いつも月夜に米の飯、米の飯より思し召し   作:ルシエド

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https://dencode.com/ja/string/hex
別に読めなくても問題はないですが、ウマ娘サイドの言語はコレを使うと読めます


「アタシまあまあ一番みたい」

 

 

 おかゆ、完璧に理解した。

 もはや原子レベルで習得したと言っていい。

 超音波振動で米の内部構造を適度に破砕することで柔らかいおかゆを作り、消化をよくする技術まで新規に開発してしまった。

 ギガスの計測機で見た感じ、彼女は胃腸までは弱りきってなさそうだ。

 たぶんこれである程度回復するだろう。

 

 お。

 なんか二人で話してるな。

 ライスシャワーに、ナイスネイチャ。

 デビュー前で各地の中央所属レース場を体験走的に走ってた子ら、か。

 

 ウマ娘ってのは本当に結構居るんだな、こっちの世界。

 あの身体強度があれば、普通の人間より遥かに生存能力は高いだろう。

 生き残りが世界のどっかに集まってたりすんのかな?

 メシをよく食ってるし、メシに困ると飢餓で倒れたままになっちまいそうでもあるが。

 

 

 

 しかし。

 もしやだが。

 ネイチャ様、いわゆる『ギャル』というやつなのでは……?

 しかも俺への接し方も優しい。

 優しいギャルなのか……!?

 

 すげー。

 初めて見た。

 

 二大大人気絶滅種『恐竜』『異性経験のない男子にも優しいギャル』の片割れ。

 伝説の存在じゃん。

 男は絶滅したものが好きなんだからそりゃ好きだろ。

 これが現代で……俺の世界の現代で漫画に引っ張りだこの人気要素にして絶滅種『オタクに優しいギャル』の始祖原型(アーキタイプ)だとでも言うのか……!?

 

 なんてこった。

 感動で震えが止まらねえ。

 イケメンの恋人十人くらいいそう。

 強者じゃん。

 恐怖すら覚える。

 「今日はお互いに頑張ろうぜ!」とか異性にも言ってそう。

 お金持ちのイケメン彼氏とか募集してそう。

 

 これが本来の並行世界接続の醍醐味なのかもしれないな。

 かつて絶滅した希少鳥の肉を食べる経験を得られる。

 大昔に絶滅した恐竜を見に行くことができる。

 いつか滅びた優しいギャルとの会話が叶う。

 まさに無限の可能性が感じられる。

 

「e784a1e4ba8be381a7e38288e3818be381a3e3819fe381a7e38199」

 

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「e38389e383a9e38188e38282e38293e38198e38283e38293efbc81」

 

 楽しそうに話してるな。

 

 俺の陰口とか言ってたらどうしよう。

 急に不安になってきた。

 つらい。

 でもまあいいか。

 そうだとしても俺の不徳の致すところだ。

 ただ不満は後でちゃんと聞いて改善して、彼女らにとって心地良い空間作りを心がけておかないといかん。

 開き直りはダメ。

 

 お粥をどうぞー。

 

 

 ちょっと待ってな。

 今かき混ぜてふーふーするから。

 口開けて。

 あーんって。

 ほら。

 あーんって。

 

 いやどうしたネイチャ様。

 味は大丈夫だぞ、ライス姫にも味見してもらったし。

 速く食べて元気になりなさい。

 あーん。

 

 

 ……。

 ……。

 ……。

 すんません。

 子供扱いして女性扱いしてないのはデリカシーが足りませんでした。

 今のは俺が完全に悪いね。

 ライス姫、フーフーしてあげて。

 数時間前まで倒れてた人だから、本人が平気って言ってても優しくしたげて。

 

「e383a9e382a4e382b9e381afe38081e38387e383aae382abe382b7e383bce381aae3818fe381a6e38282e584aae38197e38184e4babae381afe5a5bde3818de381a0e38288e280a6e280a6e38182e38081e3818ae38081e3818ae58584e38195e38293e3818ce38387e383aae382abe382b7e383bce784a1e38184e381a3e381a6e8a880e381a3e381a6e3828be3828fe38191e38198e38283e381aae3818fe381a6e381adefbc81efbc9f」

 

 

 うん。

 頼んだ。

 ネイチャ様が火傷しないようにな。

 

 あ、そうそう。

 食欲出て来たら、こっちに出汁卵葱雑炊の素を鍋の中に準備してあるから、こっちも食べな。

 え?

 もう食べたい?

 そっすか……元気ですね……はい。

 これがギャルの力なのか。

 

 

 うん? ライス姫も腹減ったのか。

 まあちょっと早めだけどもうそろそろ昼飯時だもんな。

 出汁卵葱雑炊の素は結構量あるからライス姫も使っていいぞ。

 

 

 ん?

 なんだその目は。

 なんだねその無言の抗議は。

 米このくらい食うだろ君。

 

 

 何?

 ああ、なるほど。

 いつの間にか食いしん坊キャラにされてるのが解せないと。

 大丈夫だ。

 割と最初の方から俺はずっと君を食いしん坊キャラだと思ってる。

 一回目の食事からめっちゃ食ってるもん姫。

 

 

 ごめん、ごめんて。

 今後は食いしん坊だと思わないようにたくさんごはん出すから……これ矛盾してね?

 

 気付いてしまった。

 俺この子達を子供扱いしてるが、別にそれ正解でもないな。

 そもそも世界と倫理が違う。

 女性扱いもしないとダメなんだ。

 若いウマ娘……彼女らは子供と大人の間、少女の域に生きている。

 このへんの微細にある倫理の感覚のズレを揃えていかないと、たぶんどっかで決定的に不快にさせてしまう気がする。

 気を付けよう。

 

 ん?

 姫、俺が考えごとしてる時に袖引くのはやめ……ネイチャ様だった。

 何用ですか。

 

 

 お。

 そうそう、言葉通じないから筆談で会話するってわけ。

 適応が速いな、偉いぞ。

 ……いかん、ナチュラルに子供扱いしちゃうな。

 

 話するならベッドに座ったままでいいから無理するな。

 俺の方から近くに行くから。

 ん?

 伝えたいことがある?

 

 『ありがとうございます』。

 『気を使わなくても大丈夫です』。

 『このご恩はちゃんとお返しします』。

 『食事の用意なんかは手伝えると思います』。

 なるほどな。

 

 ……優しくて気遣いができるギャルってなんだよ、ティラノサウルスか?

 ありがとう。

 嬉しいわ。

 さすギャル。

 でもしばらくは休んでような、倒れてたんだから。

 

 ところでなんであのへんで倒れてたんだ?

 レース場からもそこそこ離れてたと思うが。

 

 

 ほうほう。

 練習のしすぎでちょっと怪我しちゃって。

 療養所で一人治療してて、朝目覚めたら何もかんもぶっ壊れてたと。

 そんで人を探して歩いてたけど、誰も見つからず、食べるものも見つからなくてずっとあそこで動けなくなってたと。

 

 大変だったな。

 よく頑張った。

 運が良かったと言うべきか悪かったと言うべきか分からんが、今は休んどけ。

 

 寒くないか?

 毛布いる?

 上着いる?

 ベッドの上で退屈してない?

 ゲーム持ってこようか?

 

 あ、いらない。そっかぁ……なんかあったら言うんだぞ。

 

 

「e3838de382a4e38381e383a3e38195e38293e38081e3819fe38184e381b8e38293e381a0e381a3e3819fe38293e381a0e381ad」

 

「e383a9e382a4e382b9e38282e381a7e38197e38287efbc9fe38080e38182e38293e3819fe7b590e6a78be4babae8a68be79fa5e3828ae381a0e3818be38289e38081e4babae8a68be381a4e38191e381a6e38282e58aa9e38191e38292e6b182e38281e38289e3828ce381aae3818be381a3e3819fe3828ae38197e3819fe38293e38198e38283e381aae38184efbc9f」

 

「e38186e38185e280a6e280a6」

 

「e381a7e38282e38081e381bee280a6e280a6e4b880e4babae381a7e38282e784a1e4ba8be381aae79fa5e3828ae59088e38184e38292e8a68be381a4e38191e38289e3828ce381a6e381bbe381a3e381a8e38197e3819fe3828fe38082e784a1e4ba8be381a7e5b185e381a6e3818fe3828ce381a6e38182e3828ae3818ce381a8e38186」

 

「e280a6e280a6e38186e38293efbc81」

 

 

 

 なんにせよ。

 ライス姫が楽しげに話せる人を拾えただけでも御の字と思っておこう。

 たとえ、タイムマシンで全部無かったことになるとしても。

 

 ……む。

 なんか、ライス姫と出会ってから、地味にライス姫の"ノリ"に引きずられてるのか、俺。

 しても意味の無いことをしてるのは、走り込んでるライス姫だけでなく、俺もなのか。

 今気付いた。

 そうだ、俺からすれば赤の他人のウマ娘を拾って助けて行こうと、後になかったことになる。

 なのに拾って助けてあげていこうと、そう思ったのは。

 ライス姫の友達くらいは助けてもバチは当たらないと、そう思ったからだ。

 

 この子に助けられたから?

 記憶を失って初めて出会った人間だから?

 俺に刷り込みかなんかでもあったのか?

 まあ、いいか。

 

 別にそれで損するわけでもない。

 なかったことになるのに無駄な何かをしているのは、彼女だけじゃなく、彼女と出会ってからの俺もそうだと、それだけ分かっていればいい。

 賢い生き方をしてないのは、どうやら俺も同様みたいだ。

 

 お。

 

 

 はは。

 割と元気が戻ってきたみたいじゃないか。

 いいことだ。

 空腹は辛いもんな。

 ……他の世界に手を出してでも、この世から消し去りたいくらいには辛いのが、お腹が減るってことなんだから。

 腹が減るってだけで、人は間違える。

 

 

 俺が食おうと思ってたオムライスでも食って待っててくれ。

 ただライス姫とかけたダジャレで作っただけのメシだ。

 どうせライス姫ももうちょい食うしな。

 適当にあと何品か作っとくよ。

 

 え?

 明日からはネイチャ様が作る?

 そんな絶滅種のギャルに作らせるとか恐れ多い。

 え?

 食事一回ごとに料理担当を分担しようって話?

 ウマ娘さんらの世界の料理も、俺に教えてくれるのか?

 マジ?

 

 優しくて家庭的なギャルってなんだよ、ステゴサウルスか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギガスの内部はちょっとした街くらいなら構築できる。

 とはいえ、圧縮空間なら一瞬で作れるが、その内部にすぐ街を作れるわけじゃない。

 資材、設計図、製作機械、エネルギー、時間。

 何かを作るにはそんくらい必要だ。

 

 最近改めて必需品を考えてたが、段々とギガス単品で作れないものが結構見えてきた。

 ……いや。

 自分に嘘ついてどうすんねん。

 先の見通しの無い男が!

 

 本当は最初に、旅の終わりまでの期間を大まかに概算して、自給自足できないものもはっきり見えていた。

 見えていたつもりだった。

 今になって足りないものが見えてきて、俺の計画能力の無さが露呈した。

 

 今、物理的に足りないもの。

 それはつまり、女の子の服ですね。

 はい。

 

 これ計算に入れてなかったのは完全に失態だった。

 汗だくのライス姫の服洗ってて初めて気付いた。

 いや、遅いわ。

 ライス姫の服は私服、学校の制服、勝負服の三着しかないらしい。

 キツキツっすね……ライス姫がワガママ言わず服欲しいとか言わなかったから全然気がついて無かった。

 ライス姫の愛想の良い笑みを見るだけで死にそうになってしまう。

 気を使わせてごめんね。

 

 俺は別に服とか入手できなくても問題無い。

 だが、彼女らは違う。

 

 突然の災厄に飲み込まれた彼女らは当然服の着替えなんて持ってるわけがない。

 せめてローテーションできるくらいは数が揃ってないと。

 ……女子の下着のこととか想像もしてなかったのは、いつもの査定が行われてたら普通に評価ランク一つ下げられてもおかしくないわ。

 

 よって、まず破壊されてない服のサーチをルーチンに組み込む。

 道中で服が見つかり次第補充しにいく。

 これは必須作業だ。

 一日二日で終わるような旅じゃないんだからな。

 

 できれば日が沈む前に、服を回収しにいきたい。

 

 というわけで。

 

 同行してくださいませんかねナイスネイチャ様。

 絶滅種にこういうの頼むのは本当にあれなんだけどさ。

 

「e381aae38293e381a7e280a6e280a6efbc9f」

 

 

 まあ、なんというか。

 ……男が触った下着とか女子は身に着けたくないだろ?

 赤の他人が下着把握してるとかも嫌だろ?

 

 こう、そのへんを考慮してだな。

 女子二人の着替えとかを、ネイチャ様に確保してほしいな、と。

 そんな多くを要求するわけじゃねえんだ。

 女性服がある店まで連れて行くから。

 俺が他に色々回収してる内に、女子二人分の着替えを十分に確保してくれればそれでいい。

 後で礼はするから。

 

「e280a6e280a6e38182e383bce38081e381afe38184e381afe38184e38081e381aae3828be381bbe381a9e38082e38193e381a3e381a1e381abe6b097e38292e4bdbfe381a3e381a6e3818fe3828ce381a6e3828be381a3e381a6e38193e381a8e38082e4b880e6ada9e99693e98195e38188e3819fe38289e382bbe382afe3838fe383a9e381a3e381a6e8a880e3828fe3828ce3818be381ade381aae38184e38197e38081e794b7e381aee4babae381afe3819de38186e38184e38186e381a8e38193e3828de381abe38282e6b097e38292e4bdbfe3828fe381aae38184e381a8e38184e38191e381aae38184e38293e381a0e280a6e280a6」

 

 

 顔を見れば分かる。

 ちょっと同情されてる。

 いや、マジでお手数おかけします。

 

 ライス姫はほら……なんか、嫌ってこと嫌って言えなそうじゃん?

 相手の気分損ねるのを気にする方じゃん?

 とにかく我慢して他人に合わせる方じゃん?

 仮に俺が店に連れてって、下着とか持ってきてーとか言うとするじゃん?

 なんか嫌な気持ちになったりとか、俺に対して気持ち悪いと思ったりとかしても、『ライスシャワーは何も言えない』……だろ?

 

 そういうのあんまよくないんだよな。

 偏見なしに、今、ライス姫らの生存基盤は俺が持ってる。

 俺が生殺与奪の権を握ってしまってる。

 で、だ。

 

 あんま仲良くない異性とか、自分が気持ち悪いと思った異性が、めちゃくちゃでかい力を持って自分の生殺与奪を握ってくるのって、女子的には死ぬほど嫌じゃないか?

 ダメなんだよ。

 そういうのは。

 怖いだろうし、ストレスになる。

 俺がどう考えてるかじゃない。

 ライス姫がどう考えるか、なんだ。

 

 言葉も通じねえから、コミュニケーションツールも少ない。

 仲直りの機会とかもあるかも不明。

 そういう流れになったら、よくてギクシャクしたまま旅がずっと続くかもしれない。

 悪い方にこじれたら……まあ、本当に悪いことが起きてもおかしくはなえってこった。

 

 

 気付いたか。

 事態の深刻さに。

 というわけで嫌なことを嫌と言えそうなネイチャ様に頼りたいわけなんだ。

 抱え込まないだけでもだいぶマシなはずだからな。

 

 筆談?

 なんか質問か。

 え?

 礼はいらない?

 これはメシの恩返しの一部?

 ……義理堅いな。

 ギャルの標準値を大幅に上回ってるんじゃないか。

 

 頼んだぞ、絶滅種・異性と付き合ったことのない男に優しいギャル。

 服を選ぶ能力ならそりゃギャルが最強のはずだ。

 

 もう既に絶滅したとは言え、主人公の仲間は恐竜、主人公のヒロインは優しいギャル―――そいつが最強の概念だ。

 信用してるぞ。

 

 

 

 

 

 

 ☆=現在地

 

 

 

 

 

 案外早く見つかったな、店。

 服飾専門店……には見えないが、なるほど、総合店の類か。

 でかい箱の中に複数の店を詰め込んで、"買い物"の効率化を測ったシステムだな。

 一部崩壊してるが、工業的に生産された人体形状に最適化された繊維製品、かつ製造から現在まで非破壊状態のものがここに大量にあるのは間違いない。

 おそらく、どこかに無傷の衣類がたくさんあるはずだ。

 

「e38186e381a3e280a6e280a6e382a4e382aae383b3e280a6e280a6e38186e381a1e381aee59cb0e58583e381aee59586e5ba97e8a197e381aee5a4a7e695b5e280a6e280a6efbc81e38080e7b5b6e5a699e381abe38184e38284e381aae38381e383a7e382a4e382b9e280a6e280a6efbc81」

 

 流石だなネイチャ様。

 目に戦意が漲ってる。

 やる気満々だ。

 ギャルの生き残りは頼もしいな。

 

 

 生命反応、無し。

 動体反応、無し。

 生存者は居ない……か。

 中に入ろう、ネイチャ様。

 

 

 こんだけデカい店に、人が居ないってのは……違和感もある、違和感もあるが……それ以上に……辛いな。

 きっと。

 何もなければ、ここには人が溢れていたはずなんだ。

 

 人の暖かさをたくさん抱えていたはずの場所が。

 今はこんなにも寂しい。

 今はこんなにも冷たい。

 それが、なんだかとても苦しい。

 

 こんな壊れかけの壁や床が並んでるような店じゃあ、なかったはずだろうに。

 

 

 

 

 

 気をつけろ。

 この状態の壁はだいぶ壊れやすい。

 崩れそうな壁や天井は崩れる前提で見ておいた方がいいと思う。

 念には念を押しといて損はないぞ。

 

 しかし不思議だな。

 こんだけでかい建物の一角が完全に崩落して、壁もこんなに壊れてるのに、建物全体に壊れる気配がない。

 軽くサーチして見てみても、かなり頑強な状態だ。

 よっぽど建物の基礎的な強度が高かったんだろうか。

 

 

 「あそこの天井崩れそ~」じゃねえんだよ!

 筆談しなくても分かるわ!

 もっと気を付けて!?

 緊迫感!

 

 

 

 

 しっかし寒っ。

 なんだこの寒さ。

 まるで冷凍庫だ。

 ネイチャ様、俺の上着着とけ。

 俺は体温調節を服じゃなくて生体素子で行う世代の『大人』だから、自然な生命体の君達よりは寒さに強い。

 平気だ。

 

 だが……本当になんだこの寒さ。

 尋常じゃない。

 世界は崩壊した。

 だから発電所は止まってる。

 よって大規模な冷却施設も止まってるはずだ。

 ここまででかい空間を常時冷凍庫レベルまで冷やせるようなもんは限られるはずだ。

 

 だがおかげで、食料品が大体痛んでないな。

 果物や野菜、生魚や生肉も無事だ。

 はて。

 何がここを冷やしてるんだ?

 

 調べてみるか。

 この寒さの原因を。

 原因を理解しないままこれを放置するのは、ちっとリスクが大きすぎる。

 

 で。

 ネイチャ様は何やってんの?

 ほうほう。

 食材のメモ。

 ここにあるのでどんな料理が作れるかメモしてると。

 家庭的女子概念の化身か?

 ギャルがその手の技能を持ち合わせてるのはオーバースペックだろ……!

 

 ほどほどにな。

 より寒い方に行ってみよう。

 

 

 

 

 こっちにも何もない。

 だが、寒さはこっちの方が増してる。

 こっちの方向に進めば、何かしら原因が見つかるはずだ。

 

 ……!

 

 

 広間に、氷柱?

 いや、これ普通に自然現象じゃありえないな。

 氷の中の気泡や亀裂が、自然氷のそれじゃない。

 外部から何かが、大量の水と冷気を入れて、一瞬で作った……そういう感じだ。

 

 うーん。

 俺の方の世界が原因臭いな。

 これができる技術レベルとなると、そうなる気がする。

 嫌な予感がしてきたぜ。

 何が目的でこんな建物一つ、こんなに躍起になって冷やしてんだ?

 

 

 氷。

 氷。

 氷。

 進めば進むほど、どんどん氷が増えてくる。

 寒さもどんどん増してきた。

 横目に見える彼女の息が白いのは、ナイスネイチャが自然に生まれた生物だから。

 

 

 俺の吐く息が白くないのは、そういう風に作られているから。

 意志で肉体を制御する機構は、白く染まる息のような無駄を任意で切り捨てられる。

 より熱が外に漏れないように。

 より長く寒い場所で活動するために。

 

 ……結果オーライだったが、ライス姫を連れて来なくてよかったな。

 結構ドジっ娘なあの子のことだ。

 こんな凍結した床の上じゃ、何回転んでたか分かんねーや。

 

 ネイチャ様、俺の手を掴んだら転ばないぞ。

 遠慮しとく?

 そっか。

 足元には気をつけろよ、怪我しないようにね。

 

 

 

 

 あ。

 あった。

 あそこだ。

 

 氷の狭間。

 あそこにある黒い靄から、冷気が吹き出している。

 

 

 これは……『雪之美人』か。

 

 純日本製、天候制御装置。

 あの形状は、第八世代機神が飛ばす端末にされたやつか?

 

 本来は太陽とかに近すぎて人間が生存できない星の環境を冷却し、コントロールして、星の外側に吸い上げた熱を転送するシステムだ。

 星に外付けする熱の排出機構。

 これをひとたび起動すれば、星の外にいくらでも熱を投げ捨てることができる。

 『星の汗』とか、乱暴なあだ名を付けられてたなぁ。

 

 なるほどなあ。

 世界衝突で壊れたこれが、この建物の中でずっと周囲を冷やしてたのか。

 結果、ここが建物レベルの冷凍庫みたいになってた、と。

 

 屋外で暴走してたらこのへん一体が豪雪地帯になってたなあ。

 そしたら色々ヤバかったかもしれん。

 雪に埋もれてたらコレ一生見つかんない可能性もあっただろうし。

 やっぱ俺、いや俺達? 運がいいわ。

 ライス姫と出会ってから豪運に恵まれまくってる。

 あとであのちみっこに美味しいものでも作ってあげよう。

 後で揺り戻しがこないといいなぁ。

 

 ぬ。

 なんだネイチャ様。

 

 

 雪の美人とかいう割に真っ黒で名前負け?

 ああ、あれは、反転された状態なんだ。

 

 ギガスの質量はマイナス20tだろ?

 だからギガスは20tくらいまでの積載物の重さを0にできる。

 

 光が通常の粒子なのに対し、時間を逆行する超高速の粒子タキオンがあるだろ?

 だからタイムマシンも作れる。

 

 反転された状態を作るんだよ。

 そうすると重さもマイナスにできる。

 時間にだって逆行できる。

 白は黒になる。

 

 あの"雪之美人"の本体カラーは白なんだ。

 だから雪の美人。

 それが反転して真っ黒に見えてんだよ。

 反転してるから、マイナスの質量を利用して、エネルギーを消費せず、『重力に引っ張られて上に落ちる』とかもできるんだ。

 プラスの重量なら下に落ちるけど、マイナスの重量なら上に落ちていく。

 

 便利だろ?

 

 

 曖昧な顔で分かったふりをするな。

 

 まあいい。

 早めに制御系を掌握して止めちまおう。

 

 ……うーん、壊れてるな。

 まいった。

 メインシステムは止められたがサブシステムが止まらない。

 これだと周囲を冷やすのは止められないな。

 変なとこだけ破損してる。

 

 筆談? おっけ。

 こうこうこういうこと。

 まったく、ワガママガールで困るな、この真っ白真っ黒美人さんは。

 

 ん?

 なに?

 おいネイチャ様何して―――

 

 

 ふぁっ!?

 

 踏んだ!?

 

 あっ、雪之美人止まった! 今ので!? いや蹴るなよナイスネイチャ!

 

 え?

 壊れたテレビは叩けば直ったから?

 地元の商店街では皆こうして直してた?

 機械は叩けば直る?

 ……脳筋っ!

 何?

 ウマ娘は基本が脳筋なの?

 

 君な、もうちょっと慎重に時間をかけてだな……何? なんか言いたいのか?

 

 

 うんうん。

 『もう寒すぎてこれ以上耐えられない』。

 『寒すぎて手がかじかんで筆談が辛い』。

 『というかあなたの顔色がまず結構ヤバい』。

 『他人に上着貸しといて死にそうな青い顔してる』。

 『上着は本当にありがとう』。

 なるほどなるほど。

 

 ごめんなさい。

 全面的に言い訳の余地がねーな。

 寒がらせて、心配させて、大変申し訳無い。

 

 ギャルに正論を言われてしまった。

 

「e38193e381aee4babae38081e381a1e38287e381a3e381a8e79baee38292e99ba2e38199e381a8e3819de381aee8bebae381aee3818ae381a3e3818de38184e98798e381a8e3818be8b88fe38293e381a7e5a4a7e680aae68891e38197e381a6e3819de38186e381a7e68096e38184e280a6e280a6e3819de3828ce381afe3819de3828ce381a8e38197e381a6」

 

 む?

 食料?

 ああ、そうだな。

 冷却が終わった以上、ここの食料は腐り始める。

 たぶん、今日中に結構ダメになるんじゃないか。

 

 とはいえ、ここで俺達が全部食えるわけもないし。

 今食料が必要な人をここに大量に呼び寄せるとかもできるわけがない。

 一捻りしないと、何やっても腐る前に消費しきるのは難しいだろうな。

 

「ギガスに通信接続。管制システム。加工機に自立操縦機を付けてこっちに送り出せ」

 

 かもん加工機。

 来た来た。

 これがあれよ。

 ライス姫がかじってた干し魚とか作ってたやつ。

 料理は作れない、が。

 ものによっては千年くらい保つ保存食にも加工できる。

 

 正直言うと俺料理作るよりこういう機械使う方が得意なんだよな。

 人工知能を積んだ自立操縦機がくっついてるから、最初に細かく命令しとけば、ここにある大量の食料をだいぶ長持ちする保存食に変えられるはずだ。

 肉も野菜もお菓子もその他も。

 

 ネイチャ様、必要な分だけ生の状態で持っていこう。

 菓子とかも必要な分だけ。

 あとは必要とする人が後からここと訪れた時のために、保存食にして残しておこう。

 

 ん?

 ……そういうこと言うなよ。

 無粋なやっちゃめ。

 見透かしたようなこと言わないでくれや。

 

「ま……これ食って生き残るどっかの誰かが居たらいいな、なんて思ったりもするよ」

 

 どうせ、俺がこう言っても、言葉の意味は分からんだろ。

 

 ……なんだその顔は。

 

 

 なんだその顔は!

 

 ほら、食料目星つけといて。

 加工機の対象外にしとくから。

 そしたら本題の、服を探しに行こう。

 だからその顔やめろ!

 

 なんて扱いに困る子だ。

 これがギャルか。

 時代の流れの中で滅びていった絶滅種。

 恐竜と同じく強くも滅びていった強者……!

 

 おっ。

 

 

 

 帽子だ。

 ってことは。

 

 

 やっぱりだ。

 こっちだな。

 衣類が転がってるってことは、こっちに服屋が……あった!

 ネイチャ様!

 いい感じに二人の着替えを……

 

 

 もう中に居る!!!

 もう着替えてる!!!

 シャレオツっすね、お似合いですよ。

 え、まだ着替えんの?

 おしゃれ意識高い女子はすごいな。

 

 おー。

 考えたな。

 選んだ服をビニール袋に入れて加工機の運搬荷台に積んどけば、加工機が逐次勝手にギガスの中まで運んでくれるのか。

 いやこれもしかして結構な量の服持って帰るつもりだな?

 食料品と合わせて、代金代わりに純金を100kgくらい店に置いとくか。

 

 へ?

 なに?

 俺もコーディネートしてくれんの?

 ……なるほど。

 実は俺、何を隠そうおしゃれに興味がある。

 おしゃれできるような身の上じゃなかったからな。

 昔からちょっと気になってたんだ。

 

 頼んだぞ、ギャル!

 絶滅し歴史の闇に消えたお前の力を見せてくれ!

 さあ、俺にどんな服を着せる!?

 

 

 オメーさては俺を舐め腐ってんな?

 

 

 オメーさては俺を舐め腐ってんな????

 

 くっ、ギャルに翻弄されている!

 

 漫画で見たパターンだ! よくない!

 

 

 普通のでいいんだよ普通ので。

 あー。

 あったけ。

 

 

 「これはこれで」って顔やめろ。

 無敵か?

 まだ建物の中は寒いし、俺の上着はそのまんま着てていいぞ。

 段々と氷は溶けていくだろうけどそれでも……ん?

 氷が溶ける?

 

 ……。

 ……。

 ……あ。

 やっべ、気付いた。

 

 だから崩れてなかったのか、この建物。

 だから崩れてなくて、だから中の服が無事だったんだ。

 だから……ヤバい。

 

「急いで戻るぞ!」

 

「e38188e38081e4bd95efbc81efbc9fe38080e4bd95efbc81efbc9f」

 

 

 ウマ娘だ、走れるよな!?

 加工機と荷物はもう逃してる、俺達が逃げるだけでいい!

 急げ、遅れるなよ!

 

「e382a6e3839ee5a898e381abe3808ce680a5e38192e3808de381a3e381a6e8a880e38186e4babae99693e381aae38293e381a6e3819de3828ce38193e3819de795b0e4b896e7958ce4babae3818fe38289e38184e38197e3818be38184e381aae38184e381a8e6809de38186e38293e381a0e38191e381a9efbc81」

 

 いやこれ俺が遅れてるな!

 クソ、冷気に耐えるために生体素子ちょっと使いすぎたかなー!

 いつもなら!

 いつもなら遅れを取ってないから!

 

「e38182e383bce38282e38186efbc81」

 

 

 うおっ……手が引っ張られて……サンキューネイチャ様!

 

 走ってる状態で筆談なんかしてられねえ!

 身振り手振りで伝えるしかない!

 いいか、このでかでか建物は、本当はとっくに崩壊してたはずだった!

 だけど、崩壊を止めるものがあった!

 氷だ!

 

 雪之美人は大量の水と冷気を吐き出し続ける冷却システム!

 それが生んだ大量の氷が、崩落する建物をそのままの形に留めてたんだ!

 冷気の発生源が無くなった今、氷が全部溶けたら……いや、氷が一部でも溶けた時点で、建物は崩落を始める!

 

 俺達が生き埋めになったら、そうでなくても出口塞がったら、ヤバいぞ!

 

 

 

 

 あ、天井。

 

 

 こりゃヤバいわ。

 

 天井、いや、上の階が全部落ちてくる―――!

 

 

 ネイチャ!

 俺を置いてけ!

 出口はもう見えてる!

 

 

 お前一人の速さなら問題なく脱出できる!

 俺は生き埋めになった後でもなんとか―――何!?

 

 ネイチャ―――俺を背負っ―――いやなんだこれ速っ―――これ明らかに人間と類似の身体構造で出せる速さじゃなっ―――

 

 

 ―――はやっ、はやい。

 

 うおおおお!

 ゴール! ゴール、出口抜けた!

 セーフ!

 セーフ!

 ギリギリセーフ!

 よかった、出口が埋まる前に出られたな……!

 

 マジ速いなネイチャ! ネイチャ様!

 信じられねえ速さだった!

 今日から最速のウマ娘名乗っていいぞ!

 

「e381bee38182e280a6e280a6e381adefbc9fe38080e381b5e381b5e38293e38082e381bee381a0e38387e38393e383a5e383bce38282e38197e381a6e381aae38184e38191e381a9e38081e38387e38393e383a5e383bce38197e3819fe382894749e381a7e4b880e79d80e58f96e3828ae381bee3818fe3828be4ba88e5ae9ae381aae38293e381a7efbc9fe38080e381b5e381b5e381a3e38082e6b581e79fb3e381abe3819de3828ce381afe38393e38383e382b0e3839ee382a6e382b9e38199e3818ee3818be381aae38082e381a7e38282e38081e680aae68891e38282e381aae38184e381bfe3819fe38184e381a7e38288e3818be381a3e3819f」

 

 

 今日は思う存分調子乗っていいぞ。

 本日のMVPだ。

 明日から俺の命の恩人名乗っていいよマジで。

 

 建物の中の保存食は……まあ、ガチで腹減ってるやつなら後から掘り出すだろう。

 そのへんの壁に「ここにごはんありますよ」って書いとけばいい。

 たぶんな?

 まあよほどのアホでもなければ見つけられるはず。

 

 あー、腹減った。

 そうだ、メシ。

 ああ……そういや俺の分食ってなかったか。

 二人のおかゆとか作って後回しにしてる内に忘れてたわ。

 

 そんな呆れた顔すんなよ。

 大丈夫大丈夫。

 簡単に済ませるから。

 一働きした後は、俺もメシが食いたくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はつまり検索で得たデジタルな情報でしか君らの世界を理解してないことが、ちょっとした失敗の原因になってるわけだ。

 すなわちそっちの通俗に慣らすことで問題が解決していく。

 普段ライス姫に作らないような、けれど皆が食ってるようなメシを普段から食っていけば、それなり以上にそっちの地球のパンピーに近付くはずだ。

 

 つまり、俺はこれから、生まれて初めての『卵かけご飯』を食べる!

 

 なんだその顔は。

 言いたいことがあるなら筆談で聞くぞ。

 言っとくが、文化面からの歩み寄りはベターな他文化理解の手法だからな?

 まあ見てろ。

 

 

 つーかこんな簡単なメシ、失敗のしようがないし本質はそこじゃねえの。

 繰り返しこういうメシを食べていく、ってのが大事なんだ。

 毎日を、日常を、習慣を、他の文化に合わせていくってことなんだから。

 

 

 だからこういう歩み寄りを踏み出しにして、ゆくゆくは……

 

 

 あっやべっ。

 

 

 オアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 あっ、あっ……あっ……!

 

 ……どうした?

 笑えよナイスネイチャ。

 笑えよ。

 どうして笑わない?

 

 

 なんだと?

 

 こんな俺に……卵かけご飯の美味しい作り方を教えてくれると、そう言うのか?

 

 母性があって他人の失敗に寛容なギャルってなんだよ、ブラキオサウルスか?

 

 

 

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