……つまり、生命力を一人に集約できるのですわ。わたくしが無限の持久力を手に入れられたのなら、万が一にも負けることはありませんわ」

 

 

 それは地獄のような二択だった。

 何もできずに人類滅亡を待つか、自らの手で人類を減らして戦力を高めるか。どちらを選んでもマイナスが大きく、それでもチカさんは僅かでもプラスがある方を選んだ。

 

 

「でも……でも、それじゃあさ。戦争に勝てたとしても、チカさんは笑顔に過ごせるのか?」

 

「無理ですわね。ですから、戦争が終わり次第、諦めて出頭しますわ。……約束を果たせなくて、ごめんなさい」

 

「……どういう」

 

「いいや、それはダメだ。人類滅亡を防ぐために、人類を殺すなんて本末転倒なことさせるか」

 

 

 第三者が現れる。見覚えのある顔、見覚えのある声。生きているとは思わなかった人がいた。

 

 

「天城ハジメ!?殺したはずじゃ……!?」

 

「貴様の即死は視覚から作用する。ならば、脳と視覚の接続を切断すれば、俺が生命力を奪われるのは一瞬だけだ」

 

「例えそうだとしても、即死ですわよ!?一瞬であっても、相当な量の生命力を奪われているはずじゃ……」

 

「そこの怪獣だ」

 

 

 視線が一斉にカイへ向けられる。

 

 

「そのミニ怪獣が淡路島全体に生命力を付与している。他の刺客たちも、誰一人死んでいない」

 

「……それで何をしにきましたの?貴方程度にわたくしを止められるとは思いませんが」

 

「指摘だ、茨城博親。貴様、思考誘導(・・・・)されてるぞ」

 

 

 思考誘導……序列一位(ナンバーワン)か!?

 既に退場したと思われていた人。だが、ヤツはこの場にいなくても影響を与えられる存在だ。

 

 

「全てが女狐の掌の上だ。貴様とバンシーを遭遇させ、その計画を自分で思い付かせる。あとは貴様を戦わせ、全てが終わった後に刑罰という名目で排除する。第二次超常戦争に勝利することが出来る上、『アウトロー』の勢力図も変化しない一石二鳥の策だな」

 

「……それでも、勝利するためにはこれしかありませんわ」

 

「いいや、それでは勝利できない」

 

 

 父さんは断言する。

 例え、多くの人を犠牲にしたとしても、戦争に勝利することはできない。

 

 

「宇宙人は自分の母星ごと侵攻してくることが判明した。今はその準備期間であり、二週間後にその星ごと空間跳躍(ワープ)が行われる」

 

「星ごと……そんなの戦争どころじゃない!星がこちらに来た時点で終わりだ!!向こうの重力に引っ張られて、地軸も公転軌道もめちゃくちゃになる!!!」

 

「その通りだ。戦争に勝つためには、こちらから侵攻しければならない」

 

 

 不可能だ。

 元から、迎撃の時点でこちらに勝機は無かった。それに加えて、人類に不利な宇宙というフィールドに持って行かれた。攻撃三倍の法則を出すまでもない。絶対に人類に勝ち目は無い。

 

 

「だったら、どうすればいいのですか!!!わたくしはただ、幸せになりたいだけなのに!!!!!」

 

「俺たち『ガバメント』は解決策を考えた。それを実行するためには、君の能力が必要だ。手を貸してくれ」

 

 

 チカさんを排除したかった訳ではないのか?

 ……ただ、その能力を利用したかったのか。力を個人に託さず、『ガバメント』で管理するっていうのはこういう意味か。父さんの話し方は紛らわしいな。

 

 

「勝てないのなら、答えは一つだ。後回しにすれば良い。具体的に言うならば、コールドスリープだ」

 

「宇宙人の母星を凍らせるということですわね?……恐らく、可能ですわ。ですが、その時間稼ぎがいつまで持つかは分かりませんわよ」

 

「だったら君が永遠に凍らせておけばいい。……人魚の血だ、君はコピーによって不死身になれるはずだ」

 

 

 それは……それも、さっきとは別の意味で地獄だ。不老不死が幸せで無いことぐらい、今どき誰だって知ってる。それも、宇宙に独りぼっち。遠い星の知らない誰かのために永遠に。

 

 

「許せるか……そんな地獄を一人に押し付けるつもりかッッッッ!!!!」

 

「もちろん、辛いのは分かっている。だが、永遠ではない。どれだけ時間がかかるかは分からない、それでも俺達は君を迎えていく。今の技術では、今の戦力では勝てなくても、いつか君を救いに行く」

 

「テメェッッッッ!!!!!!」

 

「いいですわよ。この方法なら誰も犠牲にならず、わたくしも約束を破ることがないですから」

 

「ありがとう、茨木博親。絶対に俺達は君のもとへ向かう、待っていてくれ」

 

 

 まるで大団円のように言葉が交わされる。

 ……茨木博親。その名前を聞いて全てを思い出した。オレはチカさんと……ヒロくんと会ったことがある。と言っても、大したことは話していないし、何か特別な思い出もない。ただ一つ、約束をした。

 

『ボクって化け物やねんけど、どうやったら友達ができんねんやろう?』

 

『おっ、その歳で厨二病とは将来が楽しみだな。友達の作り方かぁ、そうだな。優しい人になったら友達も出来るんじゃないか?』

 

『ほんま!?じゃあ……ボクがやさしいひとになったら、お兄ちゃんも友達になってな!あっ、子分でもいいで!』

 

『子分は嫌だな……。じゃあ、約束な。ヒロくんが優しくなっていたら、オレと友達になろう』

 

 

 年齢が逆転していたので気づかなかった。オレは約束を忘れていたのに、ヒロくんはずっと覚えていてくれたのだろうか。

 拳を握りしめる。覚悟を決める。

 

 

 

「一人の一生を犠牲にして助かるぐらいなら、ここで人類は滅亡した方がいいよ」

 

 

 絶対に助けてみせる。

 誰かを犠牲にして生き延びるなんて、誰もそんなことしたくない。オレは何処かの誰かよりも、目の前の人を助けたい。

 

 

 

「……言ってることが分かっているのか?」

 

「父さんだってそうだろ?オレと再会した時、本当はオレを殺さないといけなかった。でも、見逃した」

 

「レイを見つけるために『ガバメント』に所属した、レイを助けに行くために改造人間(サイボーグ)になった。……だが、その過程で多くの人と出会った。その人たちを助けたい、世界を救いたい。俺が私情を優先したのは間違いだ、今度こそ俺は正しいことをする」

 

 

 父さんの言っていることは正しい。

 だが、前提が間違っている。一人と世界のどちらかしか救えないなんて、そんなの絶対におかしい。

 

 

「オレは救うぞ、父さん……」

 

「何?」

 

「チカさんと世界、オレはどっちも救ってみせる。例え、チカさんが自分の犠牲を許容したとしても!全てを投げ打つ覚悟を決めたのだとしても!そんなもん、全部ぶっ壊して台無しにして、何もかもを救ってみせる!!だって、チカさんは言ったんだ!!幸せになりたいって!!それを自己犠牲なんて綺麗事で押し流されてたまるか!!オレは絶対にチカさんを幸せにする!!!そのついでに世界も救ってやる!!!」

 

「不可能だ!!!全ての人間を救うなんて、土台無理な話だ!!人間の手なんてちっぽけで、掴める人数には限りがある!!だが、この方法なら誰も犠牲にならない!!!」

 

「そこまで分かっていて、何故そんな結論になるのか分からねぇな」

 

「……何を言っている!?」

 

「一人で出来ることなんて、たかが知れてる!だったら!一人やらずにみんなで協力すればいいんだ!オレが掴んだ人が、また別の人を掴めば、きっとみんなを救える!!!」

 

 

 オレ一人で問題を解決できたことなんて、何一つなかった。いつだって、オレは人の力を借りて生きてきた。

 オレだけの話ではない。誰だって、誰かの力を借りて生きている。

 

 

「そもそも、人類ってそういうもんだろ?怪獣を倒すために宇宙人の技術を使う。宇宙人を倒すために妖怪の能力を使う。妖怪を倒すために怪獣の細胞を使う。オレたちはいつだって、何かの力を借りて生きている!!!」

 

「それでどうする!?俺達の戦力じゃ戦っても勝てない!そもそも星が来た時点で終わりだ!!この詰んだ状況を、どうやって覆すつもりだ!!!」

 

「父さんはそれを知っているはずだよ」

 

「……な、に?」

 

 

 頭の中の知識を捻り出せ。

 三大勢力の力を思い出せ。

 

 

「父さんの剣は空間跳躍(ワープ)を無効化できる。だったら、ワープホールの中から出口を切断すれば良い。そうしたら、巨大な亜空間ポケットの出来上がりだ。星を孤立させた上で、地球に害も及ばない」

 

「……い、いや、まだだ。例えそれが可能なのだとしても、俺たちは空間跳躍(ワープ)の位置を予測できない。何処から来るのか分からなければ、その方法も使えない!」

 

「それなら、座敷童の能力を使えば良い。世界の一箇所だけを不幸にすることで、宇宙人が襲来する位置を固定できる。それじゃ大まかな位置しか指定できないかもしれない。でもそれなら、百キロ先の足音を嗅ぎつける超人がいる。空間跳躍(ワープ)はその前兆として微弱な振動が起こるから、それを探知すれば正確な場所を予測できる」

 

 

 三大勢力に属していると気がつかないかもしれないが、外からその能力を見るとよく分かる。人類は手を合わせれば、何だって出来るはずだ。

 

 

「それが成功しても!そもそもの戦力差は覆らない!人類は宇宙人に勝ち目がない!!!」

 

「そうだな、だったら人類以外の力を借りれば良い」

 

「なん、だって?」

 

 

 父さんの動きが止まる。

 今度こそ、父さんの想定の上を行く。

 

 

「いるだろう、宇宙人の天敵が。妖怪は生命力と人類の思念さえあれば生み出せる」

 

 

 そして、そして、そして、そして、そして。

 

 

「大量の超人、それにカイがいれば生命力は足りる。人類の思念はどれだけ必要なのかは分からない。だけど、序列八位(ナンバーエイト)は人体を作り出せるんだろ?必要分の頭を作って貰えば良い。それには大量の水が必要かもしれないが、父さんの同僚に兵装をいくらでも格納できるヤツがいただろ。そいつに頼んで、膨大な量の水を運んで貰えばいい」

 

 

 前提を、認識を、全てを覆す。

 

 

「だから、言ってやるよ。自分の力は何一つ使わず、他人の力を見せびらかして言ってやる。みんなの力を使えば、チカさんを犠牲にしなくたって世界を救える!!!悲劇を美談に塗り替えて諦めるな!!!簡単に人を見捨てんじゃねえ!!!」

 

 

 他力本願にも程がある。

 オレがすることなんて何もない。オレには何もできない。オレは改造されただけの、普通の男子高校生だ。だが、それは諦める理由になんてならない。

 だって、これが普通だろ!人を助けたいなんて、誰だって考えることだ!だったら、あとはやるだけだ。助けたいと思ったなら、絶対に助けるべきなんだ!!!

 

 

「もちろん、成功する確証なんか無い」

 

 

 当たり前だ。

 たった今考えた計画、成功するとは思えない。

 

 

「だが、もっと考えた別の方法が見つかるかもしれない。それに、成功する保証がないのは父さんの計画も同じだ。だったら、オレはこっちに賭ける!成功しても笑顔のないものより、みんながハッピーエンドになる方を選ぶに決まってんだろ!!!!」

 

「……」

 

「チカさんはどうしたい?結局、オレも父さんも関係ないんだ。思考誘導じゃない、誰かの意見でもない。チカさんの答えが欲しい」

 

 

 チカさんは涙をこぼす、声を上げて号泣する。

 困った、泣かれるとは。でも、これでいい。空の彼方で涙も流さずに堪えているより、こっちの方がずっといい。

 

 

「……ボクは、ここにいたい!頼りになる年上のお兄さんか、それか可愛い年下の女の子と結婚したい!!幸せにっ、なりだいッッッッ!!!」

 

「絶対にオレが幸せにする!」

 

 

 そう考えるのはオレ一人じゃない。フミさんも、黒服さんも絶対にそう考えるはずだ。

 

 

「父さんはどうする?オレじゃ三大勢力の動きは変えられない。でも、父さんは違うんだろ!?だったら、力を貸してくれ!!世界を一緒に救ってくれ!!!」

 

「……ここまで、清々しいのは初めてだ。上層部はオレが黙らせる、『カンパニー』に依頼だってする。『アウトロー』は茨木浩史にお願いしてくれ」

 

 

 そして、ここに小さな同盟が生まれる。

 改造人間(サイボーグ)、半妖、怪獣。みんなで力を合わせて、世界ってやつを救ってみせる。

 

 

「みんなで世界を救おう」

 

 

 第二次超常戦争のカウントダウンが始まる。

 世界を揺るがす“運命の日”はあと少し。




▽天城ハジメ
見た目:赤髪少女TSサイボーグ
能力:兵装展開、空間切断
全長:156cm
属性:宇宙人/人類
陣営:『ガバメント』

▽九号機『タイプ・サジタリウス』
見た目:緑髪少女TSサイボーグ
能力:兵装展開、世界俯瞰
全長:156cm
属性:宇宙人/人類
陣営:『ガバメント』

▽五号機『タイプ・レオ』
見た目:銀髪少女TSサイボーグ
能力:兵装展開、広域消滅
全長:156cm
属性:宇宙人/人類
陣営:『ガバメント』

▽十一号機『タイプ・アクエリアス』
見た目:紫髪少女TSサイボーグ
能力:兵装展開、無限格納
全長:156cm
属性:宇宙人/人類
陣営:『ガバメント』

(ジュウ)
見た目:??
能力:洗脳
全長:??
属性:妖怪/人類
陣営:『アウトロー』

序列八位(ナンバーエイト)『母胎』
見た目:マタニティドレス未亡人
能力:液体生命化
全長:165cm
属性:妖怪/人類
陣営:『アウトロー』

序列四位(ナンバーフォー)『万死』
見た目:パジャマ黒髪長髪美女
能力:即死
全長:158cm
属性:妖怪/人類
陣営:『アウトロー』

序列五位(ナンバーファイブ)『運命』
見た目:黒髪着物お団子幼女
能力:幸運操作
全長:137cm
属性:妖怪/人類
陣営:『アウトロー』

▽電気超人
見た目:黒フード黒マスク黒手袋
能力:放電、電磁波探知
全長:179cm
属性:怪獣/人類
陣営:『カンパニー』

▽衝撃超人
見た目:アメリカのスーパーヒーロー
能力:スーパーパンチ、スーパージャンプ
全長:230cm
属性:怪獣/人類
陣営:『カンパニー』

▽感知超人
見た目:革ジャンリーゼント
能力:振動感知、超嗅覚
全長:193cm
属性:怪獣/人類
陣営:『カンパニー』

▽無敵超人
見た目:全裸イケメン
能力:熱量無効、物理無効
全長:180cm
属性:怪獣/人類
陣営:『カンパニー』
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