いつも月夜に米の飯、米の飯より思し召し   作:ルシエド

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メリークリスマス(ギリギリ)


「マックでもマクドでもありませ……いや、そうでもあるのですが……!」

 『これはあくまでアグネスタキオンの私見、という体で読んでほしい』

 

 『存在が近似である二名が世界融合の結果出会うという可能性は、低いが無いわけではない』

 

 『まず、存在の近似、外見的酷似者の発生の可能性だけど』

 

 『我々の世界は兄弟のようなものだという話をしただろう?』

 

 『文明レベルに大いに差があってなお、我々の世界は近かったと思われる』

 

 『装置の事故で真っ先に衝突したくらい、近い世界だったわけだしね』

 

 

 『ならこういう存在が居るのもおかしなことではない』

 

 『"ウマソウル"を持つ、持たないしか違いがない、平行世界の同位体』

 

 『人間とウマ娘という違いしか持たない同一人物、と言ってもいいかな』

 

 『彼女は確か』

 

 『名門メジロの御令嬢、メジロマックイーンだ』

 

 『それなりに話題になるウマ娘だったと記憶しているよ』

 

 『それともうひとりが、君がマクドちゃんと呼んでいた方か』

 

 『この二人がそういう存在であることは疑いようがないね』

 

 

 『と、なるとだ』

 

 『何故、この二人はここに閉じ込められていたのか』

 

 『何故、この二人でセットでここで守られていたのか』

 

 『そこは気になるところだね』

 

 『深い理由があるのかないのか』

 

 『我々には事情を推し量れないから』

 

 

 『この手紙は明らかに君宛だ』

 

 『でなければ君だけにあの二人を助け出せるようにしてあるわけがない』

 

 『君用の暗証番号だけがある、つまりこの手紙の主は君だけを信用していたということだ』

 

 『君以外の誰も信用できなかったのか』

 

 『あるいは、君以外に信用できる人間が居なかった』

 

 『なんにせよ』

 

 『この人物が関わった何かが原因で、あの猿は人狩りに動いていた可能性が高い』

 

 『あくまで相対的に、だがね』

 

 

 『この人物はかなり精神的に不安定だったようだ』

 

 『記述に関しては信用しないのも手ではある』

 

 『有史以来、間違った記述からの資料汚染はずっと付きまとう問題だからね』

 

 

 『ただ、総合的に判断すれば、全て間違っていたとも思い難い』

 

 『何故なら、この手紙の書き手は君に彼女らを託し』

 

 『彼女の片割れが、君を知っていたからだ』

 

 『君に彼女を託した理由もこれで理解できる』

 

 『同時に、頭のおかしい人物が発狂して行った愚行という可能性も下がる』

 

 

 『記憶が僅かに戻ったんだろう?』

 

 『何故なら君は、今日まで彼女のことも忘れていたはずだ』

 

 『彼女と出会って初めて、君は平行世界に繋げる装置の開発者のことを思い出した』

 

 『蘇った記憶はほんの一部だけ? ふむ、そうか』

 

 『できれば平行世界に干渉する装置の詳細も聞きたかったが』

 

 『無理をさせるつもりはないさ。君のペースで思い出していけばいい』

 

 『君に無理をさせるとろくなことがなさそうだ』

 

 『おやなんだねその顔は』

 

 『まるで私が、君同様に無理をさせるとろくなことがない人間みたいじゃないか』

 

 

 『こら筆談の途中だぞ、ちゃんとこの紙を見るんだ』

 

 『作業を再開するんじゃない、こっちを見たまえ』

 

 『見ろってば!』

 

 

 

 なるほど。

 流石タキオン先生、真っ先に神殿に飛び込んできて考察を乱雑に書き綴ってる。

 いやすごいなこいつ。

 賢いのにバカだ。

 恐れ知らずの研究者肌。

 できればもう少し内部調査が済んでから突撃してきて欲しかったですね。

 

 ちょっと待っててくれ。

 ええと。

 ここの制御盤からだと制御は……取れない。

 ううむ普通に制御室から一括で制御取れないのは流石神殿って感じだな。

 

 ええと、蔵書室入って。

 ここはデータベースに接続されてるはずだから。

 よし、されてる。

 ライブラリにアクセスして。

 データ流し込んで。

 ライブラリに仮想領域作って。

 一部のライブラリを内部で動くCPU扱いにして、と。

 よし。

 これで神殿の機能を全部掌握できるかな。

 あと一時間くらいの作業は要るが、目処はついた。

 

 

 大人しくしてなさい。

 いい子だから大人しくしてて。

 え?

 ライス姫達も来た感じ?

 カフェちゃんもネイチャ様も?

 全員来てんじゃん。

 うける。

 うけないが?

 大人しくしててくれ~……いや、まあ、心配されてるのは分かるんだけどさ。

 認めたら、なんかむず痒いんだ。

 

 ん?

 

 

 あ。

 

 

「e3818ae58584e38195e38293efbc81e38080e38182e381a3e38081e38288e3818be381a3e3819fe38081e38288e3818be381a3e3819fefbc81e38080e784a1e4ba8be381a0e381a3e280a6e280a6efbc81」

 

 わぁ、速いね。

 

「これやばそう」

 

 ちょ、ライス姫、ライス、ライスシャワー!

 減速減速!

 その速度は……うおおお! 生体素子起動!

 

 

「おうっふ……!」

 

 すごい勢いで突っ込んできたな……!

 なんとか受け止められた。

 セーフ。

 なんとかセーフ。

 なんだこれは。

 もう鋼鉄のボールでドッジボールでもしてたのかって気分ですよ。

 

 

 おーよしよし。

 おーよしよし。

 どうしたどうした。

 

 ……。

 ……。

 ……。

 うーんまあそうか。

 ミサイル飛び交う中で俺が生身で一人で出て行ったらそりゃ心配になるね。

 そりゃそうだ。

 心配かけてごめんな。

 

 

 ごめんて。

 許して。

 後でなんでもするから、な?

 しかし全員来ちまったか。

 うーん。

 まあもう安全は完全に確保できたからいいんだが。

 

 うし。

 全員来たらここで説明済ませちまうか。

 時間もいいしその後飯にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくかくしかじか。

 というわけでみんな。

 仲良くしてあげてね。

 

 

 一名除いて全員「そんなことある?」って顔してんの逆に面白いな。

 

 そりゃそうなるわ。

 

 残り一名はつまんない話になりそうだからって寝てるけど。そんなことある?

 

「事前に知っていたとはいえ……"ウマ娘"とやらがこれだけ居ると圧巻ですわね」

 

 

 ああ。

 マクドさんはあんまウマ娘と出会ってないのか。

 初期段階からあの扉の向こうに避難させられてた感じかね。

 異世界の見知らぬ獣人を見た! みたいなもんだからそりゃ驚く人も居るか。

 

 人間のマクドさん。

 ウマ娘のマックさん。

 

「マクドさんはマックさんと二人で話してた感じか?」

 

「どういう略称セットですの!?

 ええ、まあ。

 平行世界の同一人物……

 話も合いましたし、互いの世界について教え合える親友のようなものですわ」

 

「……同じ顔の親友って、双子みたいだなあ」

 

「実際双子のようなものですわね。

 互いの考えることもなんとなく通じ合うのです。

 他の異世界の方とは、まるで話が通じないのに。

 道理を飛び越えて共鳴しているような、そんな感覚です」

 

「奇妙な観測現象だね。後でタキオン先生と調べてみるよ」

 

「お願いします。貴方なら信用が置けますわ」

 

「そう言われるほどの者では……」

 

「またまた、ご謙遜を。ご自分の貢献を忘れたわけではないでしょう?」

 

「それがなんとも。どうも記憶喪失になっちゃったみたいなんだな」

 

「……えええ!?」

 

「とりあえず長話になる前に、食事にしないか?」

 

 食事食事。

 神殿の機能を起動。

 食堂を動くようにして、と。

 お。

 すげえな。

 食料が大分確保されてる。

 神殿に最初からあるやつだけじゃないな。

 世界が融合してから確保された食料もある。

 こりゃ、拠点にするには十分だ。

 

 

 おお……!

 ナイスネイチャが燃えている……!

 顔に出さずに燃えている……!

 なんか真剣に献立考えてる……!

 一気に広がった料理の幅に、この人数の飯をどう作るかに燃えている……!

 

 え?

 ネイチャ様一人で飯作るの?

 俺も手伝……え、ダメ?

 一人で危ないところに突っ込んでいった罰?

 しゅん。

 ごめんよ。

 

 『大人しく休んでなさい』って言われてる気がする。

 面倒見の鬼、ナイスネイチャ。

 ナイスねーちゃんに改名しろ。

 

 ん?

 メジロマックイーン、マックさんか、どうした?

 ああ、ちょっと話したい感じか?

 構わんよ。

 不安が解消されるまで話に付き合おう。

 

 

 まあ。

 そりゃ。

 そうだわな。

 突然放り込まれるには、この環境は不可解すぎる。

 

 見知らぬ異世界の男、それも言葉が通じない相手に命運を預けるのは不安すぎるよな。

 怖がるくらいが普通だ。

 いくらでも、なんでも、聞いてくれていいぞ。

 俺には応える用意がある。

 君が安心するまで、俺は応じよう。

 

 ふむ?

 俺に聞きたいことがあるけど、それが多いわけ……じゃないのか。

 はて。

 

 ……。

 ああ。

 "知ってほしい"のか。

 俺に、メジロマックイーンを。

 まず自分から、自分のことを教えようと。

 そこから相互理解の取っ掛かりにする、と。

 なるほど。

 いい子……というか、教養がしっかりしてる子だな。

 不安だろうに、まず根掘り葉掘り相手のことを聞くんじゃなくて、まず自分のことを教えて、そこから信頼を育てていくスタイル。

 

 なんてこった。

 この子、人間が出来ている……!

 ちゃんとした家庭で育てられてる感じがビンビンする。

 文化レベルに差があってもそういうのは分かる。

 あっちの世界の21世紀の人間が11世紀のお姫様見たって、そういうのは分かるのと同じだ。

 

 ほうほう。

 メジロ家。

 なるほど。

 ウマ娘の家が。

 へぇー。

 メジロの悲願。

 つまり、優秀なウマ娘が集められた名門のウマ娘一族・メジロ家があって、マックさんはそこの一人……?

 おもしれー。

 アスリート一族のウマ娘一族版みたいな。

 愉快だなあ。

 

 マックさんはその家だとどんな感じの位置付けなん?

 ん?

 携帯端末?

 これは、オンラインの検索エンジンかな。

 

 なんか見せたいのか。

 どれどれ。

 

Gogooleについて ストア

 

 

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   . Gogoole検索 .
 
. I'm Feeling Lucky .    

 

 

 ……。

 ……。

 ……。

 そっかぁ。

 

 

 ちょっと一瞬反応に困ったが。

 優秀なウマ娘だったんだな、君。

 検索候補見るだけで、期待されてたのが分かる。

 

 ところでこの『メジロ 巨乳一族』って何?

 知らない?

 そっかぁ。

 マックさんが知らないならしょうがないな。

 

 ん?

 俺達の目的?

 俺達はタイムマシン作ろうとしてんだよ。

 各地にある神殿を巡って設計図探ししてるところ。

 十箇所の神殿のどこかにはあるから、見つけようとしてるんだ。

 

 おー、おー。

 派手に反応しなさる。

 まあこれが普通か。

 タイムマシンで全部どうにかするからな、まあ待っててくれ。

 

 ここに来たのはタイムマシンが目的じゃないんだが、まあ、ついでだついで。

 あ。

 神殿の機能使えば近場のサーチは今すぐ終わるか。

 ちょっと10秒時間くれない?

 ありがとう。

 ……。

 ん。

 無いな。

 申の神殿、及びその周囲にも設計図はなし、と。

 いい加減見つかってもいいと思うんだがな。

 

 こっから北方の神殿探すか、西に戻って京都から探し直すか、か。

 

 

 

 うん?

 

 カフェちゃん? どうしたこっち来て。飯待ってていいぞ。

 

 え? 合流前にギガスらが京都の調査終えてた?

 

 ああ。

 そういや俺らが合流する前にそこそこの時間戦闘音が聞こえてたっけ。

 猿どもにギガスが足止めされてる時に、平行してたのか。

 ……神格に到達しかけてたあの時のギガスなら、そりゃできるか。

 

 

 サンキュカフェちゃん。

 情報の擦り合わせありがてえ。

 こういう細かいところに気がつくのはめっちゃいいな。

 気遣い屋の証だ、有能オブ有能。

 平時なら友達ガッツリ増えるタイプだと思うよ。

 

 あれ、じゃあ。

 もう4/12終わったのか。

 中々いいペースなんじゃないか、これ。

 

 

 順路想定と今後の予測立てとくか。

 うん。

 サンキュ、カフェちゃん。

 

 

 ……。

 へっ。

 君の表情の動き、前の一億倍は読み取れるようになったぜ。

 これはもう友達と言っても過言ではないな。

 ははっ、冗談冗談。

 ん?

 もうとっくにそう思ってる?

 カフェちゃんが……俺を?

 

 ばっ……バカ野郎!

 そんなこと言われても……何も出ないからな!

 

 何か欲しい物ある?

 なんでもいいぞ。

 なんでも言ってくれ。

 え?

 今は特にない?

 なんだお前。

 なんかあるだろ。

 遠慮せずになんでも言えよ。

 ほら、欲しい物言ってみほらほら。

 

 え?

 そのちょろすぎるがゆえの距離感を直せ?

 はい。

 ごめんなさい。

 今後は適切な距離感を保たせていただきます。

 

 うおおおっ……!

 やめろっ……!

 反省しろっ……!

 友情を物の贈与で示そうとするのは……!

 これ普通に俺がダメっ……!

 

 不安になってきたな。

 

 マックさん、マクドさん、飯食ってるー?

 あと俺なんか不快にさせてないー?

 

 

 うわっ。

 いや、うわってなんだ。

 あまりにも爆速で馴染んでるもんだからつい「うわっ」って言っちゃった。

 いや、お前。

 馴染むまでが速いな!

 

 

 

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